2019年1月28日月曜日

"創薬" 事始め: 成功には、先ず「混血」精神ありき!

天然物から創薬する歴史の中で、最も古い成功例は、垂れ柳の成分「サリチル酸」をエステル化してできる「アセチルサリチル酸」、つまり鎮痛剤「アスピリン」である。ドイツの製薬会社「バイエル」の有機化学者が、自分の父親のリューマチを治すために、潰瘍性のサリチル酸の OH 基を 無水酢酸と脱水縮合させて、エステルの合成に成功したのが、長い「アスピリン史」の始まりだった。 しかしながら、アスピリンには、COOH が未だ残っているので、細胞透過性が極めて悪く、抗癌剤としては利用できない。そこで、COOH をエステル化する試みが今世紀に入ってなされ始めた。

その一つが、ノーベル受賞者 Barry Sharpless 教授 (MIT) によって発明された化学反応「CC」、つまり銅を触媒とする「Click Chemistry 」を介して、アニソールと呼ばれるアルコールを "2 ステップ" で脱水縮合させるアプローチである。このアプローチで、1,2,3-triazolyl ester of Aspirin が中国で製造されたが、細胞透過性は僅か30倍しか上がらず、抗癌剤としては、実用性に未だ乏しかった。

そこで、次の挑戦者がインドに登場した。アスピリンの代わりに、結婚相手をウルソール酸 (UA) に切り換えて、1、2、3-triazolyl ester  of UA  (7p) を創り出した。その反応で、細胞透過性が200 倍まで上がった。しかしながら、この有機化学者は、特許を得ようとはしなかった。何故かというと、UA は天然のトリテルペンで、有機合成が困難なので、製薬企業には、余り魅力がなかったからである。そこで、次の挑戦者 (第 3 の男) が豪州に現れ、「3度目の正直」をめざした。簡単に合成できるPAK遮断剤の中からCOOH 基を持つ化合物を見つけ始めた。先ず、プロポリスに存在するArtepillin C (ARC) や コーヒー酸 (CA)  などに目を付けた。 

1,2,3-triazolyl ester of ARC (15A)  及び、1、2、3-triazolyl ester of CA (15C) は、各々原料の細胞透過性を100 倍、及び 400倍に高めた。 気を良くした豪州の挑戦者は、更なる飛躍を狙って、COOH 基を持つ合成鎮痛剤「ケトロラック」(商標トラドール) を原料に選び、CC を介して、1、2、3-triazolyl ester of Ketorolac (15K) の合成に成功した。 このエステル化は、ケトロラックの細胞透過性を500倍以上に高め、最強のPAK遮断剤の誕生をもたらした (アスピリンの薬理作用の10万倍以上!) 。明らかに「ギネス記録」もの!

こうして、「第 3 の男」は、大手製薬会社の食指をそそるべき「15C 」等に関する特許の取得に成功した。創薬には、 先ず「混血」精神が必須である。しかしながら、最終的な成功には、最も適切な相手 (相補的な「鍵と鍵穴」) の選択が重要である。ただ手当たり次第に混血させても、いわゆる「大坂直美」や 「15K」は決して誕生しない! 

2019年1月27日日曜日

「大坂直美」旋風: 合金 (混血) は純金 (純血) に勝る!

大坂直美、全豪テニス選手権 (2019年) でも優勝! 
全米選手権 (2018年) に次いで、2つ目の「Grand Slam 」タイトル を獲得! 

"Golden Slam" とは、4つの「Grand Slam」(全豪、全米、全仏、全英=ウインブルドン) と五輪 (合計5大会) で優勝することを指します。 これをシングルスで成し遂げた選手は極めて小数で、歴代 (欧米) では、Andre Agassi, Steffi Graf, Rafael Nadal,  Serena Williams の4名だけだそうです。来年には幸い、東京で「五輪」が開催されるので、「大坂にもチャンスあり」ですね!  とにかく「若い内」に、できるだけ頑張って 5人目 (アジアでは最初) の「歴史」(金字塔) を作ってもらいたいものです。。。

合金 (混血) は純金 (純血) に勝る! 

我々が20年ほど昔に出版した訳本、パール=バック伝「この大地から差別をなくすために」の下巻、戦後の「米亜」(Amerasian) 混血孤児救済運動に関する章に、登場するパール=バック女史の有名な言葉である。「ジュラルミンという合金は、原料のアルミよりずっと優れた性質を示す」ことを例に挙げ、人種でも、純種 よりも雑種 (混血) のほうがずっと優れているはずだと力説して、(太平洋) 戦後、日本を始め極東や東南アジアに溢れ出た米駐留軍の将校や兵士と現地の女性との間に生まれた混血児 (Amerasian) で、両親に見捨てられた大量のいわゆる「ハーフ」(hybrid) の救済 (養子斡旋) 活動を展開する際、キャンペーンに利用した言葉である。

 しかし、実際には 、最近の分子人類生物学の研究結果によれば、"純粋な人種" などは今日、もはや存在しない。正確にいえば、我々「ホモ=サピエンス」が太古の昔、かの有名な「ネアンデルタール人」と性的に接触 (交配) して以来、全ての現存する人類は、様々な「雑種」以外の何物でもない。我々人類が「氷河期」を見事切り抜けることができたのは、ネアンデルタール人からの貴重な DNA (人類ゲノム全体の 2-3% を占める) によるものとされている。。。

従って、2つ目の厳しい「Grand Slam」を見事に切り抜けた「大坂直美」の持つ遺伝子の内で、母親 (日本人) と父親 (ハイチ人) から受け継いだ遺伝子のどれが、この「歴史的」成功 (快挙) に寄与したのか、我々の知るところではないが、恐らく、その2種類の絶妙な  (稀に見る) 組み合せが、功を奏したに違いない! 

