2022年3月31日木曜日

"乾癬"の特効薬「Clobetasol Propionate」: PAK 遮断剤!


乾癬 (Psoriasis) と呼ばれる自己免疫 (炎症性皮膚) 病の特効薬として、広く使用されている「Clobetasol Propionate (CP) 」や Betamethasone (BM) と呼ばれる軟膏は、「JAK」 と呼ばれるチロシン=キナーゼの阻害剤である。JAK はPAK の活性化に必須なので、ステロイド系の CPやBM は、ビタミンD3 同様、 "PAK 遮断剤 " の一種ということになる。
最近、我が輩も、この乾癬に悩まされ、右足の足首から膝まで、潰瘍性皮膚の炎症に閉口したので、近所の皮膚科医に相談したところ、CP の 0。05% 軟膏を処方してくれた。お蔭様で、2週間後、ほぼ平常に戻った!
そこで、このCP 軟膏を、NF1 でいわゆる「ブク」(皮膚腫瘍)に悩んでいる患者にもお勧めしたい。朝晩一回ずつ2週間、皮膚の患部に塗ると、ブクが消える可能性がある。。。乾癬は、皮下細胞の異常増殖を伴うから、NF1 ブクに類似している。。。興味深いのは、CP が美白クリームにもしばしば使用されていることから、美白作 用もあるらしい。 実は、 CP は BMの改良版で、 英国 Glaxo により、1968年に特許、10年後の1978年より市販されている。 現在は「ジェネリック」製品が安価に出回っている。 なお、合成ステロイドより、天然物をお好みの患者には、Cucurbitacin というス テロイド (やはり、JAK阻害剤) を含むゴーヤのエキス (煮汁) を、お勧めします。ゴーヤは食品なので、経口可能であり、NFに伴う脳腫瘍にも効くはず。

