2017年10月25日水曜日

Lerner 父子 (エール大学) による「メラニン色素合成制御 ペプチド」 (メラトニ ン、alpha-MSH、WRL) に関する研究小史: 「PAK 」との (隠れた) 繋がり

睡眠などをつかさどる「体内時計」に関する研究で、3人の英米研究者がノーベル賞 (2017年) をもらったが、その研究歴史の始まり(発端) は意外にも、ある皮膚科の研究室による発見に起因する。 1958年にエール大学の Aaron Lerner 博士が「メラトニン」という(牛の脳由来の) 松果腺ホルモンが、蛙のメラニン色素合成を抑えることを発見した。 メラトニンは、アミノ酸 「トリプトファン、Trp」 の誘導体 (セロトニン) 由来の代謝産物で、末端のアミノ基がアセチル化されている。

さて、 その後の多くの研究により、メラトニンが 「美白作用」 ばかりではなく、催眠作用や抗癌作用など極めて広範囲にわたる薬理作用を発揮する、言わば 「奇跡の薬」 であることが判明した。 メラトニンの合成/分泌は (太陽が沈む) 日暮れに始まり、(太陽が昇る) 明け方に終わる。つまり、睡眠を促進する 「日時計」 的な役割を果している。 

Aaron Lerner 博士は更に、メラニン色素合成のメカニズムを研究している内に、メラニン色素の合成を誘導する13個のアミノ酸からなるペプチド=ホルモン(alpha-MSH、Ac-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2) を発見した。

面白いことには、このペプチドには、8番目にArg, 9番目にTrpが含まれている。 従って、メラトニン (Trp 誘導体) は、alpha-MSHの9番目のTrp と拮抗している可能性がある。 細胞内外には、いくつかのalpha-MSH レセプター (MC1, MC3, MC4, MC5など) が存在する。最近の我々の研究から、alpha-MSHが、血清中のPDGFと呼応して、発癌/老化キナーゼ「PAK」を活性化することによって、メラニン色素合成などを誘導していることが明白になった。 従って、メラトニンも天然 「PAK遮断剤」である可能性が極めて高い。

さて、Aaron Lerner 博士の息子の一人、Mike Lerner 博士も (エール大学卒の) 皮膚科専門医であるが、1995年に一連の (3個のアミノ酸からなる)「トリペプチド」を合成した結果、WRL (D-Trp-Arg-Leu-NH2) が最も強いメラニン合成阻害作用を示すことを発見した (1)。 このトリペプチドには、alpha-MSH のごとく、Trp とArg が隣合っている従って、この2個のアミノ酸 (Trp-Arg) がalpha-MSH の"活性中心" である可能性が高い。 更に、WRL が美白作用ばかりではなく、メラトニン同様、健康長寿を促進する 「奇跡の薬」 (Wonder Drug) になる可能性もある。  目下、その可能性を検討中である。


References:
  1. Quillan JM, Jayawickreme CK, Lerner MR. Combinatorial diffusion assay used to identify topically active melanocyte-stimulating hormone (MSH) receptor antagonists. Proc Natl Acad Sci U S A. 1995; 92: 2894-8.

2017年10月23日月曜日

我が恩師 「水野伝一」 先生の死を悼む

我々の大学時代の「微生物薬品化学」 研究室の教授であった水野伝一先生 (97歳) が最近 (11月の誕生日を前にして) 、鎌倉の自宅で他界されたことを、同級生からのメールで知った。 悲しいと思うと同時に (ご家族、特に芸大出身のご令嬢による長期の看病を考えると)  安堵の気持ちが頭をよぎる。実は、(あの頭脳明晰な) 先生が80歳の誕生日を過ぎる頃から、重度の認知症を煩い始めたことを、家族の皆様から聞いているからである。 趣味のテニスと油絵を楽しみながら、自宅近くの老人ホームで余生を 「無邪気に」 過ごしていると数年前に伺っている。 その頃には、もう家族の見分けも殆んど着かなくなっていたと言う。。。

