ショウジョウバエ (Drosophila) を使用した老化研究に関する世界的パイオニアである米国のマイケル=ローズ教授 (カルフォルニア大学) が、2005年にオックスフォード大学出版から英文原書 "The Long Tomorrow" を出版したが、その邦訳「老化の進化論」が、数年後の2012年に、みすず書房から出版された。 実は、私の本来の研究テーマは、発癌キナーゼである「PAK 」を選択的に阻害あるいは遮断する一連の薬剤を開発することにあった。しかしながら、2007年頃に、せんちゅう (C. elegans) をPAK遮断剤 (例えば、プロポリスなど) で処理、あるいはPAK遺伝子を除くと、寿命が伸びること、 つまり(「PAKは寿命を縮める」酵素であること) を偶然に発見して以来、老化現象にもいささか興味をもち始めて、この訳本を入手した。
ローズ教授は英国で1955年に生まれ、1978年の博士論文で、「メトセラ」と呼ばれる長寿のショウジョウバエ変異体を見つけ、寿命と生殖能が反比例 (トレード オフ) することを発見した! しかしながら、 彼は古典的な生物学者で、いわゆる遺伝学者でも、分子生物学者でもなかったので、メトセラが何故に長寿なのか、その遺伝子的分析を以後殆んど行なっていない。
さて、ショウジョウバエの平均寿命は、環境温度にも反比例する。1976年頃の論文によると、摂氏20度前後では、寿命が100日であるが、摂氏30度になると、その 5分の1 (20日前後) になる。 もし、この現象 (傾向) が他の動物にも、そのまま当てはまるとすれば、「地球温暖化」によって、我々の寿命も急激に短くなることが予想される! 最近は、寿命の研究に、ショウジョウバエの代わりに、より平均寿命が短い (摂氏20度前後で、14日) せんちゅう (C. elegans) が、好んで使用される。 研究結果がより短時間で得られるからである。 「時は金なり」である! 我々は、2007年頃に、せんちゅうを35度前後で飼うと、寿命がたった1日 (24時間以内) になることを発見した。 ところが、プロポリスなどのPAK遮断剤で処理する (あるいはPAK遺伝子を欠損させる) と、35度でも、少なくとも9日前後生き延びることを発見した! つまり、PAK は、寿命ばかりではなく、せんちゅうの熱耐性をも損なっていることが明瞭になった。
それでは、PAK はいかにして、寿命や熱耐性を損なっているのだろうか? この問題に重要な鍵を握っているのが、HSP (熱ショック蛋白) と呼ばれる「ATP 依存
性シャペロン」である。詳しくは、水島 徹 著「HSP と分子シャペロン」(講談社ブルーバックス、2012年) に譲るが、HSP は生命に必須な細胞内の蛋白が高熱によってダメージ (損傷) を受けた場合に、ATP を介して、元通りに戻す働きを持つ。 そして、HSP 遺伝子の発現は、熱ショックによって、誘導されるが、その発現を抑制している蛋白の一つが 「PAK」であることが判明した。いいかえれば、プロポリスなどで、PAKを遮断すると、HSP が高率良く発現され、高熱による細胞損傷 (寿命の短縮) が予防されるわけである。
さて、寿命や熱耐性を損なっているのは、PAK ばかりではなく、その上流にあるPI-3 キナーゼ や、下流にある ILK、更に TOR (Target of Rapamycin) など、複数のキナーゼが今日知られている。 例えば、マウスを抗生物質「Rapamycin 」などで処理すると、TOR が阻害され、寿命が有意に長くなることが実証されている。ただし、Rapamycin は元来、臓器移植用に開発された薬剤で、 (PAK 遮断剤と違って)、免疫能を抑制する機能があるので、「無菌状態」で動物を長らく飼う必要があり、(自由な野外活動を欲する) 人類には不適である。。。逆に、PAK 遮断剤は、我々の免疫能をも高める作用があるから、より実用的であろう。
最後に触れたいのは、PAK と生殖能との関係である。 せんちゅうの場合は、PAK欠損により、寿命が6割も延びる代わりに、生殖能 (産卵能) が約7分の1 に減少する。 従って、長寿になると、いわゆる「少子化」が起こる。日本政府は未だに「少子化対策」を唱えて、(丸でアフリカ大陸のごとく) 女性に産むことを強いているが、私自身の考えでは、これは「時代錯誤」も甚だしい! 「子供は一家に一人」で十分である。世界的に「人口過剰」になっている21世紀にあっては、(何よりも) "人口を減らす"ことが急務である。何故かと言うと、人口過剰が炭酸ガスの過剰放出を産み、ひいては「地球の温暖化」(QOL の低下) を招いているからである。 長寿を楽しむべきインテリの女性たちには、子供を産むよりももっと重要な社会活動が沢山待ち受けているはず。 少なくとも、真に「男女同権」の世界 (社会) では、そうあるべきである。。。我が国の首相「スガーリン」はアフリカ諸国の首相 (酋長) 連中 の猿真似を、そろそろ止めるべきであろう。
この年末に、現職の国会議員 "羽田雄一郎氏" (立憲、 53) がCOVID で急死! 持病の糖尿病、高脂血、高血圧は、いずれも「PAK」 依存病! 片足を既にかん桶に突っ込んでいた矢先に、COVIDによって、そっと背中を押されて、昇天! こういう持病 (=老化現象) をもった人は、特に要注意! COVID などの肺炎、紫外線、オキシダント等のストレスは、高温 (発熱あるいは地球温暖化) と同様、老化 ("死期") を早める要因!
2020年12月27日日曜日
FDR (フランクリン=ルーズベルト大統領) の
肖像画 (1945) が語る「太平洋戦争秘話」
米国史上、4期も続けて大統領を勤めたのは、唯一「FDR」 (フランクリン=ルーズベルト) のみである。 1933年から1945年まで12年間以上の長きにわたる。 FDR は1929年に始まる大恐慌から、米国の経済を立ち直らせるために、1932年の11月に、当時の大統領フーバー (共和党) に対抗して、(民主党から) 立候補して、見事に勝利した。それまで、FDR はニューヨーク州の知事をやっていた。 FDR は米国史上初めての、車椅子に腰かけながら執務をとった大統領でもある。ポリオ (小児麻痺) ウイルスに感染して、歩行が不自由になったからである。 さて、FDR の奥さん (エレノア) は、実はFDR と従兄弟同士 (テオドール=ルーズベルト大統領の孫娘) である。恐らく、彼女はファースト=レディーとして、政治活動に自ら積極的に活躍した最初の女性でもある。 実は、エレノアは米国の参戦に反対だった!
ところが、1941年12月8日に、日本軍がハワイの真珠湾に奇襲攻撃をかけたのを理由に、FDR は遂に米国の参戦を宣言して、太平洋戦争が勃発した (実は、米軍は日本軍の暗号を解読して、この「奇襲」攻撃を予め知っていた! つまり、日本軍はまんまと米国の「ワナ」にはまったに過ぎない。米国海軍の "主力空母" は皆、万が一のため、はるか沖合いに出ていて、奇襲を免れた!)。 勿論、苦戦している英国のチャーチルからの要請により、ナチス=ドイツに対しても宣戦を布告して、欧州戦線に、アイゼンハワー将軍 (のちの共和党大統領、1952-1960) を派遺した。米国史では、FDR のニューディール政策が、米国の大恐慌を救ったという "神話" が罷り通っているが、実際には 「参戦による莫大な特需」で、米国の経済は立ち直ったのである!