2022年3月27日日曜日

老人の昔話: 自ら体験した 2人の "数学教師" の功害

片足を棺桶に突っ込んだ老人が、中高校時代を回顧して一筆 (生徒側から見た教師のあり方)
http://www.3to4.com/okada/book/mainiti.html
我が母校 (日比谷) で、28年ほど数学教師をやっていた風変わりな O氏 (東大出 身、79歳) が、20年ほど昔に、とうとう他界したのを、ごく最近知った。彼に対する 評価は (生徒個個人によって) かなり「まちまち」だが、我が人生にとっては、 「最悪」の数学教師だった!
(我が輩の記憶が正しければ) 高校2年次の初めの頃 (1950年代末) だった。 ある土砂降りの朝、 彼の数学の授業に初めて、5分ほど遅刻した。原因は、(赤坂見附までの) 地下鉄 か (渋谷駅までの) 東横線が事故のため、遅滞したからだ。 当時、大田区の外れ から、千代田区にある、この母校まで、電車を2度乗り換え、通学にタップリ一時間以上か かった。しかしながら、O先生曰く 「遅刻した者は、どんな理由であれ、廊下に 立っとれ!」。今なら、明らかに「パワハラ」だ!
当時、日比谷では、どんな科目でも授業時間が (60分ではなく) 100分間だった! だから、我が輩には、残り時間95分を、廊下で過ごすのは、全く馬鹿げていた ので、ゆっくりトイレを済ませてから、三階 (屋上) にある図書室で、読書を楽 しんだ。 その日の我が輩に関する出欠は、「遅刻」ではなく 「欠席」となった!
以来、我が輩の数学に対する「情熱」はみるみる薄れ、(他の数人の同級生と共 に) 何度か追試を受ける結果になった (幸い、留年は何とか免れたが) 。(理系の ) 大学受験では、(当然のことながら) 数学が「アキレスけん」になった。しかし ながら、長い目でみれば、我が輩の医化学研究に限っては、高等数学は全く不用 で、(義務教育で学ぶ) 「算数」 (四則計算) で十分だった!
さて、中学の数学教師 (田中恒夫、西高-教育大出身) は、我が人生の「最高」の教師 だった。一年次の担任教師でもあったが、卓球の選手 (都内の教師仲間で「ナン バーワン」!) で、放課後、(貧乏な区立中学で、未だ体育館が未だなかったので )、教室の椅子や机を片端に寄せて、折り畳み式の卓球台を廊下から引き入れ、 教師を相手に打ち合いを楽しんだ。 実は、我が輩は小学4年次に「小児結核」で半年休学し、「九死に一生を得て」復学 後、体操の授業はいつも、卒業まで見学だった。だから、中学に入学するまで、ま ともなスポーツができなかった。 我が輩にとっては、担任教師との卓球練習は正に「救い」だっ た! 愛称「ツーさん」(田中先生) は引退後、江ノ島/鎌倉に住んでいると聞いている が、未だ存命ならば、90歳近い。。。
実は最近、偶然にも、都立西高の卓球部のサイトに巡り合い、我が中学時代の恩師 (ツーさん) が、今年1月に90歳で亡くなったことを知った。 長らく"西高の卓球部" (西卓) の会長だった! できれば、1-2年中に、故田中恒夫先生に関する文集「数学と卓球」を、我が「七中」 の卒業生や「西卓」の有志たちと共に、編纂してみたい、と思っている。。。
さて、高校三年次に同級だった親友 T 君 (東大理学部出身) の記憶によれば、 (高校)一年次の数学担当は、 例の O 氏だったそうで、入学早々大変嫌な気持ちを味わったという。誰もがそう 感じつつ、授業中、時計を時々見ながら、早く終わらないかと終業ベルをじっと待っていたそうで ある。 特に、数学が2時間目の場合には、ベルが12時半頃に鳴る。 すきっ腹に、校内放送 のモーツアルト「Eine Kleine Nachtmusik」の懐かしいメロディーが流れてくる と、少なくとも我が輩は、救くわれた気持ちになった! 因みに、O氏は、生徒の出欠をとった後、黒板に向かって、数式をかき並べ、 我々には背中 (あるいは尻) を向けたまま授業し続ける「生徒との対話が乏しい」 タイプだった。。。
当時 (T君と) 同級だった H君(男性)とKさん(女性)がやはり遅刻して、O氏 に「遅刻届を出せ」と言われ、手持ちのルーズリーフに、自己流の遅刻届を書い て渡したところ、「遅」の字が二人とも間違っていると言われ、図書室へ行き、 調べてくるように言われ、約15分後に訂正版を出したら、許してくれたそうだ。 明らかに、女生徒には甘い! 後日談: この男女二人は、それ以来、互いに親しくなっ たそうで、めでたしめでたし!
我が輩の場合は、遅刻届けなど、請求されなかった。明らかに (教育) 方針を改悪したようだ。我が輩にとっては、O氏は、教師としては、明らかに「失格」だ! もっとも、H と K の場合には、「仲人役」を演じたという、思わぬ副 産物をもたらした! O氏にも、一時「婚約者」がいるという噂が立ったが、結局、 フォルクスワーゲンの小型車 (Bug) と結婚して、独身を選んだという、有名なエ ピソードも残っている。 我が輩の記憶が正しければ、高校へ"マイカー"で通勤していたのは、当時、O氏独り だった。。。都心の"空気汚染"が騒がれている折、都心でマイカーを運転するのは、「エゴ」の塊まり以外の何者でもない!
不思議にも、O氏による長年に渡る「数学」妨害にも拘らず、我が母校 は、当時毎年200名近い生徒が東大に進学し続けた。ところが、1967年頃、「小尾」 教育長が突然、「学校群」なる制度 (別名、日比谷下し) を強行するなり、「日 比谷」が瞬く間に凋落し、東大への進学者が、とうとう「〇」になった! これも信じ難い! 悪党 "小尾乕雄"氏も既に故人になったが、都内の私学「開成」や「麻布」から送られた「刺客」(Tiger) という異名を持つ。。。

2022年3月25日金曜日

2022年: 女子プロテニス (WTA) ランキング
トップのアシュ=バーティー (豪、 25歳) が結婚のため「引退」! 2位のイガ・シフィオンテク (ポーランド、20歳) が (白鷹の如く) トップに踊り出る!

