2021年4月30日金曜日

コール (石炭) タールから "アニリン染料" (MB etc) ,
更に "化学療法剤 " (サルバルサン 等) の開発

19世紀の中頃 (1856年)、産業革命の最中、 石炭の廃物 (コールタール) から「アニリン」と呼ぶ有機アミンを発見した若者がいた! その発見により、世界 (欧州) の染料界に「大革命」が起こった。発見者は、英国のロンドンのイーストエンドに住む18歳の早熟な学生、ウイリアム=パーキン (1838-1907) だった、 彼は自宅の屋根裏部屋に、小さな化学の実験室をもっていた。
さて、イースター (復活祭) の休みに、王立化学大学のアウグスト=ホフマン教授の指示に従い、コールタールを分離蒸留して得られる様々な有機物の中から、アミン (NH2) を含む化合物を分析していた。 というのは、当時、マラリア特効薬として天然物の「キニーネ」が知られていたが、このキニーネ分子には、2個の窒素が含れていた。 そこで、 コールタールからマラリア特効薬になるような化合物を見つけ出すことが、当初の目的だった。パーキンが見つけた化合物は、ベンゼン 環にアミンが一個付加した単純な「無色」の物質だった。それを「アニリン」と名付けた。
更に、マラリアの特効薬であるキニーネを合成しようと、アニリンを酸化する反応を試すうち、偶然、紫色の染料(モーブ=藍)を作り出した。彼は資産家であった父親を説得し、この染料を作る工場を設立した。これが、以後、数百種類製造されることになる合成染料の第1号!
さて、その後20年経って、スイスのバーゼルにあった「CIBA」の前身 (BASF) の有機化学者、ハインリッヒ=カロ (1834-1910) により、アニリン誘導体に、硫化水素を加え、鉄イオン等を触媒にして、メチレンブルー (MB) なる新しい青色染料が合成された。 2年後 (1878 年) には、上司アドルフ=フォン=バイヤーと共に、天然の「インディゴ」という青い染料の「有機合成」 にも、初めて成功した。 1909年に、梅毒の特効薬 「サルバルサン」がドイツの「パウル=エーリッヒ」(1854-1915) によって、アニリン色素にヒ素を結合させて合成され、最初の「化学療法剤」が開発された! 戦争中 (1943年頃) にスウエーデンの有機化学者により開発された結核の特効薬 「PAS」(p-Amino Salicylate) もアニリンの誘導体である。 敗戦直後、私自身を含めて "我が世代" (70-80歳代) は、「PAS 」のお蔭で命拾いをした!
それから半世紀ほど経った、1999年頃に、英独仏の国際チームが、漢方薬で「慢性骨髄白血症」(CML) の治療薬として古来から知られている「青染インディゴ」の抗癌有効成分「インディルービン」が発癌キナーゼ「CDK」 の阻害剤であることを発見した。 こうして、アニリン染料が抗癌剤などとしても、注目され始めた。。。しかしながら、今世紀に入って、スイスのNovartis (Ciba-Geigy と Monsato の合弁会社) が "CML" の特効薬として、Gleevec を市販した。このGleevec はチロシンキナーゼ (ABL, PDGFR, KIT 等) に対する阻害剤で、副作用が殆んどない。 アニリンの誘導体ではあるが、無色。
もし、MB がせんちゅうの寿命を延ばすことを証明できれば、 MB が、恐らく史上初の市販「健康長寿色素」 (染料) となるだろう。そこで、若者諸君の発奮を大いに期待したい!

2021年4月25日日曜日

メチレンブルーがCOVID やマラリア感染を抑える!
認知症、ALS 、脳腫瘍などにも効く "PAK 遮断剤" !
従って、「健康長寿」にも役立つ可能性あり!

メチレンブルー (MB) は酸化型で青色、還元されると無色になる。従って、天然還元剤の一種であるビタミン C (Ascorbate) と混合すると、無色になる。
さて、 つい最近、MB がCOVID 感染を強く抑えることが、南仏のモンペリエの研究グループによって、報告された。 しかも、Hydroxychloroquine (HQ) よりも強力である (IC50=0.3 micro M) ことが判明し、学界で注目されつつある。
Mathieu Gendrot, Julien Andreani, Isabelle Duflot,et al. Methylene blue inhibits replication of SARS-CoV-2 in vitro. Int J Antimicrob Agents. 2020 ; 56(6): 106202.

