惜しむらくは、この薬剤自体は脳内に蓄積され難いので、NF などの脳腫瘍の治療には役立たないと、ずっと長らく思われていた。ところが、実は数年前に 、 米国アイオア州立大学の獣医学研究グループによって、イベルメクチンを脳内に蓄積させることを可能にする不思議な抗生物質が "偶然にも" みつけられていた! その名は "Doxycycline", 抗生物質 「テトラサクリン」の誘導体である。
この抗生物質は、「アルパカ」という南米由来の動物中にあるPGPで、イベルメクチンを脳内から吐き出すATP依存性のポンプ (薬剤耐性) 蛋白の機能を抑えることが、明らかになった(1)。 従って、イベルメクチンをDoxycycline と併用すると、この動物の脳内寄生虫を駆除することができる!
さて、問題は「人類」脳内 (BBB=血管脳関門) のPGP も、この抗生物質によって、同様に阻害を受けるかである。。。目下、この研究リーダー (Steve Carlson) に、その点を照会している。。。 もし、「イエス」ならば、NF (神経線維腫症) は市販のイベルメクチンとDoxycyclineで、治療しうるはず! なお、テトラサイクリンの誘導体「Minocycline」には、PGP 阻害作用はない。従って、"Doxycycline" (Fig. 2) の右から2番目の芳香環の下方に付加した「OH 」が、PGP阻害作用に必須らしい。
参考文献
1. Prince Agbedanu, Kristi Anderson, Matthew Brewe
, Steve Carlson. Doxycycline as an Inhibitor of P-Glycoprotein
in the Alpaca for the Purpose of Maintaining Avermectins in the CNS During
Treatment for Parelaphostrongylosis. Vet Parasitol. 2015. 15; 212:303-7.
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