2022年12月31日土曜日

Gleevec: 癌 (CML/GIST) の治療薬として最初に市販された チロシン=キナーゼ (ABL、 KIT、PDGFR etc) 阻害剤
NF 腫瘍にも効くはず!("ジェネリック" 製品は安価!)
"一年の計" は元旦にあり! "Gleevec" はCOVID 肺炎にも効く!?

この治療薬の開発の背景には、かなり長い歴史がある。 先ず、1960年に、米国フィ ラデルフィアの癌研究者 (ピーター=ノウエル とデビッド=ハンガーフォード) が CML (慢性骨髄性白血病) 患者の白血球の (22番目の) 染色体が、正常な白血球の 染色体に比べて、明らかに短い ( つまり、一部欠損している) ことを発見した時 点に始まる。 そして、この奇妙な染色体を「フィラデルフィア染色体」と名付け た。 その後 (1973年に)、 シカゴ大学のジェーン=ローリーが、CML患者が余分な DNAを9番目の染色体にもっていることを発見した。 更に詳しく調べてみると、22番 目から欠損した遺伝子が9番目の染色体に転移/転座していることが判明した。 その後、この転座により、BCR-ABL という融合発癌遺伝子が形成していることが 判明した。 この融合遺伝子は、正常なABL遺伝子より、異常に活性化され、発癌 の原因になっている。
その後 (1986年頃)、ABL遺伝子産物がチロシン=キナーゼの一種であることが、デ ビッド=ボルチモア (MIT 癌研 のノーベル医学受賞者) らによって、発見された。 そこ で、この発癌性 "ABL" キナーゼを阻害する薬剤を開発するというプロジェクトが、ス イスのバーゼルにある「Novartis」 の前身であるチバーガイギーの研究所で始まっ た。 このプロジェクトを主導したのが、(1983年にチバガイギーに就職した) ア レックス=マター医師 (博士) だった。 先ず、彼はニック=ライドンという若い生 化学者を自分のチームに誘い込んだ。
もう一人、Gleevec の開発に重要な貢献をした医師が米国にいた。ボストンのダ ナ=ファーバー癌研のブライアン=ドルーガー医師だった。 1988年に、ニックはブラ イアンに面会して、如何にして、チロシン=キナーゼ (ABL) を阻害する薬剤を開発 すべきか、じっくり相談した。丁度その頃、イスラエルの (我が輩の友人である ) アレックス=レヴィツキーのチームが、EGFR などのチロシン=キナーゼに対する 一連の阻害剤を開発し始めた。 1990年に、 (ETH で博士号を取得した) 新鋭の有 機化学者、ユエルグ=ジンマーマンがマターのチームに加わった。そして、ユエル グが合成した化合物を片っ端から、ニックらが ABLキナーゼを (選択的に) 阻害する かどうか、検索し、それに合格した物を、ブライアンが動物実験や臨床実験で薬 効を確かめる、という作戦を遂行した。
1992年に、どうやら目的の阻害剤が見つかりつつあった。問題は、水溶性に乏し いことだった。 1993年の春、「STI=571 」(後に「Gleevec 」と改名) という化 合物が、社内の「医薬品候補」となった! 丁度その頃、ブライアンは、ボスト ンからオレゴン大学 (健康科学) の癌センターに転勤し、 Gleevec の薬効を動物 実験で確かめ始めた。さて、1996年に、サンドとチバガイギーが合併し、 「ノバルチス」製薬となった。 同じ頃、ブライアンは、Gleevec の臨床試験"準備"を開 始しつつ、Gleevec に関する研究論文を初めて、ネイチャー (医学) 誌に発表し た。
1998年夏に、臨床 (フェーズ I) 試験が開始された。結局、149名のCML 患者が登 録された。 全員が「インターフェロン療法」に耐性! 一年後の試験結果は、副 作用なし! 勿論、多くのCML 患者の白血球から、例の「フィラデルフィア染色体」 が消えていった ("治療効果がある" という証拠!)。 会社は薬剤の増産を開始し、フェー ズ II を 1999年5月に始めた。 米国のCML患者数は当時、約15、000 人。 全人口 (3億人の僅か 2万分の1! NF2 患者数より多少多い程度)。インターフェ ロン療法では、半年後に 殆んど全員が死亡したが、Gleevec 療法では、生存率 90% だった! この結果から、会社は、臨床テスト開始2年半後 (2001年2月末)に 、FDA へ「新薬申請書」を提出した。 何んと3カ月後に、「Break-through 」 として承認された!
その後、Gleevec には、ABL ばかりではなく、KIT やPDGFR 等のチロシン=キナー ゼをも阻害することが判明した。 実は、これらの発癌キナーゼの下流には、発癌 キナーゼ「 PAK 」が関与する。従って、Gleevec は、間接的に "PAKをも遮断"する ので、NF腫瘍など (全ての固形腫瘍) の治療にも有効であることが判明した。 2009年 に、ブライアン=ドルーガーはGleevec の開発 (市販化) に貢献したことを讃えられ、「ラス カー医学賞」をもらい、 2013年には、アレックス=マターが「セント=ジョルジー賞」をもらった。
2014年には、中国の研究グループによって、Gleevec に美白 (メラニン色素合 成を阻害する) 作用があることが報告された。実は、これは驚くべきことではな い。というのは、丁度同じ時分に、我々は「メラニン色素合成にはPAKが必須」で あることを突き止めたからだ。Gleevec は、"PAK遮断作用" によって、美白作用を発 揮する。 つまり、(長らく) 常用していると、
「フコイダン」同様、"美白" にもなる!
実は、アレックス=マター (82歳) は、Gleevec の市販に成功後、2004年頃から、 シンガポールの研究所を拠点にして、伝染病の治療薬を開発するプロジェクトを 主導しているようである。 そこで、来たる2023年に、シンガポールを久し振りに 訪れ、アレックスから、我々のPAK遮断剤「15K」の市販化への作戦 (極意!) を (何とか) 伝授してもらおうと計画している。。。
参考書:
詳しくは、ロバート=シュック著「新薬誕生」(小林 力 訳、2008年出版) の 第6章: グリーベックを参照されたし。

2022年12月30日金曜日

アストラゼネカ製「セルメチニブ」(Koselugo):
米国では、NF1 (小児: 3歳以上) 患者に 承認取得
(2020年4月) 、日本でも"承認" (だが、極めて「高価」)!
Gleevec (ジェネリック) なら 一錠 (100 mg) : 約600 円!

この薬剤 (セルメチニブ) は、「AZD6244」という名の下に、2007年頃に開発された "PAK" の下流にある発癌キナーゼ (MEK) に対する阻害剤韓国でも、2021年5月末に、使用許可
"アレクシオン" ファーマ (アストラゼネカの傘下) は, 2022年9月27日、神経線維腫症1型(NF1)における叢状神経線維腫(PN)の適応で「コセルゴ カプセル10mg/25mg」(一般名=セルメチニブ硫酸塩)が26日に "日本" 国内で薬事承認されたと発表...
2022年11月 改訂(第2版): 薬価 ("億万長者" 向き)!
コセルゴカプセル 10mg : 12622.8円/カプセル
コセルゴカプセル 25mg : 30257.8円/カプセル

一般庶民には、(安価な「ジェネリック」が販売されるまで) 当分、「フ コイダン とビタミン D3 の併用 」をやはり、勧めた方が賢明!
(少なくとも) 動物実験では、この薬剤はNF2 腫瘍にも効くが、不幸にして、NF2 患者数 は (世界的に) NF1 患者数の10分の1に過ぎないので、NF2 患者への適用に関する 認可は、恐らく (早くても) 数年先だろう。 この薬剤の腫瘍細胞に対するIC50 は、10 micro M ("CAPE" や "Gleevec" とほぼ等しい!) で、我々 が開発した"PAK遮断剤"「15K 」の薬効 (IC50= 25 nM) の 「400分の1 」に過ぎない!
なお、米国の「NF2 IS」なる News Letter 欄 (2020年) によれば、 NF2 腫瘍患者を 対象にした Gleevec あるいは Selumetinib による臨床テストが進行中である。 詳しくは: https://www.nf2is.org/imatinib.php
Gleevec は、既に「ジェネリック」製品が市販されているので、ずっと安価である はず。。。
Gleevec 「ジェネリック」製品の情報: 一錠 (100 mg): 約 250-600 円!
http://www.generic.gr.jp/index_sr.php?mode=list&me_id=17187

2022年12月29日木曜日

小林政子訳 「最後のヴァイキング」
ローアル・アムンセンの生涯 (2017)
「地上の探険」Golden-Era は終わった!

我が輩は「月並み」の冒険家/登山家で、北極点や南極点に達したことはないし、エベレス トの頂点にも達したことはない。 我が輩は、自分自身の選んだ「エベレスト」 (「PAK」と呼ばれる病原/加齢キナーゼ) を究めつつある研究者に過ぎない。しか しながら、エベレストの頂点に初めて到達したヒラリー郷やテンジン (シェルパ ) の快挙や、南北 (両) 極点に初めて到達したアムンセンの快挙に、脱帽せざるを 得ないし、そこに到達するまでの 困難なプロセスから学ぶことが極めて多い。
さて、我が輩の昔の「邦訳の相棒」(小林さん) が、数年前に、アムンセンに関す る評伝を邦訳して、出版したことを、(紀伊国屋のサイトで) 最近知った。 未だ 読んでいないが、"実際に南極点に達した経験のある日本人冒険家"が、絶賛してい るので、 (多少長くなるが) "絶妙の" 書評 at Amazon.co.jp を参考までに、ここに "転載" して、紹介したい。。。
(阿部雅龍: 2019年1月、日本人初踏破の「メスナールート」による南極点単独徒歩到達=918 kmを達成) のように南極点に到達したという実体験から、この人物を語れる日本人は少ないだろう。 人類史上初めて北極点と南極点に到達し、極地冒険史上で燦然と輝く冒険家であるローアル・アムンセン。南極ではアムンセン隊とスコット隊、白瀬矗 (同郷の大先輩) 隊との南極点争奪レースが繰り広げられた。 冷徹かつ完璧な冒険家というイメージをずっと持っていたが、この本で覆された。原文も素晴らしいのだろうが、"訳が秀一" だ
遠征の旅に借金を重ね、多額の資金獲得の為に走り回る。エンタメと冒険を組み合わせ、アムンセン自身は一流の冒険家でありながら、一流のショーマンでもあった。記念切手を売り、新聞社との独占契約をとり、ミディアミックス的に冒険という商品を売り出していく。現代冒険でも主だって取られる手法を開拓したのは彼だった。 真のヒーローたる人間でありながらも、運命に押し流され、老年に差し掛かった最後は, 遭難者の救助の為に向かった北極に消えていく。
南極探検英雄時代は超人的な冒険家たちが活躍したが、その中でアムンセンは名実ともに随一の存在だ。犬ゾリで南極点に到達した際も、積んだ食糧や燃料などが減りソリが軽くなるため、帰路に犬を射殺して食糧にする事を予定に組み込み、犬ゾリのスキルはイヌイットたちから学び、探検隊の分裂を防ぐ為に船長と隊長を兼ねて遠征に出るというスタイル(船長と隊長というリーダーが2人いると隊は分裂しやすい)で隊を見事にまとめ上げるリーダーシップを発揮する。 アムンセンが書いた自伝を読むと、あっさりと南極点に到達したかの如く見えたが、 この本を読むと南極遠征の苦労がありありと見えてくる。
21歳で両親をなくし、探検を志し、北西航路を船で航海し、犬ゾリで南極点へ、飛行船で北極点へ。行き先ばかりか手法までも次々と変え、目標を達成していく。 これらの1つのみでも大冒険なのだが、それに満足せず歩みを続ける。 1つの冒険を達成すれば生涯生きていくだけの十分な資産が講演などで手に入ったはずだ。 アムンセンは安楽を貪ることをせず、資産を全て次の遠征に注ぎ込むばかりか、借金まで重ねていく。 生涯を通して安定する事は決してなく、次なる窮地に自ら飛び込んでいく。 どうしてそこまで・・・と思う人の方が多いだろう。 お金は彼にとって夢を叶える手段でしかなかった。 資料を元に客観的な文章が続いていくが、スポンサード (Sponsored ?) しながら冒険をしている僕自身にとっては他人事ではなかった。 時代は違えども、現代冒険家たちと丸っきり同じじゃないか。 新たな冒険のアイデアを生み出し、資金獲得に駆け回る。 時代は違えども、その歓喜も悲哀も自らの事として痛切に感じる。
彼は"鉄の意志を持った傑物"だったのは間違いないのだが、どこまでも不器用、であるにも関わらず、世間は彼の気持ちなどお構いなしに、遠征の成否で上げたり下げたりしてくる。 プロとして生きるという事はそういう事なのだが、精神的にも疲弊してくるアムンセンの姿が後半になるほどに痛々しい。長年の冒険で身体がボロボロになって行く描写もあり、医者には、「長生きしたければ冒険を止めろ」と忠告される。 過酷な現場に出続けるという生き方が、いかに苦しい生き方なのかと思わされる。
それでもアムンセンが掻き立てられるように冒険に向かったのは、誰よりも "ロマンチスト" であり、ロマンを冒険で体現して生きる男であったのだろうと僕は感じた。 不器用な生き様ではあるが、信念を貫いた男の生き方として僕は憧れる。 また、この本ではヒロイックな冒険家の、決してヒロイックとは言えない恋愛事情まで語られる。 この部分が実に人間らしく、かえって彼を好きになれる。
アムンセンと言えば、スコット隊との南極点レースの印象から、好かない 読者も多いだろうが、そういう人にこそ、この"等身大のアムンセン"を知って欲しい。 きっと、この人物が好きになる。 そして、リアルを知ってこそ、彼の偉大さがわかる。