さて、1945年5月初めに、とうとうヒットラーが自殺し、ドイツは無条件降伏したが、その約半月前 (4月12日) に、FDR は欧州における戦勝を知らずに、脳溢血で他界した。その日の昼食後、FDR は南部ジョージア州にある別荘で、秘書に伴われて、ロシア生まれの画家の Elizabeth Shoumatoff (1888 - 1980) の前で、椅子に坐り、肖像画のポーズをとっていた。しかしながら、3 時頃 (殆んどスケッチが終わった時分) に、後頭部に激痛を訴え始め、間もなく安らかに永眠した。 その時の水彩画が今でも、その別荘に残っている。それが、いわゆる FDR の「未完成肖像画」である。我が見解によれば、(余韻を残した) 殆んど完成した素晴らしい肖像画である。
その直後、副大統領だったトルーマンが (正に「棚ぼた式」に) 大統領に昇格して、日本に無条件降伏を迫るという口実で、8月初旬、広島と長崎に、各々一発ずつ、ウラニウム原爆とプルトニウム原爆を投下するよう、命令する。 私の見解では、もし、8月まで FDR が存命だったら、恐らく、原爆投下を避けただろう。 何故かといえば、FDR がアインシュタインなどの物理学者たちの要請に従って、原爆開発計画 (Manhattan Project) を 1941年末に開始したのは、ドイツが開発する前に、米国で開発するためだった。しかしながら、ドイツが 5月初めに降伏した時、ドイツには原爆など存在しないことが判明した。従って、本来ならば、その時点で 「Manhattan Project」 を中止すべきだった。
ところが、「新米」(しんまい) 大統領のトルーマンは、ソ連のスターリンになめられ続けていたので、ソ連政府を脅かすために、原爆計画を継続したばかりではなく、(「真珠湾攻撃の仕返し」として) 日本で、原爆の実力を直接「人体実験」するために、敢えて原爆の投下を命令したのだ。 従って、本来ならば、トルーマンは 「戦争犯罪人」 として裁かれるべきであるが、先勝国の大統領だから (敗戦しかかっている国民に) 何をしても「無罪」! 他方、ソ連も敗けてはいなかった。 早くも2年後には、ソ連製の原爆が開発され、以後、米ソ間の核兵器競争に拍車がかかった。 それから数年後 (朝鮮戦争の最中に)、北朝鮮をバ ックアップする中国軍に手こずった マッカーサー司令官 (日本占領軍GHQ のヘッド) が、中国に原爆を投下する, という提案をした途端、トルーマンは自らの「原爆の悪夢」を取り払うかのように、即座にマッカーサーを罷免した! (敗戦寸前の日本への原爆投下) を後悔していたことは明らかである。。。
さて、菅 (すが) 首相 (別名「スガーリン」) は、安倍しんぞうが持病の悪化を口実に、首相を不意に辞任したために、棚ぼた式に首相になった言わば「成り上がり者」である。正に、トルーマンの日本版 「二番煎じ」 だ。 従って、当然ながら、禄な政策を立てられない。学術会議の人事に干渉したり、Go to Travel で COVID-19 感染を悪化させたり、失政のオンパレードを続けている。。。
ところが、1941年12月8日に、日本軍がハワイの真珠湾に奇襲攻撃をかけたのを理由に、FDR は遂に米国の参戦を宣言して、太平洋戦争が勃発した (実は、米軍は日本軍の暗号を解読して、この「奇襲」攻撃を予め知っていた! つまり、日本軍はまんまと米国の「ワナ」にはまったに過ぎない。米国海軍の "主力空母" は皆、万が一のため、はるか沖合いに出ていて、奇襲を免れた!)。 勿論、苦戦している英国のチャーチルからの要請により、ナチス=ドイツに対しても宣戦を布告して、欧州戦線に、アイゼンハワー将軍 (のちの共和党大統領、1952-1960) を派遺した。米国史では、FDR のニューディール政策が、米国の大恐慌を救ったという "神話" が罷り通っているが、実際には 「参戦による莫大な特需」で、米国の経済は立ち直ったのである!
さて、1945年5月初めに、とうとうヒットラーが自殺し、ドイツは無条件降伏したが、その約半月前 (4月12日) に、FDR は欧州における戦勝を知らずに、脳溢血で他界した。その日の昼食後、FDR は南部ジョージア州にある別荘で、秘書に伴われて、ロシア生まれの画家の Elizabeth Shoumatoff (1888 - 1980) の前で、椅子に坐り、肖像画のポーズをとっていた。しかしながら、3 時頃 (殆んどスケッチが終わった時分) に、後頭部に激痛を訴え始め、間もなく安らかに永眠した。 その時の水彩画が今でも、その別荘に残っている。それが、いわゆる FDR の「未完成肖像画」である。我が見解によれば、(余韻を残した) 殆んど完成した素晴らしい肖像画である。
その直後、副大統領だったトルーマンが (正に「棚ぼた式」に) 大統領に昇格して、日本に無条件降伏を迫るという口実で、8月初旬、広島と長崎に、各々一発ずつ、ウラニウム原爆とプルトニウム原爆を投下するよう、命令する。 私の見解では、もし、8月まで FDR が存命だったら、恐らく、原爆投下を避けただろう。 何故かといえば、FDR がアインシュタインなどの物理学者たちの要請に従って、原爆開発計画 (Manhattan Project) を 1941年末に開始したのは、ドイツが開発する前に、米国で開発するためだった。しかしながら、ドイツが 5月初めに降伏した時、ドイツには原爆など存在しないことが判明した。従って、本来ならば、その時点で 「Manhattan Project」 を中止すべきだった。
ところが、「新米」(しんまい) 大統領のトルーマンは、ソ連のスターリンになめられ続けていたので、ソ連政府を脅かすために、原爆計画を継続したばかりではなく、(「真珠湾攻撃の仕返し」として) 日本で、原爆の実力を直接「人体実験」するために、敢えて原爆の投下を命令したのだ。 従って、本来ならば、トルーマンは 「戦争犯罪人」 として裁かれるべきであるが、先勝国の大統領だから (敗戦しかかっている国民に) 何をしても「無罪」! 他方、ソ連も敗けてはいなかった。 早くも2年後には、ソ連製の原爆が開発され、以後、米ソ間の核兵器競争に拍車がかかった。 それから数年後 (朝鮮戦争の最中に)、北朝鮮をバ ックアップする中国軍に手こずった マッカーサー司令官 (日本占領軍GHQ のヘッド) が、中国に原爆を投下する, という提案をした途端、トルーマンは自らの「原爆の悪夢」を取り払うかのように、即座にマッカーサーを罷免した! (敗戦寸前の日本への原爆投下) を後悔していたことは明らかである。。。
さて、菅 (すが) 首相 (別名「スガーリン」) は、安倍しんぞうが持病の悪化を口実に、首相を不意に辞任したために、棚ぼた式に首相になった言わば「成り上がり者」である。正に、トルーマンの日本版 「二番煎じ」 だ。 従って、当然ながら、禄な政策を立てられない。学術会議の人事に干渉したり、Go to Travel で COVID-19 感染を悪化させたり、失政のオンパレードを続けている。。。
2020年12月19日土曜日
楽聖「ベートーベン」(1770 - 1827) 生誕 「250周年」:
交響曲「第九」の精神とは?