バーティー は、全米、全英、全豪を各々制覇。 シフィオンテクは全仏を昨年、初 めて制覇。 目下、 "11連勝" の快進撃! ポーランド女性がテニス界でトップになったのは、史上初。ラジウム発見のマリー =キューリー夫人 (ポーランド生まれ) が、1903年、1911年にノーベル賞をもらって以来の快挙! なお、全米 (2)、全豪 (2) 制覇の大坂なおみは、精神面の動揺/不安定か ら、トップから大きく転落して、目下 76位に低迷。。。 "カムバック" を期待する!
なお、ロシアの独裁者「プーチン」によるウクライナ侵略のため、300万以上のウ クライナ難民 (主に、女性と幼児) が、隣国へ避難中だが、その難民の半分をポー ランド住民が快く引き受け、最近注目されている。

2022年3月24日木曜日

2022年: 東大合格者 高校ランキング

勿論、開成 (192名) が依然トップだが、(我が母校) 日比谷が63名で、8位に躍進! 私学御三家の一角 (麻布、62名) をとうとう崩す。 公立2位は、横浜の翠嵐 (52名 )。
(日比谷の) 次の目標は、私学2位の灘高 (92名) を凌駕すること。しかしながら、 (募集学区が「都内のみ」に限られたままでは) 100名の大台を越すのは中々難 しい。。。上位の私学や国大付属は全て、全国 (都内の人口の10 倍) から受験生 を募集しているからだ。 「旧制一高」のごとく、(公立も) 全国から募集できる 日が訪れることが、自然かつ望ましい。。。あと10年以内 (我々 "老木" 世代 に残され た寿命の限界) に、それが果して実現されるだろうか?

今では信じ難たいことであるが、60年近く昔には、都内のたった 4区 (千代田、港、品川、大田 ) のみから募集されていた「日比谷」(実は、他県からの「越境組」も含めて、一学年 男女400名) で、上位200名以内にあれば、2浪すれば、("貧乏" 学生でも) 東大に楽々進学できた "夢の如き"(昭和) 時代 があった! 今は、貧乏人にとっては 「東大」は文字通り「高嶺の花」or「狭き門」(針の穴) !

2022年3月19日土曜日

睡眠ホルモン「メラトニン」はPAK遮断剤である!
決定的な証拠: 癌細胞による「PD-L1 」発現を阻害

松果ホルモン「メラトニン」(睡眠剤) が天然のPAK遮断剤ではあるまいか、という 一連の間接的な証拠 (美白作用、抗癌作用、抗炎作用、延命作用など) が幾つか、 かなり以前から上がっていたが、決定的な科学的証拠がなかなか出てこなかった。 ところが、ごく最近になって、台湾医科大学の研究グループによって、メラトニ ン (IC50=1 mM) が (ポマリドマイド同様)、 "RAS" 肺癌細胞による (PAK依存性の) 「PD-L1 (PD-1のリガンド) 発現」を抑えることが、証明された (1)!
前述したが、2019年に、我が輩は「PD-L1の発現には、PAKが必須である」という、生化 学的な証拠を幾つか挙げてから間もなく、メルボルン大学病院の賀紅 女史 (我が 輩の昔の研究相棒) のPAK研究グループが、PAK遺伝子を欠損したマウスでは、PD-L1の 発現が殆んど無くなることを実証した (2)。 従って、「メラトニンがPAK遮断剤 の一種」であることに、疑いの余地が全くなくなった! 言い換えれば、脳由来の ホルモン「「メラトニン」がNFなどの脳腫瘍や認知症などの難病の治療にも有効 であることも確実である。
誠に残念なことは、海外では、メラトニンが極めて安価 (3-5 mg 錠、25-50円) に入手できるにも拘らず、 日本国内では、販売も輸入もかなり昔から、インチキな「日本薬事法」によって 禁止されている。主な理由は、武田薬品がメラトニン類似物 (ロゼレム錠、2010年に発売開始、 8 mg 錠=86 円) を日本国内で、「独 占的に販売」しているからである! こういう 「企業本位」(患者の福祉を無視した) 「薬事法」 は医療界から即、追放すべきである!
我が輩は薬事法全体を非難しているわけではない。 ある特定の製薬大企業のよる「市場独占」を禁止せよ、と主張している。「メラ トニン」の大部分は今日、アミノ酸 (トリプトファン等) から簡単に (しかも安 価に) 化学合成されている。従って、「武田」以外の企業にも等しく、"自由競争" のチャンスを与えるべきである! "自由競争" は、消費者に「良質」かつ "安価な商品" を提供するからである! 日本の「薬事審議会」は、政府自体と同様、大企業がばらまく金によって「腐敗」 し切っている!

