2017年4月25日火曜日

新規PAK遮断剤 (15K) が認知症にも有効な理由!

数年前に発表された京大薬学部杉本八郎らの (細胞モデルを使った) 研究によれば、悪玉酵素「PAK」の上流にあるRACを抑えると、認知症 (アルツハイマー病=AD) の病因蛋白 (ベータアミロイド) の合成が抑制される (1)。 さらに、PAKの下流に出没する炎症や痛みの元凶である「COX-2」と呼ばれる悪玉酵素も、認知症状の要因になっていることが知られている (2)。 ADが 「PAK依存性難病」である 由縁はここにある。 従って、RAC-PAK-COX-2 (AD) シグナル経路を有効に抑えれば、認知症 (AD) を軽減あるいは解消しうることが大いに期待される。

さて、前述した (健康長寿を導く) PAK遮断剤 (15K) は、光学活性な2種類の薬剤から構成されている。 そのうち、R 型はRACを直接阻害する。片や、S型は、COX-2を直接阻害する。 従って、15K は、言わば 「一石二鳥」 (あるいは宮本武蔵的 「二刀流」) のAD特効薬である。
問題は、この薬剤が血管脳関門(BBB)を通過しうるかどうかである。 15K の原料であるケトロラックは元来、鎮痛剤であるから、BBBを通過することは明らかである。

15K の分子量は500以下 (442) だから、恐らく通過しうるであろうことが期待される。 しかし、予想される脳内濃度 (30 micro M 以下) を定量することは、(アイソトープ=ラベルなどを施さない限り) 従来の方法では、技術的に不可能である。 従って、マウスのAD (例えば、3XTg) モデルに15K (4-5 mg/kg, 腹腔週2回) を4-8週間投与して、経過を観察する以外に手はない。 勿論、(記憶回復など) AD症状が有意に改善されれば、"BBB通過" の直接証明になる。 更に、NFなどの脳腫瘍や他の様々な (PAK依存) 脳疾患にも有効であることが自明になる!

そこで、同志社大学に最近移った杉本教室と共同で、15Kの抗AD作用をマウスモデルで綿密に検討する計画を進めつつある。

参考文献:

1. Wang PL, Niidome T, Akaike A, Kihara T, Sugimoto H.
Rac1 inhibition negatively regulates transcriptional activity of the amyloid precursor protein (APP) gene. J Neurosci Res. 2009 ; 87: 2105-14.
2. Sil S1, Ghosh T1. Cox-2 Plays a Vital Role in the Impaired Anxiety Like Behavior in Colchicine Induced Rat Model of Alzheimer Disease. Behav Neurol. 2016; 2016: 1501527


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