ところで、北海道で漁業を営む直美の祖父 (鉄夫さん、74歳) はその昔、娘 (直美の母) がハイチ人 (直美の父) と結婚するというニュースを聞いて大反対したくせに、今は直美の大ファン。 根室の市長とのアポもすっかり忘れて、自宅で決勝のテレビ実況に釘付け。孫娘が "危ない勝ちかた" をする度に心配で、自分の血圧が高まるとこぼす。「親馬鹿」ではない、祖父 (じじ) 馬鹿! 

https://www.asahi.com/articles/ASM1V72Y1M1VIIPE02F.html?iref=com_fbox_d2_01
実は (日本では余り知られていないが)、メルボルンの全豪テニス直前に、豪州の北、ブリスベンで、前哨戦が開催された。そこで、西織選手は2年ぶりに優勝したが、大坂選手は準決勝で「集中力」を欠いて、あっさり敗退!  本番が危ぶまれていた。ところが、期待された西織選手が、本番の準決勝で "怪我のため中退" 。逆に、大坂選手はコーチによる絶妙の「采配」で、決勝で勝利を何とか掴む!  祖父の鉄夫さんは、娘夫婦から事情を聞いていたのだろう。この決勝の3回戦では、さぞかし気をもんだことだろう。。。

例によって「我田引水」で甚だ恐縮だが、我々が最近開発に成功したPAK遮断剤「15K」も雑種 (hybrid) 化合物である。 鎮痛剤「ケトロラック」と水溶性の特殊なアルコール (アニソール) を クリック化学で、ガチャンと組み合わせて出現したエステルの一種、いわゆる「奇跡の薬」(魔法の弾丸) である。 動物実験で、ケトロラックの500倍、プロポリスの千倍近い抗癌作用を発揮する、言わば「Grand Slam」ものである!  

 さて、"Golden Slam" を見事に果たした Steffi Graft (German) と Andre Agassi  (American) とが結局、国際結婚にゴールインしたが、その息子 Jaden Agassi は目下、テニスの選手ではなく、意外にも "高校野球" の花形選手だそうだ。 どんな選手になるか今後が楽しみである。。。

2019年1月26日土曜日

「国際結婚」の旧友との 46年ぶりの再会を期して!

歴史小説「PAKと闘う薬魂」を執筆し始めて、ある旧友 (イイジマ夫人) に久しぶりに再会できる機会が到来しつつある。 実は、1973年の夏休みの始めに、私は初めての渡米のため、横浜港を米国の大型タンカー (オレゴン号) に乗船して、太平洋を北回り (アラスカ経由) で、米国西岸のシアトル港に向かって、旅立った。 このタンカーには、船長を始め40名以上の乗務員(船員) が乗っていたが、その他に私自身を含めて13名の乗客が乗っていた。 ノン=ストップの9日間を、我々は船長と共に、テーブルを囲んで、毎日三度の贅沢な食事を楽しんだ。さて、私以外の乗客および船員は全て米国人だったので、船上では、日本語は当然のことながら、全く通じなかった。 これは私にとっては、全く好都合だった。この9日間に、「無料で」英会話 (実は米会話) 能力を磨き上げる絶好のチャンスが、私に与えられたからである。

さて、乗客の中に「イイジマ」という家族がいた。ご主人 ピーターは日本生まれの 2世で、戦後間もなく渡米したそうである。その奥さんはオレゴン州生まれのアメリカ人で、ジェニーバという敬虔なクリスチャンだった。私の記憶が正しければ、2名の可愛らしい息子がいた。名前はティムとスチーブだったと思う。日本の小学校でしばらく、日本語の勉強をしていたそうだ。 オレゴン州ポートランドに帰国後、息子たちの日本でのスクール体験を、奥さんが英語の絵本「The Way We Do It in Japan」(日本流) という形で出版したと聞いている。。。私がコロラド大学で一年間、留学研究 をする予定だと話したところ、ポートランド時代にイイジマ家と親しくしていた旧友 (パッカード家) が、コロラド州の首都デンバーの郊外 (グランド=ジャンクション) に移り住んでいると教えてくれた。私が実際に研究をする大学のキャンパスは、ロッキー山麓のボールダー 市内 (海抜1600メートル以上) にあった。シアトル港からポートランドを経由して、2昼夜グレーハウンドバスに揺られて、デンバーに到着すると、目指す私の大学キャンパスは、デンバー市内からバスで、30分くらいの山奥にあった。
 
さて、私がコロラド大学に到着してから、2、3か月して、丁度「ハロウイーン」の季節 (紅葉が美しい10月末頃) に、私が泊まっている院生用の寄宿舎に、ミルトン=パッカード氏が突然訪れた。 例のポートランドに住むイイジマ家の友人だった。 車でグランド=ジャンクションにある自宅に私は招かれ、その晩は家族と一緒にハロウイーンの晩餐を共にした。 大きなカボシャをくり抜いて、目鼻や口もくり抜き、内側にローソクを立てて、いわゆる「ジャッコー=ランタン」を作って皆んなで楽しんだ。その後、クリスマスの季節に、もう一度、パッカード家に招れ、親類や隣人などと一緒に楽しい時間を過ごしたのを憶えている。

残念ながら、一年後に私が、東海岸にある首都ワシントン郊外にある世界最大の医学研究所「NIH」 (国立予防研) に移って以来、パッカード家ともイイジマ家とも、文通がずっと長らく途絶えていた。。。 実は私がNIHに移ってから初めて「PAK 」なる魔物に遭遇したので、両家族共、私の長期にわたる「PAK との闘い」について、全く知らないままでいる。 

https://www.hillsidechapelfh.com/obituaries/Yaoki-Iijima/#!/Obituary
つい最近、イイジマ家のピーターが84歳で他界したことを、上記のネット欄で偶然に知った。そこで、その奥さん (未亡人) が属している「クリスチャン作家協会」のHP を幸い見つけ出して、会長にMrs. Geneva IIjima のメールアドレスを問い合わせたところ、ジェ二ーバ本人から最初のメールを今朝もらって、久しぶりに文通を再開!