我が輩が幾つかの書評を読んで感じたことは:
1。 南極点に (犬ソリで) 一番乗りを果たした (ノルウエーの) アムンゼンは「プロ」(準備周到) であるが、(馬ソリで) 二番手に終わった (英国の) スコットは、残念ながら、所謂 「アマチュア」(準備不足) だった。
2。 エベレストを初登頂したヒラリー郷は、その後南極点にも達したが、結 局 (米寿まで) 長生きしたが、アムンゼンは冒険のために、身体を酷使し、結局 (北極海で) 「遭難」、短命 (55歳!) に終わった (遺体は未だに回収されていない!) 。 我が輩は、 できれば「前者」の (或いは、免疫学者「バーネット」のような) スマートな生き方 (健康長寿) を選びたい。。。(読者が) 登山家なら、井上靖の実話小説「氷壁」と比べながら読むと面白い。。。
アムンゼンは、1911年に人類史上初めて南極点への到達に成功、1926年には飛行船 で北極点へ到達! そして、1953年にはヒラリーとテンジンが最高峰エベレスト の頂点に立った。以後、既に70年近い月日が経っている。いわゆる「地上の探険 時代」は、もう終わった! 新しいルートで、南極点やエベレスト山頂などに到 達する「探険」は、ある意味で「自己満足」に過ぎない! それだけのエネルギー と知恵があったら、 地球上で、様々な病気やその他の理由 (例えば、戦争や飢饉や貧困 ) で苦しんでいる人々のために、(ヒラリー郷の如く)、それをフルに利用してもらいたい!

2022年12月27日火曜日

ボブ=ブラウン: 政党「Greens」の創始者
自然環境の保全と人権保護のために戦う!
豪州初の「ノーベル平和賞」に値する活動家!

紳士的な革命家」と呼ばれている豪州の「Greens」の創始者、ボブ=ブラウン医 師は、78年前の本日 (1944年12月27日) にシドニーの郊外で誕生した。先ず、彼 の誕生日を心から祝いたい! 父親 (ジャック) は祖父についで、警察官だったそ うである。 本人は、名門シドニー大学医学部卒の開業医。 1972年にタスマニア島 (州) に移住。
実は、ボブが ("姉弟" 関係の双生児として) 産まれたのは、戦争中の最中で、日 本軍が沖から砲撃を繰り返していたという。だから、父親は応戦に急がしく、妻 が大変なお産の最中に、病院に駆けつけられなかったそうである。姉のジャンが 先に産まれ、(辛抱強い) ボブは30分後に産まれて来たので、父親曰く、「ボブは、 何時も紳士的だ」と賞賛したそうである。。。ボブは後に (1983年頃)、「森林保護」を旗印に、世界初の 「Greens」という政党を「タスマニア島を拠点」にして結成するが、ロシア革命 を始めたレーニンと違って、「紳士的 (柔和) な革命家」と呼ばれるようになった。
豪州の「Greens」は、いわゆる二大政党 (労働党と自民党) に次ぐ、"第3政党"とし て活躍し、主に大都市 (メルボルン、シドニー、キャンベラ等) の "インテリ層" か ら支持を受け、有権者全体の約10% から支持されている、いわゆる "革新" (左派) 政党 である。主なスローガンは、環境保全 (地球温暖化の阻止) 、少数派 (特に 戦争避難民) の人権保護、戦争 (イラク戦争やアフガン戦争) への関与に反対する "平和主義" な どである。 20年間「Greens」の党首を務めた後、2012年に独自の「Bob Brown 財団」を設立し て、環境保全のための闘争を継続している。
実は、2004年にボブ=ブラウンの英文評伝が豪州で出版されたので、我が輩は早速、 「邦訳の相棒」 (外務省出身の小林政子さん) と共に、その邦訳を出版する企画 を立て、環境問題に熱心なアルピニスト (野口健さん) からも、推薦の言葉を頂く予定になっていたが、残念ながら、肝心の出版社が日本国内に見つからず、企画を止むなく 断念した!
実は、ケニアのワンガリ=マータイ女史 (1940-2011) が、1977年に彼女が始めた、いわゆる「Green Belt Movement」(植林運動) のお蔭で、 2004年にノーベル平和賞を貰ったために、日本の 出版界は、その自伝などに基づいて、数社が挙って、「勿体ない」とか「へこた れない」とか言う短いキャッチフレーズを付けて、 大小数冊の邦訳を出版したた め、ボッブ=ブラウンの評伝は、すっかり影が薄くなってしまった!
「権威主義」の日本では、「ノーベル受賞」という「お墨付き」がないと、伝記の 邦訳を引き受けてくれる出版社が中々見つからない! ノーベル医学賞に輝く 「マックファーレン=バーネット」 (メルボルンの免疫学者) や「シドニー=ブレナー」("南ア生まれ" の線虫学 者)、ノーベル文学賞に輝く「パール=バック女史」( "中国育ち" の "東西の架け橋") の伝記 (評伝/自 伝) の邦訳の出版には (1995年-2005年) に、何とか成功したが。。。願わくば、 我が輩が未だ生きているうち (せいぜい「10年」以内!) に、ボブ=ブラウンがノーベル平和賞に輝くことを心 から祈っている。。。 日本の「グリーン党首」だった「紋次郎」(中村敦夫氏) も、 きっとそう願っているに違いない。 我々 "老世代" (in twilight-zone) には、「時間切れ」が刻々と迫っている!

2022年12月26日月曜日

(発癌性の) PAK-TOR シグナル経路:
我々の寿命を短縮している!
「フコイダン」や 「D3」はそれを阻止!

ごく最近 (2020年に)、 ドイツのキール大学 (トム=レーダー教授) のグループが ショウジョウバエを実験材料に使用して、興味深い実験結果を得た (1)!
さて、2004年頃、米国「CalTech」の シーモア=ベンツァー (1921 - 2007) の研究室 (ショウジョウバエの遺伝学で有名!) で、TOR 欠損株が野生株に比べて長生きすることを発見した。 数年後 、マウスをラパマイシン (TOR阻害剤) で処理すると、矢張り長生きすることが証明された!
ドイツのグループは、ショウジョウバエを海藻 (特に褐色の) のエキス (1 mg/ml) をショウジョウバエの餌に加えてやると、矢張り寿命が延びることを発見した。 特に面白いのは、TOR 欠損株に (このエキスを) 与えても、もはや寿命の延長は見られなかった。 そこで、結論としては、この海藻エキスに "TOR" (発癌キナーゼの一種) を阻害する物質が含れているに違いない、と結論した。
我が輩が (ごく最近得た) ホットな知識によれば、海藻由来のフコイダンには、PAK遮断作用ばかりではなく、TOR阻害作用もある。 従って、どうやら、(発癌性の) PAK-TOR シグナル経路が、(少なくとも、マウス、蝿、線虫では) 寿命を縮めているらしい。。。
参考文献:
1. Yang Li , Renja Romey-Gl??ing , Navid Tahan Zadeh et al (2020).
Furbellow (Brown Algae) Extract Increases Lifespan in Drosophila by Interfering with TOR-Signaling. Nutrients. ;12(4):1172.

2022年12月25日日曜日

病原キナーゼ (PAK) に拮抗する主な抗癌遺伝子:
NF1、 NF2、PTEN、RB、p53、LKB1 等
NF2腫瘍の治療に、PAK遮断剤とTOR阻害剤の併用!

病原キナーゼ (PAK) に拮抗する遺伝子産物の歴史は、抗癌遺伝子 NF2 から生産される「メルリン」がPAK を直接阻害することを、我々が2003年に発見した時点に、遡ることができる。 以後、様々な抗癌遺伝子産物が、PAK を阻害あるいは遮断することが続々判明した。言い換えれば、大部分の固形癌は、PAKを遮断すれば、(副作用なしに) 治療可能である!
NF1 産物は RAS GAPの一種で、RAS の機能を阻害することによって、下流のPAK を遮断する。 PTEN産物 は、フォスファターゼの一種で、PAKを脱燐酸化して、それを不活化する。LKB1 産物は 抗癌キナーゼで、PAK を燐酸化して、不活化する。同時に AMPK と呼ばれる抗癌キナーゼを (逆に) 活性化する。 この LKB1 に関する研究は、我が輩の (東大時代の) 友人で、 京大医学部の武藤 誠 (教授、北野病院の研究部長と兼任) らの2010年頃の研究による。 RB については、前述した。
さて、つい最近のNF2に関するレビューを読んでいたら、面白い記事が見つかった。 実は、2012年頃に、Jim Gusella の研究室で、メルリンのもう一つの標的を見つ けていた。それは「TOR 」と呼ばれる発癌キナーゼである (1)。 従って、メルリ ンはPAK 以外に、TOR を阻害しているようである。言い換えれば、TORの阻害剤 (例えば TORin 1, IC50=250 nM) によっても、NF2 腫瘍の増殖が抑制されるらし い。 従って、理論的には、PAK遮断剤とTOR阻害剤を併用すると、NF2腫瘍の治療 がより効果的になるはず!
海藻由来のフコイダンがNF腫瘍に効く、と前述したが、ごく最近の中国 (チンタオ 大学) の研究チームによれば、フコイダンは (「PAK」を遮断するばかりではなく )、「TOR」も阻害する (2)。 従って、フコイダン自体でも 「鬼に金棒」
更に、(NF 腫瘍の治療に) フコイダンとビタミン D3 の併用を勧めているが、実は D3 には、(「PAK遮断」ばかりではなく)、TOR を阻害する作用もあることが、判 明した (3)。従って、フコイダンとD3の併用を引き続き、推奨したい! Merry X'mas and Happier 2023!
参考文献:
1. MF James, E Stivison, R Beauchamp, S Han, H Li, MR Wallace, JF Gusella,et al (2012).
Regulation of mTOR complex 2 signaling in neurofibromatosis 2-deficient target cell types.
Mol Cancer Res.;10(5):649-59.
2. Nan Zhang , Meilan Xue , Qing Wang , et al (2021).
Inhibition of fucoidan on breast cancer cells and potential enhancement of their sensitivity to chemotherapy by regulating autophagy.
Phytother Res. ;35(12):6904-6917.
3. A Al-Hendy , MP Diamond , TG Boyer , SK Halder (2016).
Vitamin D3 Inhibits Wnt/β-Catenin and mTOR Signaling Pathways in Human Uterine Fibroid Cells.
J Clin Endocrinol Metab. ;101(4):1542-51.

