2016年12月11日日曜日

脳内ホルモン 「GHRH」 の拮抗体 「MIA-602」 はPAK遮断剤

数年前、米国フロリダ州マイアミ大学の研究グループ (1977年のノーベル受賞者, Andrew Schally ら) により、「GHRH」 (増殖ホルモン分泌ホルモン、29個のアミノ酸からなるペプチド) の拮抗体の一つ 「MIA-602」抗癌作用を持つことが発見された (1)。

その詳しい作用メカニズムを研究した結果、このペプチドがPAKを遮断 (PAK遺伝子の発現を抑制) することが、最近判明した(2)。 従って、「MIA-602」は腫瘍の治療ばかりではなく、各種の脳内疾患、例えば、認知症、パーキンソン氏病、精神分裂症 (統合失調症)、鬱病、癲癇、自閉症などの治療にも役立つはずである。

逆にいえば、脳内ホルモン 「GHRH」 の過剰分泌は、脳腫瘍ばかりではなく、他の脳内疾患を引き起こす原因になりうると考えられる。

長寿(小人)マウス
脳下垂体の成長ホルモン(GH)の生産分泌を司る転写タンパク質「PIT」が欠損しているマウス (スネルマウス) は、成長が遅いため、小人であるばかりではなく、少子化 (生殖能が低下) する代わりに、寿命が長くなることが知られている (3)。このマウスに十分成長ホルモンを補ってやると、成長が促進され、体重が増え、少子化現象も止まるが、寿命は短くならない。ということは、この長寿マウスには成長ホルモン以外に何かが欠けているために、寿命が長くなっていることになる。一体何が欠けているのあろうか?  私の考えでは、恐らく「PAK」自身か、その上流にあるシグナル伝達因子(GHRH) が欠けている可能性が高い。 従って、(プロポリス同様)MIA-602を経口すればPAKが遮断され、我々の寿命は自ずから延びるはずである。


参考文献:

1. Bellyei S1, Schally AV, Zarandi M, Varga JL, Vidaurre I, Pozsgai E.
GHRH antagonists reduce the invasive and metastatic potential of human cancer cell lines in vitro. Cancer Lett. 2010 ; 293(1): 31-40.

2. Gan J1, Ke X1, Jiang J1, Dong H1, Yao Z1, Lin Y1, Lin W1, Wu X2, Yan S3, Zhuang Y2, Chu WK4, Cai R5,6,7,8,9, Zhang X5,6,7,8,9, Cheung HS5,6,10, Block NL11, Pang CP4,12, Schally AV13,6,7,8,9,11, Zhang H14,2,15. Growth hormone-releasing hormone receptor antagonists inhibit human gastric cancer through downregulation of PAK1-STAT3/NF-κB signaling. Proc Natl Acad Sci U S A. 2016 Dec 7. 
 
3. Kinney-Forshee BA1, Kinney NE, Steger RW, Bartke A. Could a deficiency in growth hormone signaling be beneficial to the aging brain? Physiol Behav. 2004; 80(5): 589-94.

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