2019年4月28日日曜日

「PAK財団」主催の国際「PAK研究 」シンポジウム:
ニューヨークで開催予定 (2019年10月12日)

25年前に、哺乳類でPAKが初めて発見されたのを記念して、PAK 研究 (特に、PAK遮断剤の開発) に関する史上初の国際シンポジウムを、我々「PAK財団」主催で開催する企画を立てつつある。開催目的は、PAK遮断剤の効用を世界的に (特に大手製薬会社に) 知らしめ (アッピールす) るためである。シンポジウムのタイトル: Pathogenic Roles of PAK:  Anti-PAK Therapy of Cancers etc (PAK の病原性: 癌などの PAK 遮断療法)。

開催費用は少なくとも500万円を越えるだろう。 開催費用の大部分は、海外から招待した講演者 (11名) の往復旅費 (一人当たり: エコノミークラスで平均25万円)  と宿泊費 (1泊) を全額賄うために支出することになる。 従って、経費を最小限にするために、PAK 研究 (特にPAK遮断剤の開発) が最も進んでいる米国内に会場を設定するのが妥当だろう。 特に、製薬会社の多いニュージャージー (NJ) 州に近いニューヨーク近郊が「客 (聴衆者) 集め」に最適と考えられる。

20年以上昔、抗癌剤に関する国際シンポジウムを「ニューヨーク科学アカデミー」主催で開催した経験がある。 会場は市内にある「ロックフェラー大学」構内だった。 会場使用料はアカデミーが賄い、講演者の旅費等は、(抗癌剤を扱う) 大手製薬会社からの寄付に仰いだ (総額: 約500 万円) 。今回は Marriott Hotel で開催する。


Meeting Progamme (October 12, Sat):

Registration (at Foyer) and group photo session:  8:00-9:00 am

Opening remark:  Dr. Hiroshi Maruta
Session 1:   9:05-10:35
9:05-9:35 “Keynote Speech” by Dr. Edward Manser, IMCB, Singapore
Title: The Ups and Downs of PAK Signaling
9:35-10:05 by Dr. Jonathan Chernoff, Fox Chase Cancer Center, Philadelphia
Title: p21-activated Kinases (PAKs) as Therapeutic Targets in Cancer
10:05-10:35 by Dr. Gunda Georg, University of Minnesota
Title: Discovery of Minnelide, A Potent Prodrug of Triptolide, for Cancer Treatment
Break (10:35-10:50)
Session 2:  10:50-11:50
10:50-11:20 by Dr. Hiroshi Maruta, PAK Research Center, Melbourne
Title: PAK1-blockers for Cancer Therapy and Promotion of Longevity
11;20-11:50 by Dr. Laurie Hudson, University of New Mexico,
Title: R-ketorolac Blocks the Oncogenic RAC/CDC42-PAK1 Pathway

Lunch break: Noon-13:30  

Afternoon sessions chaired by Dr. Jonathan Chernoff
Session 3:  13:30-15:00
13:30-14:00 by Dr. Thomas Adrian, MBR University, Dubai,
Title: Anti-cancer Property of PAK1-blockers, Frondoside A (FRA) and 15K
14:00-14:30 by Dr. Hong He, University of Melbourne Austin Hospital, Melbourne
Title: Suppression of PAK1-dependent PD-L1 Expression for Better Cancer Therapy
14:30-15:00 by Dr. Maria Diakonova, University of Toledo, USA
Title: Tyr-phosphorylation of PAK1 by JAK and ETK for Breast Cancer Progression
Break (15:00-15:15)
Session 4:  15:15-16:15
15:15-15:45 by Dr. Dave Clapp, Indiana University, Indianapolis
Title: PAK1 Inhibition Reduces Tumor Size and Extends the Lifespan of NF2-null Mice 
15:45-16:15 by Dr. Audrey Minden, Rutgers, the State University of New Jersey
Title: PAK4-blockers Down-regulate TORC2 in Triple-Negative Breast Cancer Cells.
Closing remark: Dr. Jonathan Chernoff

 つい最近、マウスに移植したヒト由来 (ケモ耐性) スイゾウ癌の増殖及び転移に対するPAK遮断剤「15K 」 の 威力を実証する我々の実験結果が、遂に英文医学雑誌により掲載を受理された (1) 。それも祝って皆で乾杯したい! 論文の最後で、15K が、ノーベル受賞の対象になったモノクローナル製剤 (PD-1 やPD-L1 に対する抗体) よりもずっと安価で、しかも実用範囲がずっと広いことを強調した。

1. Hennig R, Albawardi A, Almarzooqi S, et al. 1,2,3-Triazolyl Ester of Ketorolac (15K), a Potent PAK1-Blocker, Inhibits Both Growth and Metastasis of Human Pancreatic Cancer Orthotopic Xenografts in Mice. Drug Discov.Ther. 2019, 13, In press.


