2017年9月30日土曜日

アラブ首長国連邦 (UAE): 貧乏人のための天国 (福祉国家) ?

 住民の8分の7が外国人で、教育は小学校から大学まで無料、所得税なしという不思議な国が、アラビア半島内、ペルシャ湾岸 ( イランの対岸) に存在する。 砂漠に住み、狩猟やラクダによる行商で生活を営んでいた 「ベドウイン族」 の首長たちが建設した連合王国である。 人口は1950年にはわずか7万人だったが、60年後の2010年には、その百倍以上 (750万人) に達している。 1950年代に初めて豊かな海底油田などが発掘されて以来、急速に経済発展を遂げ、1971年末に保護国である英国から独立した。人口が最大のドバイは貿易で発展した都市で、香港、シンガポール、ハンブルグなどと並ぶ世界有数の貿易ハブである。首都は石油都市アブダビ、教育の中心は、UAE 大学のあるオアシス都市アルアイン (オマーンとの国境に近い) である。




実は、このUAE大学に私の知人トム=アドリアン教授がいる。 トムは米国のシカゴから(単身赴任で) 移住してきたアメリカ国籍の癌研究者である。 10年ほど前、大西洋に生息するある海鼠 (ナマコ) から、強力な抗癌物質 (フロンドサイド A, 略称FRA) を発見した。 目下、それをスイゾウ癌の治療薬として開発中である。最近、このFRA が実はPAK阻害剤であることを、我々が突き止めて以来、トムとの交流が始まった。 そこで、我々が最近開発した (より強力な) 「15K 」(あるいは、モーツアルト"H") が (薬剤耐性の) スイゾウ癌にも効くことを、マウスを使った動物実験で確認する共同研究をやってくれることに、トムが同意してくれた。

できれば数年先に、ドバイに、首長から資金援助を得て、少数精鋭の製薬会社 ("Eine Kleine" ファーマ) を設立する計画をトムと目下練っている。15K/モーツァルト"H" などの 「PAK遮断剤」 を専門に製造/販売する会社である。 因みに、首都アブダビには、「ネオファーマ」 というジェネリック医薬品を専門に製造する会社が、2003年に設立している。 東京には、その支店も最近開店したと聞いている。

更に2004年には、一千億円を越える膨大な予算でハーバード大学医学部 (病院)  のドバイ支部 (HMSDC)  建設計画が始動し、中東の中心的な医療センターをめざしている。 従って、我々の 「創薬センター」 もそのプロジェクトに大いに貢献しうるはずである。


http://www.thecrimson.com/article/2009/4/21/from-dubai-with-love-before-the/

ドバイはその昔、長らく "真珠の世界的な産地" として栄えていた。 ところが、1896年に御木本幸吉 (1858-1954) が"アコヤ貝から真珠の人工製造法" を初めて開発し、その特許に関して、1928年に 「天然真珠と人工真珠の間で品質上全く差がない」 ことが、パリの裁判所で正式に認められて以来、(ドバイは) 真珠のお株を三重県志摩半島に取られてしまったという皮肉な歴史が残っている。 ドバイは1950年代の海底油田発見のお蔭で、再び息を吹き返した。

 なお、現在UAEに住む日本人は約3500 人で、その9割がドバイに住んでいる。

2017年9月25日月曜日

快楽ホルモン (ドーパミン) の (延命) 効果は、「腹の空き具合い」による?

モーツァルトの名曲がドーパミンなどの快楽ホルモンの分泌を促進することによって、様々な薬理効果を発揮する例を前述した。 さて、モーツァルトの名曲による延命 (寿命を延ばす) 効果を実際にテストした研究者は未だいないようだが、ショウジョウバエを使って、それに近い実験をしたドイツのグループがいることが判明した。 

 「オクタパミン」(OA) というホルモンは、ドーパミンと正反対の作用を持つ 「不快」 ホルモンである。 OA レセプターを欠損したショウジョウバエは、不快感を感じない「幸せな者」である。 餌がタップリある状態だと、 この幸せ者は、野生株に比べて肥満型になり、短命 (30日) に終わる。 ところが、餌が足りない (節食) 状態になると、 寿命が75日にまで延びる (1)。

一般に哺乳類でもショウジョウバエでも、節食状態にすると、長生きするが、"幸せ者" は更に長生きする!  言い換えれば、「空っ腹 (腹八分目) でモーツァルトの名曲を楽しんだ場合に初めて、延命効果が出る」 という結論が導かれそうである。 贅沢ザンマイには、モーツァルトの (延命) 効果は期待できない (逆効果だ) からご注意!

実は、「モーツァルト自身がなぜ短命に終わった」 のか、とても不思議に思っていた。 ライバルの楽師サリエリによって毒殺されたという噂 (説) もあるが、どうやら 「自業自得 (贅沢ザンマイで逆効果) 」 だった可能性が高い。。。 刺客は 「我が身にあり」! 

