固形癌 (悪性腫瘍) の患者が最終的に死に至る主因は、癌が体中に転移することにある。従って、癌患者の延命を図るためには、先ず固形癌の転移を抑える必要がある。
さて、残念ながら、従来のケモ (抗癌剤=DNA合成や微小管の機能阻害剤など) や放射線には、癌細胞を殺す作用はあるが、癌の転移を抑える作用はない。 従って、癌患者の延命には、転移を抑制する薬剤、例えばプロポリスなどの「PAK遮断剤」の投与が必須である。 固形癌の転移には、PAK が必須であるからである。10年以上昔、我々自身の研究により、プロポリスがNF腫瘍などの転移を 強く抑えることが、動物実験で実証されている。
海外に住む私の知り合いの中に、大腸癌が転移を起こしている症例が最近見つかった。早速、プロポリスを飲むように勧めた。 しかしながら、その患者の担当医が、素直に、プロポリスの投与を許す (黙認する) かどうかは、担当医の「頭の柔軟さ」に依存する。多くの癌専門医は、(残念ながら) プロポリスの薬理作用に関して無知か、偏見を持っているからである。翁長知事のスイゾウ癌を担当した沖縄の医局が、その典型的な 悪例である。
そこで、市販されている薬剤や健康食品の中から、癌の転移を抑える作用がある薬剤を、2、3 発掘してみた。 先ず見つかったのは、奇跡の薬と呼ばれた"Gleevec" である。 この薬剤 (ABL、 PDGFR などのチロシン=キナーゼを阻害する抗癌剤) の適用範囲は、極めて限定され、厳密に言えば、CML やGIST など固形癌全体の千分の一に過ぎない。 しかしながら、2、3年前に中国のグループによって、Gleevec が 「NM23 」と呼ばれる「癌転移抑制遺伝子」の発現を誘導することが発見されていた。 ウコン由来のPAK遮断剤「クリクミン」にも、NM23 誘導作用がある。 さて、Gleevec は PDGFRを阻害することによって、最終的にはPAK も遮断する。従って、NM23 遺伝子の発現を通常、PAK が抑制している可能性がすこぶる高い!
NM23 遺伝子が発見されたのは、今から30年以上前 (1988年) である。米国のNIH 内にある癌研究所 (NCI) の Steep 博士らである。 さて、NM23 蛋白による癌転移抑制メカニズムについては、未だ余り良くわかっていないようだが、NM23 がPAK の上流で、その活性化を抑えているメカニズムについては、もう20年ほど昔、浜松医科大学の杉村春彦教授の研究室によって、解明されていることが判明した。 仔細になるが、発癌蛋白RAS の直ぐ下流にTiam 1 と呼ばれる蛋白が存在し、それを介して、G蛋白RAC がPAK を活性化しているが、その Tiam 1 の機能を直接阻害するのが、G蛋白「NM23 」である (1)。
余談になるが、「NF2 遺伝子」も "癌転移抑制遺伝子の仲間" である。なぜなら、この遺伝子が欠損すると、PAKが異常に活性化し、NF腫瘍の転移を促進するからである。興味深いことには、NF2 蛋白 (メルリン) も NM23 蛋白も細胞間「Tight-Junction 」を形成するCD44 (ヒアルロン酸受容体) と結合していることから、両蛋白が、いわゆる細胞の「Contact Inhibition」(細胞同志が接触すると、増殖や運動を停止する現象) に関与している可能性が高い。なお、ヒアルロン酸はしばしば「肌の若返り」化粧品に使用されているが、CD44 に結合しTiam の活性化を促すので、発癌や癌転移を促す可能性があり、(長寿を期待する方には) 化粧品成分としてはお勧めできない。 「美人薄命」という言葉通り、ヒアルロン酸は、「悪性胸膜中皮腫」の腫瘍マーカーばかりではなく「早老症」のマーカーでもある!
市販の松果体ホルモン「メラトニン」にも癌転移抑制作用がある。前述したが、メラトニンは天然PAK遮断剤である。 ただし、NM23 誘導作用を調べた文献はまだない。
参考文献:
1. Otsuki Y,
Tanaka M,
Yoshii S,
Kawazoe N,
Nakaya K,
Sugimura H.
Tumor
metastasis suppressor nm23H1 regulates Rac1 GTPase by interaction with Tiam1.
Proc Natl Acad
Sci U S A. 2001 ;98(8):4385-90
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