先ず最初の話題は、何といっても、大坂直美のメルボルンでの「Grand Slam」勝利 (快挙) ! 何故かといえば、ジェ二ーバには、手塩にかけて育てた 4人の "日米混血児" (息子2人、娘2人) と、沢山のお孫さんがいるからだ。 次の話題は「プロポリス」! 実は、息子の奥さんの母親 (スザンヌ) が末期癌にかかり、副作用のない "天然治療剤" を摸作中だったからだ。。。 当然の成り行きとして、例の「PAK」抜きには、話は進まなかった!  "クリスチャン的な表現" を使うならば、神からの救いの手が、"プロポリス" という形で差し延べられた。。。実は、ジェニーバからの情報によると、コロラド州に住むミルトン=パッカード氏も最近、認知症を患らい始めているようである。そこで、メールで彼の奥さん (ジャネット) にも "プロポリスの効果 (福音) " を知らしめた。 大昔にお世話になった "恩をお返しする" チャンスがようやくやって来た。

2019年1月23日水曜日

薬剤の通過を阻む「血管脳関門」(BBB) を緩める要素?

脳腫瘍などの脳疾患を薬剤で治療するためには、その薬剤が「血管脳関門」(BBB) を通過せねばならない。 もう10年以上も昔、藤沢薬品 (アステラス製薬の前身) が1990年代中頃に開発した「FK228」 と呼ばれるヒストン脱アセチラーゼ (HDAC) 阻害剤が、下流のPAKを遮断することによって、NF腫瘍細胞の増殖を強く抑えることを、我々自身が発見して以来、一時、NFの治療薬として大いに期待したが、結局、血管脳関門 (Blood Brain Barrier=BBB) をこの環状ペプチドが通過できないことを知り、多くのNF 患者が非常に失望した記憶が未だに新しい。 以来、我々による「PAK遮断剤」開発の段階で、薬剤が果してBBB を通過しうるかどうかを、動物実験で予め (治験前に) 確認することが極めて重要になった。当然のことながら、 PAK遮断剤「15K」がBBB を通過するかどうかを、先ずマウスの「認知症」モデル ( SAMP8 ) を利用して、目下検討中である。 

さて、 最近のBBB に関する研究から、BBBの障壁を一時的に破壊、あるいは緩めて、薬剤の通過を促進する方法が開発されつつあることが判明した。その一つは、電磁波を利用して、BBB という関所を緩和する「EMP」(Electro Magnetic Pulse) という方法である。 BBB の機能維持にはジェラチン線維が重要な役割を果たしているようだが、それを分解するジェラチナーゼ (ジェラチン分解酵素) の一種 (MMP-2) が 電磁波パルス (EMP) によって、活性化するという結果が、中国のある陸軍大学病院で発見された。 更に、ラットの脳腫瘍実験で、抗癌剤「CCNU」自体は、元来BBB を通過し難いが、電磁波パルス を施すと、その抗癌剤の治療効果が向上したという報告も最近出つつある。 従って、稀少難病「CTCL」(Cutaneous T-cell Lymphoma) に対する抗癌剤として、2009年から欧米で市販され始めた FK228 (商標 Istodax) も近い将来、電磁波パルスとの併用で、NF などを含めて脳腫瘍や認知症の治療にも使用される日が訪れるかもしれない。。。

BBBの障壁を緩めるもう一つの要素は、腫瘍自体である。固形腫瘍からは、通常「VEGF 」と呼ばれる血管新生を促進するペプチドホルモンが分泌され、 腫瘍の周囲に血管を構築する働きを持つ。 このVEGF の生産は、PAK によって促進され、更に、VEGF がPAK を活性化するという、言わば「悪循環」が起こる。面白いことには、VEGFには、血管新生ばかりではなく、BBBという関所を緩める作用もあるようである。 従って、脳腫瘍が発生すると、BBB が緩まる可能性がある。。。 BBBの一部は、細胞と細胞との接合 (Tight-Junction) によって構築されているが、この構築は発癌キナーゼ「PAK 」によって、緩むことが昔から知られている。 従って、BBBにPAK遮断剤が接近すると、関所が閉まる (より厳重になる) 可能性がある。 そこで、EMP (電磁波パルス) 活躍の出番がやって来る。。。

さて、松果腺ホルモン「メラトニン」はPAK遮断剤の一種であるが、「血管脳関門」を自由に往き来できるので、多くの薬剤と違って、極めて微量で、催眠効果や抗癌作用などを発揮しうる。従って、メラトニンの生産や分泌を促進することによって、睡眠を促進するばかりではなく、脳腫瘍の増殖を抑えることが出来るはずである。さて、"暗闇" はメラトニン合成を促進するが、"電磁波パルス" (EMP) は果してメラトニン合成を促進しうるだろうか?  研究してみる価値は十分にあると思う。 

今のところ、メラトニンに対する「EMP」効果については研究報告がないが、(モーツァルトなどの) 静かなクラシック音楽がメラトニンのレベルを高めるという報告が、20年ほど昔、ドイツのチュウビンゲン大学の心理学者 (音響医学の専門家) によって、報告されている。。。少なくとも、"三大"子守歌 (モーツァルト、シューベルト、ブラームス) は、確実に  (ドイツの) 子供たちの脳内メラトニンを高めているに間違いない。 

「奇跡のホルモン: メラトニン」(ラッセル=ライター著) に大変面白いコメントが載っていた。麻薬「マリファナ」、特にその幻覚成分「delta 9-THC」がメラトニンの分泌レベルを急激 (20分以内) に上げる、 という人体 (臨床) 実験結果が30年以上昔、イタリアのミラノ大学で出たそうである。マリファナは "PAK遮断剤" であると前述したが、そのメカニズムの一部はメラトニンを介して発揮されている可能性がある。  ただし、マリファナには幻覚症状や中毒症状を起こす傾向があるので、要注意!   更に、マリファナを吸った直後に「睡魔」が訪れるので、車の運転はご法度! 