MB もHQ もマラリア感染を抑えることが、昔から知られていた。 さて、これらの感染症がPAK依存性であることから、MB もHQ 同様、PAK遮断剤である可能性が浮かび上がった。 更に、せんちゅうで、(PAK依存の) 認知症 (タウ蛋白の燐酸化及び凝集) を抑えることも知られている。 数年前には、「ゼブラフィッシュ」という小さな魚を実験検体にて、MB (0.5 microM)では、魚の記憶を向上することが発見された。ただし、その10倍の濃度では、効果がなかった (何でも、「食べ過ぎ」は駄目! ) 。 さて、人体実験では、経口 4 mg/kg (体重 60 kg なら 240 mg MB) は記憶を有意に向上させるが、10 mg/kg では、逆効果になるという。 かなり微妙。。。
英国ケンブリッジ大学の有名な理論物理学者スチーブ=ホーキンス博士 (1942-2018) は、 ALS (筋萎縮性側索硬化症、俗称: ルー=ゲーリック病) という難病のため、学生時代以来、全身が殆んど麻痺していたにも拘らず、一生学問を続け、宇宙やブラック=ホールに関する有名な学説を立てた。 10年ほど前、カナダのモントリオール大学の研究チームによると、せんちゅうやゼブラフィッシュ等のALS モデルを使用して、MB (60 micro M) 投与で症状を軽減することに成功した!
そこで、MB が (人工甘味料「チクロ」と同様) せんちゅうの産卵能を抑え、寿命を延ばすかどうか、目下、検討中であるが、少なくとも "産卵数" は顕著に減少するので、寿命を延ばす可能性が大! MB は BBB (血管脳関門) を通過するので、PAK遮断剤なら、NF などの脳腫瘍にも有効なはず。十数年前に、少なくとも、ニワトリ (鶏卵) の (PAK依存) “血管新生”を, MB が還元型 (無色) でも, 抑えることも実証済!


N Zacharakis, P Tone, C S Flordellis, M E Maragoudakis, N E Tsopanoglou. Methylene blue inhibits angiogenesis in chick chorioallontoic membrane through a nitric oxide-independent mechanism. J Cell Mol Med. 2006;10(2):493-8.
実は、私が稀少難病 "NF"(遺伝性神経線維腫) の治療薬 (いわゆる「魔法の弾丸」) の開発をめざす研究を始めたのは、もう30年近く昔のことであるが、丁度その頃、1940年にMGM制作の白黒映画「エーリッヒ博士の魔法の弾丸」のビデオを入手し、最初の場面で、エーリッヒ博士の研究室を偶々訪れたベーリング博士に、エーリッヒがミミズのような昆虫にMBを注射して、脳が鮮明に染まるのを示す場面が登場する。強烈な印象が残る! ひょっとすると、この映画の冒頭の "MBシーン" が、我々にある貴重なヒントを与えていたのかもしれない。。。後に両人共、免疫関係の仕事で、各々ノーベル医学賞をもらう。。。 もう一世紀以上も昔の話である。 MBは、日本で「明治維新」が起こってからまもない1876年頃に、ドイツで木綿染色用の色素として開発された、いわゆる "アニリン色素" の一種である。
ようやく、MB が "PAK 遮断剤" である証拠を突き止めた! 抗癌キナーゼ "LKB1" は、抗癌キナーゼ "AMPK" を活性化すると共に、病原キナーゼ "PAK1" を抑制する (2010年に京大医学部の武藤誠 教授らが発見) 。数年ほど前に韓国ソウル大学の研究グループによれば、MB (1 micro M) が LKB1-AMPK を3倍ほど活性化することを発見した:
Hong Min Wu, Chan Gyu Lee, Se Jin Hwang, Sang Geon Kim (2014). Mitigation of carbon tetrachloride-induced hepatic injury by methylene blue, a repurposed drug, is mediated by dual inhibition of GSK3β downstream of PKA. Br J Pharmacol.; 171: 2790-802.
従って、MB が "PAK 遮断剤" であることが "九分九厘" 確実である! MB は従来、(観賞用) 魚類の水槽の感染防止や口のうがい薬に使用されているので、少なくとも "人畜無害"。甘味はないかもしれないが、薬効は「チクロ」の千倍以上に違いない!

A Novel to be published: "Out of Blue", from Stain to Magic Bullet (青天のへきれき).