参考文献:
1.Yi-Chun Chao , Kang-Yun Lee , Sheng-Ming Wu et al (2021). Melatonin Downregulates PD-L1 Expression and Modulates Tumor Immunity in KRAS-Mutant Non-Small Cell Lung Cancer. Int J Mol Sci; 22(11):5649.
2. Wang K, Zhan Y, Huynh N, Dumesny C, Wang X, Asadi K, Herrmann D, Timpson P, Yang Y, Walsh K, Baldwin GS, Nikfarjam M, He H (2020). Inhibition of PAK1 suppresses pancreatic cancer by stimulation of anti-tumour immunity through down-regulation of PD-L1. Cancer Lett.;472: 8-18.

2022年3月18日金曜日

ダーウインがやって来た!: 豪州北端で 100 歳の 雄亀 を救出、 リハビリ後、太平洋に 再び 放出 (解放) !

大岩亀 (雌) の長寿 (175-180歳) は、幾つか前例があるが、 平亀 (雄) が100歳 まで生き抜く例は、極めて珍しい! さて、最近、豪州の北端、ダーウインの海 岸近くで、背中が平らな「平亀」の雄で、潜水が出来なくなって海面に浮かんだ まま漂っていた老亀 (100歳、愛称OLD MAN) が住民たちにより発見、救出され、チャール ズ=ダーウイン大学の海洋研究所で、しばらくリハビリを受けていたが、ようやく 体力を回復し、再び (餌を求めて) 潜水ができるようになったので、 海へ解放 された。 我々の世代 (80歳) もこの老亀に勇気づけられて、時々 "リハビリ" を受けつつ、あと10年 ほど生き抜こうと頑張っている。。。

2022年3月9日水曜日

ポマリドマイド: PD-L1 遺伝子の発現を抑えるPAK 遮断剤

サリドマイドの (奇形を起こさぬ) アミノ誘導体 "ポマリドマイド" (POM、 MMの特効 薬) の抗癌作用に関する文献を詳しく調べている内に、極めて興味深い文献を 一つ見つけた。 米国コロラド大学の研究グループによる2018年に発表した論文 (1) に よれば、POM 自体が何と、免疫チェックポイント (免疫細胞の抗癌作用を破壊する )、PD-L1 (PD-1 のリガンド) 遺伝子の発現を、強く抑える (IC50=1 micro M)、 つまり PAK遮断作用がある、ことが判明した! PD-L1 の発現がPAK依存であるこ とを、我が輩は2019年に初めて提唱した (2) が、間もなくメルボルンの "昔の相棒" であ る賀 紅女史 (メルボルン大学病院) によって、(PAK 遺伝子欠損のマウス株を使用して) 遺伝学的に証明された (3) 。 従って、PD-L1 発現を抑えるものは、(詳しいメカニズムは別としても) 即、「 PAK遮断剤」 であることは自明!
本庶さん (京大) と共同で小野薬品が開発した "抗癌" モノクローナル製剤 (オプシーボ ) は高価 (1割自己負担でも、月額約30万円! いわゆる「禿鷹」製剤) なので、 我が輩自身は、より安価でしかも安全な「POM」(Celgene 販売、4 mg 錠剤)、あるいはノーベル賞 (2015年) に輝くPAK遮断剤「イベルメクチン」(米国メルク販売) を、 むしろ勧めたい。。。 少なくともマウス実験では、「POM」は "BBB" (血管脳関門) を通過するので、脳腫瘍の治療にも有効であるはず。。。