 脳内PAK遮断剤「メラトニン」は "PD-L1" 発現を抑制する

メラトニンが
脳内「松果腺 (体) 」由来の「PAK遮断ホルモン」であることは、何度か前述したが、このホルモンが他の幾つかのPAK遮断剤と同様、貪食細胞 (マクロファージ) による PD-L1 の発現を抑えることが最近、中国の上海郊外にある大学の研究グループによって、明らかにされた (1) 。 PD-L1 は、しばしば癌細胞の表面に発現され、抗癌免疫細胞 (T-cell) の表面にあるPD-1 と呼ばれる受容体と結合して、免疫細胞を破壊する機能を持つことが、京大の本庶 教授 (2018年ノーベル医学受賞) らによって、20年ほど昔に明らかにされている。 従って、メラトニンや他のPAK遮断剤 (例えば、プロポリスや 15K など) が、いわゆる 「癌のチェックポイント」療法剤として、抗癌免疫能を高めることが、改めて自明になった!
 

さて、目下 (小野薬品などから) 市販されている「チェックポイント」モノクローナル抗体は、血管脳関門 (BBB) を通過できないから、脳腫瘍の治療には明らかに無効である。従って、脳腫瘍や認知症などの脳内疾患の治療には、メラトニンや(他のBBB を通過しうる) PAK遮断剤 (例えば、プロポリスなど) を使用すべきだろう。 

参考文献: 

1. Cheng L et al. Exosomes from Melatonin Treated Hepatocellularcarcinoma Cells Alter the Immunosupression Status through STAT3 Pathway in Macrophages. Int J Biol Sci. 2017 ;13: 723-734.

2019年1月20日日曜日

難病患者に対する「プラシーボ」治験は廃止すべき!

ここで、治験に関して、私が特に強調したい一点がある。 それは、いわゆる「プラシーボ 」(偽薬) 実験である。 人道上、これは「絶対に廃止すべき」である!
 

動物実験で、薬剤の「プラシーボ 」テストは、既に実験済みである。 これを難病患者に対して、もう一度繰り返す必要は全くない! 治療せずに、患者を「見殺しにする」以外の何物でもないからだ。。。

前述したMGM名画「エーリッヒ博士の魔法の弾丸」で、私をひどく感動させたシーンがある。 ベルリン大学病院の小児科で、ジフテリア患者を対象とする抗毒素 (抗血清) の治験が開始された。(後にノーベル受賞を貰う)  ベーリングとエーリッヒは、病院長に呼ばれて、20名の患者に抗血清、残りの20名に「プラシーボ」 (効力のない普通の血清) を注射するよう、指示された。  病院長曰く「2組の間で、生存率に有意差が出れば、抗血清の薬効が証明できる」。。。

さて、最初の19名の患者 (児童) に抗血清を注射し終わった時、20人目の患者が既に死亡していることに気づいた!  そこで、エーリッヒは、代わりに、(プラシーボ組) の 21人目の子供に20番目の抗血清を注射した。 さて、残りの19名の運命はいかに? 

(病室の窓ガラス越しに安否を気遣う) 残りの患者の母親たちの訴えるような目をみた瞬間、エーリッヒは病院長の指示を無視して、残り全員にも抗血清を注射した。エーリッヒ曰く「医師の使命は患者の病気を治療することで、患者をモルモット扱いにはできない!」。しかし、「石頭」の病院長はかんかんに怒って、エーリッヒの病院への出入りを禁じた!  それから数日経って、エーリッヒは突然、時の厚生大臣から呼び出しを受け、恐る恐る出頭すると、「注射を受けた39人の子供全でがジフテリアから救われた」という 意外なニュースを告げられた。大臣曰く、「君が20番目に注射した子供は、実は私の孫だったよ」。 その「医魂」に惚れ込み、大臣は、エーリッヒを新しい研究所の所長に任命し、いわゆる「魔法の弾丸」を開発する研究を続けるよう激励した。。。 他方、"非人道的な" 病院長の運命は如何に?  もし、私が厚生大臣だったら、彼を即時解任しただろう。。。

この厚生大臣は「先見の明」のある人物だった。ロベルト=コッホが結核菌を発見した際、この大臣は、ベルリンにコッホ研究所を設立することを提案した。そのお蔭で、数カ月後、エーリッヒが "自宅の研究室" で結核菌の染色法を開発した際、憧れのコッホ研究所に採用された。実は、コッホが結核菌発見を発表した会場に、友人ベーリングの誘いで、エーリッヒはベルリン大学病院をこっそり抜け出して、コッホの歴史的な講演を聴きに来ていた。その際、染色に関する提案をして、(偶々その場にいわせた) 病院長に見つかってしまい、病院長から解任されてしまった。その後に、エーリッヒを失職から救ったのがコッホとこの大臣だった。

もし、こういう賢い厚生大臣が日本にもいたら、日本の医療レベルはもっと高まっていただろう。。。正に、"政治の貧困" は、"医療の貧困" を招く!  言わんや、科研費 (研究助成金) と引き換えに、自分のドラ息子を医大に「裏口入学」させるような腐敗し切った高級官僚が「文科省」のトップレベルに君臨している限り、日本の医療が向上するわけはない!  