2022年12月24日土曜日

「日台」間のチームワークにより、
「網膜芽細胞腫」(RB) の治療法が確立
次は、「RAS 癌」 や 「NF 腫瘍」の治療法の実用化!

さて、世界各国の平均 「IQ 」順位 (2022年の集計) によれば、1位 「台湾」(IQ=116)、2位「日本」(IQ=113) 、3位「ハンガリー」(IQ=111)、4位 「韓国」(IQ=111) だそうだ。首位の台湾に追い付き、更に追い越すためには、 日本人はもっと天然の「PAK遮断剤」を常用する必要がある! COVID 対策で大活躍した台湾の「鉄人」大臣 の「相棒」(天才「 IT」 担 当大臣: Audrey Tang) の IQ は180 以上 (高過ぎて、計測不可能!) だそうだ。 他方、日本の内閣の大臣たちは、「低 能ばかり」!
我が輩の親友で、台湾出身の李文華博士は、奥さん (玉華) と共に、 渡米して、カルフォルニア州立大学 (UCバークレー校) で博士号を取得した後、 UCSDで、1987年に世界初の抗癌遺伝子「RB」 を発見した (1)! 以後、p53、 NF1、 NF2, PTEN などの抗癌遺伝子が続々と発見された!
未だこの分野では (誰 も) ノーベル賞はもらっていないが、何時受賞しても不思議ではない!
李博士夫妻は "台湾" 出身の「キューリー夫妻」
と呼ばれている。 我が輩は "RB" の発見を聞いて、UCSD をおさらばして、メルボルンの癌研に転勤し、 (副作用のない) 「抗癌剤」(=PAK遮断剤など) の開発研究に乗り出した。。 少なくとも人類では、"GM" (欠損した遺伝子を補充する) 治療は、不可能だ からだ! 癌治療に必要なのは、「欠損した遺伝子、例えば 「NF2 」等、の代わりをする薬剤」を開発することであ る! つまり、"実用的な" 創薬には、しばしば「発想の転換」或いは「戦術の変 更」が必要だ! 遺伝子病の治療では、遺伝子の同定は、ほんの出発点に過ぎ ず、それを然るべき「薬理作用のある」化合物に変換すべき"長い道程 "を経なければならない。
ようやく2015年になって、"RB" 転写蛋白 が PAK1 遺伝子の発現を抑制し ていることが判明した (2)。従って、RAS 癌やNF2 腫瘍と同様、「Retinoblastoma」 (RB=網膜芽細胞腫) は、PAK遮断剤で治療しうることが判明! 実際、2010年には、慈恵医大のチームにより、PAK 遮断剤/HDAC阻害剤である "FK228" (藤沢製薬が1994頃 に開発) 等によって、RB 癌の治療が可能であることが示され (3)、我が輩は李夫妻に その「ビッグニュース」をメールしたのを憶えている。 実は、それに先立ち、2005年に我々のグループは、藤沢製薬などと共同で、 FK228が、HDACの下流にある「PAK」を遮断することを発見していた (4)。 こうして、 最高の「IQ 」を誇る「日台」間のチームワークによって、少なくとも 「RB 治療」問題は解決した。
誠に残念至極だが、市販されている「強力な」PAK遮断剤であるFK228もイベルメク チンも、BBB を通過しない! 従って、NF2 などの脳腫瘍には効かない! 然も、日本にも台湾にも、 (BBBを通過しうる) "PAK遮断剤" の開発をめざすグループは「皆無」である! 従って、 IQ がずっと高そうな「火星人」(ハンガリー生まれの応用数学者で"コンピューターの元祖":ジョン・フォン・ノイマン 並、 IQ=250-300) との共同研究が、今後将来、必要かもし れない。 前述したが、ハンガリー人は「フン族」の子孫 (蒙古系)。フォン=ノイマンはユダヤ系。 従っ て、 その組み合わせ (雑種)は、"火星人" に近い! いわゆる「魔法の弾丸」(15 K 等) を実用化する「奇抜な」アイディアが待たれる。。。
実は、火星人ではないが、カナダ出身の医学者 (Jim Gusella) が米国ボストンの "Mass General" (ハーバード大学総合病院) に、未だ勤務中らしい。彼は1993年頃、 世界で最初に、NF2 (抗癌) 遺伝子を発見した。 その直後、彼との共同研究で、NF2遺 伝子が 発遺伝子「RAS」と拮抗することを、我々は発見! その10年後に、NF2遺伝 子産物 (メルリン) が「PAK阻害蛋白」であることを、 我々は突き止めた。 そこ で、我々の天下の宝刀「15K」(PAK遮断剤) の臨床テストを、ジムに何とか手配して貰らおう、 と目下考えている。。。
参考文献:
1. W H Lee, J Y Shew, F D Hong, T W Sery, L A Donoso, L J Young, R Bookstein, E Y Lee (1987)。
The retinoblastoma susceptibility (RB) gene encodes a nuclear phosphoprotein associated with DNA binding activity. Nature; 329(6140):642-5.
2. Bernadette Sosa-Garc et al (2015).
The Retinoblastoma Tumor Suppressor Transcriptionally Represses Pak1 in Osteoblasts.
PLoS One. ; 10(11):e0142406.
3. T Kawano, M Akiyama, Agawa-Ohta, et al (2010)。
Histone deacetylase inhibitors valproic acid and depsipeptide (FK228) sensitize retinoblastoma cells to radiotherapy by increasing H2AX phosphorylation and p53 acetylation-phosphorylation.
Int J Oncol. ;37(4):787-95.
4。 Y Hirokawa, M Arnold, H Nakajima, J Zalcberg, H Maruta (2005)。
Signal therapy of breast cancers by the HDAC inhibitor FK228 that blocks the activation of PAK1 and abrogates the tamoxifen-resistance。 Cancer Biol Ther. ;4(9): 956-60.

2022年12月23日金曜日

船酔い止めの薬「Scopolamine」(商標ブスコパン) :
大量に経口すると、認知症に似た「記憶喪失」に!
その解毒剤は、アピゲニン等の「PAK遮断剤」

最近、豪州一帯で、「ベイビーほうれんそう」による中毒が発覚した。その原因は、それに混入していた雑草 (Thorn Apple=朝鮮朝顔) 中のアルカロイド 「Scopolamine」などであることが判明した。 このアルカロイドは、実は覚醒剤「コカイン」に良く似た化学構造をしており、どうやら共通の標的分子に結合するらしい。。。豪州では、ベービーほうれんそうを収穫する際、雑にトラクターやブルトーザーを使用するので、(畑の除草が雑だと) 雑草 (毒草) が混在してしまう!
興味深いのは、このアルカロイドの薬理作用である。1977年に、米国の有名な病院 "Mayo Clinic" の医者、ドナルド=ピーターセンが、マウスにこのアルカロイドを比較的大量に注射すると、「認知症」に類似した症状 (特に最近憶えたことを忘れ易くなる) 、つまり、迫る大学受験に備えて、猛勉強 する受験生には、「最悪」のコンディションを もたらす、ことを発見した!
さて、それでは、この薬剤の主な標的は一体何だろうか? 最近の研究報告によれば、少なくとも、2種類のキナーゼ (PKA とTOR) の活性化が関与しているようである。更に、面白いのは、この薬剤によって「認知症化」したマウスに、天然PAK遮断剤である「アピゲニン」(プロポリスやカモミール茶の主成分の一種) を投与すると、学習能力や記憶が蘇る、という研究結果が、韓国のプサン大学のチームによって、ごく最近報告された (1)! 従って、「Scopolamine」の標的キナーゼの一つは「PAK 」である可能性が出てきた。。。
参考文献:
1. Yeojin Kim, Jihyun Kim , Meitong He , et al (2021)。
Apigenin Ameliorates Scopolamine-Induced Cognitive Dysfunction and Neuronal Damage in Mice. Molecules. 26(17): 5192.

2022年12月21日水曜日

意外! 線虫には「目やオプシン(光受容体)」がないが、
色 (少なくとも、ブルー) を (白色光下で) 識別出来る!

ごく最近発表された米国の MIT (2002年にノーベル受賞の Bob Horvitz の研究室 ) とエール大学の共同研究結果によれば、(目やオプシンがないので) 「盲目」か と思われていた線虫が、青い色を識別して、遠ざかる習性があることが判明した (1)。正に「目に鱗」である!
この現象は、毒性をもった (ブルーの) 青かびや緑膿菌を、避ける (食べぬ) ための、防御手段の一つらしい。 この逃避現象は「白昼」では起こるが、「暗黒」では起こらない! つまり、何らかの手段で、色を識別している。 色々な変異体の逃避現象を調べてみる内に、大事な遺伝子が (少なくとも) 2つ だけ見つかった! その一つは線虫の遺伝子 Lite-1, もう一つは緑膿菌の遺伝子 PA14 (Pyocyanin と言う「青色の毒素」を生産する!) であることが判明した。
"Lite-1" はごく最近 (2016年) 線虫に初めて発見された (新しい) 「味覚/光受容体」 を生産する遺伝子。 紫外線 (あるいは青色) に極めて感受性が強い。 人類に例え れば、「青酸カリ」をいち早く察知しうる味覚受容体! 人類にはこれがないか ら、(無味無臭の) 青酸カリによる殺人事件が (戦後) 頻発した!
これが「PAK1」 と何らかの形でリンクしているかどうか、調べてみるのは、興味深い。実は、この「ブルー逃避反応」には、線虫のキナーゼ (哺乳類のキナーゼ「JNK」を活性化するキナーゼの仲間) も必須らしい。 哺乳類では、PAK1 はその上流にある! もし、このキナーゼが「PAK1」にリンクしていれば、PAK1 欠損株は、緑膿菌を食べて敢え無く死んでしまうはずだ。。。願わくば、そうでないことを望む。。。
実験室では、毒性のない (無色の) 大腸菌を通常、「線虫の餌」として利用するが、自然界では、様々な毒性の菌も繁殖しているので、それを自分で選別して、生き抜く「知恵」が必要!
参考文献:
1. Dipon Ghosh , Dongyeop Lee, Xin Jin , Robert Horvitz , Michael Nitabach (2021).
C. elegans discriminates colors to guide foraging. Science.;371 (6533):1059-1063.