 蛇足だが、森 雅裕著のスリーラー小説 「モーツァルトは子守唄を歌わない」  (講談社文庫) が30年ほど昔出版された。 楽聖モーツァルトの死にまつわる陰謀を探偵 "ベートーベン" が解き明かす話である。 ひょっとすると 「モーツァルトは子守唄で眠らされる」  というSF小説も間もなく出版されるかもしれない。 。。

参考文献:  

Octopamine controls starvation resistance, life span and metabolic traits in Drosophila. Sci Rep. 2016; 6: 35359.

2017年9月20日水曜日

「モーツァルト」 の薬理 (免疫能や記憶力などを高める) 効果


http://nikutai-shinka.com/post-974

古典 (クラシック) 音楽、 特にモーツァルトの名曲を聞くと、ストレス解消、免疫能や記憶力が高まるという説がある。 特にピアノやバイオリンが奏でる高音のメロディーが副交感神経を活性化するからだそうである。

私自身がモーツアルトの曲に初めて直に触れたのは、 高校生になってからである。我が母校 「日比谷」 は、他の都立高校と違って、一科目「100分」授業を励行していた。毎朝9時に始業のベルがなり、10時40分に最初の終業ベルがなる。10分の休みを挟んで、次の100分授業が始まる。この授業が終わるのは12時半である*。 全生徒腹ペコの状態で、昼休みのチャイムが鳴る。それと同時に、モーツァルトの有名な小夜曲 「Eine kleine Nachtmusik」 のメロディーが全校に流れ始める。 それを聞いて 「救い」 を感じたのは、私独りではなかっただろう。 特に (変人の名で知られる) 岡田先生の「数学」の授業の直後は格別だった。 その懐かしい名曲を聞きながら弁当を食べ、校庭で昼休みの運動をしばし楽しむ。午後一時には再び始業のベルが鳴り、3番目の (スパルタ) 100分授業が始まる。2時40分にその日の終業ベルが鳴り、倶楽部活動が始まる。私は陸上部に属していたので、下のグランドに出かけて、仲間と長距離練習を始めた。当時、(インターハイで 「ベスト8」を誇った) ラグビー部が最も人気があった。 我々は何よりも 「文武両道」 を誇りにしていた。

既に60年近く経った今でも、この小夜曲 (セレナード #13、 K525、1787年作) を聞く度に 「心が和む」。実は、この作品は "晩年の作" だが、モーツァルトが1791年に35歳で他界してからずっと後 (1827年) に初めて公開された 「秘蔵のセレナード」 である。そこで、ふっと思い付いたことがある。目下、市販をめざしているPAK遮断剤 「15K 」 の商標である。 テレビのコマーシャルにも適した商標として、目下 「モーツァルト "H"」 が候補に浮かび上がっている。 「Eine kleine Nachtmusik」 のメロディーを流しながら、(副作用なしの) 癌治療や健康長寿などを唄う という作戦は決して悪くない。勿論、"H" は (往年、東大合格者を毎年180名近く出していた 「古き良き」時代の) 我が母校の頭文字である。 "最高の薬理効果" を暗示している。言い換えれば、(「モーツァルト」 を冠する) この新薬は半世紀以上の長きわたって積み重ねられた「教育と研究の結晶」なのである。「ローマも良薬も一日にして成らず」 である。

* 名物の「100分授業」は、その後悪名高き「学校群制度」のため、日比谷が凋落の一途を辿ると共に全廃されたが、最近、東大合格者が50台に戻ると共に、数学や生物など一部の科目に限って、100分授業が復活しつつあるそうである。ようやく 「モーツァルト」 のありがたさをしみじみと噛みしめることができる"黄金時代"が徐々であるが再び母校に戻って来る 気配が感じられる。

副交感神経は 「PAK」 を遮断する!

副交感神経がモーツァルトの名曲などによって、活性化されると、アセチルコリンや「快楽ホルモン」(ドーパミン) などの働きで、悪玉酵素 「PAK」 が遮断されるらしい。 なぜならば、血管平滑筋が拡張し、血圧が下がり、汗腺や唾液の分泌が促進され、インスリンの分泌も高まり、消化器のだ動が活発化し、生殖器が勃起するなど、PAKが遮断された場合と全く同じ効果を示すからである。 逆に、(ライオンや宿敵と対決すると) 交感神経が活性化され、(アドレナリンなどを介して) 血圧が高まり、諸分泌器官が分泌を止め、消化器のだ動が止り 便秘、生殖器が委縮する。 つまり、PAKが活性化された状態になる。 言い換えれば、副交感神経は 「平和」 活動に適し、交感神経は 「戦争」 に適している。 勿論、悪玉酵素 「PAK」 は明らかに 「参戦 (タカ) 派」 である。 だから、PAKが異常に活性化された状態が続くと 「長生き」 ができなくなる。