クラシック音楽の大成者、Ludwig van Beethoven は、驚くなかれ、算数 (特に、かけ算) が苦手だったそうである。そこで、父親 (宮廷テノール歌手) は、6歳ごろから、長男 (Ludwig 少年) を音楽家 (ピアニスト) に育て上げ始めた (ベートーベン家は祖父から3代に渡って、音楽家だった) 。しかしながら、20歳代後半に難聴になり、最終的 (40歳頃) には、両耳共、全く聴こえなくなった。音楽家/作曲家にとっては致命的だったが、彼はそれにも負げず、数々の名曲/交響楽を作曲し続け、後世「楽聖」と讃えられるまでになった。
詳しくは、「ベートーベンの真実」 (谷 克二著、2020年) を参照: 人間らしさあふれるベートーベンだから生み出せた魅惑の音楽!
ベートーベンの魅力は人間としての卓越した個性にあり、だれしもがそれに圧倒され、魅了される。57年に渡る彼の生涯は自分自身との戦い、おのれの魂、おのれの信ずるものへの挑戦の連続だった。だからこそベートーベンが生みだした作品はまさに多面体であり、魂のうめきにも似た苦悩から生まれる歓喜の爆発、そして自然や人間に対する心やすらぐ賛歌に至るまで、無限のひろがりを人々に感じさせる。実は、彼はカトリック教徒であったが、(実際には存在しない) 神を頼みにせず、自分自身が神にかわって、人の世話をせねばならぬと信じ、実行した。 結局、多くのクラシック音楽家の間では、ベートーベンは「神をはるかに越える」存在になった。。。
「バッハは "神" に向かって作曲をし、モーツァルトは "貴族" に向かって作曲し、ベートーベンは "人間" に向かって作曲をした」といわれる、"人間" ベートーベンに迫る。
さて、彼の死因は「鉛中毒」とされている。残された「髪の毛」に高濃度 の鉛 (通常の100倍!) が蓄積していたからである! しかしながら、"鉛" の出どころがいまだに謎のままである。古代ローマ時代から当時に至るまで、安いワインには甘味料として "酢酸鉛" を加えていたという記録がある。ベートーベンが生計に苦しんでいた時代に、安ワインを好んで飲んでいた (実は、父親のヨハンは、"アルコール依存性" となり失職した。そこで、父に代わって, ベートーベンはいくつもの仕事を掛け持ちして家計を支え、父や幼い弟たちの世話に追われる苦悩の日々を過ごした!)。
さて、彼の難聴の原因についても、未だに謎に包まれているが、若しかしたら、NF2 (神経線維症 タイプ 2) だったのではないか、という仮説/可能性がある。実は不幸にして、 彼の死後まもなく、墓から「彼の頭骸骨」を盗んだ者が出て以来、頭蓋骨が行方不明になったまま! だから、彼の脳の MRI 診断像が撮ることはもはや不可能になり、NF2 説を裏付ける手段はない。。
ただし、髪の毛の DNA を "PCR" 分析して、NF2 遺伝子が正常だったか、あるいは機能不全だったかを確かめることは可能だろう。ドイツのライプチッヒにある MAX-Planck 研究所 (遺伝学研究所) には、ネアンデルタール人などの遺伝子 (genome) 分析を専門にしている研究グループがある。 彼らに頼めば、DNA 分析は可能だろう。 実は、同じ市内にあるライプチッヒ大学小児科病院に、遺伝子病の一種である「ヌーナン病」(Noonan Syndrome) などの「知能発達障害」患者 のPAK1 遺伝子の分析によって、最近、「PAK1 遺伝子に変異」を見つけたグループがある。この変異は、「脳の発達を遅らす」には十分だが、「癌や腫瘍などの発生」には不十分、という不思議な代物である。正常な PAK1 は通常、不活性なホモダイマーを形成するが、この変異体はホモダイマーを形成できないので、「恒常的に活性」のため、脳神経の発達を遅延させる。 しかしながら、腫瘍を発生するには十分でない。。。実は、同じような遺伝症例 (PAK1 遺伝子の変異体) がハンブルグ大学 (UKE) 小児科病院でも発見されている。
1994年にノーベル文学賞をもらった "大江健三郎" の息子 (光君、現在57歳) は、頭脳肥大(脳ヘルニア)のため、知的障害があるが、優秀なクラシック音楽の作曲家として活躍していると伝え聞いている。音感と頭脳全体の発達とは、ある程度、切り離しが可能のようだ。
大学時代の我が恩師 (水野伝一先生) は生前、ベートーベンの交響楽が大好きだった (未だ存命ならば、今冬で 100 歳!) 。実は、水野夫妻の長女は芸大卒のピアニストだったが、視力が劣ろえ、作曲家になったと聞いている。いみじくもベートーベンへ通ずる何かを感じる。。。 彼女は私とほぼ同年だが、ベートーベン同様、独身を通している。 私自身は楽才には恵れず、シューベルトの歌曲を好んでドイツ語で「カラオケ」する程度だが、幸い (幼い頃から) 画才には恵まれ、もし薬学を専攻しなかったら、今頃はユニークな画家になっていたかもしれない。しかしながら、画才は私に飛躍的な "想像力" を与え、生物学 (特に PAK 研究) で「水平思考の名人」芸を発揮している。。。言うなれば「鬼に金棒」か。。。
さて、もし (将来) 何時か機会に恵まれたら、鎌倉に住む水野夫妻の令嬢によるピアノ演奏で、シューベルト晩年 (1827-1828年) に作曲された 歌曲集「冬の旅」の一曲「菩提樹」(Der Lindenbaum) を歌い、大変お世話になった先生の霊前に捧げたい。。。実は、この歌曲は、私が中学生の頃、あるコンクールに出演するために、我が亡父からドイツ語で教わったものであるが、 不思議なもので65年後の今でも、一語一句ハッキリ憶えている: Am Brunnen vor dem Tore Da steht ein Lindenbaum... 先生は (ベートーベンのごとく) その傘下に多くの弟子を育て上げた言わば「菩提樹の大木」のような人だった。シューベルト (1797-1828) は ベートーベンの有名な弟子の一人だったが、若くして (ベートーベンの葬式に参列してから一年後) に肺結核 (?) で病死し、 ベートーベンの墓の隣に埋葬された。 彼も独身だった。 いわゆる「未完成交響楽」を最後に残して、この世を寂しく去った。。。
さて、年末近くに日本で好んで演奏される「第九」の歌詞は、有名な詩人シラー (1759 - 1805) の作。 その中に、「人間は神の前に、皆平等。人類は皆、兄弟 (brothers) 同士」いう有名な一句がある。 これは、元を正せば、(キリスト教の創始者) 「イエス=キリスト」の言葉。残念ながら、(紀元前の時代には) この人類の中に女性 (sisters) がふくまれていなかったのは、誠に残念である! ベートーベン自身は、神の存在を否定していたので、人類の中に女性もきっと含んでいた、と私は想像したい。。。とにかく、彼は多くの女性を愛し作曲し続けたが、いずれも「片思い」に終わったのは、誠に気の毒である。
もう一歩突っ込んで言うと、21世紀になってさえ、日本の天皇家では、「長男のみが皇太子、天皇になり、その以外の子供には、その資格が全くない」というのは、誠に「不平等」。。。従って、「第九」の精神に基づけば、(不平等極まる) "天皇制度" は、即「廃止」すべきである! 「令和のおじさん」 (別名「スガーリン」) よ、「第九」に耳を傾け、2021年に向けて、"斬新な政策" (憲法改正= 1 - 8 条を破棄!) を立てたまえ!
