さて、最近、もう一つの動き (第3のアプローチ) が登場しつつある。 それは、製薬会社「ブリストルマイヤー」開発の「BMS-202」 と呼ばれる化合物などに代表される PD-L1 とPD-1 との結合を直接抑える薬剤である。 ポーランドの古都クラコウにあるジャグローニアン大学の生物物理学者タッド=ホラック教授によれば、「BMS-202」 はPD-L1 に直接結合して、2量子体 (ダイマー) の形成を誘導することによって、受容体であるPD-1 との結合を阻止する働きを持つ (1)。 極めて、スマートな方法 (仮説) である! もっとも、 実際に動物実験で、この薬剤が癌の増殖を有効に抑えたという実例は、私が調べた限り、未だ見付かっていないようだが。
参考文献:
Structural Biology of the Immune Checkpoint Receptor
PD-1 and Its Ligands PD-L1/PD-L2. Structure.
2017 ;25(8):1163-1174.
バーネットの免疫学を越えた「LED」 をめざせ!
PD-L1 などのProgramme Death Ligands の機能をモノクローナル抗体やBMS-202 で直接阻害するアプローチは、確かにスマートではあるが、バーネットに始まる免疫学の域を脱していない。 従って、免疫が関与していない病気には、全く無効である。つまり、視野が狭い (馬車馬的な) アプローチである。 従って、"モーツアルトの名曲" のように、全てを解決してくれそうな「総合薬」ではない。
ここで、我田引水(あるいは自我自讃) になるが、我々の開発しつつあるPAK遮断剤は、1950年代の「バーネットの免疫学」を遥かに越えた (卒業した) 21世紀の総合薬である。癌ばかりではなく、種々の感染症や、認知症などの老化現象を含めて、殆んど凡ゆる難病に対処できるからである。 広範な病気の根源である「PAK」を標的にしているからである。 つまり、「病気とは何たるか」を総合的に理解した上での発明であるからだ。 従って、その市場 (潜在) 価値は莫大である! 医薬としてばかりではなく、育毛や美白などを目的とした化粧品にも、更に健康長寿にも役立つ! つまり、対象は病気を患う患者ばかりではなく、いわゆる「健常者」全ても含めた人類 (否、家畜も含めて人畜) 全体に福祉をもたらす 「LED」 (Lifespan Extending Drugs) である。
免疫学の鏡 (天才)「バーネット」(1899-1985)
豪州メルボルンは1950年代、免疫学の「メッカ」と呼ばれていた。メルボルン大学構内にあるWEHI (Walter Eliza Hall Institute) の所長をしていたバーネット教授が「抗体による自他の認知」メカニズムを説明するいわゆる「クローン選択説」を確立したからである。その功績に対して、彼は1960年にノーベル医学賞をもらった。私は当時まだ高校生だったから、知らなかったが、翌年初めて来日、東京の伝研や京大を訪れて、いわゆるノーベル講演をしたそうである。 私がバーネットの存在を初めて知ったのは、東大の大学院博士課程で、マクロファージという貪食細胞を使用して、自他の認知メカニズムを解明する研究を始めた1969年頃である。恩師水野伝一教授の下で、「バーネットのクローン選択説」の英文 "原本" は高価でとても入手できないので、「海賊版」を数冊購入し、その訳本を助手や院生の有志数人と共に出版した。
私自身の研究テーマは、「抗体を介しない自他の認知メカニズム」の存在を証明することであった。 (例えば、マウス由来の) マクロファージ自身は、抗体を産生せずに、「細胞培養系で」マウス由来の生きた赤血球を貪食しないで、他種 (例えば羊由来) の赤血球を選択的に貪食する。 つまり、抗体の存在しない状態で、自他の違いを認識しうる。しかしながら、マウスの赤血球も「老化 」(ATP を欠乏) すると、同種のマクロファージによって、貪食を受ける。つまり、マクロファージは、赤血球の自他を認識しうるばかりではなく、細胞の老化を認識して、除去する機能をも備えていることが証明された。その詳しい分子メカニズムについては、不明だったが、「バーネットの免疫学を越える」ものとして、雑誌「Nature」に受理された。
それから、15年近く欧米で "武者修行" を経た1987年に、メルボルンを初めて訪れる機会がやって来て、私はかの有名なバーネットに会えることを楽しみにしていたのだが、到着してみると、彼が既に (2年ほど前に) 結腸癌で他界したことを知って、大変失望した! しかしながら、他の意外な縁に助けられ、そのまま、ずっと「夢のメルボルン」に永住するという幸運を得た。
実は、当時メルボルン大学病院内にあるルードビッヒ国際癌研のメルボルン支部長をやっていたトニー=バ-ジェス教授は、ちょうど「バーネットの孫弟子」にあたり、WEHI 時代に「マクロファージ由来の免疫増強因子」を発見した。 この蛋白には従来の抗癌剤の副作用である免疫能の低下を補う薬理作用があった。そこで、「抗癌剤の補助剤」として、その市販に成功させた。 この「マクロファージが結ぶ縁」で、トニーの研究所に (免疫とは一見無関係に見える "発癌RAS-PAK シグナル経路" を標的とする) 「抗癌剤開発部長」として採用された。
丁度その年は、我が高校の先輩である利根川進 (MIT 教授) が分子免疫学でノーベル賞をもらった年でもあった。 それから30年以上の歳月が経過し、「本庶さんが癌の免疫 (チェックポイント) 療法でノーベル賞受賞」の報を受けて、我々のPAK遮断もPD-L1を遮断することによって免疫に関与していることが判明した! 全く皮肉な結末だ。「免疫という名の記憶」は、一度頭にこびりつくと、中々抹殺できないものである。。。
バーネットの免疫学を越えた「LED」 をめざせ!