 一昔 (1990年代)、胎児の「音感教育」(胎教) が流行した。モーツァルトなどの名曲をお腹の赤ん坊に聞かせると、頭の良い健康な子供が育つという。胎教については賛否両論あるが、 実は、地中海の魚 (金頭鯛、Yellow Perch) でも、モーツァルトの 「Eine Kleine Nachtmusik」 とバッハの「Violin Concerto  #1」を聞き分け、前者に対して、より多くの快楽ホルモン (ドーパミン) を分泌するという研究結果が最近、ギリシャのアテネ農大の研究グループによって報告されている (1)。 癲癇はPAK依存性の難病だが、モーツァルトの名曲で幼児の癲癇の頻度が著しく下がったという臨床報告もいくつかある (2)。 因みに、(プロポリス療法同様) 「モーツァルト療法」 にも 「副作用」 は無さそうである。

もし将来、モーツァルト療法による 「PAK遮断メカニズム」 を分子レベルで解明できたら、「ノーベル賞」 ものかもしれない。モーツァルトの名曲で全ての難問を解決できれば、もう薬も核兵器も無用になるかもしれない。。。 先ず、「北朝鮮の金首席」にモーツァルトの名曲をタップリ聞かせてやりたい! 

線虫の寿命に対する 「モーツァルト」 効果?

魚や昆虫などの脊椎動物と違って、軟体動物の線虫には、視覚も聴覚もない。 しかし、立派な脳はあり、快楽ホルモン 「ドーパミン」に対するレセプターもあり、触覚に応じて、ドーパミンが分泌される (3)。 この触覚は、音声 (つまり、空気の振動) にも敏感なはずである。 そこで、ある面白い実験を考え付いた。 毎日、ランチタイムに15 分間ほど、線虫の前でモーツァルトの 「Eine kleine Nachtmusik」 を演奏すると、線虫の健康寿命が長くなるだろうか?  我々の実験で、PAK 遺伝子の欠損した線虫の変異体 (R689) は、野生株より 6 割も長生きする。 従って、もし線虫がモーツァルトの名曲に応じてドーパミンを分泌し、PAKを遮断すれば、長生きするはずである。 大学の修士過程の院生にでも、出来る簡単な (一ヶ月以内に正否の結果が出る) 実験である。。。そして、もし、結果が 「ポジチブ」 であれば、「Mozart effect in C. elegans」 と題する 歴史的な研究論文 (短報) を恐らく、雑誌 「NATURE」 に発表できる!**  


因みに、同じような実験を "マウス" でやると、結果が出るまでに少なくとも "4-5年" かかる (院生にとっては、"リスク" が高過ぎる!)。 もっとも、マウスと共に (長期にわたって) 毎日名曲を楽しめば、(「日比谷卒」 のごとく) 実験者の側にも 「実効果」 で出てくるかもしれない。。。 例えば、ノーベル受賞者 「利根川 進」 氏も 「PAK遮断剤 開発研究 を続けているが、彼も ( 「Eine kleine Nacht-musik」 を少なくとも丸3年間聴講した) 「日比谷卒」 (我々の先輩) の一人である。

 もう一つ、興味深い事実が10年ほど昔に見つかっている。線虫仲間に、ドーパミンの分泌が低い変異株 (CAT-2) が知られている。 いわゆる 「パーキンソン氏病」の線虫モデルになっている。 この変異株は、迷路の実験で、餌を捜し出すのに、野生株より時間がかかる。つまり 「ウスノロ」 である。ドーパミン不足で、PAK過剰になり、記憶力が低下しているからだろう。 「CAT-2」 の寿命を測定した学者はまだいないようだが、きっと短命だろう。。。

**そもそも、「モーツァルト効果」を初めて発見 (あるいは提唱) したのは、実は米国カルフォルニア大学の女性研究者(ポスドク) Frances Rauscher 博士だった。彼女はチェロ奏者であると同時に 「心理学者」 だった。 1993年に、学生たちにモーツァルトの名曲 (ピアノソナタ, K448) を10分間聞かせた直後に、空間感覚のIQテストをすると、IQ値が有意に上がっていることを見つけ、その人体実験結果を雑誌 「NATURE」 に発表して、センセーションを巻き起こした。 
http://www.uwosh.edu/psychology/faculty-and-staff/frances-rauscher-ph.d

 メロディーを記憶する脳の仕組みについては、まだ良く解明されていないようだが、何度も繰り返して聞いたことのある好きなメロディーが聞こえてくると、人はほっと安心するものである。私にとっては、モーツァルトのK525 (セレナード) やK545 (ピアノソナタ) は、その典型的な例である。

参考文献:

1. Papoutsoglou SE, Karakatsouli N, Psarrou A et al. Gilthead seabream (Sparus aurata) response to three music stimuli (Mozart--"Eine Kleine Nachtmusik," Anonymous--"Romanza," Bach--"Violin Concerto No. 1") and white noise under recirculating water conditions. Fish Physiol Biochem. 2015 ; 41: 219-32.
2. Lin LC, Lee MW, Wei RC, Mok HK, Wu HC, Tsai CL, Yang RC.
Mozart k.545 mimics mozart k.448 in reducing epileptiform discharges in epileptic children. Evid Based Complement Alternat Med. 2012; 2012: 607517.
3. Han B, Dong Y, Zhang L, Liu Y, Rabinowitch I, Bai J. Dopamine signaling tunes spatial pattern selectivity in C. elegans. Elife. 2017 Mar 28;6. pii: e22896.