「人類 (兄妹) 平等」を信奉する我が亡父 (明治生まれの「9人兄妹」の末弟) は、勿論「第九」と「運命」のファンだったが、"清貧" のため、我が家からは、一人だけ (授業料免除かつ奨学金貸与を受けながら) 大学教育を受けさせる余裕しかなかった。そこで、幸運にも都立「日比谷」に合格した私だけが、東大への受験資格を得た。その代わり、妹は遺産相続権を獲得した (もっとも、清貧なので、大した額ではなかったが、国家公務員を定年で退職後、自費で建てた自宅で, 健康に余生を楽しんでいる)。 私は「博士号」という唯一の資本を元にして、海外に飛び出して、半世紀近く、いわゆる「PAK 医学」の大成に邁進している。恐らく、これが私自身の「第九」(あるいは「エベレスト」) になるだろう。。。エベレストは、人種や性別の違いで、人間を差別しない。真に実力のある者 (NZのヒラリー郷とシェルパ族のテンジン) のみが初登頂に成功した! その瞬間 (1953年5月末) 、(自身も登山家だった) 我が亡父は、その新聞記事を見せながら、(10歳の) 私に「自分自身のエベレスト (未踏峰) を見つけよう!」と励ましてくれた。
詳しくは、「ベートーベンの真実」 (谷 克二著、2020年) を参照: 人間らしさあふれるベートーベンだから生み出せた魅惑の音楽!
ベートーベンの魅力は人間としての卓越した個性にあり、だれしもがそれに圧倒され、魅了される。57年に渡る彼の生涯は自分自身との戦い、おのれの魂、おのれの信ずるものへの挑戦の連続だった。だからこそベートーベンが生みだした作品はまさに多面体であり、魂のうめきにも似た苦悩から生まれる歓喜の爆発、そして自然や人間に対する心やすらぐ賛歌に至るまで、無限のひろがりを人々に感じさせる。実は、彼はカトリック教徒であったが、(実際には存在しない) 神を頼みにせず、自分自身が神にかわって、人の世話をせねばならぬと信じ、実行した。 結局、多くのクラシック音楽家の間では、ベートーベンは「神をはるかに越える」存在になった。。。
「バッハは "神" に向かって作曲をし、モーツァルトは "貴族" に向かって作曲し、ベートーベンは "人間" に向かって作曲をした」といわれる、"人間" ベートーベンに迫る。
さて、彼の死因は「鉛中毒」とされている。残された「髪の毛」に高濃度 の鉛 (通常の100倍!) が蓄積していたからである! しかしながら、"鉛" の出どころがいまだに謎のままである。古代ローマ時代から当時に至るまで、安いワインには甘味料として "酢酸鉛" を加えていたという記録がある。ベートーベンが生計に苦しんでいた時代に、安ワインを好んで飲んでいた (実は、父親のヨハンは、"アルコール依存性" となり失職した。そこで、父に代わって, ベートーベンはいくつもの仕事を掛け持ちして家計を支え、父や幼い弟たちの世話に追われる苦悩の日々を過ごした!)。
さて、彼の難聴の原因についても、未だに謎に包まれているが、若しかしたら、NF2 (神経線維症 タイプ 2) だったのではないか、という仮説/可能性がある。実は不幸にして、 彼の死後まもなく、墓から「彼の頭骸骨」を盗んだ者が出て以来、頭蓋骨が行方不明になったまま! だから、彼の脳の MRI 診断像が撮ることはもはや不可能になり、NF2 説を裏付ける手段はない。。
ただし、髪の毛の DNA を "PCR" 分析して、NF2 遺伝子が正常だったか、あるいは機能不全だったかを確かめることは可能だろう。ドイツのライプチッヒにある MAX-Planck 研究所 (遺伝学研究所) には、ネアンデルタール人などの遺伝子 (genome) 分析を専門にしている研究グループがある。 彼らに頼めば、DNA 分析は可能だろう。 実は、同じ市内にあるライプチッヒ大学小児科病院に、遺伝子病の一種である「ヌーナン病」(Noonan Syndrome) などの「知能発達障害」患者 のPAK1 遺伝子の分析によって、最近、「PAK1 遺伝子に変異」を見つけたグループがある。この変異は、「脳の発達を遅らす」には十分だが、「癌や腫瘍などの発生」には不十分、という不思議な代物である。正常な PAK1 は通常、不活性なホモダイマーを形成するが、この変異体はホモダイマーを形成できないので、「恒常的に活性」のため、脳神経の発達を遅延させる。 しかしながら、腫瘍を発生するには十分でない。。。実は、同じような遺伝症例 (PAK1 遺伝子の変異体) がハンブルグ大学 (UKE) 小児科病院でも発見されている。
1994年にノーベル文学賞をもらった "大江健三郎" の息子 (光君、現在57歳) は、頭脳肥大(脳ヘルニア)のため、知的障害があるが、優秀なクラシック音楽の作曲家として活躍していると伝え聞いている。音感と頭脳全体の発達とは、ある程度、切り離しが可能のようだ。
大学時代の我が恩師 (水野伝一先生) は生前、ベートーベンの交響楽が大好きだった (未だ存命ならば、今冬で 100 歳!) 。実は、水野夫妻の長女は芸大卒のピアニストだったが、視力が劣ろえ、作曲家になったと聞いている。いみじくもベートーベンへ通ずる何かを感じる。。。 彼女は私とほぼ同年だが、ベートーベン同様、独身を通している。 私自身は楽才には恵れず、シューベルトの歌曲を好んでドイツ語で「カラオケ」する程度だが、幸い (幼い頃から) 画才には恵まれ、もし薬学を専攻しなかったら、今頃はユニークな画家になっていたかもしれない。しかしながら、画才は私に飛躍的な "想像力" を与え、生物学 (特に PAK 研究) で「水平思考の名人」芸を発揮している。。。言うなれば「鬼に金棒」か。。。
さて、もし (将来) 何時か機会に恵まれたら、鎌倉に住む水野夫妻の令嬢によるピアノ演奏で、シューベルト晩年 (1827-1828年) に作曲された 歌曲集「冬の旅」の一曲「菩提樹」(Der Lindenbaum) を歌い、大変お世話になった先生の霊前に捧げたい。。。実は、この歌曲は、私が中学生の頃、あるコンクールに出演するために、我が亡父からドイツ語で教わったものであるが、 不思議なもので65年後の今でも、一語一句ハッキリ憶えている: Am Brunnen vor dem Tore Da steht ein Lindenbaum... 先生は (ベートーベンのごとく) その傘下に多くの弟子を育て上げた言わば「菩提樹の大木」のような人だった。シューベルト (1797-1828) は ベートーベンの有名な弟子の一人だったが、若くして (ベートーベンの葬式に参列してから一年後) に肺結核 (?) で病死し、 ベートーベンの墓の隣に埋葬された。 彼も独身だった。 いわゆる「未完成交響楽」を最後に残して、この世を寂しく去った。。。
