住民の8分の7が外国人で、教育は小学校から大学まで無料、所得税なしという不思議な国が、アラビア半島内、ペルシャ湾岸 ( イランの対岸) に存在する。 砂漠に住み、狩猟やラクダによる行商で生活を営んでいた 「ベドウイン族」 の首長たちが建設した連合王国である。 人口は1950年にはわずか7万人だったが、60年後の2010年には、その百倍以上 (750万人) に達している。 1950年代に初めて豊かな海底油田などが発掘されて以来、急速に経済発展を遂げ、1971年末に保護国である英国から独立した。人口が最大のドバイは貿易で発展した都市で、香港、シンガポール、ハンブルグなどと並ぶ世界有数の貿易ハブである。首都は石油都市アブダビ、教育の中心は、UAE 大学のあるオアシス都市アルアイン (オマーンとの国境に近い) である。
実は、このUAE大学に私の知人トム=アドリアン教授がいる。 トムは米国のシカゴから(単身赴任で) 移住してきたアメリカ国籍の癌研究者である。 10年ほど前、大西洋に生息するある海鼠 (ナマコ) から、強力な抗癌物質 (フロンドサイド A, 略称FRA) を発見した。 目下、それをスイゾウ癌の治療薬として開発中である。最近、このFRA が実はPAK阻害剤であることを、我々が突き止めて以来、トムとの交流が始まった。 そこで、我々が最近開発した (より強力な) 「15K 」(あるいは、モーツアルト"H") が (薬剤耐性の) スイゾウ癌にも効くことを、マウスを使った動物実験で確認する共同研究をやってくれることに、トムが同意してくれた。
できれば数年先に、ドバイに、首長から資金援助を得て、少数精鋭の製薬会社 ("Eine Kleine" ファーマ) を設立する計画をトムと目下練っている。15K/モーツァルト"H" などの 「PAK遮断剤」 を専門に製造/販売する会社である。 因みに、首都アブダビには、「ネオファーマ」 というジェネリック医薬品を専門に製造する会社が、2003年に設立している。 東京には、その支店も最近開店したと聞いている。
更に2004年には、一千億円を越える膨大な予算でハーバード大学医学部 (病院) のドバイ支部 (HMSDC) 建設計画が始動し、中東の中心的な医療センターをめざしている。 従って、我々の 「創薬センター」 もそのプロジェクトに大いに貢献しうるはずである。
http://www.thecrimson.com/article/2009/4/21/from-dubai-with-love-before-the/
ドバイはその昔、長らく "真珠の世界的な産地" として栄えていた。 ところが、1896年に御木本幸吉 (1858-1954) が"アコヤ貝から真珠の人工製造法" を初めて開発し、その特許に関して、1928年に 「天然真珠と人工真珠の間で品質上全く差がない」 ことが、パリの裁判所で正式に認められて以来、(ドバイは) 真珠のお株を三重県志摩半島に取られてしまったという皮肉な歴史が残っている。 ドバイは1950年代の海底油田発見のお蔭で、再び息を吹き返した。
なお、現在UAEに住む日本人は約3500 人で、その9割がドバイに住んでいる。
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