2021年4月17日土曜日

人工甘味料の中で、少なくとも「チクロ」は:
健康長寿の薬! PAK 遮断剤かも。。。

敗戦直後、砂糖が不足し、日本では、安価な人工甘味料であるサッカリン (SAC) とかズルチンなどが、砂糖代わりに使用されたが、その後, 毒性あるいは副作用が認められ、使用禁止になったことを、相当年配の方々 (70歳以上) は、今でも憶えているかもしれない。さて、1967年になって、西独のHoechst のカール=クラウスによって、「アセスルファムカリウム」 (ACE-K) という硫酸化合物に、砂糖の400倍の甘みがあることが、偶然にも発見され、日本では2000年に食品添加物として正式に認められた (商標: Sweet One)。 サッカリンやズルチンと違って、毒性が殆んど認められない。
ごく最近 (2年ほど前) 、(同じ硫酸系の) 人工甘味料で、甘味度が蔗糖の40倍の"チクロ" (cyclamate, CYC) が せんちゅうを使用した実験で、寿命を有意に延ばし、かつ脂肪の蓄積を減らすことが、中国の研究者によって発見された。 この実験では、サッカリン (SAC) や砂糖は、寿命を有意に短縮した! せんちゅうではPAK 遺伝子を欠損させると、産卵能が僅か1/7に減少し、寿命が 60% も延びることを、我々は10年近く前に発見した! 従って、これらの人工甘味料 (Sweet One) がPAKを遮断している可能性が出てきた! 実際、8年ほど前に米国 NIH (Ageing) から発表された論文によると、マウスに ACE-K を投与すると、脳内のAKT/ERK (PAKの下流にあるキナーゼ) 活性が低下し、逆にAMPK 活性が高まるそうである。一般にAMPK活性が高まると、PAK活性が低下する。 もう一つ注目すべきは、ACE-Kの投与により、喉の乾き (給水量) が2倍にもなることである! 恐らく、ACE-K には発汗(あるいは利尿) 作用があるようである。別の研究グループによると、(寿命を短縮する) サッカリンはACE-K と全く逆の作用、つまりAKT/ERK を活性化し、脂肪の蓄積を強化する作用を持つ。。。 なお、これらの作用は、いわゆる「甘みの受容体」とは無関係!
更に、サッカリンとACE-K (Sweet One) を化学的にうまく組合せると、強い抗癌作用が出てくる、という報告も最近、エジプトの研究グループが発表されている。 従来、「良薬は苦し」 というのが、医薬界の一般的な通念になっていたが、ここで例外として、”甘い良薬” (痩せ薬) が誕生しつつある。。。
チクロは、不幸にして1969年頃 (サリドマイド禍の直後) 、「毒性の疑い」で、世界各国で一斉に使用禁止になったが、今日では毒性は全く検出されず、少なくとも中国、カナダ、EU では、販売/使用許可が出ている。 従って、日本でも「チクロ」を早急に解禁すべきだろう。。。
参考文献: Food Res Int. 2019 ;122:66-76. Evaluation of the effects of three sulfa sweeteners on the lifespan and intestinal fat deposition in C. elegans. Mohan Zhang, Xin Yang, Wan Xu, et al.
蛇足だが、目下、人工甘味料で最も甘みが高いのは、味の素が開発したアドバンテーム (蔗糖の20、000倍) であるが、マウスやラットでテストすると、サッカリン (蔗糖の400倍) をずっと好む! 「蓼食う虫も好きずき」 (人とは、明らかに "甘みの食感" が違う!)。 そこで、近日中に、ACE-K を入手し、蟻が蔗糖により集めるか、ACE-K により集まるか、野外でテストしてみよう、と計画中。。。 乞うご期待!
実は、豪州のスーパーでは、今のところ、人工甘味料の「純品」は、サッカリン(甘味度は蔗糖の400倍)しか販売されていない。 そこで、サッカリンと砂糖の腕比べとなった:
実験結果: 蟻はどちらにも寄っていくが、砂糖のほうに寄り付いた蟻は全く離れないのに対し、人工甘味料のほうに集まった蟻はすぐに去っていく。 さらに時間が経つにつれ、甘味料には集まらなくなり、砂糖に人気が集中。 5時間後には、まさに黒山の蟻 となった!
種明かし: 専門家によると、(痩せる必要がない) 働き蟻は 消化できない (つまり、蔗糖が代謝されてATP = エネルギー源にならない) 限り、餌として食べない! 蟻は (人間より) ずっと賢い! 人間は「見かけの甘さ」や 「甘い言葉」 に騙されやすい。。。要注意!

今後の "PAK" 研究プラン:
一般に動物では、産卵能 と 寿命との 間で、trade-off がある (反比例する)、という (米国のせんちゅう研究の大家 Tom Johnson 博士が唱え始めた) 学 説が、一般的になっている。 そこで、寿命が最も短いせんちゅうでも、"最低一ヶ月ほどかかる" 寿命の実測の代わりに、 (2、3 日で済む) 産卵数の測定で、(毒薬ではない) 薬剤や食物の寿命に対する効果を、ある程度「予想」することができる。 そこで、中国の研究グループによる (硫酸系の) 人工甘味料 (サッカリン、チクロ、アセスルファム) のせんちゅうに対する延命効果や減量 (痩せ) 効果を調べた研究結果に従って、できれば "味の素" 開発のAdvantame (僅か 100 mg がなんと 1万円!) を含めて、他の人工甘味料 の産卵能に対する影響を先ず調べ、その結果に基づいて、延命効果のありそうな甘味料 (PAK 遮断剤) だけを選択的に調べるという "スマートな" 作戦を計画している。
「時は金なり」! 今のポスドクや学生は、時間のかかる実験はしたがらない。。。
人工甘味料「Aspartame 」はアミノ酸 「Aspartate」 の誘導体で、製薬会社ファイザーの傘下にあるサールによって、1965年に開発された。甘味度は蔗糖 200倍。味の素のAdvantame は, Aspartame の誘導体で、甘味度が更に100倍に増強された。 2014年の米国の論文 (下記) によれば、Aspartame には、せんちゅうの脂肪沈着 (いわゆる「肥満」) を抑える作用があり、健康長寿に役立つ可能性あり。 しかし、実際に "寿命が延びる" という実証は未だない! 従って、Advantame にも同様な作用があるかもしれない。。。
Jolene Zheng , Frank L Greenway , et al. Effects of three intense sweeteners on fat storage in the C. elegans model. Chem Biol Interact. 2014; 215:1-6.

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