2021年4月24日土曜日

東京五輪を強要する独裁者「バッハ」 (IOC) よ、
欧米やインド、ブラジルの「二の舞」は御免だ!

欧米やインド、ブラジルでは、"コロナ禍" で病院のICU が満員だ! 日本は、その「二の舞」はまっぴら御免だ!
それでも、「東京五輪」を飽くまで強要する "石頭" のIOC 会長「バッハ」を、 森 (JOC 会長) と同様、即時解任せよ! 連中には、「五輪精神」の本質が全く分かっていない!
一般民衆の目線で、政治や委員会を運営できぬ者は全て、「首」にせよ!
もし、"バッハ" が辞任しなければ、日本は 「IOC 」から脱退すべきだ!

コロナ禍などの危機に瀕しては、臨機応変かつ柔軟な 対応が必須である。少なくとも台湾やNZでは、女性リーダーの手腕によって、速やかにコロナ感染を見事に 克服した! そこで、日本の直ぐ隣にある台湾の首都、台北で、東京に代わって、本年11月頃に、「臨時の五輪」を開催したら、どうだろうか? ゴールデンウイー クを利用して、小池都知事が台湾の首相を訪れ、得意の英語で、説得したら、どうだろうか? 勿論、台北には、立派な陸上競技場や水泳プールもあるだろうし、野球場もあるはずである (巨人軍の往年のホームラン王、王貞治選手、は元々台湾出身?)。台湾にしては、中国に対して (「独立国」としての) "誇り"を示せるし、小池さんにとっては、"(東京) 五輪に命をかける" と宣言した「スガーリン」(犬猿の仲) に、 "手痛い打撃" (辞職への花道) を与え、"自分が首相になるチャンスを作る" ことになろう。バッハもこの "代案" には、きっと反対はしないだろう (実は、溺れる者に助け舟!)。「選手村の建設」が先決 (半年で可能なはず!)。 我々は現在、メルボルン五輪 (1956年) の選手村跡 (民間に払い下げた平屋住宅) で暮らしている。。。 古い諺: Something is better than nothing!