ダーウインが (再び) やって来た!
学習の「質」と「量」??

「学習する」と一口に言っても、その内容は「千差万別」である。餌を与えると、 鳩や犬猫が (同じ) 飼い主に懐いてくるのは、「飢えを癒す」、あるいは「生き 残る」ための、極めて「原始的な」(或いは「本能的な」) 学習法であろう。腐敗 し切った政治家が「賄賂」をばらまくと、それに寄って来て、その政治家 (立候 補者) に投票する有権者の学習法も、(善し悪しはともかく) 「イヌネコ」の学習 本能に極めて近い! 恐らく、この種の (本能的な) 学習は、(大腸菌などを餌に する) 線虫から人類まで、(例外なく) 動物界に、あまねく共通に違いない。。。
さて、少なくとも人類 (ホモサピエンス) には、全く別の学習のしかた (パター ン) が存在する。これは、人類の親戚である「ネアンデルタール原人」にも共通 する(極めて) 原始的な習性である。洞窟内の壁に、動物などの姿を描く、言わば 芸術的な習性 (才能) である。豪州に5万年以上昔から住んでいた「アブオリジナ ル」(先住民) にも共通である。明らかに、このような芸術的活動は、(イヌネコ の)「死活問題」とは、殆んど無関係である。猿や象も、(褒美に) 餌を適当に与 えれば、「絵描き」の技術を学ぶことが出来るそうである。
霊長類のチンパンジーやゴリラには、ある種の道具を使用したり、自分で開発す る (比較的高度な) 「科学的」才能もあるらしい。 芸術的な、あるいは科学的な 才能は、イヌネコやマウスには、全くない。 従って、一口に "IQ" (知能/学習能 ) と言っても、動物によって、その内容 (特に「質」) に大きな差がある。 意外 にも、鳥類 (特に渡り鳥) や鯨 などには、かなり高度な「ナビゲーション」技術 があり、季節の変わり目に (特に産卵のために)、大陸から大陸へ、正確に移動す ることが出来る。
従って、人類に必須な才能を基盤に作られた「IQ」テストの結果で、人類とオランウー タンとを比較することは、(科学的には) 余り意味がない。 オランウータンには、 「木から木から飛び移る」才能が生き残りに必須であるが、地面を歩く人類には、 余り木登りの技術は必須ではなくなったからだ。。。全く同じ種で、PAK1欠損株 と野生株との間で、IQ を比較することにのみ、「科学的な意味」がある!

2022年12月20日火曜日

オランウータン (森の人) の知能指数 (IQ) と寿命について:

現在、オランウータンは、人類に次いで最も「知的な」動物とされている。
例えば、オランウータンの "サンディ" は、人間の 「IQ テスト」に参加したこ とがあり、その時のTVの生放送では「75点」を獲得し、人間の候補者の一人を見 事に破った! 因みに、 (人類の) 「知的障害」の認定は IQ=「70点 未満」。。。
歴史的には、人類以外の動物で 最高の 「IQ」 (=95点) を示したのは、「ココ」と呼ばれた "雌ゴリラ" (1971-2018)! "手話"で人間と意思疎通ができた...
さて、現行の法律では、倫理的な理由から、いわゆる 「GM」 (遺伝子を加工した ) "IVF" 人類を誕生させる (作り出す) ことは、残念ながらできない! しかしながら、 マウス、 魚類や山羊など (人類以外の) 動物を「GM化」することは、許可されているは ず。
そこで、人類に (知的に最も近い) オランウータンから 「PAK 1」 遺伝子のみを 削除した場合に、その「 IQ 」に一体如何なる変化が起こるか、を調べてみることは、 極めて興味津津!
PUBMED 情報によれば、シアトルのワシントン大学の"霊長類研究所"チーム (William Calvin etc) により、2018年に、 (人類と同様) ス マトラ産のオランウータン (Susie) の染色体11から、PAK1 遺伝子が分離され、そ の塩基配列が既知になっているそうである!
オランウータン (野生) の平均寿命は40歳、動物園に飼育されると50歳。 さて、2016年に、豪州南西"パース"の動物園に飼育されている雌のオランウータン は何んと、"60歳"の誕生日を迎えた (ギネス記録!)
線虫やマウスの前例に従えば、オランウータンのゲノムから「PAK 1」 遺伝子を削 除すると、更に 6割 "増" (つまり、100歳近くまで) 長生きするはずである。。。
実は、マウスに関するいわゆる「IQ 」 (学習能力) の測定結果を、ある専門誌に初めて発表した学者 (1) が20年ほど昔、米国のラットガー大学に現れたが、それが果して人類や霊長類の「IQ」に相当するものなのかどうかは、専門家の間で、かなり 意見が分かれている。 従って、マウスには「PAK1」欠損株が既に存在するが、そ の方法で "学習能力" を野生株と比較するのは、未だ「時期早尚」のきらいがある。。。
1. Matzel, L. M. et al. Individual differences in the expression of a 'general' learning ability in mice.
Journal of Neuroscience, 23, 6423 - 6433, (2003).

2022年12月19日月曜日

世紀の賭け: PAK欠損株は、
果して、野生株より利口か?

沖縄科学技術大学院 (OIST) で、2005頃からごく最近まで永らく線虫 (C. elegans) の遺伝学を研 究していた大家、丸山一郎教授が最近、米国のカルフォルニア州サンディエゴに 戻ったという知らせを受け取った。 恐らく、当地で家族とゆったり余生を楽しむ 予定なのだろう。。。
彼との出会いは、2003年頃だったと思う。彼はシドニー=ブレナー (1927-2019、 2002年に線虫の研究でノーベル医学賞をもらった) の英国 MRC 時代以来の弟子だっ たが、ブレナーが「沖縄に、(英語を公用語とする) 国際的な「自然科学大学院」 を沖縄に創立する」と言い出したので、その宣伝も兼ねて、2001年にブレナーが 出版した英語の自伝を「エレガンスに魅せられて」という表題で「邦訳」版を、 地元の琉球新報から出版すべく、我が輩と丸山さんの家族で邦訳を引き受けた。 その後、残念ながら、丸山さんに再会する機会はなかったが、 今回の「帰米」を 機会に、彼と文通を再会してみた。
実は、2013年に、我々は線虫のPAK欠損株 (RB689) が野生株より6割も長生きをす ることを発見して、記念にPAK 研究に関する最初の単行本 (英語版) を出版した。 その折、1994年にPAK を初めて哺乳類で見つけた英国人で、シンガポールで研究 を続けているED Manser 博士と、面白い「賭け」をした。 彼曰く、「PAK欠損株は 長生きするかもしれないが、阿呆だ!」。 我が輩は、「そうは思わない! 多分、よ り賢明ではなかろうか」と答えた。 実は、PAK遮断剤は一般に、認知症などの障害 のある老人らの「記憶力を回復」する作用があるからだ。 しかしながら、後者を裏 付ける遺伝学的な証拠は未だない。 そこで、丸山さんに、サンディエゴで、その 「賭けに決着を付ける」ために、線虫で、RB689と野生株の間で、一体どちらが、 例えば、いわゆる「条件反射」という記憶力の一種をより発揮するかを、(暇にま かせて) 調べてみて下さい、とお願いしてみた。。。
野生株は食塩に向かって走行する性質 (chemotaxis) があるが、その直後に餌を除 くと、(学習の一環として) 以後「食塩」を避けようとする習性 (条件反射) が備 わる。。。
さて、線虫の「学習」実験は兎も有れ、人類の場合は、少なくともPAKの活性が (健 常よりも) 1.5 - 2倍ほど高まると、NF1 やダウン症 (DS) を発症し、知的障害 (学習能 の低下) がしばしば起こる。興味深いことには、NF1 や DS の患者では、(PAK遮 断剤である) 「ビタミンD3」 の血中濃度が極めて低いことが、判明した (1)。そ の主な理由は、恐らく、D3 を水酸化し (不活化する) 酵素 (CYP24) の遺伝子発 現がPAK依存性であるからだ。 従って、(幼児の頃から) フコイダ ンなどのPAK遮断剤をビタミンD3 と併用すると、鬼に金棒! 「相乗作用」によ り、(少なくとも) 「PAK活性を正常レベルに下げる」ことによって、学習能力が 高められる可能性が高い。
参考文献:
1. Stefano Stagi , Elisabetta Lapi , Silvia Romano , et al (2015).
Determinants of vitamin D levels in children and adolescents with down syndrome (DS).
Int J Endocrinol. ;2015:896758.
しからば、「ビタミンD3 の血中濃度」を指標にして、それは「PAK の活性レベル に反比例」し、「 "知能指数" (いわゆる「IQ」) や "寿命" に比例する」、と判断 (一般化) して良いだろうか? 少なくとも、線虫の場合、D3 は確実に寿命を延ばす (2)! (線虫の「IQ」を測定する 方法は、未だ確立していないが) 。
2. Karla A Mark , Kathleen J Dumas , Dipa Bhaumik , et al (2016).
Vitamin D Promotes Protein Homeostasis and Longevity (of C. elegans) via the Stress Response Pathway Genes skn-1, ire-1, and xbp-1.
Cell Rep. ;17(5):1227-1237.
少なくとも、マウスの認知症 (AD) モデルでは、ビタミンD3 が 確実に 「記憶力」 を改善する (3)!
3. Maria Morello , Véréna Landel , Emmanuelle Lacassagne et al (2018).
Vitamin D Improves Neurogenesis and Cognition in a Mouse Model of Alzheimer's Disease (AD).
Mol Neurobiol; 55:6463-6479.