さて、年末近くに日本で好んで演奏される「第九」の歌詞は、有名な詩人シラー (1759 - 1805) の作。 その中に、「人間は神の前に、皆平等。人類は皆、兄弟 (brothers) 同士」いう有名な一句がある。 これは、元を正せば、(キリスト教の創始者) 「イエス=キリスト」の言葉。残念ながら、(紀元前の時代には) この人類の中に女性 (sisters) がふくまれていなかったのは、誠に残念である! ベートーベン自身は、神の存在を否定していたので、人類の中に女性もきっと含んでいた、と私は想像したい。。。とにかく、彼は多くの女性を愛し作曲し続けたが、いずれも「片思い」に終わったのは、誠に気の毒である。
もう一歩突っ込んで言うと、21世紀になってさえ、日本の天皇家では、「長男のみが皇太子、天皇になり、その以外の子供には、その資格が全くない」というのは、誠に「不平等」。。。従って、「第九」の精神に基づけば、(不平等極まる) "天皇制度" は、即「廃止」すべきである! 「令和のおじさん」 (別名「スガーリン」) よ、「第九」に耳を傾け、2021年に向けて、"斬新な政策" (憲法改正= 1 - 8 条を破棄!) を立てたまえ!
「人類 (兄妹) 平等」を信奉する我が亡父 (明治生まれの「9人兄妹」の末弟) は、勿論「第九」と「運命」のファンだったが、"清貧" のため、我が家からは、一人だけ (授業料免除かつ奨学金貸与を受けながら) 大学教育を受けさせる余裕しかなかった。そこで、幸運にも都立「日比谷」に合格した私だけが、東大への受験資格を得た。その代わり、妹は遺産相続権を獲得した (もっとも、清貧なので、大した額ではなかったが、国家公務員を定年で退職後、自費で建てた自宅で, 健康に余生を楽しんでいる)。 私は「博士号」という唯一の資本を元にして、海外に飛び出して、半世紀近く、いわゆる「PAK 医学」の大成に邁進している。恐らく、これが私自身の「第九」(あるいは「エベレスト」) になるだろう。。。エベレストは、人種や性別の違いで、人間を差別しない。真に実力のある者 (NZのヒラリー郷とシェルパ族のテンジン) のみが初登頂に成功した! その瞬間 (1953年5月末) 、(自身も登山家だった) 我が亡父は、その新聞記事を見せながら、(10歳の) 私に「自分自身のエベレスト (未踏峰) を見つけよう!」と励ましてくれた。
2020年12月16日水曜日
水虫の塗薬「ラミシール」などは "PAK" 遮断剤:
NF1 の皮膚腫瘍 (ブク) にも効くはず!
「水平思考」というものは、「意外な発見」への機会をしばしばもたらす。例えば、リンゴの実が木から落ちるのをみて、ニュートンは「万有引力の法則」を発見した。ダーウインは、ガラパゴスに生息する様々な動物を綿密に比較観察した結果、「進化論」に到達した。 それほどの大発見ではないにしても、我々も日常、水平思考により意外な発見に到達しうる。。。
さて、その昔、京大薬学出身の島田恵年 (1929年生まれ 薬剤師の息子) が修士号を修得した後、母親の「ナマコの煮汁が水虫に効く」という言葉をヒントに、(実家の物置を改造した実験室で) ナマコ (海鼠) の煮汁を作り、 エキス中の "サポニン" 成分 (ホロトキシン) からある「水虫の薬」(商標: ホロスリン) を発見/開発して、1969年頃に「サイエンス」誌にたった一ページの論文 (letter) を発表: S Shimada (1969). Antifungal steroid glycoside from sea cucumber. Science;163(3874):1462.
その後、ホロスリン製薬を大阪に設立し、ようやく2006年になって、ホロスリンの本格的な発売に成功したという逸話を、数年前、(我々が) 沖縄の琉球大学構内で "PAK" 研究をしている時分に耳にした: https://www.yakuji.co.jp/entry7185.html
その後まもなく、我々も種々の海鼠から、抗癌作用/ "PAK" 遮断作用を持つサポニン (ステロイド配糖体) を発見する機会に恵まれた。 つい最近、韓国プサンの東亜大学のグループにより、ロシア (ウラジオストック) 産ナマコ由来のホロトキシン A1 が強い抗癌作用を示すことが明らかにされた (IC50=60 nM)。因みに、ナマコ業者の話では、ナマコの煮汁は一般に「化粧石鹸の製造」原料に使用され、出し殻が「美食」として、中国などに輸出されるらしい。。。従って、"ナマコ汁入り" 石鹸で洗足すると、水虫が治るばかりではなく、肌が白くなるはずである: https://trip-s.world/gamat-soap
我が "水平思考": ごく最近、 韓国のある研究グループがPAK遮断剤から、真菌 (水虫かび など) に効く誘導体を開発したという論文を偶然見つけた。 実は、カビ類には (植物やバクテリアと違って)、PAKが存在する。そこで、例えば、水虫の薬 「ラミシール」(1990年頃にスイスのNovartisで開発) に "PAK" 遮断作用があるかどうか、文献調べをしたところ、何んと2003年に台北の研究グループが、ラシミールの抗癌作用及び "PAK遮断作用" を報告していた!
Wen-Sen Lee, Rong-Jane Chen, Ying-Jan Wang, et al. (2003). In vitro and in vivo studies of the anticancer action of terbinafine in human cancer cell lines: G0/G1 p53-associated cell cycle arrest. Int J Cancer.; 106: 125-37.
Maruta, H. (2021). Marine PAK1-blockers for Therapy of COVID-19. Nov. Appro. Drug. Des. Dev. 5, 70-72 (555667).
ということは、NF1 患者にしばしば観察される良性の皮膚腫瘍 (俗に「ブク」と呼ばれている) は、PAK 依存性なので、ラシミールなどの水虫塗薬は、ブクの治療に有効に違いないという、結論に達した。少なくとも「試してみる価値」はあると思う! ラミシール (水虫塗薬) は、元々「ブルー」シールだったが、女性向けに、近年「ピンク」シールも販売されるようになったそうである。ただし、水虫の薬は原則として「皮膚や爪に塗る」もので、経口はせぬこと!