2019年4月3日水曜日

PAKを遮断するビタミン 類 (D3 と K2): その相乗効果?

私の古い知人で、中国の四川省出身で、日本の大学 (学部は東北大学 、大学院は名古屋大学) に留学後、ドイツのハンブルグ大学病院 (UKE) の研究員として勤務しながら、地元のドイツ人と結婚している蘭 Kluwe さんは、NF1 (神経線維腫症 タイプ 1) という稀少難病 (遺伝子病) の専門家である。 もう十数年昔、彼女の研究室で、NF1 の幼児には、何故かビタミン D3 が欠乏している患者が多く、そのために骨格がもろいことが明らかにされた。 以来、特にNF1 の幼児には、ビタミンD3 とカルシウム源の牛乳を飲むことを勧めている。 しかしながら、ビタミンD3 の欠乏がなぜ 骨格の発達/成長を抑える理由が長らくわからなかった。ごく最近、その「謎」が解けた!  四川大学出身の研究者とドイツのチュービンゲン大学との共同研究で、ビタミンD3 が、病原キナーゼ PAKの直ぐ上流にあるRAC を抑制していることが判明した (1)。そのIC50 は何と 100 nM  (プロポリス中のCAPE の100倍強い!)。言い換えれば、ビタミンD3  は天然の強力なPAK遮断剤PAKには本来、(発癌作用があるばかりでなく) 骨の発達/成長を抑える機能がある。 

最近、意外な史実 (灯台もと暗し) を発掘!  実は、ビタミンD3 の抗癌作用を、結腸癌を移植した動物 (マウス) 実験で初めて証明したのは、1987年の昔、豪州メルボルン郊外にあるモナッシュ大学の研究グループだった (2)。投与量は、毎日 5 micro g/kg (腹腔注射) で、「カルシウム過剰症状」を未然に防ぐため、「低カルシウム餌」を与えている。なお、D3受容体 (VDR) が欠乏しているメラノーマでは、抗癌作用が検出されなかった。 皮肉にも、この翌年、私は  (D3 の抗癌作用に無知のまま) 米国カルフォルニアから豪州メルボルンに永住し、癌研究所に勤務し始めた。実は、1987年前後に、世界的な発見がいくつか米国 (カルフォルニア) や豪州 (メルボルン)で成された。初の抗癌遺伝子 (RB) や RAS GAP (GTPase Activating Protein) の発見、PCR (Polymerase Chain Reaction), GST融合による蛋白精製法などの発明ラッシュの影に、"D3 に関する発見" は埋没してしまった感がある。少なくとも私自身の意識では、「元号」の変更に伴い、30年以上の歳月を隔てて、ようやく「昭和末期」の遺跡が再掘されるという結果になった。 

特筆すべきは、ビタミン D3 の24位を水酸化することによって、D3 を不活化する酵素 (CYP24) が存在し、この遺伝子の変異により、酵素が異常に活性化すると、癌や骨多孔症が発生し易くなる。。。従って、理論的には、D3 と CYP24 阻害剤を併用すれば、D3 の薬効が増強されるはず。しかしながら、効果的なCYP24 阻害剤 (CTA 091,  IC50=10 nM etc) は未だ (臨床向けには) 市販されていない。さて、CYP24 遺伝子の発現にはPAK が必須らしい。従って、取り敢えず、D3 にプロポリスを併用して、CYP24の発現を抑え、D3 をより効果的にできるはず。実際、D3 とRAC/PAK 阻害剤とは、アクチン線維の解離に相乗効果を示す。従って、この「アクチン線維の解離」が癌の増殖抑制に直結すれば、極めて面白い。因みに我々は、過去に「アクチン線維の解離」を促進する薬剤で、癌細胞の増殖を選択的に抑制することに成功している。 

