目下、メルボルンでは、COVID-19「ロックダウン」のため、外出は毎日一回のみ、(運動あるいは日用必需品の買物) のため、自宅から5 km 以内と限定されている。そこで、昼間の大部分はクラシック音楽 (FM) をテレビで聞きながら、読書あるいは色々な論文を執筆して過ごしている。 今読んでいるのは、塚本哲也著「ガンと戦った昭和史」(塚本憲甫と医師たち) という伝記 (大河ノンフィクション) ものである。主人公の塚本医師は、癌の放射線治療の世界的権威で、東大医学部卒後、癌研、放医研、癌センターなど、癌の制圧のため苦闘し、最後には(放射能被爆のため) 肺癌などで死亡した。 著者はその令嬢の夫で、東大経済学部卒後、毎日新聞 (ウイーン支局長) などで活躍した文屋。
主人公が55歳前後で、大塚の癌研から、千葉県稲毛に新設された放医研 (放射線医学研究所) の所長に就任した。その頃に、全国から、新しい研究職員 を募ったが、その一人に、太平洋戦争中に、ソウルの京城大学を卒業した中村という医師がいた。 終戦当時、広島の陸軍病院で軍医として、原爆を体験した。さて、面接の折、 京城大学時代の体験を語った。 戦前、京城 (帝国) 大学には、津田 栄という有名な有機化学者(教育者)が予科の化学を教えていた#。
ある日、化学の試験で「ここに、砂糖と食塩がある。どうして、見分けるか」という問題を出した。 中村はとっさに「なめる」という答案を書いた。 津田先生
はこの答案を試験講評の時間に、激賞した。曰く「科学者というものは、狭い化学にばかりとらわれないで、自由な発想で、自然現象をみつめなければならない」。
奇遇にも、津田は塚本所長の義兄に当たった!
さて、諸君なら、どんな解答を出すだろうか? 正解は一杯ある! 「マッチで火をつけて燃やしてみる」(化学的な解答)、あるいは「蟻がどちらに集まるかを観察する」 (生物学者の解答) など、 などである。
仮に、「メチレンブルー (還元型) と青酸カリ (KCN) をどう見分けるか」という(より成人向けの) 問題が出されたとする。 中村の「なめる」という解答は、極めてリスクが高い! 諸君なら、どんな解答を出すだろうか? 科捜研=法医研では、機器を使用せずに、少なくとも2種類の方法で的確に見分けことができるそうである。。。
#実は、最近ふと思い出したが、戦後、津田先生は我々の母校 (日比谷) でも、化学の教師を長らくやっていた。我々の同輩が卒業してから半年後に他界された。
https://sites.google.com/site/scientia1960/teachers/nishimura
上記の (我々の大先輩) 西村さんの記事によると、津田先生は1955年3月に日比谷を退官したので、その直後 (4月) に日比谷へ入学した (我々の3年先輩) 利根川
進 (MIT、1987年ノーベル受賞) 氏も我々と同様、津田先生による化学の授業を残念ながら受け損なったことになる。
0 件のコメント:
コメントを投稿