2018年10月30日火曜日

食品医学: 免疫能を高め、健康長寿に役立つ(薬用)食物

従来の抗癌剤は大部分、脱毛や免疫能を低下させるなどの副作用が付き物で、(幸運なら) 癌は治るが、(結局) 我々の寿命を縮める傾向が強い。 そこで、これらの抗癌剤 (毒物) の代わりに、副作用なしに、更に免疫能などを高めながら、健康長寿に役立つ「食餌療法」をお勧めしたい。 「そんな健康食品は存在しない! 」と思い込んでいる人や医者がいたら、それは「無知」以外の何者でもない。

先ず、古代エジプト時代から4千年以上、使用されている蜜蜂が天然に処方 (調剤) する「プロポリス」を"代表例"に挙げよう。ポプラや柳などの若芽から、蜜蜂が調剤する、いわゆる「蜂の巣」(六角形の巣箱) は、元々幼虫を外敵 (細菌やウイルス) から守るために、(蜜蜂がこの地球に誕生して以来) 何億年 (正確には一億5千年以上、人類の歴史の約30倍!) も前に考案されたものである。 この"蜂の巣"をアルコールで抽出して得られたものが、いわゆる「プロポリス」である。 

古代ギリシャのヒポクラテスは「医学の祖」として知られているが、この「蜂の巣のアルコールエキス」を初めて「プロポリス」と命名して、伝染病や傷口の手当てに、"医薬" として使用したのが、かの有名なヒポクラテスである。 さて、プロポリスは一種の抗生物質であるが、従来の抗生物質 (ウイルスには無効) と違う点は、「バクテリア感染ばかりではなく、ウイルス感染にも有効」であるという特色である。

古代エジプトの人々は、他界した王家の死骸を「ミイラ」として、ピラミッドの地下に何千年も保存したが、ミイラを細菌やカビによる腐蝕から守るために、このプロポリスを有効に使用したのは、非常に有名な話である。

さて、20世紀の後半 (1980年代末) に、米国のコロンビア大学の癌学者によって、プロポリスに抗癌作用もあることが発見されて以来、 副作用の強い抗癌剤に飽き飽きした癌患者たちが、健康食品 (代替医薬) として、プロポリスを使用し始めた。 その後、我々自身の研究の結果、プロポリスがPAK遮断剤の一種であることが判明した。

PAK とは、発癌や老化などに関与する病原酵素 (キナーゼ) の一種である。  従って、(PAK遮断剤は) 癌の増殖や転移を抑えるばかりではなく、健康長寿にも役立つ。 さて、プロポリスには、「免疫能を高める作用もある」ということが巷で長らく囁やかれていたが、ごく最近、その分子メカニズム (科学的な根拠) が豪州メルボルン大学病院の賀 紅女史らによって初めて解明された。 PAK には元来、免疫能を抑える作用があり、それをプロポリスなどで遮断すると、免疫能が高まるわけである。 更に、前述したが、(癌の) 免疫 (チェックポイント) 療法の標的の一つである「PD-L1 」蛋白の発現にPAK が必須であることが判明し、プロポリスは、("ノーベル受賞"で俄に注目されている) 免疫 (チェックポイント) 療法剤の一つにもなることが、一目了然となった!  

 プロポリスは大別すると、含有主成分の違いによって、3種類に分類される。日本国内で市販されているプロポリスは大部分、ブラジル産のグリーンプロポリスで、主成分はArtepillin C (ARC) である。高価だが、薬効は劣る。欧米やニュージーランド産のプロポリス (Bio 30) は、コーヒー酸 (CA) やそのエステル (CAPE ) を主成分として、(安価で) 最も薬効が高い。 更に、沖縄や台湾産のプロポリスは、未だ市販には至っていないが、Nymphanols を主成分とするもので、薬効はほぼBio 30 に匹敵する。 しかしながら、市販のプロポリスの主成分 (PAK遮断剤) はカルボン酸を有するため、細胞透過性が悪い。そこで、我々は、 ARCやCAをクリック化学 (CC) という手法で、水溶性のエステルに変換し、その抗癌作用を100、400 倍に増強することに成功した。同様な方法で、合成鎮痛剤 "Ketorolac" (PAK遮断剤) の抗癌作用を500倍以上に増強させたものが、今日「15K」と呼ばれている「最強のPAK遮断剤」である。 目下、その臨床テストを経て、市販化を狙っている。

