2016年11月21日月曜日

ポポー由来の抗癌剤 「アセトゲニン」も、PAK遮断剤!



ポポー (アケビガキ) の葉っぱには、毒 (アセトゲニン) があり、害虫が付き難いので、(農薬なしで) 有機栽培ができるという面白い情報を最近得た。 実は
最近、メルボルンの自宅で、"ポポー" 栽培を試みる計画を立てている。
そこで、ついでに、アセトゲニンの薬理作用を文献で調べてみた。

先ず抗癌作用があることが判明した。次に、その抗癌メカニズムを探ってみると、2012年に、北京にある中国科学アカデミーのグループによって、アセトゲニン類似体 (AA005) が抗癌キナーゼAMPKを活性化すると共に、発癌キナーゼTORを抑制することが明らかにされていることがわかった (1)。前述したが、AMPKを活性化する天然物は、例外なくPAKを遮断する。従って、アセトゲニンもPAK遮断剤の一種であることはほぼ間違いない! 更に、(PAK遮断剤であるイベルメクチンと同様) アセトゲニン類似体が癌細胞に「オートファジー」を誘導することも判明した。


(固形腫瘍の増殖に必須な) 血管新生にはPAKによって誘導されるVEGFの産生が必須である。(「PawPaw Cell-Reg」由来の) アセトゲニンはVEGFの産生を抑えることによって、血管新生を抑制する (2)

驚くなかれ、豪州では、「PawPaw Cell-Reg」と呼ばれるポポーエキスの錠剤が健
康補助食品と通販されている。
"目から鱗" である!


ポポーは何故か、俗に 「貧乏人のバナナ」 と呼ばれている。 実際には、(キロ当たりにすると) バナナよりも少し高価  (250円前後) である。 しかし、バナナは薬にはならないが、ポポーエキスは自家製ならば、安価な ( "貧乏人向け"の) 抗癌剤になりうる! パパイヤの果実はポポーに良く似ているが、葉っぱや幹にはアセトゲニンは含まれていないそうである。
  

 参考文献;

  1. Liu YQ1, Cheng X, Guo LX, Mao C, Chen YJ, Liu HX, Xiao QC, Jiang S, Yao ZJ, Zhou GB. Identification of an annonaceous acetogenin mimetic, AA005, as an AMPK activator and autophagy inducer in colon cancer cells. PLoS One. 2012;7(10): e4704
  2. Veena Coothankandaswamy, Yang Liu, Shui-Chun Mao, J Brian Morgan, Fakhri Mahdi, Mika B Jekabsons, Dale G Nagle, Yu-Dong Zhou. The alternative medicine pawpaw and its acetogenin constituents suppress tumor angiogenesis via the HIF-1/VEGF pathway. J Nat Prod. 2010 ;73(5): 956-61.

2016年11月19日土曜日

「Click Chemistry」 に基づく薬効の飛躍的な増進!


プロポリス中のARCCA分子中にはカルボン酸が含まれ、燐脂質からなる細胞膜の透過性を妨げている。しかも、CAのカルボン酸を中和したエステル誘導体であるCAPEもあまり細胞透過性がよくない。そこで、これら一連の酸性化合物の細胞透過性を大幅に高める工夫を最近始めた。まず、考え付いたのは、このカルボン酸に水溶性のTriazole環を付加することである。21世紀初頭に米国サンディエゴにあるスクリップ研究所のBarry Sharpless 教授 (2001年にノーベル化学賞受賞) が「クリック化学」という化学反応を考案した、銅を触媒とする反応で、Triazole 環を収率よくカルボン酸などにカップリングする方法である。その方法により、(水溶性を保ちながら) 酸性を中和することができる。クリック化学」めて創薬応用したのはインドの研究グループだったローズマリーの葉由来酸性ステロイドであるウルソール酸」のカルボンTriazole 中和することによって、抗癌作用200めることに成功した 

この論文むや、徳島大学宇都教授にメールをってARCCAなどのPAK遮断剤のトリアゾリル着手した20156月末「HT156」というARC誘導体 (商標「15A) 合成された。幸15A抗癌作用ARC100倍近くあることが判明したそこでCAのトリアゾリルにもその抗癌作用400倍以上めることに成功した。更スイスの製薬会社ロッシュ販売抗炎症剤 (鎮痛剤)であるケトロラックPAK遮断剤であることが判明したこの薬剤にもカルボン付加しているそこでロッシュに一連Triazole 環誘導体特許むためにケトロラッククリック化学」にも着手したこのエステル (15K) 抗癌作用及PAK遮断作用、何とケトロラックの500倍以上あることが判明した ("ギネス記録"である) 2016には、韓国釜山にある東亜 大学安木蓮さんと共同ニワトリの受精卵使って15K (固形腫瘍増殖必須) 血管新生えることを証明した臨床テストを踏まえた、マウスを使う多角的な動物実験 をまもなく開始する予定である。

ウルソール酸とケトロラックの根本的な (市場価値の) 違いは、後者は化学合成が容易だが、前者の化学合成に成功した者は未だいないことに基づく。製薬会社は化学合成が可能な化合物にしか関心を示さない。そして、製薬会社が興味を示さなければ、その薬品は決して市販されない (つまり、患者の手に届かない) 従って、ウルソール酸エステルには、市場価値がないから特許出願さえもされていないが、ケトロラックエステル (15K) を含む我々の特許には、底知れぬ市場価値がある。特に、ケトロラックを「トラドール」という商品名で30年近く抗炎症剤/鎮痛剤として販売してきた実績を誇る「ロッシュ」にとっては、莫大な価値があるに違いない。

ちなみに、15Kの抗癌作用は「最強のプロポリス」(Bio 30) の千倍にあたる「超優れ物」である!  BBB (血管脳関門) を通過するはずなので、脳腫瘍や認知症の治療にも将来、活躍するだろう。

もし、ロッシュなどの製薬会社によって、例えば「15K」が将来、抗癌剤として市販されるようになれば、「クリック化学」の威力 (創薬への貢献度) が再認識され、発明者Barry Sharpless 教授が「第2のノーベル賞」に輝く日が来るだろう。 


参考文献: 

Binh Cao Quan Nguyen, Hideaki Takahashi, Yoshihiro Uto, MD. Shahinozzaman,  Shinkichi Tawata, Hiroshi Maruta. 1,2,3-Triazolyl ester of ketorolac: A “Click Chemistry”-based highly potent PAK1-blocking cancer-killer. Eur. J. Med. Chem. 126C (2017), 270-276.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S022352341630976X