2023年6月16日金曜日

“Gleevec”の 誘導体(“Nilotinib”)をめぐる”謎”
"PAK" 遮断剤か "TOR" 遮断剤か???
"NF2" 腫瘍も "TSC" 腫瘍も 抑える!
結論:Gleevec=PAK遮断剤、Nilotinib=TOR遮断剤

今世紀初頭に、スイスの“Novartis” によって開発された(ABL というチロシン―キナーゼを主に標的にした) 阻害剤 ”Gleevec“は,  いわゆる”シグナル療法剤”の第一号だった。臨床における主な対象は、ABL依存性の癌(CML = 慢性骨髄性白血病) である。 しかしながら、この薬剤は、ABL以外に、KIT や PDGFR などのチロシン―キナーゼをも阻害するため、理論的には、その下流にあるPAKをも遮断する。 実際に、美白作用がある!
ところが、CML患者の治療を続けているうちに、“Gleevec” に耐性な癌が出没してきた。そこで、これ等の耐性癌にも効く“Gleevec”の誘導体(“Nilotinib”)がNovartis によって開発され、2007年から、市販され始めた。この誘導体は、基本的には、“Gleevec”の骨格に3つのフッ素を結合させた化学構造をしている(右上図参照)。
ところが、その後、“まか不思議な”現象が、見つかった! この誘導体には、美白(メラニン合成を抑える)作用がないどころか、反対に “メラニン合成を助長” することが判明した (1)!!
そこで、この誘導体の主要標的は一体何か、という疑問がわいてきた。CML 癌を抑えることから、ABL を阻害していることは、少なくとも確かである。更に、PAK/TOR依存性のNF2 腫瘍やTSC腫瘍も抑える (2) ことから、少なくともTORを遮断している可能性が強い! 前述したが、TOR阻害剤であるRapamycin には、“Nilotinib” と同様、メラニン合成を助長する作用がある。従って、“Nilotinib”は、PAK遮断剤ではなく、TOR遮断剤剤である可能性が強い。

前述したが(我々自身による発見であるが) PAK遮断剤には、育毛作用がある。10年ほど前に、 “Nilotinib”による脱毛が発見されていた(3)。従って、この薬剤はPAK遮断剤ではない!つまり、"PAK" 遮断剤(Gleevec)に“フッ素”を付加すると、"TOR" 遮断剤に変身する!
これは、(思いがけない) “大発見”である!
ともあれ、例えば、”Gleevec” と“Nilotinib” をうまく併用すると、"脱毛" なしで、しかも”肌の色“に影響なく、CML, NF2, TSC などの腫瘍を抑制しつつ、健康長寿を楽しめる可能性がある。

References:
1.Chang SP, Huang HM, Shen SC,et al. (2018). Nilotinib induction of melanogenesis via reactive oxygen species-dependent JNK activation in B16F0 mouse melanoma cells. Exp Dermatol. 27: 1388-1394.
2.U Unachukwu, J Sonett, Woode et al (2023). Tyrosine Kinase Inhibitors Diminish Renal Neoplasms in a Tuberous Sclerosis Model via induction of Apoptosis. Mol Cancer Ther MCT-22-0224.
3. T Hansen, AJ Little, JJ Miller, et al (2013). A case of inflammatory nonscarring alopecia associated with the tyrosine kinase inhibitor nilotinib. JAMA Dermatol. 149: 330-2.

0 件のコメント:

コメントを投稿