2022年12月18日日曜日

「永世中立國」という「スイス」の偉業
その独立は「ウイルヘルム=テル」伝説から

地球上で、「永世中立國」を (ナポレオン失脚後) の1815年 (ウイーン会議) 以 来、永らく (200年以上) 維持して来た国は、世界広しと言えども、「スイス」連 邦共和制のみである。 それまでは、ナポレオンが支配する「フランス領」だった そうであるが。。。 スイスは、その昔、永らく隣国「オーストリア」(ハプスブルク家) の支配下にあっ た。 そのオーストリアから、初めて「独立」を勝ちえたのは、「ウイルヘルム=テ ル」という伝説的な人物 (弓矢の名手) を指導者として、立ち上がったスイス民 衆の努力の賜物である。
1291年に始まる スイスの独立史は、小国「日本」にも大 いに参考になるはずであるが、残念ながら、日本国内の政治家や民衆には、 余り注目されていない。日本の (腐敗しきった) 政治家たち (特に自民党) は、 敗戦後、戦勝國「アメリカ」にベッタリで、自国を、言わば「米国の植民地化」 している。沖縄は今でも、実質上「米国の植民地」のままである。。。
我が輩は、 "ウイルヘルム=テルの伝説" を讃えたロッシーニ作曲の 歌劇「序曲」(1829年 作曲、20世紀後半になって、米国テレビ西部劇「ローンレンジャー」の主題歌にな る) が、大好きである。オーストリアの悪代官ゲスラーに、弓矢で立ち向かう 「テル」を象徴した勇壮な旋律に血沸き肉躍る感がある。 実は、この旋律は、スイスの軍隊 (民兵) の行進曲だそうである。。。
我が輩は、半世紀前に、米国の植民地「日本」を逃れて、海外 (主に欧米諸国や 豪州) に、「自由かつ独立独歩の天地」を求めて、永住し続けているが、残念な がら、(現在の永住地) 「豪州」も、最近は、(少なくとも政治的に) 「英国の植 民地」から「米国の植民地 (同盟國) 」に豹変しつつあるのは、極めて残念至極で ある。。。もっとも、「米豪安保条約 (同盟)」などは、未だ結ばれていない!
勿論、(ウクライナや台湾の如く) ロシアや中国の植民地になるよりは 「マシ」であるが。。。
それでは、一体何故、我が輩は (永世中立国) スイスに永住しなかったか?
1) 物価がとても高過ぎて、"貧乏" 学者には住み難い。
2) 独仏伊の "3国語" が入れ混じっ ている。
3) 製薬会社はバーゼルに多いが、創薬研究を (企業利益に左右されずに) 「学問」として "純粋"に研究 できる施設 (大学/研究所) は極めて少ない。
勿論、「登山」を楽しむには、最 高の場であるが。。。
もっとも、我が輩の (大学時代の後輩) で、沖縄出身の N 君の如く、スイスのバーゼルにあ るロッシュの研究所 "FMI" (Friedrich-Miescher-Institute) に転勤して以来、家族 全体で、スイスに「永住」を楽しんでいる日本人も (例外的には) いる。 同じFMI で永らく "発癌キナーゼ" (AKT) 研究をやっていた英国人の Brian Hemmings も、恐らくスイスに永住だろう。 彼の名前や顔は思い出すが、一体「何処」で彼と知り合ったのか、(「いにしえ=30年以上昔」のことで) 思い出せない。。。PUBMED で検索したところ、1988年頃にFMI で、(PKA を扱っていた時代に) Brian が我が輩の後輩 N 君と、ある共同研究をやっていたことが判明。従って、その頃 (豪州永住前に) 、FMI を訪ねた際に、彼に初めて出会った可能性が高い。。。
因みに、Friedrich Miescher (1844-1895) は、スイスの医師/生物学者で、 1869年 に (25歳で) 初めて核酸 (DNA/RNA) を発見した! 従って、スイスの誇るべき科学者の一人である!

2022年12月17日土曜日

化学療法 (PROTAC) の父: パウル=エーリッヒ

パウル=エーリッヒ (1854-1915) は、ユダヤ系のドイツ人医師で、「組織染色」が 得意だった。従って、いわゆる「美的センス」あるいは「芸術的センス」の持ち 主だった。彼は1908年に免疫学の研究で、ノーベル医学賞を、ロシアのイリア-メ チニコフと共に分かち合ったが、彼の本当の「偉業」は、その翌年に果たされた! その偉業によって、彼は、その後、「化学療法の父」として、後世の人々 (特に 創薬研究者) の間で、崇められた。 当時、梅毒という伝染病が世界中に流行して いた。現代に例えれば、「エイズ」に相当する性病だった。 エイズはHIV と呼ば れるRNAウイルスが病原だが、梅毒の病原菌は「スピロヘータ」と呼ばれるバクテ リアだった。エーリッヒ博士は、ベルリン大学病院で、医師として勤務しながら、 何とかこの病気を治す有効な治療方法を摸索していた。
さて、イタリアで、その病原菌が同定されるや、日本の「伝研」から派遺されて 留学中の志賀潔らと共に、この「スピロヘータ」だけを特異的に染色できる色素 を、先ずアニリン色素の中から発見した! しかし、その色素自身には、毒性が ない。 そこで、有毒なヒ素化合物を、この色素に化学的に結合させて、梅毒菌だ けを殺す「魔法の弾丸」(特効薬) を発明した。その化合物が出来るまでに、彼は、 合計 606 種類もの化合物を合成した。そこで、その弾丸を「606」と命名した。後 に、その薬は (製薬会社「Hoechst 」により) 「サルバルサン」と呼ばれるようになった。この薬の動物実験を主 に担当したのが、やはり「伝研」から派遺されてきた秦佐八郎だった。 エーリッヒ家は (夫妻共) 「ユダヤ系」だったので、ドイツ国内にヒットラーが台 頭するや、(夫パウルの偉業にも拘らず) 夫人や娘2人共、米国に亡命せざるをえなくなった。。。
このエピソード (英国に亡命したパウルの秘書が綴った"伝記") を、(神田の古本屋で) 立ち読みした途端、我が輩は「画 家の卵」から「創薬への道」に踏み込んだ。もう60年以上も昔の話である。 その伝記に基づいて米国のMGMが「Dr. Erlich's Magic Bullet」(1940年) を映画化したそうであるが、その白黒映画のビデオを、我が輩が最終的に入手したのは、1998年頃のことである。 それは丁度、 我々自身が、WR-PAK18 や CEP-1347 などの「PAK遮断剤」の開発を本格的に開始した時分だった。
"606" は、原理的には、 今流行りの、「PROTAC」 とか 「SNIPER」 (前述) とか 呼ばれている「抗癌 剤」の言わば 「元祖」に当たる。 エーリッヒのこの偉大な功績を讃えて、1952年か ら「パウル=エーリッヒ」メダル (賞) が設けられ、(抗生物質が専門の梅沢浜夫 ら) 数 名の日本人研究者も受賞している。 面白いエピソードがある。梅沢さん (東大医学部教授) の回想録「抗生物質を求めて」によれば、彼は、戦後、この白黒映画を観賞する機会を得たそうだが、ストマイを発見してノーベル賞をもらった米国 のワックスマンの研究所に留学する前に、英語会話のレッスンを受けたが、その教師は、この白黒映画で、「秦さん役」に扮した "日本人2世" だったそうである。。。
エーリッヒは医者 ("病理学" が専門) ながら、「有機化学」を会得していた。 彼の残した有名な言葉 :「結合なくして、反応無し」(Keine Reaktion Ohne Bindung, No reaction without binding) は、後世の若者 (創薬を目指す者) に、有機化学に関する知識が、「薬 をデザインする」ために必須であることを強調している。。。

2022年12月15日木曜日

「中性子」をウラニウム等に当てると、
「核分裂」が起こり「原爆」が誕生!

"中性子" (アルファー粒子をバリウムに当てると生じる "中性" の粒子) は、 1932年 に英国 (ケンブリッジ大学) のジェームス=チャドウイック (1891-1974) によって、 発見された。 彼はその発見に対して、1935年にノーベル物理学賞をもらった。
1938年に、(前述したが) ドイツのオットー=ハーンが、ウラニウムに中性子を当てるこ とによって、放射性のバリウムが生成することを発見した。 その現象を、「核分 裂」であると、(同僚だった) リーゼ=マイトナー女史が、最初に認識した。 それを 転機にして、「原爆開発への競争」が、ドイツと英米の間で始まった。
その競争の最中、最初 (1942年) に「原子炉」(核分裂の連鎖反応) に成功したのが、1938年 に ("中性子" の研究で) ノーベル物理学賞をもらって、そのまま米国 (シカゴ大学) に亡命したイタリ ア人の "エンリコ=フェルミ" (原爆の父) だった。 その前後に、(アインシュタインらの進言に基づいて) 米国の大統領命令で、 悪名高き「マンハッタン計画 」(原爆の開発/製造) がニューメキシコ の "ロスア ラモス" 砂漠で開始された! 危険な「火遊び」は、もう止めようではないか!!!
全く「皮肉な」話であるが、1938年の受賞現場で、フェルミ夫妻の「米国への亡命」 を助けたのは、同じ年に、ノーベル文学賞をもらった米国の作家「パール=バック」 女史 (名作「大地」などの著者) だった (実は、フェルミ夫人は「ユダヤ人」だった!)。バック女史は、フェルミの亡命が結局、「広 島と長崎への原爆投下」という悲劇を招いてしまったことに、大変後悔し、戦後 間もなく (1959年に) 、「 原爆を作った人々」(Command the Morning) と題する実在小説を出 版した。 しかしながら、その作品の「邦訳」は半世紀近く、(「原爆アレルギー」のためか) 日本では出版されなかっ たが、ようやく2007年になって、我々は、その邦訳の出版を果たした!
実は、2007年に邦訳出版にこぎ着けた理由の一つは、この小説に登場する「ジェ イン」という米国女性物理学者の「実在モデル」を偶々、北京郊外の農場で発見 したからである! この女性は、原爆の広島/長崎投下後まもなく、原爆使用に反 対して、米国から中共の北京に亡命した! その夫婦の長女と北京大学時代に同 窓だった女性 生化学者 (Dr. Yuan Luo) が、米国のバルチモアのメリーランド大学薬 学部で、「線虫」研究の専門家だった! 我が輩は偶々、その研究室で、2007年の夏 休みに、「PAK欠損株」の Phenotype (形質)、つまり少子化、熱耐性 などを、発 見しつつあった。 その後、間もなく、その老物理学者 (米寿) が (米国に住む長男と共に) (はるば る) 北京から「車椅子」で、「原爆で被曝した広島」を初めて訪れ、その際、東京で我が輩は、その「伝説の女性」に初対面する機会を得た!
「原爆の父」フェルミは (恐らく、放射能の被曝のため) 53歳で他界した (自業自 得!)。 他方、原爆投下に反対した「ジェイン」のモデル女性は、幸い「米寿」を完うした! 皮肉にも、(広島/長崎へ「原爆投下」を命じた) トルーマン大統領に、「水爆開発」 を進言し、ソ連より半年早く水爆実験を成功させ「水爆の父」と呼ばれたエドワー ド・テラー博士 (1908-2003) は、意外にも "長生き" (95歳、悪運強し)!
フェルミは「実験」物理学者、テラーは「理論」物理学者。この違いが、"寿命"にも 違いを生み出したか???
半導体の開発で、1973年にノーベル物理学賞をもらった江崎レオ 氏 (1925- ) は、 現在97歳! 「実験」物理学者でも、放射性アイソトープを扱っていないと、 「健康長寿」を楽しめるらしい。。。来年で、「受賞50周年」になる! 最近は 「受賞期が高齢になる」ので、「50周年」を存命で迎えるのは、なかなか難しくなっ た!

2022年12月13日火曜日

PAK 遮断剤の「美白作用」の発見は、
大晦日の「勘違い」(早合点) が発端!
「PD-L1 遺伝子」発現の PAK依存性も
「大晦日」の "御喋り" (文通) から誕生!