 センシンレンと海鼠エキスの併用 
さて、「15K」の市販化には、(数々の臨床テストのため) 恐らく 数年間の月日が必要だろう。 そこで、それまでは、天然の「PAK遮断」食物あるいは漢方に頼る外ない。漢方で最もお勧めできるのは、「センシンレン」と呼ばれるもので、その主成分は Andrographolide (AGL) で、PAK の直ぐ上流にある発癌キナーゼ「JAK 」を阻害する。 我々の共同研究者からの最新情報によると、海鼠由来の Frondoside A (FRA) = "PAK阻害剤" とAGLを併用すると「相乗作用」により、"15K" に相当する抗癌作用が発揮できるそうである。つまり、センシンレンと海鼠エキス (煮汁) を組み合わせると、最強になる! なお、その「相乗作用」メカニズムについては、未だ「謎」に包まれている。。。博士論文研究のテーマに相応しい「最先端」の課題である。 

以下は私の単なる想像 (あるいは"妄想") に過ぎないが、「AGL-FRA 」複合体が、JAK やPAK 以外の (発癌に必須な)「新たな標的」 (例えば、COX-2) に結合するためであろう。というのは、AGL は (PAK の下流にあるCOX-2 をも阻害する)「15K」とは、相乗作用を全く示さないからである。仮に、この妄想 (仮説) が正しいとすると、AGL とFRA は、各々PD-L1の発現を阻害するが、(この場合) 相乗作用は示さないはずである。 何故かといえば、「COX-2 はPD-L1 発現には関与しない」という実証が最近出ているからだ。

漢方「雷公藤」由来のPAK遮断剤「トリプトライド」とその誘導体 
ツル科の薬草「雷公藤」の葉や茎のエキスは、古代中国で、主にリュウマチや炎症の治療薬として使用されていた。さらに (精子の増殖を抑える働きがあることから) 男性用の避妊薬としても、利用されていた。しかし、1972年にその抗白血病作用を持つ有効成分が (AGL に類似した) ジテルペン類「トリプトライド」であることが、明らかにされて以来 、膵臓癌や認知症などの難病の治療にも有効であることが、次第に知られるようになった。しかしながら、トリプトライドの抗癌作用のメカニズムが分子レベルで解明されたのは、ごく最近である。2009年に中国の研究グループによって、トリプトライドがRACの活性化を抑えることによって、その下流の「PAK」を遮断することが明らかにされた。トリプトライドは膵臓癌や大腸癌細胞の増殖を強く抑え (IC50(50%阻害濃度)=30 nM)、マウスなどの動物実験では、0。3 mg/kgという低濃度で、ヒト由来の膵臓癌や大腸癌の増殖を抑えることが証明された。2017年には、韓国のグループによって、トリプトライドが線虫の寿命を有意に延ばすことが報告された。従って、副作用は殆んどないに違いない。しかしながら、トリプトライドが水に溶けにくく、そのままでは臨床には不適だった。そこで、2012年になって、ミネソタ大学医学部の研究グループによって、水溶性の (燐酸化) 誘導体「ミネライド」が化学合成され、主に膵臓癌患者を対象とする臨床試験 (phase II) が目下進行中 (Phase II は2019年2月に終了予定)。 だから、我々の「15K」よりも 2、3年早く、「ミネライド」が市販されるに違いない。癌患者にとっては、大変待ちどうしい限りだ。。。ただし、"燐酸化" により、「ミネライド」は水溶性を増す代わりに、細胞透過性を低下させる結果、本命 "15K" に比べて、薬理作用がかなり弱い可能性あり。

ミネライド開発の総指揮官は、西独 Marburg 大学出身の Gunda Georg 女史 (メネソタ大学の薬学教授、有機化学者) である。 Marburg は童話の作者( グリム兄弟) でも有名だが、ジフテリアの血清療法で第一回ノーベル賞医学賞をもらったEmil von Behring でも有名である。 来年7月末に京都で開催される国際創薬学会 (IDDST) に彼女を特別講演者として、招待することを計画している。
  

さて、このトリプトライド関係の古い文献を調べている内に、あっと驚く論文が見付かった。 何んと、ちょうど10年前にテキサス大学の研究グループによって、(インターフェロンで誘導される) PD-L1の発現をトリプトライドが抑えることが証明されていた (1)!  恐らく、PAK遮断剤の中、この薬剤が初の「PD-L1抑制剤」であろう。 

最近の動物実験によれば、トリプトライドは癌ばかりではなく、認知症の治療にも有効のようである。つまり、血管脳関門を通過するから、NF などの脳腫瘍にも効くはずである。
 

参考文献:
1. Liang M, Fu J. Triptolide inhibits interferon-gamma-induced programmed death-1-ligand 1 (PD-L1) surface expression in breast cancer cells. Cancer Lett. 2008 ; 270(2):337-41.

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