ついでながら、アルニカ (Arnica) 精油 (クリーム) にも、"PAK" 遮断作用があり、水虫にも効くようなので、「ブク」にも効くかもしれない。。。更に、沖縄産海藻(もずく) 由来の「フコイダン」錠を (朝晩、各々2粒ずつ) 経口すると、「ブク」の数やサイズが減少するという良報を最近、複数のNF1 患者から受け取っている。
ついでながら、ビタミン D3 もPAK遮断剤であるが、NF1 患者では、しばしばD3 が欠乏している。その理由は、D3 (ステロイドの一種) の24位が体内で水酸化されて、不活化されるからである。水酸化酵素 (CYP24) はPAK依存性である。 従って、PAK遮断剤 (プロポリス、フコイダン 、ラミシール等) をD3 と併用すると、(CYP24 による) D3 の代謝が抑えられ、"相乗効果" が期待される。。。蛇足になるが、NF1 患者に典型的な「カフェオレ斑」 (黒いシミ) はメラニン色素であるが、その生成も "PAK依存性" である。従って、種々の "PAK遮断剤" により、黒斑を除くことは可能である。。。
さて、その昔、京大薬学出身の島田恵年 (1929年生まれ 薬剤師の息子) が修士号を修得した後、母親の「ナマコの煮汁が水虫に効く」という言葉をヒントに、(実家の物置を改造した実験室で) ナマコ (海鼠) の煮汁を作り、 エキス中の "サポニン" 成分 (ホロトキシン) からある「水虫の薬」(商標: ホロスリン) を発見/開発して、1969年頃に「サイエンス」誌にたった一ページの論文 (letter) を発表: S Shimada (1969). Antifungal steroid glycoside from sea cucumber. Science;163(3874):1462.
その後、ホロスリン製薬を大阪に設立し、ようやく2006年になって、ホロスリンの本格的な発売に成功したという逸話を、数年前、(我々が) 沖縄の琉球大学構内で "PAK" 研究をしている時分に耳にした: https://www.yakuji.co.jp/entry7185.html
その後まもなく、我々も種々の海鼠から、抗癌作用/ "PAK" 遮断作用を持つサポニン (ステロイド配糖体) を発見する機会に恵まれた。 つい最近、韓国プサンの東亜大学のグループにより、ロシア (ウラジオストック) 産ナマコ由来のホロトキシン A1 が強い抗癌作用を示すことが明らかにされた (IC50=60 nM)。因みに、ナマコ業者の話では、ナマコの煮汁は一般に「化粧石鹸の製造」原料に使用され、出し殻が「美食」として、中国などに輸出されるらしい。。。従って、"ナマコ汁入り" 石鹸で洗足すると、水虫が治るばかりではなく、肌が白くなるはずである: https://trip-s.world/gamat-soap
我が "水平思考": ごく最近、 韓国のある研究グループがPAK遮断剤から、真菌 (水虫かび など) に効く誘導体を開発したという論文を偶然見つけた。 実は、カビ類には (植物やバクテリアと違って)、PAKが存在する。そこで、例えば、水虫の薬 「ラミシール」(1990年頃にスイスのNovartisで開発) に "PAK" 遮断作用があるかどうか、文献調べをしたところ、何んと2003年に台北の研究グループが、ラシミールの抗癌作用及び "PAK遮断作用" を報告していた!
Wen-Sen Lee, Rong-Jane Chen, Ying-Jan Wang, et al. (2003). In vitro and in vivo studies of the anticancer action of terbinafine in human cancer cell lines: G0/G1 p53-associated cell cycle arrest. Int J Cancer.; 106: 125-37.
Maruta, H. (2021). Marine PAK1-blockers for Therapy of COVID-19. Nov. Appro. Drug. Des. Dev. 5, 70-72 (555667).
ということは、NF1 患者にしばしば観察される良性の皮膚腫瘍 (俗に「ブク」と呼ばれている) は、PAK 依存性なので、ラシミールなどの水虫塗薬は、ブクの治療に有効に違いないという、結論に達した。少なくとも「試してみる価値」はあると思う! ラミシール (水虫塗薬) は、元々「ブルー」シールだったが、女性向けに、近年「ピンク」シールも販売されるようになったそうである。ただし、水虫の薬は原則として「皮膚や爪に塗る」もので、経口はせぬこと!
ついでながら、アルニカ (Arnica) 精油 (クリーム) にも、"PAK" 遮断作用があり、水虫にも効くようなので、「ブク」にも効くかもしれない。。。更に、沖縄産海藻(もずく) 由来の「フコイダン」錠を (朝晩、各々2粒ずつ) 経口すると、「ブク」の数やサイズが減少するという良報を最近、複数のNF1 患者から受け取っている。
ついでながら、ビタミン D3 もPAK遮断剤であるが、NF1 患者では、しばしばD3 が欠乏している。その理由は、D3 (ステロイドの一種) の24位が体内で水酸化されて、不活化されるからである。水酸化酵素 (CYP24) はPAK依存性である。 従って、PAK遮断剤 (プロポリス、フコイダン 、ラミシール等) をD3 と併用すると、(CYP24 による) D3 の代謝が抑えられ、"相乗効果" が期待される。。。蛇足になるが、NF1 患者に典型的な「カフェオレ斑」 (黒いシミ) はメラニン色素であるが、その生成も "PAK依存性" である。従って、種々の "PAK遮断剤" により、黒斑を除くことは可能である。。。
2020年12月13日日曜日
強権のみで "指導力なしの" 菅 (スガーリン) 内閣の支持率 33% に急降下: Go To Travel 停止「遅すぎる」79%!
興味深いのは、我が家のごとく 「携帯電話をもたない世帯」 が、「スガーリン」内閣に 批判的!
つまり、"スガーリン" 内閣は (Go to Travel する) ”富裕層” や若年層の味方 (貧乏人や老人層を置き去り) !
スガーリン内閣の支持率急落: 与党 (自民や公明) 内からも “首相批判” (「すが下ろし」が吹きまくる)
詳しくは: https://mainichi.jp/articles/20201212/k00/00m/010/163000c
特に最先端の「分子生物」学界 (や学術会議) からは、スガーリン首相の「首」を "CAS9" で切断/編集すべきという声 (「首の挿げ変え」論) がにわかに高まっている! つまり、「すが」 (無学=科学音痴) を 「かん」(科学者) に (仮名) 変換すべきという "復古論" が高まりつつある。。。巷にはやる川柳: 「すが」の首 「かん」に切り換え 「コロナ」無し!
少なくとも台湾、ニュージーランド、豪州では、「鉄人大臣や首相」のお蔭で、コロナ感染は現在まで少なくとも6週間以上「皆無」。米国でも最近、トランプからバイデンへ、「首の挿げ変え」が殆んど完了。。。 日本にも、2021五輪前に「CAS9 津波」が押し寄せても不思議ではない!