自然科学者と芸術家 (特に画家) との共通点は、先ず「観察」から始まる。従って、 自分の目で、世の中 (周囲の自然) をじっくり観察できない者は、科学者にも画家にもな れない。天動説と地動説との違いは、 結局「観察の深さ」の違いから生じた!
古代ギ リシャ時代には、日常の「単純な」肉眼観察から、「太陽も月も地球の周囲を回 る」という (天動説) が流行した。 ところが、16世紀後半になって、コペルニクスやガリレオ=ガ リレイ等の (極く少数の) 天文学者が、望遠鏡による観察から、「地球は自転しながら、太陽の周囲を回り、月は地球の周囲を回る」という、よ り複雑な「地動説」を唱え始めた。 不幸にして、在らぬ「神」を信じ「科学を無視」する時の「カトリック教会」 (当事の権力者たち) は、ガリレオを「異端者」として、とうとう幽閉してしまった! 幸い、今日では、(小学生を含めて) 大部分の人々が「地動説」を受け 入れている。
さて、 PAK遮断剤の「美白」 (メラニン色素の合成を抑える) 作用の発見への発 端は、2014年前後に遡ることができる。 実は、この年に我が輩の母親が、 "97歳間近" で他界 (大往生) した。 そして、東京の実家に住み (母の老後の面倒をみてくれ た) 我が妹が、残された幾許かの遺産を全部相続 (管理) してくれた。 そして、 その "一部" を有り難くも、沖縄の琉球大学構内に我々が設立しつつあった「PAK研究センター」 (PRC) 支部の運営/維持費として、寄付してくれた。
いわゆる「沖縄」プロジェクトの発端は、 2013年2月に、琉球大学農学部の多和田教授らが、線虫を実験材料にして、沖縄特産のゲットウ (月桃) とい う植物の葉っぱのエキスに、寿命を延ばす作用があることを突き止めたことにある。偶然にも、 丁度同じ時期に、我々は、PAK遺伝子が欠損する変異株 (RB689) が、野生株より、 6割も長生きすることを突き止めた。 そこで、ゲットウやその他、沖縄特産の植 物、のエキスの「PAK遮断作用」を、共同で研究しよう、というアイディアが誕生したわけである。沖縄が、少なくとも戦前、「最も健康長寿な県」として、知られていたからである。。。 先ず、手初めに、九州や関西から数名の講師を招き、琉球大学構内で、「創薬シンポジウム」を開催した。
さて、我が「PRC」沖縄支部が、実際に発足したのは、2015年の春だったが、その数カ 月前 (2014年の歳末) に、「天安門事件」(1989年) の直後に (北京から) メルボルンに亡命し、博士号を取得後、10年近く (癌研究所 内の) 我が研究室で、PAK研究の"大黒柱"として、活躍していた (北京大学医学部出身 ) の賀 紅 (Hong He) という女性研究者 (夫は大学の同級生で、独り息子と暮らす一家) の新築の家で、 「年越しそば」 代わりに、"中国風"のダンプリング (水餃子) 等を食べながら、新年を迎えつ つあった時に、偶々話題になったのが、"PAK遺伝子欠損" マウスのフェノタイプ (形 質) だった。Hong 曰く 「PAK が欠損すると、黒い毛のマウスが白ねずみになる ようだ」 (つまり、メラニン色素合成には、PAKが必須!) 。 日本で「紅白歌合戦」を観賞している時刻に、我々はメルボルンで、「科学」を真 剣に論じていた。。。
さて、 Hong の研究室 (メルボルン大学病院) に入手した白ねずみ (PAK遺伝子欠損株) は、実は、米国のある癌研 (FCCC) のPAK研究チームが開発した代物らしい。そこ で、その所長であるロシア系研究者、ジョン=チェルノフに、その話をメールで照会し たところ、「意外な」返事が戻ってきた。 その白ねずみには、実は、PAK遺伝子 以外に、メラニン色素合成に必須なチロシナーゼ遺伝子も欠損している、という のだ! 実は、哺乳類では、PAK遺伝子とチロシナーゼ遺伝子は、同じ染色体上に あり、しかも隣接しているそうだ。 従って、PAK遺伝子を欠損させる操作過程で、チロシナー ゼ遺伝子も同時に欠損する可能性が高い! 言い換えると、メラニン色素合成と PAKとの関係は、未だ「不明」(=謎) のままだった!
そこで、"PRC" 沖縄支部長 (多和田教授) の指導下にあるベトナム出身の博士課程の 院生 ( Be Tu さんという女性) に、マウスのメラノーマ細胞のPAK遺伝子の発現 を「SiRNA」で選択的に抑制した場合に、メラニン色素合成が一体どうなるか、を博士 論文研究の一環として、挑戦してみるように指示した。 その結果、PAK遺伝子の 発現が抑制されると、(その下流にある) チロシナーゼ遺伝子の発現も抑制され、メラニン色素合成 が見事に抑制された! つまり、メラニン色素合成は、発癌同様、「PAK依存性」で あることが、初めてはっきりと (遺伝学的に) 証明された訳である。 勿論、その「歴史的」研究論文で、その院生は「博士 号」をめでたく獲得した! 言い換えれば、美白 (メラニン色素の合成阻害) 作用 を指標にして、「PAK遮断剤」のスクリーニングが敏速にできる、という訳である。。。 勿論、ゲットウや沖縄産「プロポリス」等由来のエキスが美白作用を示すこと も (間もなく) 判明した。
その後間もなく、「ケトロラック」と呼ばれる鎮痛剤 (市販のPAK遮断剤) のカル ボン酸を、CC (Click Chemistry) で、エステル化することによって、その "細胞透 過性" を飛躍的 (500倍以上!) に増幅することに成功し、2017年に我々は、 (短期ながら) 実り多き「沖縄プ ロジェクト」に幕を閉じた。 その後は、メルボルンの自宅に、「PAK研究財団」なる事務所を設け、パソコンを専 ら通じて、海外の「若いPAK研究チーム」の育成/援助を、細々ながら続けている。。。2019年秋には、"財団主催"で、初の「国際PAK研究シンポジウム」をニューヨークで開催した。
更に、2019年の「大晦日」 (コロナウイルス発生直前!) には、Hong への "メール" 交信 (実は、我が輩の自宅には、騒々しい "電話" を設置していない!) で、京大医学部の本庶さん (2018年にノーベル医学賞) の発見した 、 いわ ゆる免疫「チェックポイント」( PD-1 や PD-L1) が、我々の話題になり、結局、 これらの遺伝子の発現は、九分九厘、「PAK依存性」である、という結論に達し、我 が輩は、その「仮説」を即、 論文に発表すると共に、彼女は 「PAK欠損」 マウスでは、これらの遺伝子が発現しないことを (間もなく) 実証するのに成功した!
なお、「現役」の研究者としては、彼女 (Dr. Hong He, 59歳) が目下、 少なくとも豪州 (否、南半球全体) で、「PAK」研究の第一人者である!

2022年12月12日月曜日

イタリアの Rita Levi-Montalcini (1909-2012):
「最も長生きした」ノーベル受賞 (科学) 者!

実は、Eddy Fischer (1920-2021) より長生きしたノーベル受賞者が存在した! 「男性」では、Eddyが 「最長」記録を依然保持しているようだが、(数少ない) 女性のノーベル受賞者 (科学者) の中で、イタリア出身の女性生化学者 、Rita Levi-Montalcini (1909-2012) は、何と「103歳」まで、"健康" で 生き延びた! 丁度 10年前の12月末に "大往生" した。
彼女は、1986年に、同僚の米国生化学者 Stanley Cohen ( 1922-2020) と共に、 NGF (Nerve Growth Factor) 及び EGF (Epidermal Growth Factor) の発見に対 して、ノーベル医学賞を分かち合った。イタリア出身の女性としては、彼女が、 "初" のノーベル受賞 (科学) 者になった!
NGF 及び EGFは、各々神経細胞や表皮細胞の増殖を刺激する因子 (蛋白)で、特に EGF は癌の増殖に深く関与し、最終的には、細胞表面にある受容体 (「EGFR」 と呼ばれるチロシン=キナーゼ) を介して、RAS やその下流にある "病原キナーゼ"「PAK」等を活性化し、様々な難病をもたらす、我が輩の研究分野では、余り歓迎すべき因子ではない。
大変興味深いことには、(ユダヤ系のイタリア人) Rita には、「一卵双生児」の妹 Paola がいた。 Paola も比較的長生きして、91歳まで、有名な 「芸術家」 (彫 刻家) として、活躍した。 (姉妹の) 父親は数学者(電気技師)、母親は絵描きだっ たそうである。。。
つまり、全く「同一」のゲノム (遺伝子セット) を共有しながら、外界からの刺激 (体験) の「違い」によって、科学者になったり、芸術家になったりし得る! 言い換えれば、遺伝学的には、科学者と芸術家との間には、(殆んど) 違いがない! 事実、イタリアのルネサンス期に活躍したレオナルド=ダヴィンチ (1452- 1519) は、「モナ=リサ」や「最後の晩餐」などの名画を描いた有名な"画家"であると共に、優れた"科学者" (エンジニア) でもあった! 我が輩自身が、「芸術家の卵」から、(最終的には) 科学者に成長した過程が容易に理解できる。。。
この事実から、 家庭および学校で、如何なる「教育」 (外界からの刺激) を、各々の 児童に与えるべきか、深く熟慮すべきだろう。
アドルフ=ヒットラーは、若き青年時代には、"画家志望"だった (画才があったか否かは不明)。片や、ヒットラーを相手に (米国からの "バックアップ" を得て) 第2次欧州大戦を戦い抜いた英国のチャーチル首相は、「画才」もあり、且つ「文才」もあった。戦後の1953年には、「ノーベル文学賞」をもらった!。 しかし、 ヒットラーは, どこでどう狂ったか、その卓越した雄弁と「洗脳力」によって、史上最悪の「独裁者」になった! もし、彼に一片の「美的センス」があったら、あんな「醜い」戦争は始めなかったはずである!
同様に「元統一教会」(霊感商法) からの「甘い誘い」(洗脳) には、くれぐれも要注意! 新型コロナウイルスよりも遥かに「悪性」 (感染力が強い)! しかも、 その後遺症の「治療法」としては、「晋三の狙撃」以外には、未だに開発されてい ない! ロシアによるウクライナ侵略も、("神風ドローン" による)「プーチンの狙撃 (暗殺)」以外には、今のとこ ろ、解決法が見当たらない。。。
願わくば、来年こそは、"コロナ-free", 且つ "プーチン-free" の世界を期待したい!

2022年12月10日土曜日

"可逆的" 燐酸化 (キナーゼとフォスファターゼ) の
発見 に対して 、ノーベル "医学" 賞 (1992年) !


12月10日は、「ダイナマイト」の発明家 Alfred Nobel (1833-1896) の「命日」だ そうである。彼の遺書に従って、1901年以来毎年、この日に、多くの人々が (雪降り しきる) 寒いストックホルムへ、"ノーベル賞" を受取りにやってくる。。。
1950年代に、シアトルのワシントン大学で、2人の生化学者が共同で、蛋白(Glycogen Phosphorylase=GP と呼ばれる酵素) の「燐酸化と脱燐酸化」のメカニズムを研究 し始めた。
この "2人" の学者は、Edmond Fischer (1920-2021) と Edwin Krebs (1918-2009) だった。 前者 (Fischer) は上海生まれ、スイス出身の移民で、コリ (Cori) 夫妻の下で、 "GP" の研究を始めた。
GP はグリコーゲンを分解して、グルコース-1-燐酸に変換する酵素で ある。 この酵素の活性化には、二種類の物質が必須であることが、先ず判明した。 一つはATP、もう一つは燐酸化酵素
(キナーゼ、GP Kinase)
である。
GP キナーゼは、ATP の「末端」燐酸を利用して、GPのセリン基を "燐酸化"する。
このキナーゼは、4つのサブユニットから構成された複合蛋白で、catalytic (キナーゼ) ド メインは、「ガンマー」サブユニットにある。 アルファーとベーターは、制御蛋 白で、(「PKA 」と呼ばれる別のキナーゼにより)、そのセリンが 燐酸化されると、 制御が解けて、デルタ (カルモジュリン) にカルシウムが結合すると、酵素全体 がフルに活性化される (詳しくは、右下の図式を参照) 。
更に、 GP Kinase を脱燐酸 化するフォスファターゼが存在し、 GP Kinase を失活させる。
上記のいわゆる「可逆的燐酸化」サイクルを解明した両者は、1992年にノーベル 医学賞を分かち合った。
以後 30年間、キナーゼやフォスファターゼの研究でノーベル賞をもらった研究者は 全くいない。 しかしながら、もし、種々の難病を起こす「病原キナーゼ」 (例えば、PAK 等) に対する遮断剤を開発することによって、「副作用」無しに、難病を治療 ("健康 長寿" を達成) できれば、ノーベル賞 (医学/化学) に値いするだろう。。。
なお、フィッシャー (Eddy) は "ピアノ演奏家" でもあり、「健康長寿」を楽しみながら、101歳 (「男性」のノー ベル受賞者として、最長寿!) で、最近 (COVID パンデミック中に) 他界した。
なお、孫娘の Elyse Fischer は、最近、英国のケンブリッジ大学=MRC (分子生物学研究所) で, Cell Cycleを制御するキナーゼ等の研究をし, 博士 号を取得。 ごく最近、シアトルのワシントン大学内にある「Monod Bio」 に転勤したらしい。 更に、彼女は、 IUBMB (国際分子生物学協会) "若い研究者賞" を2020年に受賞した!オメデトウ (with ベートーベン作曲のピアノ曲「エリーゼの為に」)!
実は、半世紀ほど昔 (1973年の真夏)、我が輩の初渡米の際、船 (米国の大型貨物船) で、横浜から太平 洋を渡って、シアトル港に初めて上陸した。 市外には、雪を頂く「レーニア山」 (別名「タコマ富土」、海抜 約4400 m) がそびえている。 その山麓を、(登山好きの) エリーゼ嬢の案 内で、散策して見るというアイディアは、決して悪くない。 「Multi-Cultural」同士は意志疏通が比較的容易。。。
"半世紀前" の渡米の前後で、北アルプスやスイス=アルプスを、山好きの「ガールフレンド」と一緒に、登山を何度か楽しんだ「懐かしい」思い出が、ふっと甦ってきた。。。