私自身の先生とのお付き合いは、大学の教養学部を一年半、駒場キャンパスで過ごした後、本郷キャンパスに移って、薬学を専攻し始めた時点 (1964年秋) に始まる。 先生から(当時、最先端の) 「分子生物学」 なる学問を教わった。 DNAの3次構造、遺伝子の発現メカニズム、蛋白質の合成されるメカニズムなどを、最も単純な微生物 (大腸菌) などをモデルにして勉強した。4年時に丸一年間、卒業実習を幸い先生の研究室に配属されて、実験を始める機会を得た。 私が先生の研究室を選んだ最大の理由は、「生物学なら何をやっても良ろしい」という先生のユニークなモットー(自由主義) が気に入ったからである。 私のめざした研究人生の目標は副作用のない抗癌剤を開発することだった。そのためには、先ず細胞がいかに増殖するかを学ばねばならなかった。そこで、最も単純な大腸菌の蛋白合成メカニズムを、先ず修士論文のテーマに選んだ。次に哺乳類(マウス) の貪食細胞(マクロファージ) による自他の認知メカニズムを博士論文テーマに選んだ。この6年間の研究生活で、 最も印象深かったのは、先生の音頭で、分子生物学に関する「標準実験法」というユニークな本を教室員全員で編纂したことである。 この実験法は我が微生物研究室の言わば 「宝」 となった。もう一つは、先生自ら編纂した「我が研究室員に与えうる書」だった。 いわゆる「伝ちゃん語録」だった。先生のことを、我々研究室員同志では 「伝ちゃん」 と呼ぶ習慣があった。 それほど、先生と我々は近しかった。

先生自身の研究は、マウスを使った動物実験で、抗癌剤をスクリーニングすることだった、そのプロジェクトで研究室に入ってくる研究助成金と先生自身のポケットマニーで、2人の秘書の給料と40名近い院生や研究員の研究費をまかなっていた。

大学内で研究室に2人の秘書を雇っていたのは、当時でも極めて珍しい。  先生曰く、「研究に邁進せよ!  お嫁さんの候補は秘書から先ず選びなさい!」。私の先輩や後輩で、研究室の秘書たちを結婚相手に選んだ例は数知れない。 もっとも、研究室員の大部分は男性だったから、競争率は極めて高く (20人に一人!) 、秘書の新陳代謝は激しく、2、3年でどんどん入れ替わっていった。。。 勿論、私自身には、渡米するまでの7年間、秘書とデートするチャンスなど全くなかった。

助手を一年間勤めた後、私が渡米のために研究室を後にしたのは、1973年の夏休みだった。 それから10年ほど経ったある夏の日に、西独のミュンヘン郊外にあるマックス=プランク研究所の私の研究室に突然、先生から電話がかかってきた。隣国オーストリアのザルツブルグからの電話だった。(娘さんから入手した切符で) 有名な音楽祭を楽しんだ直後で、 列車でミュンヘンに向かうから、駅まで出迎えに来てくれたまえ。 お土産があるよ」 という内容だった。どんな土産だろうと、想像を巡らしながら、駅に出迎えにゆくと、先生が若い白人の女性と同伴だった!  スザンヌ=クナーベというドイツ系のアメリカ人だった。ニューヨークで学校の教師をやっているそうである。 3人で駅前の食堂にてランチを食べた後、先生は帰路、空港に向かった。 「このお嬢さんを君に預けるから、一緒にハイキングや観光を十分楽しんでくれたまえ」 という言葉を残して。。。秘書とデートする暇がとうとうなかった私のために、スザンヌをザルツブルグの駅頭で見つけて、わざわざ "ミュンヘンまで2時間の寄り道" を先生はしてくれたのだ。

振り返ってみると、我が"微生物"研究室の院生の中で、私ほど先生から個人的にお世話になった者はいないような気がする。 そして、先生の長い夢でもあった 「抗癌剤の開発」 を実際に引き継いた者は、私自身を含めてほんの少数だった。 だから、私が生きている内に PAK遮断剤 「15K」 (モーツアルト"H") などを 「副作用のない抗癌剤」 として、できるだけ早期に市販したいものである。 先生はまぎれもなく 「教育者の鏡」 だったが、私自身はせめて 「研究者の鏡」 になりたいと志している。

2017年10月20日金曜日

NZ産プロポリス 「Bio 30 」 の注文先 (e-mail address) が変更!