"すが" 首相の「Go to Travel」 と "東条" の「真珠湾攻撃」の(興味深い) 対比: https://mainichi.jp/articles/20201217/k00/00m/010/255000c
(注): 去る10月7日にノーベル化学賞に選ばれたゲノム編集のクリスパー・キャス9(CRISPR/ Cas9)。働きのもととなる「クリスパー」と呼ばれる遺伝子を発見したのは、石野良純・九州大教授(63)だった。
石野さんは1987年、大腸菌の遺伝子を解読するうち、奇妙なDNA配列を見つけて論文で発表した。DNAの暗号の中に「…CGGTTT…CGGTTT…CGGTTT…」と、同じ文字の列が何度も繰り返し現れた。そんな遺伝子は見たことがなかった。「何かあるぞ」と石野さんは思ったという。 だが当時は、何を意味する遺伝子か調べる手段がなかった。そこで論文の最後に「役割は分からないが、奇妙なDNA配列を見つけた」と書いた。その後、石野さんは古細菌という別種の微生物の研究に没頭するようになった。
1990年代、分析装置が進んでDNA解読が簡単になると、酵母や細菌類から人間に至るまで、多くの生物のDNA情報がデータベースに集まるようになった。 やがて、データベースを調べていた海外の研究者らが、クリスパーの配列の中に、細菌の外敵となるウイルス (phages) の遺伝子配列の一部が混じっていることに気付いた。クリスパーは敵を見分けるために、ウイルスなどの遺伝子を記録する仕組み (「Transposon 」の一種)、つまり "免疫" に関係するDNA配列 (=gRNA、クリスパー) だった。
クリスパーに記録されたウイルスなどが侵入してくると、キャスという "DNAase" が働いて、相手の遺伝子を切断して働かなくしてしまうのだ。その切断の仕組みを、遺伝子を切り貼りして編集する手法に応用したのが シャルパンティエ女史 (仏) とダウドナ女史 (米) だった!
座右の銘: ノーベル賞に輝くためには、(最初に見つけた) 発見に最後まで、食い付く情熱/集中力が必要!
つまり、"スガーリン" 内閣は (Go to Travel する) ”富裕層” や若年層の味方 (貧乏人や老人層を置き去り) !
スガーリン内閣の支持率急落: 与党 (自民や公明) 内からも “首相批判” (「すが下ろし」が吹きまくる)
詳しくは: https://mainichi.jp/articles/20201212/k00/00m/010/163000c
特に最先端の「分子生物」学界 (や学術会議) からは、スガーリン首相の「首」を "CAS9" で切断/編集すべきという声 (「首の挿げ変え」論) がにわかに高まっている! つまり、「すが」 (無学=科学音痴) を 「かん」(科学者) に (仮名) 変換すべきという "復古論" が高まりつつある。。。巷にはやる川柳: 「すが」の首 「かん」に切り換え 「コロナ」無し!
少なくとも台湾、ニュージーランド、豪州では、「鉄人大臣や首相」のお蔭で、コロナ感染は現在まで少なくとも6週間以上「皆無」。米国でも最近、トランプからバイデンへ、「首の挿げ変え」が殆んど完了。。。 日本にも、2021五輪前に「CAS9 津波」が押し寄せても不思議ではない!
"すが" 首相の「Go to Travel」 と "東条" の「真珠湾攻撃」の(興味深い) 対比: https://mainichi.jp/articles/20201217/k00/00m/010/255000c
(注): 去る10月7日にノーベル化学賞に選ばれたゲノム編集のクリスパー・キャス9(CRISPR/ Cas9)。働きのもととなる「クリスパー」と呼ばれる遺伝子を発見したのは、石野良純・九州大教授(63)だった。
石野さんは1987年、大腸菌の遺伝子を解読するうち、奇妙なDNA配列を見つけて論文で発表した。DNAの暗号の中に「…CGGTTT…CGGTTT…CGGTTT…」と、同じ文字の列が何度も繰り返し現れた。そんな遺伝子は見たことがなかった。「何かあるぞ」と石野さんは思ったという。 だが当時は、何を意味する遺伝子か調べる手段がなかった。そこで論文の最後に「役割は分からないが、奇妙なDNA配列を見つけた」と書いた。その後、石野さんは古細菌という別種の微生物の研究に没頭するようになった。
1990年代、分析装置が進んでDNA解読が簡単になると、酵母や細菌類から人間に至るまで、多くの生物のDNA情報がデータベースに集まるようになった。 やがて、データベースを調べていた海外の研究者らが、クリスパーの配列の中に、細菌の外敵となるウイルス (phages) の遺伝子配列の一部が混じっていることに気付いた。クリスパーは敵を見分けるために、ウイルスなどの遺伝子を記録する仕組み (「Transposon 」の一種)、つまり "免疫" に関係するDNA配列 (=gRNA、クリスパー) だった。
クリスパーに記録されたウイルスなどが侵入してくると、キャスという "DNAase" が働いて、相手の遺伝子を切断して働かなくしてしまうのだ。その切断の仕組みを、遺伝子を切り貼りして編集する手法に応用したのが シャルパンティエ女史 (仏) とダウドナ女史 (米) だった!
座右の銘: ノーベル賞に輝くためには、(最初に見つけた) 発見に最後まで、食い付く情熱/集中力が必要!
2020年12月9日水曜日
「ヘパリン」は、「フコイダン」同様、PAK遮断剤: COVID-19治療にも有効!
主に血小板による血液凝固を阻害するために、1930年代から使用されている哺乳類(マスト細胞など) 由来の「ヘパリン」は、海藻由来の「フコイダン」同様、硫酸化された多糖類であるが、最近、文献調べをしたところ、ヘパリンは、フコイダン同様、「PAK遮断剤」であり、COVID-19 対策にも有効であることが判明した。 NF1 患者からの最近の報告では、(例えば) 「沖縄フコイダン」の服用量を増やす (毎日 10-12 粒) と、効果も倍増する!
実は、ヘパリンは1916年頃、米国ボルチモアにあるジョンス=ホプキンス大学の 医学生 (Jay McLean) が、犬の肝臓から抽出したもので、それから20年近く経ってから、抗血液凝固剤として、広く病院で使用されるようになった。 つい最近、ヘパリンが「フコイダン」同様、「COVID-19患者の治療に有効」であるという論文に出くわし、そのメカニズムを詳しく (文献で) 調べてみたところ、何と「PAK遮断剤」であることが、判明した (詳しくは、下記の "英文" 文献を参照されたし)。
先ず、1991年にボストンのハーバード大学小児科病院でポスドク留学中の東山繁樹 (現在、愛知大学医学部教授) がマクロファージから、"ヘパリンに結合するEGF 様 growth factor" (HB-EGF) を発見した。HB-EGF 自体は、EGF 同様、EGF Receptor に結合して発癌性 (PAK を活性化!) を発揮するが、ヘパリンが結合すると発癌性を失う。つまり、ヘパリンは抗癌性を持つばかりではなく、消炎性や抗血液凝固作用も持つ。 https://www.shimadzu.co.jp/boomerang/20/08.html
1977年に私は米国のNIH で、土壌アメーバから「PAK 」を発見するチャンスを得たが、その時、私の上司であった Edward Korn 博士は、実は「ヘパリン」の硫酸化に ATP が関与しているらしいという論文を、1958年頃 (NIH にポスドクで留学中) に発表したことも判明した。 意外な「結び付き (縁)」である!