コッホの弟子だった北里柴三郎はジフテリア菌の同定に貢献したが、帰国後、福沢諭吉のお蔭で設立された「伝染病研究所」(伝研) の所長になった。  この伝研から、野口英世、志賀 潔、秦 佐八郎 などの優秀な病理学者が続々と巣立っていった。ところが、その成功を妬む当時の東大医学部長 (青山) が文部大臣と共謀して、伝研を文部省の傘下にする (尻に敷く) 計画を聞き、それに抵抗して、伝研の所長を辞めて、民間の「北里研究所」を設立した、という有名な歴史がある。詳しくは、篠田達明著「闘う医魂」(歴史小説) を参照されたし。  

我々のPAK遮断剤「15K」が市販された暁には、「PAK と闘う薬魂」と題する歴史小説の出版を、今から楽しみにしている。。。

スイゾウ癌の治療薬: 「Gemcitabine」に始まる開発小史

スイゾウ癌や肺癌などの手術が難しい固形癌の治療に使用されている Gemcitabine (商標 Gemzar, GEM) は、5FU と同様、典型的な核酸 (DNA)  合成の前駆体の一つ (フッ素化合物 =dFdC) であり、体内で燐酸化され、正常なDNA 合成を阻害することによって、増殖の速い癌細胞および正常細胞 (例えば、骨髄細胞、毛細胞、腸内細胞など) を殺す作用を持つ。従って、極めて有毒であり、脱毛、免疫機能の抑制、食欲不振などの副作用 をもたらす。GEM は1980年代初期に米国の製薬会社 「Eli-Lilly」によって開発され、1983年に特許が承認された。 以後、10年以上の臨床テストを経て、1995年にFDA により、市販が承認された。 2010年頃に特許の期限切れで、ゲネリック薬として、比較的安価に市販されるようになった。 

GEM は5FU と同様、当初「スイゾウ癌の特効薬」と言われていたが、実は癌細胞に耐性 をもたらし易く、僅か一割のスイゾウ癌の治療には役立つが、残り(9割) のスイゾウ癌には全く無効であり、患者に死亡をもたらす。従って、GEM/5FU 耐性の大部分のスイゾウ癌患者を救うために、副作用がなく、かつ耐性を引き起こさない抗癌剤 (魔法の弾丸) の開発が緊急に求められていた。

1994年に、丁度GEM が市販され始めた頃に、哺乳類にも「PAK 」というキナーゼが存在することが、シンガポールのEdward Manser 博士らによって、発見された。実は、その17年も前に、米国NIH の我がチームによって、PAK が「ミオシンキナーゼ」として、土壌アメーバ中に発見されていたのだが、 その隠された病理が長らく不明のままだった。 数年後 (20世紀末) に、哺乳類のPAK が (癌の増殖に必須な) 「発癌キナーゼ」であることが、Manser 博士と我々との共同研究の結果、先ず明らかにされた!  しかも、PAKは正常な細胞の増殖には、全く不要であることも確認された。実は、PAK は動物の生存には不要で、その寿命を短縮していることも我々は突き止めた!    つまり、PAK を選択的に遮断すれば、正常な細胞を害することなく、癌細胞を特異的に殺すばかりではなく、健康長寿を促進する!  こうして、そのような "夢のPAK遮断剤" (健康長寿薬) の発掘と開発をめざす研究が、我々の研究室を中心に開始された。

2005年頃にニュージーランド (NZ) 北島の大都市「オークランド」の郊外に「Manuka Health」 (MH) という養蜂業者が設立され、商標「Bio 30 | というプロポリスを安価に通販し始めた。 MH社長 (ケリー=ポール) と偶々親しくなった私は、このプロポリスの薬理作用、特に抗癌作用のメカニズムを解明する研究を、早速始めた。 間もなく、「花椒エキス」と同様、CAPE を主成分にする Bio 30 が、実は「PAK 遮断剤」であることが判明し、しかも動物 (マウス) 実験で、スイゾウ癌やNF 腫瘍の増殖や転移を、(副作用なしに!) 強く抑えることを (ドイツのハンブルグ大学病院と共同で) 確認した!  つまり、癌やNF の特効薬 (魔法の弾丸) を遂に発掘したのである。

そこで、その実験結果を英文医学雑誌に発表すると同時に、主にスイゾウ癌とNF患者を 対象にしたBio 30の非公式な治験を始めた。 この治験の主な目的は、それらの腫瘍患者にプロポリスを (薬代による家計への負担を軽減するために) 「市価の3割!」程度で提供し、自己責任で、自らの難病を治癒させることを助成する "人道的な意図" からだった。期待通り、GEM 耐性の末期 (転移)スイゾウ患者が一年以内に癌の根治に成功した!勿論、副作用は全くみられなかった!  更に、多くのNF (神経線維腫症) 患者の脳腫瘍の増殖もピタリと止り、次第に腫瘍が萎縮し始めた、という報告も受けている。。

このプロポリスの特筆すべきもう一つの特徴は、「薬剤耐性が生じない」ことであった。 NZ 産のプロポリスは、CAPE を始め数種の異なるPAK遮断剤の混合物であるため、その全てに耐性な癌や腫瘍は、理論的に発生しがたい。 従って、GEM などの従来の抗癌剤が抱えていた「副作用と耐性」という問題も、同時に解消されたわけである! 

我々が最近開発したPAK遮断剤 「15K  」は、言わば 「Bio 30 の改良版」である。先ず薬効が「千倍」近い!  勿論、動物実験では、副作用がないどころか、健康寿命を有意に延ばす。 しかも、薬剤耐性が起こり難い。何故かというと、この合成エステルは、光学異性体の混合物 (R体 とS体 ) であり、発癌性「PAK シグナル経路」にあるRAC (上流) とCOX-2 (下流) を各々阻害する「一石二鳥」の「魔法の弾丸」を内在している。 つまり、「ダビデ伝説」(実話) に例えれば、敵の大将「ゴリアテ」の両眼を一発のパチンコの弾で失明させることができる。