ニュージーランド 「Manuka Health」 のマネジャー (Annette Rea) が最近リタイアして、新しいマネジャー (Donna Coupland) に変りました。

従って、今後 「Bio 30」 (alcohol-free liquid) の注文は、下記のメールアドレスにするよう:     Donna@manukahealth.co.nz

 今後は、NF患者に対する特価は、NZD 11 (per bottle of 25 ml) だそうです (NZD 9 から少し値上げ)、しかし、市価 (NZD 42) の 3割以下です。

2017年10月16日月曜日

New "PAK" Project: 菩提樹は (健康長寿を促す) 薬用植物

菩提樹の実 (ルドラクシャ)、花や葉っぱ等には、(抗癌/美白作用や健康長寿を促す) PAK遮断剤が含れているようである。 血圧を下げ、喘息などのアレルギー性炎症や癲癇などの脳障害を抑え、睡眠や発汗を促する作用などがあるからである (1)。 インド、ドイツやフランスなどでは、ハーブ茶として愛好されている。 有効成分は水溶性のようである (1)。今後、薬用植物として、研究する価値が十分にありそうである。    

そこで、近い将来 「PAK研究財団」 から、「菩提樹に宿るPAK遮断剤 "Lindenbaumin" を化学的に同定する」 意欲のある博士課程の院生に (3か年にわたって) 年間100万円の奨学金を支給するという案を目下検討中である。 PAK遮断剤 「15K」 に関する特許 (Licensing) 料が大手製薬会社から入手され次第、この「菩提樹研究」プロジェクトを開始したいものである。 研究材料はわざわざアマゾンの密林を探検しなくとも、amazon.co.jp で手軽に入手できる

http://otium.blog96.fc2.com/blog-entry-220.html

「菩提樹の蜜はシナノキの蜜」(中京新聞より転載): 

お釈迦様は菩提樹の下で悟りを開いたとされており、お寺の境内には菩提樹がよく植えられている。 初夏になると淡黄色の小さい花が沢山咲き、甘い香りと良質の蜜でミツバチ達をとりこにする。菩提樹の蜜は透明で、香りが良く、日本人が大好きな蜜である。お釈迦様の悟りには、この花の香りと蜜が大いに関係したのではないか、と思われる。

実は、お釈迦様が悟りを開いたのは「クワ科のインドボダイジュ」(夏シナノキ) の下でのこと。仏教が中国に伝来した時に、中国では熱帯産のインドボタイジュが育たないため、姿が似ている 「シナノキ科」 の別物を 「菩提樹」 と呼んだと言われている。日本へは臨済宗の開祖栄西が持ち帰ったと伝えられているが、日本にも中国シナノキに似た冬シナノキ (西洋シナノキ) があり、ミツバチが好むこの木を 「菩提樹」 と呼ぶようになった。

蜜源として重要な冬シナノキが代用品になって仏教上の聖木の名前がつけられた。冬シナノキは極東や欧州に分布しているが、蜂蜜としては北海道や東北のシナノキの単花蜜が有名。


シューベルトの歌曲 「菩提樹」 は世界的に有名であるが、菩提樹の薬理作用は 「モーツァルト効果」 同様、副交感神経を刺激して、悪玉酵素 「PAK」 を抑える働きがあるようである。 

参考文献: 

1. Sarma JK1, Bhuyan GC, Koley J, Maity LN, Naikwadi VB. An experimental evaluation of the effect of rudraksha (elaeocarpus ganitrus roxb) in adrenaline and nicotine induced hypertension. Anc Sci Life. 2004; 23 (4): 1-10.