驚くなかれ、10年ほど昔、我々の後輩 (東大薬学出身で) 帝京大薬学教授の橘高敦史(きったか あつし)研究室で開発された D3 の誘導体 (Mart-10) が、D3 よりずっと (約千倍) 抗癌作用が強いことが、米国ボストン大学の研究グループによって発見された (3)。 この誘導体は、CYP24 によって代謝され難いのが特徴!  ただし、Mart-10 に関するUS 特許がようやく認可されたのが2015年で、10年後の2029年には、特許の期限が切れるはず。未だ臨床テストも始まっていないようなので、市販されるかどうか、前途多難。。。

そこで、来る5月21日 (火) の午後3時から、帝京大学薬学部 (板橋キャンパス、JR埼京線「十条」駅から徒歩10分)で 、PAK遮断剤に関する私のセミナーの折Mart-10/15K の市販をめざす "臨床テスト" 作戦について、お互いに知恵を絞って相談し合う予定。幸い、2016年の論文によれば、Mart-10がD3 同様、アクチン線維の解離 (つまりPAKを遮断) することが、台湾の研究グループにより証明されていた (4)! 

もうひとつ、身近かな食物に含れるビタミンで、PAK遮断作用を持つものがある。納豆に含れる ビタミン K2 (特に、メナキノン 7) である。ノルウエーの首都オスロにある会社では、 メナキノン 7 を錠剤にして、骨多孔症の治療用に通販している。 日本でも、商標「金のつぶ、ほね元気」なる納豆 (ミツカン) は、ビタミン K2 の含量が普通の納豆より2倍あり、骨がもろくなった老人向けの健康補助食品 (トクホ) として、販売されている。 私の大学時代の同窓で、昭和大学薬学部で長らく助手をしていた今津敏子博士らによると、少なくとも細胞培養系で、メナキノン 7 が卵巣癌やスイゾウ癌の増殖を抑えるそうである (5)。 従って、納豆が癌の予防にも友効であると予想される。

目下、我々がニューヨーク近郊に開催を計画中の「史上初のPAK国際シンポジウム」(10月5-6日) の予告も兼ねて、橘高敦史教授と共著で、雑誌 "Science" (Signaling) 宛に、「Anti-PAK1 Therapy of Diverse Signaling Diseases to Promote the Longevity」と題する短報 (Letter) を投稿予定。丁度25年前に、シンガポールの英国人 Ed Manser 博士が、「NATURE」 誌に、哺乳類から初めてPAKを発見した報告を発表したのを記念して、病原キナーゼ "PAK" を遮断する薬剤 (例えば、我々が最近開発した15K や MART-10 など) による「難病の治療」が、いよいよ可能になりつつあることを予告するためでもある。  15K やMART-10 の存在を世界中に知らしめ、大手製薬会社からの財政的援助によって、先ず (スイゾウ) 癌患者を対照にした「臨床テスト」をできるだけ早期に開始できる地盤を構築するためである。 要は、"難病に苦しむ多くの患者たちのため" である! 発明とは、実用化 (市販) されなければ、殆んど意味がない!  「毒にも薬にもならぬ」イカサマ健康食品 (ブロリコ) が120億円以上の売り上げをむさぼりながら、世間に横行している! できるだけ早く「 悪貨を良貨で駆逐する」する必要がある。

参考文献:

1α,25(OH)2D3 Induces Actin Depolymerization in Endometrial Carcinoma Cells by Targeting RAC1 and PAK1. Cell Physiol Biochem. 2016; 40(6):1455-1464.  
2. Eisman JA, Barkla DH, Tutton PJ. Suppression of in vivo growth of human cancer solid tumor xenografts by 1,25-dihydroxyvitamin D3. Cancer Res. 1987 ;47(1):21-5.
3. Flanagan JN, Zheng S, Chiang KC, Kittaka A, Sakaki T, Nakabayashi S, Zhao X, Spanjaard RA, Persons KS, Mathieu JS, Holick MF, Chen TC. Evaluation of 19-nor-2alpha-(3-hydroxypropyl)-1alpha,25-dihydroxyvitamin D3 as a therapeutic agent for androgen-dependent prostate cancer. Anticancer Res. 2009; 29(9):3547-53.
4. Chiang KC1, Yeh TS2, Chen SC3, Pang JH4, Yeh CN5, Hsu JT6, Chen LW7, Kuo SF8, Takano M9, Kittaka A10, Chen TC11, Sun CC12, Juang HH13,14. The Vitamin D Analog, MART-10, Attenuates Triple Negative Breast Cancer Cells Metastatic Potential. Int J Mol Sci. 2016 ;17(4). pii: E606.
5. Sibayama-Imazu T, Fujisawa Y, Masuda Y, Aiuchi T, Nakajo S, Itabe H, Nakaya K.
Induction of apoptosis in PA-1 ovarian cancer cells by vitamin K2 is associated with an increase in the level of TR3/Nur77 and its accumulation in mitochondria and nuclei. J Cancer Res Clin Oncol. 2008 ;134 (7):803-12.