いよいよ今年は、哺乳類PAK の発見「25周年」を迎え、できれば、夢のPAK遮断剤「15K」の治験を開始したい。 

2019年1月18日金曜日

スイゾウ癌の化学治療 (ケモ) の "恐ろしい" 現状

(日米) スイゾウ癌患者支援団体 (PanCan Active Network) の情報によれば、現在、日米でスイゾウ癌患者に使用されているいわゆる「化学療法剤」 (ケモ) は、主に次の3種類である:  ジェムシタビン (GEM)、5-FU の誘導体、と Irlotinib (商標 Tarceva ) 。そのうち、GEM と5-FU は有毒なDNA阻害剤であり、様々な副作用があると共に、それに耐性のスイゾウ癌が全体の9割を占めるので、僅か一割の患者がその恩恵に預かるに過ぎない。

3番手の Irlotinib は、チロシン=キナーゼの一種であるEGFR を阻害し、米国のGenentech やその親会社 Roche などが、2006年頃に市販し始めた。(2015年現在で) 150 mg 錠剤が一粒で 2-3万円する高価な薬だ!   機能的には、前述の Astrazeneca が開発市販した「イレッサ」やアステラスが開発中のYM155 と同様で、下流にある発癌キナーゼ "PAK" と "AKT " を共に遮断するので、 主に「AKT阻害」による副作用(発疹、食欲不振、脱毛など) が出る。 以前から何度も強調しているが、天然のPAK遮断剤でAKTを遮断せぬプロポリスには、このような副作用は全く出ない。逆に、(抗癌作用ばかりではなく) 育毛促進、食欲増進、免疫機能を高める作用が、プロポリスにはある。

従って、これらの有毒なスイゾウ癌「ケモ」の代わりに、プロポリスを使用すれば、副作用なしに、一年以内に末期のスイゾウ癌でも根治できる。 しかしながら、石頭かつ不勉強な (大部分の) 癌関係の医師は、プロポリスを全く無視し、有毒なケモで、9割のスイゾウ癌患者を死に至らしめている。 私から観れば、これは「合法的な殺人 (=見殺し)」以外の何物でもない!  (安倍政権の政敵である) 沖縄の翁長知事は、初期のスイゾウ癌を切除後、これらの有毒「ケモ」で、3カ月前後に、まんまと暗殺された! もし、翁長知事が手術後、("ケモ"の代わりに) プロポリスを飲み続けていれば、(帽子で「脱毛による禿頭」を隠すことなく) 今頃は根治して、元気はつらつであったはずだ。。。

さて、プロポリスの詳細については、総説を2年ほど前に、雑誌「食品と科学」の特集号 (2017年一月号、食品の機能性研究) に出版した、「プロポリスの科学: そのPAK遮断作用、抗癌作用、老化予防作用、美白作用 および育毛作用について」(丸田 浩 etc 著) を参照されたし。プロポリスの品質や有効成分は、収獲産地により大きく異なり、我々の研究結果では、ニュージーランド (NZ) 産のCAPE を主成分にした Bio 30 (alcohol-free liquid) あるいは Bio 100 (錠剤) が最も薬理作用が強く、日本国内で通販されているプロポリス製品は大部分、Artepillin C (ARC) を主成分とするブラジル産グリーンプロポリス (GPE) で、NZ産に比べて、薬理作用が数倍劣るが、逆に "高価" である。 

沖縄産や台湾産のプロポリスは、Nymphaeols を主成分とし、その薬理作用は、NZ産プロポリスにほぼ匹敵するが、残念ながら、未だ市販には至っていない。 なお、沖縄産プロポリスは、主に「オオバギ」(大葉木) の若芽/果実 (蜜隣) 由来なので、市販のオオバギ茶やエキスなどを煎じて飲むのも選択肢の一つ。

https://news.mynavi.jp/article/20121024-a078/



更に、プロポリス (主にGPE) の臨床例については、講談社出版 「名医74人がすすめるガンに効くプロポリス全書」(石塚忠生著、2001年) を参照されたし。

医療の先進国「ドイツ」では、かなり昔からプロポリスを薬局方に載せ、正式の医薬と認定しているが、何故か日本では、未だに薬局方に載らず、「健康補助食品」扱いのままである。 米国で初めて、プロポリスに抗癌作用が発見されてから既に30年以上経過しているにも拘らず、日本の医薬関係者のプロポリスに対する「無知」と「偏見」の根強さがうかがわれる。。。

2019年1月17日木曜日

「スイゾウ癌」特効薬「15K 」の臨床試験 (フェーズ I ) 計画案

一般に「フェーズ I 」(臨床試験) では、主に「健康者」ボランチアを対象に、検体試薬の安全性 (副作用のないこと) を確認する事を目的にある。しかしながら、抗癌剤などが検体の場合、特定の末期癌に対する実効果をも併せて診るため、「癌患者」ボランチアをも対象にした安全テストも併行させる (2本立て) のが通常である。 特に、「スイゾウ癌」の場合、治療しなければ、余命は3-5カ月に過ぎないので、その試験期間に、検体投与で50%以上生き残れば、検体の有効性は「火を見るより明らか」となる。

そこで、10-15名の健康者ボランチアに加えて、15-20名の末期スイゾウ癌患者で従来の抗癌剤 (例えば、ジェムシタビンなど) に耐性の患者ボランチアを15-20名募集し、計30-35名程度の小規模で、動物 (マウス) 実験で、副作用なしに、実効果がハッキリ確認された 0.1 mg/kg  から 5 mg/kg まで (つまり、ボランチアの平均体重を 60kg として、経口で毎日 6 mg から 300 mg まで) を少しずつ投与量をエスカレートしつつ、その副作用と延命効果を約5カ月に渡って観察する予定。初の治験にできるだけ多くのスイゾウ患者に参加してもらい、(プロポリス「Bio 30」同様) 15K で「長生き」してもらいたい!  勿論、できれば、私自身も「健康者ボランチアの一員」として、この「フェーズ I  」治験にぜひ参加したい。

この小規模の臨床テストに、最大投与量で計算すると、毎日一人当たり 300 mg, 半年で50 g 前後、全体で最低1.5 kg の「15K」 が必須という計算になる。 そこで、この治験開始前に、1.5-5 kg の「15K」大量生産を引き受けてくれる企業を海外 (特に米国) で、目下探している。 費用の概算が出れば、米国のNCI などからの "臨床研究助成金" に、その企業のために応募したい。 勿論、ある大手製薬企業から資金投資があれば、理想的であるが、治験「フェーズ I 」の段階では、余り期待できない。

統合失調症の治療薬「Seroquel」もPAK遮断剤!