2021年4月17日土曜日

人工甘味料の中で、少なくとも「チクロ」は:
健康長寿の薬! PAK 遮断剤かも。。。

敗戦直後、砂糖が不足し、日本では、安価な人工甘味料であるサッカリン (SAC) とかズルチンなどが、砂糖代わりに使用されたが、その後, 毒性あるいは副作用が認められ、使用禁止になったことを、相当年配の方々 (70歳以上) は、今でも憶えているかもしれない。さて、1967年になって、西独のHoechst のカール=クラウスによって、「アセスルファムカリウム」 (ACE-K) という硫酸化合物に、砂糖の400倍の甘みがあることが、偶然にも発見され、日本では2000年に食品添加物として正式に認められた (商標: Sweet One)。 サッカリンやズルチンと違って、毒性が殆んど認められない。
ごく最近 (2年ほど前) 、(同じ硫酸系の) 人工甘味料で、甘味度が蔗糖の40倍の"チクロ" (cyclamate, CYC) が せんちゅうを使用した実験で、寿命を有意に延ばし、かつ脂肪の蓄積を減らすことが、中国の研究者によって発見された。 この実験では、サッカリン (SAC) や砂糖は、寿命を有意に短縮した! せんちゅうではPAK 遺伝子を欠損させると、産卵能が僅か1/7に減少し、寿命が 60% も延びることを、我々は10年近く前に発見した! 従って、これらの人工甘味料 (Sweet One) がPAKを遮断している可能性が出てきた! 実際、8年ほど前に米国 NIH (Ageing) から発表された論文によると、マウスに ACE-K を投与すると、脳内のAKT/ERK (PAKの下流にあるキナーゼ) 活性が低下し、逆にAMPK 活性が高まるそうである。一般にAMPK活性が高まると、PAK活性が低下する。 もう一つ注目すべきは、ACE-Kの投与により、喉の乾き (給水量) が2倍にもなることである! 恐らく、ACE-K には発汗(あるいは利尿) 作用があるようである。別の研究グループによると、(寿命を短縮する) サッカリンはACE-K と全く逆の作用、つまりAKT/ERK を活性化し、脂肪の蓄積を強化する作用を持つ。。。 なお、これらの作用は、いわゆる「甘みの受容体」とは無関係!
更に、サッカリンとACE-K (Sweet One) を化学的にうまく組合せると、強い抗癌作用が出てくる、という報告も最近、エジプトの研究グループが発表されている。 従来、「良薬は苦し」 というのが、医薬界の一般的な通念になっていたが、ここで例外として、”甘い良薬” (痩せ薬) が誕生しつつある。。。
チクロは、不幸にして1969年頃 (サリドマイド禍の直後) 、「毒性の疑い」で、世界各国で一斉に使用禁止になったが、今日では毒性は全く検出されず、少なくとも中国、カナダ、EU では、販売/使用許可が出ている。 従って、日本でも「チクロ」を早急に解禁すべきだろう。。。
参考文献: Food Res Int. 2019 ;122:66-76. Evaluation of the effects of three sulfa sweeteners on the lifespan and intestinal fat deposition in C. elegans. Mohan Zhang, Xin Yang, Wan Xu, et al.
蛇足だが、目下、人工甘味料で最も甘みが高いのは、味の素が開発したアドバンテーム (蔗糖の20、000倍) であるが、マウスやラットでテストすると、サッカリン (蔗糖の400倍) をずっと好む! 「蓼食う虫も好きずき」 (人とは、明らかに "甘みの食感" が違う!)。 そこで、近日中に、ACE-K を入手し、蟻が蔗糖により集めるか、ACE-K により集まるか、野外でテストしてみよう、と計画中。。。 乞うご期待!
実は、豪州のスーパーでは、今のところ、人工甘味料の「純品」は、サッカリン(甘味度は蔗糖の400倍)しか販売されていない。 そこで、サッカリンと砂糖の腕比べとなった:
実験結果: 蟻はどちらにも寄っていくが、砂糖のほうに寄り付いた蟻は全く離れないのに対し、人工甘味料のほうに集まった蟻はすぐに去っていく。 さらに時間が経つにつれ、甘味料には集まらなくなり、砂糖に人気が集中。 5時間後には、まさに黒山の蟻 となった!
種明かし: 専門家によると、(痩せる必要がない) 働き蟻は 消化できない (つまり、蔗糖が代謝されてATP = エネルギー源にならない) 限り、餌として食べない! 蟻は (人間より) ずっと賢い! 人間は「見かけの甘さ」や 「甘い言葉」 に騙されやすい。。。要注意!

今後の "PAK" 研究プラン:
一般に動物では、産卵能 と 寿命との 間で、trade-off がある (反比例する)、という (米国のせんちゅう研究の大家 Tom Johnson 博士が唱え始めた) 学 説が、一般的になっている。 そこで、寿命が最も短いせんちゅうでも、"最低一ヶ月ほどかかる" 寿命の実測の代わりに、 (2、3 日で済む) 産卵数の測定で、(毒薬ではない) 薬剤や食物の寿命に対する効果を、ある程度「予想」することができる。 そこで、中国の研究グループによる (硫酸系の) 人工甘味料 (サッカリン、チクロ、アセスルファム) のせんちゅうに対する延命効果や減量 (痩せ) 効果を調べた研究結果に従って、できれば "味の素" 開発のAdvantame (僅か 100 mg がなんと 1万円!) を含めて、他の人工甘味料 の産卵能に対する影響を先ず調べ、その結果に基づいて、延命効果のありそうな甘味料 (PAK 遮断剤) だけを選択的に調べるという "スマートな" 作戦を計画している。
「時は金なり」! 今のポスドクや学生は、時間のかかる実験はしたがらない。。。
人工甘味料「Aspartame 」はアミノ酸 「Aspartate」 の誘導体で、製薬会社ファイザーの傘下にあるサールによって、1965年に開発された。甘味度は蔗糖 200倍。味の素のAdvantame は, Aspartame の誘導体で、甘味度が更に100倍に増強された。 2014年の米国の論文 (下記) によれば、Aspartame には、せんちゅうの脂肪沈着 (いわゆる「肥満」) を抑える作用があり、健康長寿に役立つ可能性あり。 しかし、実際に "寿命が延びる" という実証は未だない! 従って、Advantame にも同様な作用があるかもしれない。。。
Jolene Zheng , Frank L Greenway , et al. Effects of three intense sweeteners on fat storage in the C. elegans model. Chem Biol Interact. 2014; 215:1-6.

ホジキンリンパ腫は JAK-PAK1-PD-1 依存性:
PAK1 遮断剤で、"副作用なし" に治療可能!