参考文献:
1. Yuki Fujiwara, Yi Sun, Robert J Torphy et al (2018). Pomalidomide Inhibits PD-L1 Induction to Promote Antitumor Immunity. Cancer Res. 78: 6655-6665.
2. Maruta, H (2019). Breakthrough: PAK1-dependent expression of PD-L1 (programmed death ligand). - Integrative Molecular Medicine 6. 353.
3. Wang K, Zhan Y, Huynh N, et al (2020). Inhibition of PAK1 suppresses pancreatic cancer by stimulation of anti-tumour immunity through down-regulation of PD-L1. Cancer Lett.;472: 8-18.

2022年3月6日日曜日

PROTAC: 発癌 (病原) 蛋白を特異的に分解/
消滅させる新しい化学療法 への挑戦!

Proteolysis Targeting Chimera (PROTAC) 工学開発の歴史は、実はかなり古く、 2001年に遡る。 米国の CalTech のグループによって、初めて提唱された新しい 「抗癌」作戦である (1)。 それが20年近くの歳月を過ぎて、臨床で実際に治療効 果が出つつあるという、中国発のレビューが最近出版された (2) ので、それを手 短かに紹介したい。
実は、キメラ分子ではないが、2015年にノーベル医学賞 に輝いた駆虫剤「イベル メクチン」が 「PAK遮断剤」である事を、2009年に我々が初めて突き止めた (4) が、 数年後 (2016年) に、中国の四川大学グループ (黄灿华教授 etc) によって、この駆虫剤が、PAKの「ユビキティ ン (Ubiquitin) による蛋白分解」を選択的に促進することが、明らかにされた (3) 。 従って、(理論的には) 特異的な 「PAK分解メカニズム」を介して、抗癌ばか りではなく、(ダウン症、認知症、NF などを含めて) 凡ゆる「PAK依存性難病」を 克服することができる。
一口に言えば、右図の 「キメラ」分子 (PROTAC) には、標的蛋白に結合する (右 手、正方形) とプロテオゾーム (蛋白分解酵素) に結合する (左手、三角形=疎水性環状、例えば「サリドマイド」など) を 介して、基質と酵素を結びつけ、ユビキティン化により、(病原蛋白、例えば"PAK" 等) の分解を促進する。 従って、正方形の部分が親水性でないと、PROTAC 分子全体が疎水性 (水に不溶) になり、吸 収性の悪い製剤となる! イベルメクチン (環状のラクトン=マクロライド) の場合は元来、分子中に「PAK結合部」と「プロテオゾー ム結合部」が同時に備わっていると考えられる。
参考文献:
1.Kathleen Sakamoto, Kyung Kim, Akiko Kumagai, Frank Mercurio, Craig Crews, and Raymond Deshaies (2001). Protacs: Chimeric molecules that target proteins to the Skp1–Cullin–F box complex for ubiquitination and degradation. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Jul 17; 98(15): 8554–8559.
2. Si-Min Qi, Jinyun Dong, Zhi-Yuan Xu , et al (2021). PROTAC: An Effective Targeted Protein Degradation Strategy for Cancer Therapy. Front Pharmacol. ;12: 692574.