2022年12月9日金曜日

中村敦夫氏 ("紋次郎") が 「旧統一教会」を切る!
小説「狙われた羊」が30年ぶりに復刊! 発売中!!

都立の名門「新宿高校」を卒業後、1958年に、東京外国語大学インドネシア語学科 に入学。これが後に『チェンマイの首: 愛は死の匂い』、『ジャカルタの目』、 『マニラの鼻』といった、東南アジアを舞台とする国際小説執筆へと繋がる。
1959年(昭和34年)、同大学を2年で中退、俳優座養成所を経て新劇の劇団俳 優座に入る。いわゆる「花の12期」であった。若手のリーダー的存在であり有 望株であった半面、劇団幹部などが左翼傾向の強い劇団内では"異端児" (多数に御しない、少数派) であった。 そのため、「トロツキスト」(反スターリン派、国際共産主義者) のレッテルを貼られた。その際「ああ、いいですよ、 "トロ" でも白身でも」と受け流していたら、今度は新左翼、過激派ということになっ たという。1965年ハワイ大学に留学。このとき知り合ったアメリカ人と結婚するが 3年で離婚!
1972年に市川崑監修のテレビ時代劇『木枯し紋次郎』で主役の渡世人・紋次郎役 に抜擢される。同作品の大ヒットにより一躍人気を獲得した。
1984年から3年半にわたり、毎日放送製作・TBS系列で放送されたド キュメンタリー『中村敦夫の地球発22時』(のち『~23時』、中村の降板後は 『地球発19時』とそれぞれ改題)の司会を務めた。その後1989年から1992年までは日本テレビの情報番組『中村敦夫の ザ・サンデー』などで司会を務めていた。この間はジャーナリスト活動に専念し、 俳優活動からは一切身を引く。作家としても「チェンマイの首」を発表している 。
『ザ・サンデー』を降板し、1993年に映画『帰ってきた木枯し紋次郎』で俳優復 帰、以後は俳優活動と政治活動を平行して行う。 1994年に (「旧統一教会」を暴く) 小説「狙われた羊」を出版!!
1998年7月に同選挙さきがけの推薦及び市民の党の応援を受ける無所属候補として 立候補し、東京都選挙区から"初当選"、政治家となる。 (この時、我が輩は「紋次郎」の存在を、新聞記事で初めて知る!実は、偶々この頃、新宿高校卒で、東大薬学の一年先輩の女性らと、ノーベル作家「パール=バック」の評伝の邦訳を進めていた). 同年10月に「環境主義・平和外交・行政革命」の3つを基本理念とした民権政党「国民会議」を1人で旗揚げする。
2000年7月に「さきがけ」代表就任、同年8月議員連盟「公共事業チェック議員の会」会長就任, 2002年1月さきがけと国民会議が合流し、院内会派「さきがけ環境会議」を経て、 党名を "さきがけ" から「みどりの会議」に変更した。
2004年の参議院選挙では比例区に転向して、みどりの会議は 中村をはじめとする10人の候補者を立て、90万を超える票を得るも"全員落選"!! これにより、みどりの会議は国会での議席を失う。
好きな言葉は「攻めの人生」。「旧統一教会」の実体 (霊感商法) を暴く!
我が輩は、「トロ」でないが、信条的に、「インテリ紋次郎」の (若手) 相棒 (Greens 支持派) !
世界で初めて (1972年頃に)、グリーン党 (Greens) の前身を立ち上げのは、豪州の南端 にあるタスマニア島に住む医師、Bob Brown 博士で、主に、「自然の保護」と 「人権の擁護」を旗印に上げて、既成 (2大) 政党を相手に戦い初めた。残念なが ら、(自然や人権に対する意識が低い) 日本やアジア諸国では、「緑の党」はとうとう育たなかっ たが、西欧諸国、特にドイツやデンマーク等では、Greensが、かなりの支持者を得て、 国会で活躍し続けている。 豪州では、2012年にBrown 博士が党首を辞任して以来、Greens の根拠地は、首都キャンベラとメル ボルンの都市部に集中している。

2022年12月7日水曜日

スベロ=オチョア (1905-1993) は「勘違い」に対して、
ノーベル賞をもらった!

1959年に、アーサー=コンバーグ (1918-2007) とスベロ=オチョア (1905-1993) へ 大腸菌由来のDNA 合成 とRNA 合成に関する酵素の発見に対して、ノーベル医学賞 が与えられた。いわゆる「コンバーグ酵素」は実際、DNA を合成する「polymerase」 だった。 ところが、「オチョア酵素」 (Polynucleotide Phosphorylase, PNP) は、実際には、RNase (RNA 分解酵素) だった! 酵素とは、反応と逆反応の両方 を、試験管内では、触媒できるが、大腸菌内では、RNAを分解するが、合成には関与 しないことが、後に判明した! つまり、オチョアは、「間違った理由」で、ノー ベル賞をもらったわけである。 実際、 我が輩が東大薬学の院生 (修士) の頃 (1960年 代後半) 、我々はPNP で、専ら大腸菌のリボゾームRNA が分解するメカニズムを研究していた (培地から Mg を除くと、リボゾームRNAが PNP によって分解を受け、蛋白合成が止まる! この反応は可逆的で、Mg を培地に加えれば、リボゾームRNAが合成され始め、リボゾームによる蛋白合成が再開される)!
皮肉にも、オチョアの研究室 (ニューヨーク大学) で、PNP が試験管内で 「RNAを合成」することを発見したのは、Marianne Grunberg-Manago (1921-2013) というソ連から亡命してきたフランス人女性 (美人) だった! ここでも、明らかに「女 難」がたたっている。。。
もっとも、フィル=リーダーによれば、「遺伝子暗号の解読」の為に、種々の "RNA Triplets" (AUG, UUU, UAG etc) を酵素的に合成するために、この「PNP 」が大活躍 したそうである。従って、結局「怪我の功名」になった! 他方、(有機化学が得意な「ライバル」) 西村さんは、RNA Triplets を化学合成したそうである。
さて、「本物」の (DNA-dependent) RNA polymerase の研究で、ノーベル化学賞を、 2006年にもらったのは、DNA Polymerase 研究でノーベル賞をもらったArthur Kornberg の長男, Roger Kornberg (スタンフォード大学) である。 つまり、親子でこの分野を結局、独占した! 父親は息子の受賞に満足しながら、翌年, 安らかに他界した。。。このエピソード ( 仮称「DNA/RNA 親子丼」) も、もし (ハリウッドで) 映画化したら、 (地元、カルフォルニアの) 観客を沸かせると、 我が輩は思う。。。あるいは、宮崎 駿 (監督) による 「アニメ映画」でも良いと思う。
我が輩の高校時代の同期生 (新井賢一 くん、1942-2018) は、東大医学部を卒業後、 アーサー=コンバーグの研究室で、ポスドクを勤めた後、コンバーグらが設立した 「DNAX」という製薬研究所の分子生物部長を勤め、(奥さんと海外研究生活) 13年 後の1989年に、日本に帰国して、東大の「医科研」の所長などを歴任した。その 彼が中心になって、コンバーグの自伝「それは失敗からはじまった: 生命分子の 合成に賭けた男」(訳本) を1991年に出版した。 (我が輩自身も出版されて間もな く、拝読させてもらったが) コンバーグ家について知るための良い参考書として、 若い (分子生物学) 研究者や「アニメ」制作者などにお勧めしたい。。。
キューリー夫妻はラジウムの発見で、(チェコ出身の) コリ (Cori) 夫妻はグリコーゲンの代謝酵素 (Glycogen Phosphorylase, GP) で、各々 ノーベル賞に輝いたが、コンバーグ夫妻はコリ夫妻の下で、研究を始め、(更 に) 新井夫婦もコンバーグ夫妻の下で、ポスドク研究を始め、キューリー夫妻の 始めた輝かしい (人類らしく「極めて知的な」) 伝統を守り続けた。。。
コリ夫妻もコンバーグ夫妻も「ATP」を基質とする酵素を扱った。めざす「標的」は違うが、我が輩も 同じ「ATP」を基質とする酵素 (PAK という「キナーゼ」) を長らく扱っ てきた。従って、恐れながらも、「コリ=コンバーグ」酵素学派の端くれと、自認 している。。。我が輩に (将来) 自伝を書く機会が訪れたら、「全ては ATPから始まった: 健康長寿 の為に!」という標題で行こう!

2022年12月6日火曜日

Phillip Leder (1934-2020): 分子遺伝学の "草分け" (天才!)