1996年に英国第2位の製薬会社「アストラゼネカ」から市販され始めた「セロクエル」と呼ばれる「統合失調症」用の治療薬はどうやら、PAK遮断剤のようである。その根拠は、この薬剤に鎮痛作用、抗炎症作用、抗癲癇作用、抗認知症作用など一連の抗PAK作用が、最近、動物実験で確認されると共に、PAKの下流にある発癌キナーゼERKやAKT などが、抑制されるからである。CNS (中枢神経) 薬には珍しく副作用が殆んどないのも、その特徴である。

10年ほど昔に出版された単行本「新薬誕生: 100万分の1 に挑む科学者」(ロバート=シュック著、ダイヤモンド社) によれば、この薬剤は、動物実験を終えてから、10年間の歳月をかけて、数十億円の投資を費やし、一連の臨床テスト (I, II III) を無事クリアして、市販に到達したものである。 開発から既に30年以上経た現在では、安価なジェネリック薬が発売されているはず。

実は、我々自身のPAK遮断剤「15K 」 の 臨床テストに先立って、いかなる苦労や困難が、市販に向けて待ち受けているかを、ある程度予測するために、この本を参考のために読んでいる。 幸い、アストラゼネカは欧州の大手製薬には珍しく、発癌/老化キナーゼ「PAK」に関心を払い、独自にPAK阻害剤を開発しつつあるが、臨床に応用できるような化合物は未だ見つけていない。従って、「セロクエル」より数十倍ほど作用が強いPAK遮断剤「15K」に近い将来、関心を持ってくれる可能性がある。。。

アストラゼネカ (正確には、その前身であるICI=帝国化学工業) がその昔、乳癌の治療薬として開発した抗癌剤 「タモキシフェン」(TAM) は女性ホルモン「エストロジェン」の拮抗剤である。 しかし、TAM 耐性の乳癌が 3割以上存在する。 10年以上昔、我々はTAM 耐性の主因がPAKの異常活性化にあることを突き止めた。言い換えば、PAK遮断剤で乳癌を治療すれば、殆んど100% 治癒可能である。 更に、TAMの特許は既に期限切れであり、安価なジェネリック薬が巷に横行しているので、TAM は最早アストラゼネカのドル箱ではなくなった。 更に、(一時「薬害」で騒がれた) 肺癌治療薬「イレッサ」の特許期限も最近切れ、本年2月からジェネリック薬の販売が承認される予定。 そこで、副作用のない「15K」を新たなドル箱として、(例えば) アストラゼネカから「独占的に市販」するのは、決して悪くない商法であるに違いない。。。

(注)  アストラゼネカ ( AstraZeneca )は、英国ケンブリッジに本社を置く製薬企業。1999年に英国の大手化学会社ICIから医薬品部門が分離したゼネカと、スウェーデンに本拠を置き北欧最大の医薬品メーカーであったアストラが合併して誕生。抗癌剤で、上皮細胞成長因子 (EGFR) 阻害薬「イレッサ」(一般名:ゲフィチニブ)の承認を世界に先駆けて日本で獲得したが、副作用などが問題となった。その後、ガイドラインの周知を図ることで、イレッサを使い続けることを決定。

日本には現地法人として、大阪市北区大深町のグランフロント大阪内に、アストラゼネカ(AstraZeneca K.K.)本社を置く。また東京都千代田区丸の内の丸の内トラストタワー本館内に東京支社を置いている。ゼネカは旧ICI時代に住友化学(当時は住友化学工業)と合弁でアイ・シー・アイファーマを設立したことがあり、一方のアストラは旧藤沢薬品工業(現・アステラス製薬)と合弁で藤沢アストラを設立したことがあった(いずれも当社の前身にあたる)。

2019年1月16日水曜日

大手製薬会社の競争力 (売上、利益)

日本の大手製薬会社  番付け (2017年の営業利益、億円)

1。武田薬品     (2418)、抗癌剤の開発には無関心!
2。アステラス (2132)、FK228 の市販、抗癌剤「YM155」の治験 (フェーズ II)
3。塩野義         (1152)
4。大塚製薬     (1042)
5。中外製薬     ( 989)、癌の免疫療法 (monoclonal) 市販
6。大日本住友 ( 882)
7。田辺三菱     ( 773)
8。エーザイ     ( 772) 、抗癌剤「レンビマ」(VEGFR 阻害剤) の市販をメルクと提携

海外大手製薬会社 (2018年) 番付け、 2017年の売上高 (兆$ )

1。 ロッシュ* (スイス)       5。7
2。 ファイザー* (米)           5。3
3。 Novartis*   (スイス)       4。9   PAK遮断剤「Gleevec」市販
4。 バイエル (独)                 2。8  (2018年に飛躍)
5。 メルク  (米)                    4。0
6。 GSK (英)                        4。2

15。Astrazeneca* (英)        2。2  PAK遮断剤「Seroquel」市販

20。武田薬品 (日本)           1。7

以上の大手製薬会社中、*独自にPAK遮断剤の開発研究を経験済みの会社は、海外ではRoche、Pfizer、 Novartis、Astrazeneca の4社のみ、日本国内では皆無! 従って、我々のPAK遮断剤「15K 」 に関する「特許権」に関心を持つ可能性のある製薬会社は、今のところ、海外4社のみ。ただし、最近の情報によれば、Roche は既にPAK遮断剤の開発に失望、脱落!  更に、Pfizer は自社のPAK遮断剤が臨床テストで不合格!  従って、残りは NorvatisとAstrazeneca