3.Autophagy. ;12: 2498-2499. Ivermectin induces PAK1-mediated cytostatic autophagy in breast cancer Kui Wang, Wei Gao , Qianhui Dou et al (2016).
実は、「イベルメクチン」にPAK遮断作用があることに、気づいたのは、極めて "偶 然" の結果だった。 2007年にボルチモア滞在中、線虫のPAK遺伝子欠損株が、野生 株に比べて、産卵数がひどく少ないことに、先ず気付いた。 野生株をプロポリス などのPAK遮断剤で処理すると、全く同様な結果 (少子化) が出た! その後、 豪 州メルボルンに戻って、郊外にある大学で、線虫を扱っている旧友の研究室に立 ち寄った折、彼らが NZ (滞在) 時代に発表した古いポスターを何気なく眺めていた瞬間、「イベルメク チン」が 「致死量」以下で、PAK遮断/欠損と全く同じ現象 ( (少子化) を示すこ とに気付いた! そこで、2009年に兵庫県の癌研と共同で、イベルメクチン= PAK遮 断剤を、癌細胞を使用して、直接実証した (4)。
4. H Hashimoto, S M Messerli, T Sudo, H Maruta (2009). Ivermectin inactivates the kinase PAK1 and blocks the PAK1-dependent growth of human ovarian cancer and NF2 tumor cell lines. Drug Discov Ther. ;3: 243-246.
我々は、2003年頃に、「AG 879」と呼ばれる化合物がPAK の上流にあるチロシンキ ナーゼ「ETK」 を特異的に阻害することを発見した (IC50=5 nM)。更に、「PP1 」 と呼ばれる 化合物が、主にPAK の上流にあるチロシンキナーゼ「FYN」を特異的 に阻害し (IC50=10 nM) 、これら2種類の化合物を併用すると、スイゾウ癌などの 増殖が完全に抑えられることを、マウスで確かめた。 しかしながら、両化合物共、 (残念ながら) 水に不溶なので、臨床には応用しかねるため、各々の「水溶性」誘 導体、「GL-2003」 と「PP12」を、隣接するWEHI の有機化学チームと共同で開発 し、US特許を得た。 さて、最近、PROTAC に関するレビューに啓発されて、これ ら "水溶性かつ細胞透過性の高い" 誘導体に各々、例えば、サリドマイド (あるいは、奇形を誘導しないアミノ誘導体=ポマリドマイド) を連結させ、「イベルメクチン」より強力な、新しい PAK遮断 "PROTAC" (PAK Proteolysis Chimera, PPC) の合成を目下企画している。 実は、サリドマイド自体にも (弱いが) PAK遮断作用があり、癌の増殖/転移/血管新生などを抑えることが知られている。。。 サリドマイドを妊婦が服用すると、いわゆる「奇形児」が誕生し易いが、妊婦以外 には、副作用は全くない!
目下、PAK を遮断する「PROTACs」 に関する短評を英国の医学雑誌 (Drug Discovery Today) に投稿中:
Ivermectin and Pomalidomide: PAK1-blocking PROTACS (Proteolysis Targeting Chimeras) available in the healthy drug market.
なお、帝京大(薬) の橘高教授によれば、彼の東大 (薬) 時代の同級生 (内藤幹彦 博士) が日本では、「PROTAC」 の草分け (2011年以来) だそうで、最近、東大 (薬) の特任教 授に就任し、製薬会社「エーザイ」とのPROTAC (Sniper) 共同研究を進めている そうである。

