マウスなどの動物実験などで、PAKの異常活性化が一連の神経疾患 (例えば、認知症、自閉症、癲癇など) を起こすことがかなり前から知られていた。 従って、プロポリスや目下開発されつつある一連のPAK遮断剤によって、これらの神経疾患を治療しうる可能性が期待されている。しかしながら、実際にヒトの患者で、PAK遺伝子自体に変異が発見される例は、今まで極めて稀れであった。昨年、ドイツのハンブルグ大学病院で、いわゆる「キューピー病」(ヌーナン症候群 ) 患者 (児童) に、PAK遺伝子に明らかな変異が発見されたのが、恐らく最初の実例であろう。
さて、つい最近になって、同じくドイツのライプチッヒ大学の小児科病院で、脳疾患患者の中に、PAK遺伝子の新たな変異が発見された。PAK 蛋白は通常、ホモダイマー (2量子) を形成して、不活性な状態にある。ところが、RAC や CDC42 などのG蛋白が結合すると、ダイマーのジッパーが開いて、活性状態になる。ところが、この脳疾患者の 場合は、PAK遺伝子自体に変異が起こったために、ホモダイマーの形成が不十分で、G蛋白が外から結合しなくても、ジッパーが半開き状態のままになり、恒常的に活性化が進行状態になるという。 この患者たちには、脳の発達障害と肥大、自閉症らしき症状や癲癇に似た発作が伴っている。
蛇足だが、ライプチッヒの町はその昔 (敗戦後長らく)、東独側に属していたが、古い伝統的な町で、かつて、文豪のゲーテや作曲家のバッハなどが活躍していた町である。最近は、ネアンデルタール人 と人類 (ホモ=サピエンス) の遺伝子の比較解析などで良く知られるようになった。
参考文献:
Horn S, Au M, Basel-Salmon et al. De novo variants
in PAK1 lead to intellectual disability with macrocephaly and seizures. Brain.
2019 Aug 29. pii: awz264.
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