最近の総説 (下記) によれば、ホジキンリンパ腫は JAK-PAK1-PD-1 依存性である。従って、固形腫瘍同様、PAK1 遮断剤 (例えば、プロポリス、Gleevec、FK228、フコイダン 等) で、副作用なしに治療可能なはず! 往年の名マラソンランナー、瀬古利彦の長男 (昴) が8年前から、ホジキンリンパ腫の治療を受けていたが、残念ながら、従来の抗癌剤、放射線照射など、副作用の強い治療しか受けておらず、最近、若くして、他界されたそうである。 虎は死して、毛皮を残すが、彼は一冊の闘病記 「癌マラソンのトップランナー」を残した。 もし、名医に恵まれ、"PAK遮断"治療を受けていたら、闘病記など残す必要はなかったのだが。。。昴の"轍"を踏むな!
名喜劇俳優「チャップリン」曰く「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ!」
私自身は小学4年の時 (70年近く昔)、小児結核にかかったが、近所の"やぶ医者"の薬は全く効かず、結局「GHQ」の米軍将校からもらった「PAS」のお蔭で命拾いした。 「知は力なり」 という言葉を座右の銘にしている。 教科書を丸暗記しても、実生活には役に立たぬ。ジックリ "生きた学問" (雑学) を会得せねばならない。以後、病気にかかったことは一度もない!
Blood. 2018 ;131(22):2454-2465. Pervasive mutations of JAK-STAT pathway genes in classical Hodgkin lymphoma. Enrico Tiacci et al.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rinketsu/60/5/60_447/_article/-char/ja/
我田引水になるが、癌マラソンの真の「トップランナー」 (or Top Flyer) は、プロポリスを"太古"に調剤した蜜蜂であろう。 この闘病記の表紙の右肩 (著者名の下) に、それらしい "虫" が複雑な表情で飛んでいる (デザイナーには、「先見の明」あり!)。

2021年4月15日木曜日

コロナ禍の五輪開催は千害あって一利なし!
五輪中止で、「スガーリン」を退陣させろ!

五輪の代わりに、7月に予定されている都知事選挙の前に、総選挙で「首相」の交代を促すべし「スガーリン」には、"花道"として、 2024年のパリ五輪に向けて、首相官邸から駐日フランス大使館 (南麻布) まで、"聖火リレー" (4.3 km) なる大役を任せたらどうだろう ? けだし、都庁から駐日フランス大使館までは、ルートにもよるが、最短でも 8 km は あるので、"スガーリン" 独り では、とても無理!
さて、一体誰が、「五輪の中止」を真っ先に言い出すか? 言い出した本人が、恐らく次の首相になるだろう。 問題はそのタイミングである。早過ぎても、遅過ぎ ても駄目。。。6月に梅雨が始まる時期が絶好だろう。 10年以上前、 ジュリア=ギラードが首相ケビン=ラッドを一撃で葬ったあの「絶妙なタイミング」が必要だ! 歴史は繰り返す。。。

2021年4月13日火曜日

東電の福島第一原発の処理水を「海洋放出」!
"風評" 被害を補償するため、 (政府ではなく)
「東電」自身 が漁民らに賠償金を払うべし!

豪州に永住している我々は、処理水の海洋放出に反対しない。赤道を越えて、はるばる豪州の沖合いに "放射性" アイソトープが届く (?) までには、相当に希釈されて実害はないはずだから。 しかし、現地に住む消費者は、「海洋放水」をどう受け止めるか? いわゆる "風評" 被害で、魚貝類が売れなくなるかもしれない。 従って、漁民たちに対して、加害者の「東電」自身が、賠償金を支払うべきだろう!
「スガーリン」よ、政府が「我々の税金」を使って、賠償金を支払う筋など全くない!