我が輩が米国のNIH (首都ワシントン郊外) に「ポスドク」(研究助手) として、数 年間 (1974-1980) 滞在していた時期に、(NIHキャンパスの直ぐ隣にある丘上の) 我が輩 が下宿していた一家の直ぐ近所 (数ブロック先) に、傑出した若い研究リーダーが住んでいた。 彼の名は、フィル=リーダー博士。ハーバード大学医学部出 身の切れ者。 1960年代前半、マーシャル=ニーレンバーグの研究室で、ポスドク として活躍し、「遺伝子暗号の解読」に、中心的な役割を果たした。ゴービン=コ ラーナの研究室で、ポスドクとして果たした西村すすむ (我が先輩) の役割に匹 敵する。 この2人のポスドクによる活躍のお蔭で、ニーレンバーグとコラーナは、 1968年にノーベル医学賞に輝いた!
さて、ボスの受賞へ多大な貢献をしたフィルは、受賞に前後して、NIH の生化学部長に昇進し、グロビンや抗体 (グロブリ ン) の遺伝子構造 (塩基配列) を決定する研究を始めた。 1973-1974 年に、京大医 学部からポスドクとして、フィルの研究室に働いていた本庶 さん (2018年にノー ベル受賞) は、後年、その時期の体験が、彼のその後の (抗体などに関する) 遺伝子研 究への "起爆剤" になった、と語っている。 我が輩自身は、アクト=ミオシン及び、そ れを制御するキナーゼ「PAK」に関する生化学研究に昼夜「没頭」していたので、残念ながら、 フィルにも本庶さんにも会うチャンスは、とうとう一度もなかったが。。。
1980年の夏に、我が輩が西独のミュンヘンにあるMAX-Planck 研究所に転勤する (丁 度) 前後に、フィルがハーバード大学医学部の遺伝学研究室の教授に栄転したこ とを、風の便りに耳にした。 実は、(NIH時代の) 我が輩自身のボス (Ed Korn 博士、現在94歳) の自宅も "フィルの家" の近所 にあった。 フィルはハーバードで、マウスに「RAS」 などの発 癌遺伝子を人工的に挿入し、いわゆる「Onco-Mouse」モデル を製造して、特許を 取得した、という話を後に (1988年頃、我が輩自身がメルボルンの癌研に転勤して、「RAS 癌」に取り組み始めた頃に) 聞いた。 兎に角、「頭脳の切れる」人物だった。 その道の専門家、我が先輩 (東大薬学) である (故 古市泰宏 先生) によれば、フィルは「天才」 だそうだ。 https://www.rnaj.org/newsletters/item/695-furuichi-18
最近、その「フィル」がパーキンソン病 (PD) のため、85歳でとうとう他界したことを知った。
それに比べると、彼のNIHにおける "ボス" (ニーレンバーグ、1927-2010) は、ノー ベル賞をもらった途端、(気が狂ったのか) 「脳生物学」(neuroscience) に転向して、NIHの "莫大 な予算" を浪費して、結局、(83歳で、"直腸癌" のため他界するまで、丸40年間) 殆んど何も残さなかった!
この「悲劇」の原因は一体何だったか? 1961年に彼が結婚したブラジル出身の女 性 (TA or ポスドク、有機化学/生化学者、既に「故人」) とのいわゆる「研究」生活が 全てを「台無し」にしてしまった、という説 (噂) が残っている (真否の程は定かでな いが) 。。。兎も角、学術的に最も「生産性の低い」結婚の一例と言えるだろう。 余りにも「悲惨」で、("キューリー夫妻" とは違って) とても "映画化" の対象にはなり得ない! そういう「辛口」の評価をする研究者が、特に「NIH 内部」には多い。。。勿論、ニーレンバーグの研究室で、莫大な予算で「好き勝手な研究」を楽しんだ、いわゆる「低能 Children」は、別の評価をしているようだが。「裸の王様 マーシャル」と題する"風刺アニメ"映画なら製作可能だが。。。

2022年12月2日金曜日

"人口過剰" な国々では、「生産性の高い」(=多産な) 夫婦は 明らかに "弊害" をもたらす! 「 生産性」は、独創的な「発明や発見」や "文明" を創造する能力で測るべき!
「低能な」世代ばかり量産しても、社会は退化するのみ

結婚 (同性/異性) は「愛の結晶」! 子供の出産とは無関係!
「子孫を作る」作業は、犬や猫、最も下等な動物 "線虫" でも出来る。我々人類は、犬や猫 にはできない、「知的に極めて高等な」遺産 (文化) を残すべきである、と我が輩 は思う。。。
岸田内閣には、(「同性カップルは生産性がない」と発言し、遂に「辞任」へ追い込れた) 杉田水脈(みお)総務 政務官 (女性!) を始め、いわゆる「"安倍派の" 低能 チルドレン」が多過ぎる!
「普三」(故安倍) と「旧統一教会」 (霊感商法) の「非科学的な」結託で量産されてきた「低能世代」が引き起こす "後遺症" (右翼化) がひどい!
キューリー夫妻 (ピエールとマリー) は、2人の優秀な娘 (イレーナとエバ) を産 み育てたが、彼らの "愛の結晶" は、何と言っても、彼らが発見した「ラジウム」と いう放射性元素 (2度のノーベル賞に値する!)。 長女イレーナは、 後に、同僚 のフレデリック=ジョリオと結婚し、新しい (人工的) 放射性元素を 共同で開発して、キュ リー家に、3度目のノーベル賞をもたらした。 こういう結婚は、最も「人間らし い」模範的な結婚であると、我が輩は思う。 勿論、彼らは (全ての人々が"平等"に生活を楽しめる社会を目指す)「社会主義」を擁護し、ムッソリーニやヒットラーが主導する「全体 (独裁) 主義」に強く反対した!
「2022 年」映画「キュリー夫人: 天才科学者の愛と情熱」: 10月末から、東京、大阪、名古屋、札幌など、で も上映中! ロシア占領下のポーランドを逃れ、フランスのパリで、師と夫になるピエールと結 ばれ、共に、"物理化学"上の大発見を目指す。。。。 ("古い世代" に属する) 我が輩自身は、MGM (1943 年の白黒) 版を、半世紀後 (恐らく、豪州に永住後)、"ビデ オ" を購入して何度も観賞した。 実は、こういう結婚生活を長らく夢見たが、残念ながら、相応しい相手 (女性) は、とうとう見つからなかった! 現実には、こういうチャンスは、「万に一」かもしれない。。。「稀少価値」だから、繰り返し「映画化」されるのだろう。
我が輩の分野 (癌分子生物学) では、我が知人である Raymond Erikson (1936-2020) , ハーバード大学教授が、ウイスコン大学 (ポスドク) 時代に、同僚の女性 (Eleanor) と知り合い、結婚後 (コロラド大学で) 、1978年に、発癌遺伝子 (SRC) が (チロ シン) "キナーゼ" であることを、共同で発見した (我々が NIH で、 "別の発癌キナーゼ" (PAK) を発見した直後だった!) 。 明らかに "画期的な" 発見だったが、不幸にして、ノーベル受賞には至らなかった。 その後、夫人はコロラド大学 (中西部) に残り、夫はハーバード大学 (東海岸) に転勤! その後長らく、「長距離の往 き来」が続いたが、結局、離婚/再婚に至り、別々の家庭を築いたそうである。そ ういう意味で、「キューリー夫妻」の例は、極めて 「ラッキー」な "例外" とも言え る。。。もっとも、夫 (ピエール) はノーベル受賞後間もなく、馬車にひかれて、即死 (早死) した。。。そこで、ピエールの父親 (医師) が、幼い "孫娘" 2人の面倒をみるようになった。。。キュリー夫人は1934年、66歳の若さで亡くなったが、その死因は、(当時まだ危険 性が認識されていなかった) "ラジウムの放射能" を、実験の最中に浴び続けていたためとされている。
我々の学生/ポスドク時代 (1960-80 年代) には、生化学 (キナーゼ) 実験などに 「放射性元素」(例えば、P32) を「トレーサー」として、しばしば使用していたが、今日では、(ソ連の「チェ ルノーブル原子炉事故」以来、「放射能恐怖症」のためか) その使用が極端に制限され、 実験が極めて不自由になっている。。。適当な防具を身につければ、放射能は決 して危険な物ではない! 我々やErikson 夫妻が1970年代後半、各々PAK やSRC などの「発癌キナーゼ」を容 易に発見できたのは、「放射性のP32 を含むATP 」を基質に使用したお蔭である。 従って、キナーゼ研究者は特に、アイソトープ (放射性元素) の発見/開発に深く感謝している。。。
もう一つ、男女間の共同研究作業が、(研究者本人の意図に反して) "不幸な結末" を産んでしまった例を紹介しよう : ドイツの首都ベルリンに戦前、カイザー=ウイルヘルム (物理化学) 研究所 (MAX-PLANCK 研究所の前身) があった。 所長は、オットー=ハーン (1879-1968)、 同僚の(ユ ダヤ系) リーゼ=マイトナー女史 (1878-1968) が、原子物理学を長らく共同研究 していた。 ところが、ヒットラーが政権を握り、ユダヤ人を迫害し始めたので、 1938年にマイトナー女史は、とうとうスウエーデンに亡命せざるをえなくなった。 その直後、ハーンがウラニウムに中性子を当てると、放射性のバリウムが製造さ れた!!
その「不思議な」現象を、マイトナーに手紙で報告したところ、彼女は、その現 象が「核分裂」である (アインシュタインの有名な方程式: E=MCC (二乗) に従って、莫大なエネルギーが 放出する!) ことを、素早く見抜いた。 そのニュースは、たちまち世界中に広がった! 間もなく、ドイツと 英米の間で、 「原爆の開発」レースが始まった! さて、ハーンはその発見によって、1944年に ノーベル化学賞を "独り占め" したが、マイトナーの「先見の明」は (少なくとも "ノーベル財団" では) 無視された。 そ の後、間もなく、広島や長崎で、一体何が起こったかは、万人の知る所である。 。。勿論、「地震の発生しない」国々では、この画期的な発見は原子力の"平和利用"に貢献してい る。。。要 (問題) は、「発見を如何に利用するか」である。
一言警告しておきたいことは、「キュリー夫人のラジウム発見が、原爆開発を導い た」と勘違いしている「低能な輩」が、今でも少なからず存在するということで ある。 (上述したように) ラジウムと原爆とは、全く無関係! 原爆の原料は、主に「ウラニウムやプルトニウム」 (ラジウムでは原爆はできない! )。 (その昔) 時計の文字盤の「蛍光 (夜光) 塗料」は、ラジウムだった!
ラジウムから出る放射線で、癌を治療していた時代もあった。しかし、"副作用" が強 過ぎて、現在はいわゆる「抗癌剤」やコバルト60 に置き換えられた。 それでも、副作用はかな り強い! だから、副作用の全くない「PAK遮断剤」が登場しつつある。。。

2022年12月1日木曜日

「血液の癌」の増殖も "PAK" 依存性!
副作用が強い抗癌剤から「PAK 遮断剤」に切り換え!

殆んど全ての「固形腫瘍」は (悪性であれ良性であれ)、その増殖及び転移がPAK依 存性である (定説!)。 ところが、最近になって、幾つかのいわゆる「血液の癌」、 例えば 急性白血病の一種、acute megakaryocytic leukemia (AMKL)、や慢性白血 病のChronic Myeloid Leukemia (CML) 等の増殖も、PAK依存性であることが判明 した! 従って、従来、「血液の癌」の治療に使用されていた抗癌剤は、どれも 副作用がひどいので、副作用の殆んどない "PAK 遮断剤" (市販のプロポリス、フコ イダン、Gleevec, Istodax =FK228 など) に切り換えることを、私は強くお勧め したい!「侍イレブン」の如く、後半の「逆転劇」で勝利 (癌の粉砕) を掴もう!
参考文献:
1. Zhonghua Xue Ye Xue Za Zhi. 2022 Jun 14;43(6):499-505. Blocking PAK1 kinase activity promotes the differentiation of acute megakaryocytic leukemia (AMKL) cells and induces their apoptosis。 [Article in Chinese] S J Wang, C Q Wang, X T Hu , X R Yu , C L Fu .
2. Cancers (Basel). ;11(10):1544. Simultaneous Inhibition of BCR-ABL1 Tyrosine Kinase and PAK1/2 Serine/Threonine Kinase Exerts Synergistic Effect against Chronic Myeloid Leukemia (CML) Cells。 Sylwia Flis, Ewelina Bratek , Tomasz Chojnacki , Marlena Piskorek , Tomasz Skorski (2019)。