PD-L1 などのProgramme Death Ligands の機能をモノクローナル抗体やBMS-202 で直接阻害するアプローチは、確かにスマートではあるが、バーネットに始まる免疫学の域を脱していない。 従って、免疫が関与していない病気には、全く無効である。つまり、視野が狭い (馬車馬的な) アプローチである。 従って、"モーツアルトの名曲" のように、全てを解決してくれそうな「総合薬」ではない。
ここで、我田引水(あるいは自我自讃) になるが、我々の開発しつつあるPAK遮断剤は、1950年代の「バーネットの免疫学」を遥かに越えた (卒業した) 21世紀の総合薬である。癌ばかりではなく、種々の感染症や、認知症などの老化現象を含めて、殆んど凡ゆる難病に対処できるからである。 広範な病気の根源である「PAK」を標的にしているからである。 つまり、「病気とは何たるか」を総合的に理解した上での発明であるからだ。 従って、その市場 (潜在) 価値は莫大である! 医薬としてばかりではなく、育毛や美白などを目的とした化粧品にも、更に健康長寿にも役立つ! つまり、対象は病気を患う患者ばかりではなく、いわゆる「健常者」全ても含めた人類 (否、家畜も含めて人畜) 全体に福祉をもたらす 「LED」 (Lifespan Extending Drugs) である。
免疫学の鏡 (天才)「バーネット」(1899-1985)
豪州メルボルンは1950年代、免疫学の「メッカ」と呼ばれていた。メルボルン大学構内にあるWEHI (Walter Eliza Hall Institute) の所長をしていたバーネット教授が「抗体による自他の認知」メカニズムを説明するいわゆる「クローン選択説」を確立したからである。その功績に対して、彼は1960年にノーベル医学賞をもらった。私は当時まだ高校生だったから、知らなかったが、翌年初めて来日、東京の伝研や京大を訪れて、いわゆるノーベル講演をしたそうである。 私がバーネットの存在を初めて知ったのは、東大の大学院博士課程で、マクロファージという貪食細胞を使用して、自他の認知メカニズムを解明する研究を始めた1969年頃である。恩師水野伝一教授の下で、「バーネットのクローン選択説」の英文 "原本" は高価でとても入手できないので、「海賊版」を数冊購入し、その訳本を助手や院生の有志数人と共に出版した。
私自身の研究テーマは、「抗体を介しない自他の認知メカニズム」の存在を証明することであった。 (例えば、マウス由来の) マクロファージ自身は、抗体を産生せずに、「細胞培養系で」マウス由来の生きた赤血球を貪食しないで、他種 (例えば羊由来) の赤血球を選択的に貪食する。 つまり、抗体の存在しない状態で、自他の違いを認識しうる。しかしながら、マウスの赤血球も「老化 」(ATP を欠乏) すると、同種のマクロファージによって、貪食を受ける。つまり、マクロファージは、赤血球の自他を認識しうるばかりではなく、細胞の老化を認識して、除去する機能をも備えていることが証明された。その詳しい分子メカニズムについては、不明だったが、「バーネットの免疫学を越える」ものとして、雑誌「Nature」に受理された。
それから、15年近く欧米で "武者修行" を経た1987年に、メルボルンを初めて訪れる機会がやって来て、私はかの有名なバーネットに会えることを楽しみにしていたのだが、到着してみると、彼が既に (2年ほど前に) 結腸癌で他界したことを知って、大変失望した! しかしながら、他の意外な縁に助けられ、そのまま、ずっと「夢のメルボルン」に永住するという幸運を得た。
実は、当時メルボルン大学病院内にあるルードビッヒ国際癌研のメルボルン支部長をやっていたトニー=バ-ジェス教授は、ちょうど「バーネットの孫弟子」にあたり、WEHI 時代に「マクロファージ由来の免疫増強因子」を発見した。 この蛋白には従来の抗癌剤の副作用である免疫能の低下を補う薬理作用があった。そこで、「抗癌剤の補助剤」として、その市販に成功させた。 この「マクロファージが結ぶ縁」で、トニーの研究所に (免疫とは一見無関係に見える "発癌RAS-PAK シグナル経路" を標的とする) 「抗癌剤開発部長」として採用された。
丁度その年は、我が高校の先輩である利根川進 (MIT 教授) が分子免疫学でノーベル賞をもらった年でもあった。 それから30年以上の歳月が経過し、「本庶さんが癌の免疫 (チェックポイント) 療法でノーベル賞受賞」の報を受けて、我々のPAK遮断もPD-L1を遮断することによって免疫に関与していることが判明した! 全く皮肉な結末だ。「免疫という名の記憶」は、一度頭にこびりつくと、中々抹殺できないものである。。。
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