2018年11月6日火曜日

癌治療薬としての「丸山ワクチン」 (含 LPS) の問題点?

丸山ワクチン (SSM=Specific Substance MARUYAMA) は1944年、皮膚結核の治療薬として誕生。ワクチンの生みの親:  丸山千里博士 (元日本医科大学学長・1901~1992年) にちなんで後に「丸山ワクチン」と呼ばれるようになった。皮膚結核に対して驚くべき効果をもたらしたこのワクチンは、ハンセン病の皮膚障害、発汗障害、神経障害にも効果を上げた。

皮膚結核やハンセン病の治療に打ち込むなかで、あるとき、この二つの病気にはガン患者が少ないという共通点が見つかった。このようにして、ワクチンの抗癌作用を調べる研究が始まった。1964年の暮れ (ちょうど私が駒場から本郷キャンパスに進学後間もなく) 、丸山は実際のガン治療にワクチンを用いることを決意し、知り合いの医師にワクチンを使ってみてくれるように依頼。そのうちに、あちこちの医師から「ガンの縮小がみられる」などの報告が届く。我が恩師 (水野伝一教授) も、丸山ワクチンの抗癌作用に注目したが、私の受けた印象では、その抗癌作用には、明らかに 「限界」 (悪戦苦闘の跡) がみえた。

ごく最近、その理由の一つが浮かび上がった。 私の理解が正しければ、丸山ワクチンの主成分は" lipo-poly-saccharide" (LPS) で、貪食細胞マクロファージなどを刺激して、炎症を起こす作用がある。 さて、PAK遺伝子が欠損したマウスでは、LPSで刺激しても、炎症が発生しない。 いいかえれば、炎症は発癌同様、PAK依存性の疾患である。PAK遮断剤であるプロポリスが炎症の治療に有効である理由が自ずから理解できよう。  さて、数年前から、LPS でPD-L1 発現を誘導する実験例が幾つか発表されてきた。 つまり、LPS は、PD-L1 を介して、免疫 (T) 細胞の抗癌作用を抑える働きがあることを意味する! 

更に、ごく最近になって、中国の研究グループから、LPS によるPD-L1 誘導には、PAKの下流にあるNF-kB が必須であることが明らかにされた (1)。 つまり、LPS はPAKを介して、PD-L1 発現を誘導して、抗癌免疫作用を邪魔していることになる。"皮肉な" 結論だが、丸山ワクチンから "LPS" を除かない限り、抗癌作用は余り期待できない!  

数年前の研究によれば、丸山ワクチン中のもう一つの主成分 (LAM=リポアラビノマンナンという多糖体) が、抗癌免疫能を高めているという報告が (九大と千葉大) の共同研究によって明らかにされたそうである。

References:

1. Li H1, Xia JQ1, Zhu FS1, Xi ZH1, Pan CY1, Gu LM1, Tian YZ1.
LPS promotes the expression of PD-L1 in gastric cancer cells through NF-κB activation. J Cell Biochem. 2018 Aug 26.

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