2019年4月2日火曜日

回想録: 病原キナーゼ (PAK) の遮断をめざす研究
Long Walk Beating Our Pathogenic Kinase (PAK)

実は、昨日、私の高校 (日比谷 ) 時代の同級生 T 君からメールをもらって驚いた。彼は東大理学部 (動物学科) を卒業後、大学院で博士号を取得後、関西の国立 K 大学で長らく教授を勤め、10年ほど前、定年で退官後、古巣の東京に戻って、私立の T 大学で、教鞭をとり続けている。 その彼が昔話に、30年ほど昔 (元号が昭和から平成に変わる頃)、母校の「医学博士」を取得するために受けた面接試験について述懐してくれた。彼の専門は筋肉収縮に関するものだったが、この分野の世界的な先駆者 (江橋節郎教授) は、東大医学部薬理学教室を既に退官していたので、その後任者が面接に立ち会ってくれたそうである。

その話を聞いて、私も遅ればせながら、もし機会があれば、医学博士論文を京大 (あるいは, Harvard Medical School) に提出して、「医学博士」なる称号を取得しようかなとフト考えた。母校「東大」は「ブロリコ」事件で、イカサマ師を野放しにしたまま涼しい顔をしているので、その学術的権威が今や全く失墜、残念ながら、ご遠慮することにした。もっとも、(棺桶に片足を突っ込んだような) 老人が今さら医学博士号をもらっても、「冥途への土産物」以外に、余り実用的な価値はないが。むしろ、Harvard University Press (HUP) などから学術的な「回想録」として海外から出版した方が、読者層が厚いかもしれない。

以下は、原稿の序である。 本文は勿論、私がその昔、薬学博士論文を提出した際のごとく、英文で出版予定。

序: 

45年前 (1974年) 、米国のNIH (ED Korn 博士の下) でポスドクとして、(非筋)細胞運動をつかさどるミオシン (ATPase) とアクチンとの相互反応を、土壌アメーバを実験材料として、研究し始めた。その研究中、1977年に、このアメーバに、極めて珍しい「キナーゼ」 (蛋白燐酸化酵素) が存在することを突き止めた。

骨格筋では、カルシウム存在下、ミオシンのATPase 活性はアクチン=ファイバー (F-アクチン) によって、活性化され、ATP分解によって生じた化学エネルギーが機械エネルギーに変換され、列車がレール上を走るごとく、ミオシンがアクチン=ファイバー 上を滑べることによって筋収縮が起こる。しかしながら、平滑筋では、ミオシンの軽鎖が特定のキナーゼによって燐酸化されないと、F-アクチン によって活性化されない。驚くなかれ、アメーバでは、カルシウムの存在下でも、このミオシン=キナーゼ存在下でも、ミオシンATPase の活性化は起こらない。意外にも、アメーバには、ミオシンの重鎖を燐酸化する特殊なキナーゼが存在し、ミオシンのアクチンによる活性化に必須であることを、私は発見した。 その酵素がずっと後に哺乳類にも存在することが判明、発癌、 炎症、感染症、認知症、高血圧、糖尿病など様々な難病の原因になっていることから、「PAK 」(Pathogenic Kinase) と呼ばれるようになった。

以後、これらのPAK依存性難病の予防及び治療をめざして、PAK を選択的に遮断する天然及び人工 (化学合成) の薬剤の発掘や開発に、我々は長い年月を費やしてきた。2015年に、我々は "Click Chemistry" と呼ばれる化学反応を介して、鎮痛剤 「ケトロラック」をエステル化して、その細胞透過性を500倍以上高めることに成功。そのエステル (PAK遮断剤) を「15K」と名付け、市販をめざして、臨床テストを開始する計画である。15K は天然のPAK遮断剤であるプロポリスの千倍以上の抗癌作用をもち、(マウス実験で) ケモ耐性のすいぞう癌の増殖や転移を完全に抑えるばかりではなく、せんちゅうの健康寿命を有意に伸ばす。従って、副作用がない (しかも健康長寿にも役立つ) 抗癌剤であると、考えられる。