2022年3月1日火曜日

ダウン症の要因: DSCAM 分子によるPAK の異常な活性化
従って、PAK遮断剤により、知能の回復はある程度可能

ダウン症 (DS, Down syndrome) とは、染色体21 (ヒトでは、最小の染色体) が (通常は一対=2本に反して ) 3本になったため (約800 人に一人の割合で) 発生する 遺伝子病の一つであり、 認知症に似た「学習能力の低下」現象をもたらす。 更に、平均寿命が未だに60歳を越えない! さて、 この染色体上には、 2000年のヒトゲノム研究 (塩基配列決定) 結果によれば、多数 (正確には、約200-250 個、ヒト遺伝子全体の1。5%に当たる) の遺伝子が存在するが、その内で、学習能 力の低下に関与する遺伝子産物は、主に、「DSCAM」と呼ばれる神経細胞膜貫通の 「ネットリン (NT) 受容体」と、その細胞内の足に結合する"PAK" と呼ばれる病 原キナーゼらしいことが、実は、2004年頃、既に、中国の研究者によって、明ら かにされていた。
しかしながら、DSCAM-PAK シグナルが、如何に学習能力に影響するかが、長らく 不明のままだった。 さて、2021年になって、ようやく、中国 (南京医科大学など) の臨床研究グループ によって、PAKを遮断すると、ダウン症患者の学習能力が改善されることが明らか にされた (1)。 ダウン症の症状は、実は複雑で、学習能力の低下ばかりではなく、高血圧、そ の他 (自閉症と違って、例えば、「社交的」、「快活」という明るい面も含めて ) 多数の 「フェノタイプ」 (性格) があるが、少なくとも、血圧、学習能力 (及び寿命 ) に関しては、PAK遮断剤の経口によって、ある程度、改善が可能である、ことを 明記したい。。。しかしながら、逆に「DSCAM 遺伝子」を欠如したマウスでは、 「自閉症状」 (社交性欠如) を呈する (2) ので、この遺伝子は人類社会では、最小限「一対は必要」 なようである。。。もっとも、PAK遺伝子は、社交には必ずしも必要ないようであ る。
さて、従来、ダウン症の治療に、血圧降下剤の一種である「タウリン」という天然 アミノ酸が使用されていた (毎日 6 グラム 経口) 。アミノ酸 と言っても、アミ ノ基はあるが、「カルボン酸」が、硫酸基に置換されている。メチオニンやシス チン等のSH基のあるアミノ酸の代謝 (酸化) 物として、人類や犬の体内に存在するので、 いわゆる「必須アミノ酸」ではない (ただし、猫や魚では、合成酵素に乏しいので、必須アミノ酸!)。PAK遮断剤は、血圧を降下させる作用がある から、「タウリン」もPAK遮断剤である可能性がある。そこで、先ずタウリンの抗 癌作用を確かめてみた。 PAK依存性の「A549 」 と呼ばれる肺癌細胞株の増殖を、 タウリン (IC50=20 mM) が抑えることが既に報告されていた。 更に、 PAK依存性のメラニン合成に対するタウリンの作用について、文献調査をしたところ、2010年 に韓国の研究グループが、タウリンの美白 (メラニン合成阻害) 作用を、実 証していた (3)! 従って、「タウリンが天然PAK遮断剤である」ことは、確実。ただし、鎮痛剤アスピリンや (乳酸飲料) "カルピス" 中の酪酸と同様「細胞透過性がかなり悪い」ので、プロポ リスやフコイダン、ビタミン D3 やビタミン K2 (納豆) などに、置き換えた方が、 賢明
参考文献:
1. Tang XY, Xu L, Wang J, et al (2021). DSCAM/PAK1 pathway suppression reverses neurogenesis deficits in iPSC-derived cerebral organoids from patients with Down syndrome. J Clin Invest. ; 131: e135763.
2. Peng Chen, Ziyang Liu, Qian Zhang et al (2022). DSCAM Deficiency Leads to Premature Spine Maturation and Autism-like Behaviors. J Neurosci. ;42: 532-551.
3. Ji Sun Yu , An Keun Kim (2010). Effect of combination of taurine and azelaic acid on antimelanogenesis in murine melanoma cells. J Biomed Sci. ; 17 Suppl 1: S45.
蛇足ながら、発生学的には、DSCAMは、免疫グロブリンファミリーに属する脳特異 的な蛋白で、前述したが、細胞の「自他の認知」に関わるいわゆる「self-marker 」の仲間に属し、蜜蜂、ショウジョウバエ、線虫など、脳を保有する凡ゆる動物 に存在する。