2021年4月12日月曜日

「ジュリア=ギラード: 豪州初の女性首相への道」
(ジャクリーン=ケント著, ペンギンブック)

抄訳: 2010年に豪州で初めて、女性の首相が誕生した。 労働党首のジュリア=ギラードだった。それまで、ギラードは、労働党首で2007年に首相になったケビン=ラッドの下で、副官を3年勤めていたが、ラッド首相の評判が落ち始めた時期を狙って、いわゆる”下克上” を起こした。実は、 ギラードは元々、英国のウエールズ生まれで、貧しい炭鉱町に住んでいた革新派の父親ジョンと母親モイラの間に生まれた長女はアリソンで、1961年9月29日に生まれたのが、赤毛の次女ジュリアだった。ジュリアが生まれた頃、父親は英国鉄道の事務員を務めていた。 ギラード家が住んでいた炭鉱町バリーの冬期はかなり寒く、ジュリアはしばしば肺炎などに悩まされていた。
そこで、両親は医者の勧めに従って、もっと暖かい大陸に移住することを決め、1966年2月に、(真夏の) 豪州のアデレードへ移住した。 ジョンは夜学で勉強後、病院の看護師になり、モイラは救世軍の経営する老人ホームで働いて、生計を立てた。 SA 州のアデレードはビクトリア州のメルボルンと同様、比較的革新的な都会で、1968年には、労働党のドン=ダンスタンがSA 州知事に当選した。更に、2年後の1970年には、豪州連邦の首相に、労働党首のゴッフ=ウイットラムが当選した! ウイットラム政府の二大改革は、1) 医療の無償化、 と 2) 大学授業料の廃止だった。 こうして、貧乏なギラード家にとって、「理想的な」環境が整った。 ジュリアは州立アンリー高校で、弁論部で活躍し始め、政治家への道を歩み始めた。 ジュリアは16歳になった時、「私は最高の教育を受け、キャリア女性をめざすので、子供はごめんだ!」と母親に打ち明けたそうである。。。実際、彼女は首相就任後も (同棲生活はしても) 結婚はせず、子供はもっていない! その点で、(首相の座を秘かに狙っている) 小池都知事の立場に良く似ている。。。”人口過剰” に苦しむ世界で、結婚と子育てしか念頭にない女性は、明らかに「時代遅れ」だ! Girls, Be More Ambitious!
1979年に、ジュリアはアデレード大学法学部 に入学し、間もなく労働党 (ALP) にも入党した。 1981年には、大学初の学生理事長に選出された。 当時の保守党政府は、ウイットラム政府による大学授業料廃止政策をご破算にしようとした。そこで、ジュリアは大学の自治会を代表して、この保守党の 「剃刀ギャング」 政策に反対して、立ち上がった。 結局、「剃刀ギャング」 政策案は連邦議会の上院で、否決された。こうして、ジュリアは政界で、最初の勝利を味わった! この功績のため、ジュリアは全豪学生自治会の教育副委員長 (給料付き!) に選出された。 学生自治会の本部は当時、メルボルンにあった。そこで、1982年に、ジュリアはメルボルン大学法学部に編入し、以後 "メルボルンの住民" になった。翌年、ジュリアは、全豪学生自治会の委員長に選出された。丁度、その年に、ボッブ=ホークを党首とする労働党が連邦政府を奪還した! 従って、彼女にとっても、ギラード家全体にとっても、大満足っだった!
ジュリアは25歳でメルボルン大学を卒業した後、1987年に法律事務所 (Slator & Gordon) に就職し、弁護士として9年間活躍した。 しかしながら、彼女の夢は政治家になることだった。そこで、1996年に法律事務所を辞めた。残念ながら、13年間続いた労働党の天下が総崩れして、連邦政府は保守党首のジョン=ハワードの天下 (11年の長期政権) になった。 ビクトリア州知事も保守党のジェフ=ケネットになり、大量の公務員が解雇されるばかりではなく、多くの公共事業が私営化された! そこで、ジュリアはビクトリア州の野党 (労働党) 党首、ジョン=ブランビーの秘書官に就任して、先ず地元メルボルンの労働党の建て直しを計った。
11年後の2007年に、ジュリアは連邦議会 (下院) の選挙に労働党候補として出馬して、初当選を勝ち取り、首相になったケビン=ラッド (労働党党首) の副官 (副首相兼文相) に任命された。 そして、3年後の2010年に、ラッド首相に代わって、初の女性首相に就任した! しかしながら、続く総選挙で労働党が「少数与党」になったため、ギラード政権は "3年" という短命に終わったが、特に「女性の地位や労働条件の向上」、教育制度の改善などに貢献した。 豪州では2014年以来、愚鈍な保守党政権が7年ほど続き、特に米国のトランプ政権の尻馬に乗って、「COVID」の発祥を巡って、中国と対立関係を増し、石炭、小麦、牛肉、ワインなどの中国への輸出制限や高い関税で、特に農民など "第一産業業者" が苦しんでいる。。。