2019年1月11日金曜日

「魔法の弾丸」 (=特効薬) という概念の源泉

その源泉は、実は「旧約聖書」("創世記"以外は実話!) に載っている羊飼の少年ダビデのパチンコ (投石器、Sling) に遡ることができる。ミケランジェロの有名なダビデ彫像に見るように、このユダヤ人少年は、いわゆる「パチンコ」打ちの名人だった ("正義の味方" ウイリアム=テルやロビンフッドの弓矢に相当する)。元来、この飛び道具は、飛ぶ鳥を落とす狩猟用だった。ところが、ある日突然、イスラエルのユダヤ人部落を、ゴリアテという巨人を主領とする異民族が襲撃してきた。そこで、少年ダビデは、パチンコでゴリアテの眉間を見事に打ち砕いて、部落を守り、その"勇気"と"先見の明"を買われ、成人後にユダヤ人の王様になった。 これが「魔法の弾丸」の歴史的な由来である。

さて、ユダヤ系のドイツ人医者パウル=エーリッヒは、宗教的にはユダヤ教徒ではなかったが、ユダヤ人の伝統を守って、その概念を自分の研究にも導入した。 彼は元々、病理学者で組織染色が得意だった。 1940 年のMGM 映画では、結核菌を発見したロベルト=コッホに促されて、結核菌だけを特異的に染色する方法を編み出し、念願のコッホ研究所に採用されたというエピソードが描かれている。

実は、この結核菌染色中に、(不用意にも) 自分も結核に感染したため、暖かいエジプトの地でしばらく療養生活をせざるを得なくなった。そこで、毒蛇に噛まれた老人が、噛まれる度に、蛇毒に対する抵抗性を増すことに気づき、抗毒性が蛇毒に対する特異的な抗体 (魔法の弾丸) によるものであるという、「新しい概念」(抗体免疫) を発見、それをジフテリア菌などの病原菌に対する抗血清の開発という形で、エミール=フォン=ベーリングと協力して、ジフテリア撲滅に貢献した。ベーリングは1901年に、エーリッヒは1908年に各々ノーベル医学賞をもらった。ちなみに、抗原と抗体の関係は「鍵と鍵穴」という説 (鋳型説) は、エーリッヒの免疫学への最大の貢献である。

しかし、エーリッヒの「魔法の弾丸」作戦は、抗体のみに留まらなかった。 当時世界中に蔓延していた性病 (梅毒) の特効薬を開発する目的で、その病原体である梅毒菌 (スピロヘータ) を特異的に染色するアニリン色素を捜し出し、それに毒素のヒ素を化学的に結合させ、梅毒菌を殺す「魔法の弾丸」(606番目の化合物) をついに編み出した! この特効薬「606」の開発には、伝研から派遺されていた "秦 佐八郎" が動物実験で大いに寄与したことも付記したい。

エーリッヒの「魔法の弾丸」作戦は、我々自身による「PAK 遮断剤」 (15K) 開発作戦にも、奇しくも応用された。 先ず我々は、PAK遮断作用を持ついくつかの既成薬剤を同定した。 その一つが鎮静剤「ケトロラック」である。 しかしながら、この薬剤にはCOOH 基が存在し、標的の癌細胞内に取り込まれ難い。そこで、Click Chemistry という化学反応を介して、水溶性の特殊なTriazolyl alcohol を結合させ、エステル化した。 結果的には、この抗癌エステル (15K) は、原料である鎮静剤の500 倍以上の細胞透過性を示した!  その上、酸性を制したので、「潰瘍」という副作用も除いた。 こうして、「磨き上げた」我々自身の「魔法の弾丸」が誕生した。

この「21世紀の弾丸」は、癌ばかりではなく、各種の感染症、炎症、認知症や癲癇などの脳障害、糖尿病、高血圧など、非常に幅広く、PAK依存性の難病全ての治療に役立つはずである。 エーリッヒ博士も天国で、この新しい「魔法の弾丸」の (近い将来に期待される) 活躍に声援を送ってくれることと、我々は確信している。。。

こうしてみると、絵画 (あるいは組織染色) 的発想と、(魔法の弾丸) 創薬との間には、密接不可分な関係が存在することに、気づく読者も多かろう。。。 エーリッヒ博士の残した有名な言葉がある:  結合せぬ物に、反応なし。 標的に親和性のない(届かぬ) 物は、薬として、先ず不合格。 合格者の中から、最も親和性の高い (  更に標的の機能を強く遮断する) 物を「魔法の弾丸」として、えり抜くコツが大事である。。。

 さて、1950年代の西部劇 (連続テレビ映画) が好きな人は、目に黒い覆面、白馬 (シルバー) に跨り、(ロッシーニ作曲の) 歌劇「ウイリアム=テル」の序曲 (第4部: スイス独立軍の行進) と共に、さっそうと画面に登場する「ローンレンジャー」をご存知だろう。




 インデアンの「トント」と共に、弱気を助け、強気 (悪党) を挫く「キモサベ」の拳銃には、銀の弾丸 (Silver Bullet) が込められている。この弾丸も「魔法の弾丸」の一種である。 アメリカ人との会話には、「その難問題を解決するような "Silver Bullet" は中々ない」と言うせりふがしばしば登場する。 "特効薬" という意味だが、巨人 (ゴリアテ) を見事に倒したダビデの「魔法の弾丸」 (パチンコ) を想起させる。目下、米国の進歩派 (民主党) は、悪党「トランプ」を倒す「魔法の弾丸」を摸索している。。。日本でも、悪党「安倍」を倒す「正義の味方」を探している革新派がいるが、中々見付からない! 沖縄では "スイゾウ癌"  (あるいは「有毒な抗癌剤による」合法的な暗殺?) に倒れた翁長氏に代って、玉城デニー氏が「キモサベ」として活躍している。 小泉進次郎も果して「キモサベ」になり得るだろうか?