ヘンリー=キッシンジャー: ノーベル平和受賞者 (1973年) Ende gut, Alles gut (終り良ければ、全て良し) ?

佐藤栄作 (首相) は明らかに論外だが、ビルマのアンサン=スーチー (平和受賞) の最近の 「ロヒンギャ族虐殺」問題に関する態度/行動を観察していると、これらの受賞者は、ノーベル賞には相応しなかったという印象を、私個人は持ち始めている。

さて、 1973年にベトナム戦争の終結に貢献したという理由で、平和賞をもらった米国の国務長官 (キッシンジャー) に関しても、その後、様々な疑惑が出てきている。目下96歳の長寿を楽しんでいるようだが、決して「ハト派」ではなかった。大体、ベトナム戦争終結や中国への門戸開放は元来、大統領であったリチャード=ニクソンの音頭取り (指示) で始まったもので、キッシンジャー個人のアイディアでは決してない！  私個人の見解では、むしろニクソンがノーベル平和賞を貰うべきだったと思う。 不幸にして、ニクソンは、いわゆる世紀の「ウオーター=ゲート事件」に巻き込まれ、大統領辞任までに追い込まれたが、平和問題に関してみれば、現在の大統領トランプに比べれば、遥かに「ハト派」であったと思う。  

トランプがつい最近、イランの軍事最高司令官をドローンで暗殺して、イランに対して「宣戦布告」をした！  (そんなトランプをノーベル平和賞候補に指名した「馬鹿」が、日本の政界のトップにいるらしい。言後道断である！)。

さて、イラン軍部がトランプによる暗殺に激怒して、(ロシア製の) ミサイルを発射し、それが偶々近くで飛び立ったウクライナの旅客機を誤って撃ち落とした事件は、皮肉な言い方だが、「不幸中の幸い」だった！  何故なら、もし、イランが米国のペンタゴンを直接砲撃していたら、第3次世界大戦が勃発したかもしれなかったからだ。 撃墜された旅客機の乗客 (150 名以上) には誠に気の毒だが、その尊い犠牲によって、地球全体が救われたとしたら、"Ende gut, Alles gut"  (終り良ければ、全て良し)。

目下、私は「40 Years War」(40年戦争) という単行本 (2009年出版) を読みつつある。 ニクソン政権からオバマ政権まで40年間にわたる米国の外交政策を論じた (400ページを越える) 論説である。 それによると、キッシンジャーのすぐ背後には、「鷹派」のフリッツ=クラマーという黒幕が存在し、(軍隊時代の) 後輩キッシンジャーを終始操っていた！  クラマーはユダヤ系のドイツ人だが、ヒットラーの台頭後、米国に亡命し、"マッカーサー元帥" の配下で将校として、太平洋戦争に従軍した。同様にドイツ生まれのユダヤ人であるキッシンジャーは、米国に亡命し、戦争中、陸軍に配属され、(同じような経歴を持つ) 上官のクラマーと意気投合したというわけである。戦後、秀才のキッシンジャーはハーバード大学のロースクールを卒業後、ロースクールの教授として出世した。 一方、学問嫌いなクラマーはCIAやペンタゴン(国防省) などで、官僚や政治家たちに「入れ知恵」をする (影の) 戦略家/相談役を演じるようになる。

1968年の秋にニクソンが大統領に当選すると、キッシンジャー教授が外交顧問として、ニクソンの配下として勤務し始めた。ニクソンの最大「外交」課題は、泥沼のベトナム戦争から出来るだけ早く抜け出し、中国やソ連などの共産主義政権と「デタント」 (緊張緩和/和平) を結ぶことだった。 キッシンジャーは、単に「ニクソンの名代」として、その役目を果したに過ぎない。ベトナム和平後、ノーベル平和賞候補として、キッシンジャーと共に指名されたベトナム側 (ベトコン) の仲裁役 (レ・ドゥク・ト) は、(ベトナム戦争で大量虐殺された無数の市民や兵士たちの運命を思い計って) 受賞を辞退した！  他方、"名誉欲"に固まるキッシンジャーには、そのような深い配慮は全くなかった！  

実は、キッシンジャーも政敵の「電話の盗聴」を何度も繰り返していたという証拠がある！ 従って、「ウオーターゲート」事件では、彼もニクソンと同罪なのである。それだけではない！  キッシンジャーはベトナム戦争を早期に終結させるために、クラマーの「力に対しては力を！」というプロシャ的な発想に従い、ベトコンが北から南へ侵攻するために「迂回ルート」として使用していたカンボジアを爆撃する際に、「核兵器を使用すべき！」と言う極右の意見を、ニクソン以下の国防(国家安全保障) 委員会で提案したことがあった。幸い、誰一人として、その極論には同意しなかったので、「核抜き」のカンボジア爆撃が開始された。朝鮮戦争の後半でも、これに似た「核攻撃」の不発事件があった。敗戦した日本を占領中のマッカーサー元帥が、北朝鮮や中国に対して、原爆攻撃をすべきという提案をした際、 (終戦直前に、広島と長崎への原爆の投下を自ら命じた) トルーマン大統領が亜然として、マッカーサーを即、罷免したという史実は、日本人なら誰でも周知の事！

今、核兵器を使用したがっている輩が、米国に少なくとも一人存在する。極右の大統領トランプだ。もし、米国がイランを核攻撃したら、恐らくロシアは黙っていないだろう。ペンタゴンのある首都ワシントンをロシアが 電撃 (核) 攻撃しかねない。 そうすれば、第3次世界大戦は必至だ。「地球温暖化」どころではない！地球全体が一瞬にして、「死の灰」になる！

1973年9月11日、ノーベル平和受賞者の発表直前、南米チリのサルバドール=アレンダを大統領とする社会主義政府が軍のクーデターによって、崩壊した。そのクーデターの首謀者はピノシェ将軍だった。彼は米国のニクソン大統領や「鷹派」キッシンジャー国務長官直下のCIAによる後押しによって、アレンダを虐殺し、独裁者にのし上がった。(その後10年以上続く) この独裁政権下に、無数の無実な市民が虐殺された。その事件をみても、キッシンジャーが「平和主義者」であるとは、はなはだ言い難い！