2021年4月6日火曜日

受験小説「岐路」: 芸術家になるか、医学者になるか?
A Cross-Road towards Painting or Drug-Discovery

実は、60年昔の卒業式より 2、3カ月前に大学受験のシーズンが始まっていた。 "日比谷" では、正月明けに、ラグビー部が、優勝候補の名門「保善」 (東京代表 1) についで、「東京代表 2」として、大阪の花園ラグビーで開催される「全国高校ラグビー選手権」大会に初出場を勝ち得た! 一回戦、2回戦を軽く通過して、いよいよ「ベスト8」に残った。準々決勝の相手は、 強豪「北見北斗」。 21 - 5 で日比谷敗退。決勝では、保善が北見北斗をストレートで下し、優勝! 出場 32校の内、公立校は「日比谷」だけ、他校は全て私学。 その年、東大合格者 165名だった日比谷は、文字通り「文武両道」ぶりを発揮した。
しかし、少なくとも2名の同級生は、この165名の東大合格者の中にはいなかった!声楽家をめざしていた長身の丸山君と 画家をめざしていた短身の浦島昇は、上野にある「芸大」の音楽部と美術学部を、各々受験した。実技は高得点だったが、学科でも、得意の英語は満点に近かったが、数学の苦手な両人は 自然科学 や人文科学ではかなり苦戦した。 しかし、両者とも何とか芸大音楽部 (声楽専攻、定員54名) と美術学部 (絵画科油絵専攻、定員55名) に、各々パスして、いわゆる「芸大袋」を受け取った! 丸山君 (パン屋の息子で、ラグビー選手) は芸大卒業後、 テノール (あるいはバリトン) 声楽家への道を順調に歩んだ。
さて、問題は昇だった。彼が最も好きな画家は、ノルウエーのムンク、感情を描く画家だった。 「叫び」や「マドンナ」が、その代表作である。 しかしながら、60年昔の芸大の洋画界は、ピカソなどに始まる戦後のいわゆる「キュ-ビズム」に浮かれていた。「抽象画が画けぬ者は、洋画家にあらじ」という行過ぎた風潮が上野界隈の画壇に根強く慢延していた。 昇は訳の分からぬ「猿真似」抽象画に嫌気がさした。昇は、「誰にでも理解できる」写実的な絵を、その真髄としていた。しかも、絵を通して、人間の感情を伝えることができれば、理想的だと、考えていた。従って、当時の芸大洋画科の教師たちに全く失望した。 かと言って、平面的で奥行きのない「日本画」には、全く魅力がなかった。。。
そこで、父親の正夫に相談してみた。 実は、父親は息子が芸大の入試に現役でパスしたことに、驚くと共に失望していた。 絵画の世界には流行があり、将来それにうまく乗れないと、画家はいわゆる「つぶし」が効かなくなるからだ。 例えば、オランダの有名な画家、ヴァン=ゴッホは生前、殆んど絵が売れなくて、兄貴がずいぶん苦労した。ゴッホが有名になったのは、死後のことである。。。 そこで、正夫は息子に曰く、 「どこまでも、客観的なものを追求したいなら、科学者をめざすべきだ」。 息子はその言葉に、はっと目覚めた! しかし、日比谷で、岡田という数学の教師に幻滅を感じて以来、数学に対して情熱を全く失ってしまった昇には、数学の要る自然科学、例えば物理学は全く及びでなかった。しかも、日比谷の高1で、化学を選択したため、生物学を全く履修できなかった昇には、生物系の自然科学も無理だった。最後に残ったのは、有機化学だけだった。 できれば、新薬を開発してみたかった。 そこで、一年後には、最寄りの東工大 (応用化学専攻) を受験した。 しかしながら、数学が難解で、昇にはとても歯が立ったなかった! 見事に落ちた! 文系ながら、数学が得意だった父親曰く。「東大の理三 (医学部専攻) は勿論、数学が難しいが、理二の数学は易しいので、お前にも解けるだろう。 理二からは将来、望めば (気が変われば) 文系にも進学できるから、大器晩成らしいお前にはピッタリだ」。 そこで、昇は「背水の陣」を引き、御茶ノ水駅近くにある「駿台予備校」に通学して、本格的に受験勉強を開始した。 もし、この受験に失敗したら、大学を諦め、就職せざるを得なかった。
