2017年7月22日土曜日

市販CML治療薬 「グリーベック」 はPAK遮断剤!

今世紀初めにCMLやGIST などの稀少癌の特効薬として、ノバーチスから市販された「グリーベック」という薬は、どうやら 「PAK遮断剤」 の一つであるようだ。というのは、この薬を長期にわたって使用していると、皮膚や髪毛の色が薄くなる (いわゆる「美白作用」がある) ことが報告されているからだ。 この薬は元々、CMLの原因であるABLと呼ばれるチロシンキナーゼの阻害剤として開発されたが、後にPDGF  (血小板由来増殖因子)  受容体や KIT と呼ばれるチロシンキナーゼをも阻害することが判明した。そこで、数年前に、カナダのトロント大学小児科病院やドイツのハンブルグ大学病院 (UKE) のNF臨床研究グループなどが、細胞培養系や動物実験でで、NF2腫瘍細胞 (シュワノーマ) やNF1 腫瘍細胞の増殖を抑えることを見つけた (1)。 

その研究報告を基づいて、豪州のNSWにあるリバプール病院の30歳のNF2 患者(男性、難聴が急速に進んでいた) に、2011年頃、試みに一日400 mg を投与し始めた。「グリーベック」のおかげで、腫瘍の増殖は殆んど止まったが、4カ月後に (患者の体質から) いくつかの副作用が出てきたので、「グリーベック」の投与を止め、ベバシズマブ (アバスチン、中外製薬) に切り換えたそうである (2)。  「ベバシズマブ」でも、腫瘍の増殖は抑えられたようである。8カ月の投与中、特に副作用はなかったようである。

アバスチンは血管新生に必須なVEGFに対するモノクローナル抗体である。一般に固形腫瘍の増殖には血管新生が必須なので、VEGF抗体は、一定の治療効果を発揮するが、この抗体だけでは、腫瘍の根治は期待できない。 しかも、抗体は脳内に入らないので、脳外のVEGFを減らす働きしかない。 

 「グリーベック」も「アバスチン」も癌の治療薬と許可されているので、薬価が高い。従って、NFのような遺伝子難病の「生涯治療」には、薬価で家計を苦しめる結果になるので、安価で効果のある (かつ副作用なしの)  プロポリス (例えば、Bio30)  をむしろ勧めたい。

 ジョン=マケインを脳腫瘍から救えるか?

グリーベックがNF2に効くということは、薬が脳内に入っている証拠であるから、脳腫瘍一般に有効であるはずである。 従って、米 (共和党)上院議員ジョン=マケイン氏の脳腫瘍もグリーベックで治療可能であろう。 しかし、大病院の 「石頭」 医師陣は、プロポリスやグリーベックを脳腫瘍の治療に使用しようとしない!  だから、脳腫瘍で死亡した上院 (民主党) 議員エドワード=ケネディー氏の場合同様、マケイン氏も助からないかもしれない。。。

さて、グリーベックの美白作用については、最近、中国の研究グループにより、実際に細胞培養系で、メラニン合成を抑えることが実証された(3)。 なぜ、グリーベックがメラニン合成を抑えるのだろうか?   我々自身の研究によれば、"メラニン合成には、血清中のPDGFによって活性化されるPAKが必須" であることが判明した (4)。 

参考文献:  

1. Mukherjee J, Kamnasaran D, Balasubramaniam A, et al. Human schwannomas express activated platelet-derived growth factor receptors and c-kit and are growth inhibited by Gleevec (Imatinib Mesylate). Cancer Res. 2009 ;69(12):5099-107.  

2. Lim S1, de Souza P. Imatinib (Gleevec) in neurofibromatosis type 2. BMJ Case Rep. 2013; 2013. pii: bcr2013010274. 

3. Wang Y, Zhao Y, Liu L, Zhang L, et al. Inhibitory effects of imatinib mesylate (gleevec) on human epidermal melanocytes. Clin Exp Dermatol.  39 (2014), 202-208.

4. . P.T. Be Tu, B.C. Nguyen, S. Tawata, C.Y. Yun, E.G. Kim, H. Maruta, The serum/PDGF-dependent “melanogenic” role of the minute level of the oncogenic kinase PAK1 in melanoma cells proven by the highly sensitive kinase assay, Drug Discov. Ther. 10 (2017) 314322.
 

2017年7月3日月曜日

環境保護と健康長寿: ブラジルウッドあるいは蘇枋 (スオウ) 由来の赤紫の色素 「ブラジリン」 も線虫の寿命を延ばす!

韓国の研究グループによる最近の研究によれば、「ブラジリン」 と呼ばれる赤紫の色素が、線虫の寿命を延ばすことがわかった (1)。 プロポリス同様、熱ショック蛋白 「HSP16」 を誘導することから、「PAK遮断剤」である可能性が高い。 プロポリス中のCAPE と同様、癌細胞の増殖を抑える (IC50=10 micro M)。

この色素は、ブラジル原産の「ブラジルウッド」あるいは蘇枋 (スオウ) と呼ばれる大木から得られる色素で、酸性溶液では黄色だが、アルカリ溶液では赤紫である、花の色は黄色だから、花弁自身は酸性なのだろう。「ブラジル」という国名は元来、この植物に由来する。ブラジルの国旗の 「黄色」も 、この花の色が由来。

古代から漢方の一種としても、使用されてきた。 最近の研究によると、抗癌作用や抗炎症作用もあることがわかっている。 不幸にして、様々な目的のために、「ブラジルウッド」 は乱伐され過ぎて、今や保護しなければ、「絶滅」の運命にさらされている。 色素/染料として使用されるばかりではなく、バイオリンやチェロなどの弦楽器を弾く弓にも使用されている。

幸いにして、色素 「ブラジリン」 自身はごく最近、韓国 (Yonsei 大学) のグループにより、"収率良く" 化学合成が可能になった (2)。 その合成の中間体で、ブラジリンの3つの水酸基が メチル化された 化合物があるが、私自身の考えによれば、ブラジリンよりも細胞透過性が高そうである。 そこで、この中間体や誘導体などを韓国のグループ (Prof. Ikyon Kim) から、入手して、その抗癌作用やPAK遮断作用を比較してみたい。 更に、(臨床への応用をめざして) 細胞透過性と水溶性を飛躍的に増強するために、(「クリック=ケミストリー」 とは違う別の) 特殊な化学修飾 (韓流) を目下考えている。  このプロジェクトは 「環境にやさしい (環境保護) 」 研究の一環 として、ぜひ推進していきたい。

参考文献: 

1. Lee EB1, Xing MM1,2, Kim DK3.
Lifespan-extending and stress resistance properties of brazilin from Caesalpinia sappan in Caenorhabditis elegans. Arch Pharm Res.2017 Jun 30.

2. Jung Y, Kim I. Total synthesis of brazilin. J Org Chem. 2015; 80(3):2001-5.