さて、暑い真夏のある日の夕方、「駿台」から遠くない神保町の古本屋街で、ある伝記本を見つけた。 ある有名なノーベル受賞者の秘書が出版した英文伝記の邦訳だった。 化学療法の父「パウル=エーリッヒ」の伝記だった。ユダヤ系のドイツ人医師で、有機化学に長じ、組織染色が得意なエーリッヒ博士は、1908年に免疫学でノーベル医学賞をもらった翌年、(梅毒菌を染めるが、人体組織を染めない) 特殊なアニリン色素にヒ素を化学的に結合させて、梅毒の特効薬「サルバルサン」(606) を開発した! 絵の具に使用する種々の色素に興味をもっていた昇は、「これだ!」と思った。 自分自身は、副作用なしに、癌を特異的に殺しうる薬 (化合物) を、将来開発しようと決心した!。著者はエーリッヒ博士の女性秘書で、ユダヤ系だったので、ヒットラーが政権を掌握すると、英国に亡命して、この伝記を仕上げた。1940年にこの伝記を台本にして、米国のMGM が「エーリッヒ博士の魔法の弾丸」という白黒映画を製作した。 1980年に「パウル=エーリッヒ」賞を受賞した梅沢浜夫教授 (日本の「抗生物質の父」) は、自伝「抗生物質を求めて」の中で、この白黒映画を戦後観る機会に恵まれ、感動した、と記している。 1963年、昇は易しい数学のお蔭で、東大理二を無事にパスし、入学後間もなく、分子生物学を猛勉強し始め、憧れの薬学部 (製薬化学科) に進学した。
昇の好きな詩の中に、(芸大出の芸術家) 高村光太郎の「道程」と題する力強い詩がある。「僕の前に道はない。僕の後ろに道はできる」という言葉で始まる、パイオニア精神を歌ったもの。 大学を卒業してから丁度10年後に米国で、昇は自分の「道」を発見した。それが "PAK" と呼ばれるミオシンを燐酸化するキナーゼ。このキナーゼは、血管平滑筋の収縮を促進して、高血圧を起こすばかりではなく、癌やその他様々な難病を起こす、いわゆる「病原酵素」で、正常な細胞増殖には必要ない。その後、豪州などで、40年近くをかけて、その「PAK」を遮断する (プロポリス等) 様々な薬剤、つまり「魔法の弾丸」(=健康長寿の薬)を同定あるいは開発した。 一世紀の歳月を経て、弾丸の「標的」は、「病原菌」から「宿主に内在する有害な酵素」へ飛躍的に進化した!
さて、北里研究所の大村 智 博士 と米国メルク社のウイリアム=キャンベル博士は共同で、放線菌由来のマクロライド系抗生物質の誘導体「イベルメクチン」が寄生線虫の神経を選択的に麻痺させることを発見し、40年ほど昔にに市販した。 その後、それが赤道直下のアフリカ大陸や中南米で慢延しているオンコセルカ (河川盲目症) にも効くことが判明し、 かの有名な「シュバイツアー博士の慈善精神」に沿って、それを大量に無償配布して、この伝染病の撲滅に貢献した。それが高く評価されて、(WHOなどの推薦により) 2015年に両博士にノーベル医学賞が与えられた。 更に、興味深いのは、このイベルメクチンが、実は「PAK遮断剤」であることが、この受賞の数年前に浦島昇らによって発見され、ごく最近には、イベルメクチンやプロポリスなどのPAK遮断剤がCOVID-19 感染の治療にも有効であることが臨床テストで証明された (前述)。 WHO website にも、2020年に浦島昇らにより発表された英文総説「PAK1-blockers: Potential Therapeutics against COVID-19」が、最近引用されるようになった。
受験生諸君! 長い道程から顧みれば、最初の1、2年のつまずきは取るに足らない。。。
「文系」の受験者を扱った作品は腐るほどある。作家自身が文系だからである。「理系」あるいは「芸術家」を扱ったこの短編は、その意味で「異色」である。。。
もう一つ, 異色な作品は、杉山勝栄著 「シュバイツアー」(ポプラ社、子供の伝記) である。牧師の息子、アルバートが30歳に達した時、哲学博士、神学博士、パイプオルガン奏者だった彼は、一大決心をして、医学の勉強を始め、6年後に医師免許を取得し、アフリカ大陸に旅立ち、貧しい黒人たちの治療に一生を捧げた。 彼は1953年に、78歳でノーベル平和賞に輝いた!