Korn 博士はごく最近、90歳を越え、ようやくNIHを退官して、奥さんのミッキー (1928年生まれ、ペンシルバニア大学時代からの仲) と共に、NIH キャンパス近くにある自宅で、静かに隠居生活を楽しんでいる。 昨年の10月、NY で「PAK シンポジウム」を開催後、私は夫妻の住いを久し振りに訪れ、旧交を暖める機会を得た。。。因みに、奥さんの愛称「ミッキー」は、ウオルト=ディズニーの漫画 (弱気を助け、悪を倒す) 「ミッキーマウス」にちなんで付けられたそうで、悪党「トランプ」が今回とうとう再選に失敗したので、大喜びしている!
しかしながら、米国の有権者の "半数近く" が、米国の現状に不満を感じ、「悪党」に投票した事実を直視すると、「病める米国」の前途がはなはだ気にかかる。。。他方、「ヤクザ」擬いの政治家が日本の政治を長らく牛耳っている現状をかんがみると、腐り切った民主主義 (衆愚政治) の前途は「闇」に近い。。。
References:
Hippensteel, J. LaRiviere,WB, Colbert, JF et al (2020). Heparin as a therapy for COVID-19: current evidence and future possibilities. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol; 319(2):L211-L217.
Hedin, U, Daum, G., Clowes, AW (1998). Heparin inhibits thrombin-induced mitogen-activated protein kinase signaling in arterial smooth muscle cells. J Vasc Surg.; 27: 512-20.
Teo, M., Manser, E., Lim, L. (1995). Identification and molecular cloning of a p21cdc42/rac1-activated serine/threonine kinase that is rapidly activated by thrombin in platelets. J Biol Chem.; 270: 26690-7.
Kalmes, A., Vesti, BR., Daum, G., Abraham, JA., Clowes, AW (2000). Heparin blockade of thrombin-induced smooth muscle cell migration involves inhibition of epidermal growth factor (EGF) receptor transactivation by heparin-binding EGF-like growth factor. Circ Res.; 87: 92-8.
Na Yeon Lee, Svetlana P Ermakova, Tatyana N Zvyagintseva, Keon Wook Kang, Zigang Dong, Hong Seok Choi (2008). Inhibitory effects of fucoidan on activation of epidermal growth factor receptor (EGFR) and cell transformation in JB6 Cl41 cells. Food Chem Toxicol.;46(5):1793-800.
2020年12月3日木曜日
海洋生物に寄生する "放線菌" (Streptomyces DT-A61 ):
我が夢 "ST-3009" の合成をかなえてくれかもしれない!
中国の浙江大学の海洋研究所 (Ningbo) に、海洋生物に寄生する特種な 放線菌 (Streptomyces DT-A61 etc ) から抗生物質、特に抗癌作用を持つStaurosporine 誘導体などをスクリーニングしている研究グループが存在することが最近判明した。特に、注目すべきは、 Staurosporine 誘導体の中に、Indolocarbazole 環 の "3位" のみが水酸化されている化合物が 2、3 同定された!
Jia-Nan Wang, Hao-Jian Zhang, Jia-Qi Li, Wan-Jing Ding, Zhong-Jun Ma. Bioactive Indolocarbazoles from the Marine-Derived Streptomyces sp. DT-A61. J Nat Prod. 2018 Apr 27;81(4):949-956.
Te Li, Ning Wang, Ting Zhang, Bin Zhang, Thavarool P Sajeevan, Valsamma Joseph, Lorene Armstrong, Shan He, Xiaojun Yan , C Benjamin Naman. A Systematic Review of Recently Reported Marine Derived Natural Product Kinase Inhibitors. Mar Drugs. 2019 Aug 23;17(9):493.
「長生き」とは "有難い" ものだ! もう20年近くも昔の話だが、私が未だ豪州メルボルンの国際癌研 (LICR)に勤務していた頃、グアム島の海洋研究所にいたドイツ人の Peter Schupp が、海洋生物 (海綿) から、 Staurosporine (ST) 誘導体の中に、Indolocarbazole 環 の3位のみが水酸化されている化合物 "ST-2001" を見つけた。この化合物は、STと同様、"非特異的な" キナーゼ阻害剤であるが、作用が ST よりも50倍 も強い (IC50= 1 nM)! その後、我々による (構造と機能の相関関係に関する) 研究から、更に Indolocarbazole 環の 9位に、Arg などの「塩基性」かつ "比較的長い" の側鎖を付加することができれば、PAK に極めて特異的 (かつ細胞透過性の高い) 阻害剤 (ST-3009)になることが判明した。その理由は、PAK のみが非活性の「Homo-dimer」を形成する特性があるからである。このDimer の「ATP 結合ポケット」は、Monomer の2倍近いから、より大きなATP 誘導体を選択的に取り込むことができるわけである。しかしながら、「頼みの海洋生物」が、ある日、忽然と、グアム島の沿岸から姿を消してしまった! 恐らく、「地球 (海水) の温暖化」のためであろう。。。 さて、"有機化学反応" で、3位を水酸化しようとすると、同時に9位にも水酸化が起こって、キナーゼ阻害活性が全くなくなる! 従って、生物界に存在する(Stereo-specific) 特種な 「Hydroxylase」 (Oxidase) によってのみ、3 位 のみを特異に水酸化しうることが判明した。
さて、「グアム島の悲劇」から 十数年経って、それよりもかなり北方にある上海近郊 の Ningbo 沿岸 (沖縄のほぼ対岸に当たる) で、ST 誘導体の3位を特異的に水酸化する酵素を持つ海洋放線菌が見付かったことは、極めて喜ばしい! ここで見つかった (3位に水酸基を有する) 誘導体「ST-2018」は、ヘキソースの側鎖が "ST-2001" とは異なるので、活性はやや低い (IC50=10 nM) が、その側鎖を化学的に置換して、ST-2001 に変換することは可能だろう。 従って、理論的には、近い将来、「ST-3009 」を合成することは、単なる夢でがない! 面白いことには、この海洋放線菌は、酒を作る「こうじカビ」のように、米を培地にして培養/発酵することができる (ただし、恐らく海水中で)。。
なお、ST の生合成は、3つのトリプトファンが縮合して、indolocarbazole 環が生成された後、冨山県立大学 (微生物工学) の尾中宏康ら (2002) の論文によれば、ヘキソース環が結合して成立するが、その過程で、トリプトファンの一つが水酸化されて、3位に水酸基が入る。従って、水酸化酵素は、実は「5-Tryptophan Hydroxylase」の一種であると考えられる。。。驚くなかれ、この酵素は、トリプトファンからセロトニンが生成される過程に関与する酵素なので、我々の脳内 (松果体など) にも存在するはず!
Jia-Nan Wang, Hao-Jian Zhang, Jia-Qi Li, Wan-Jing Ding, Zhong-Jun Ma. Bioactive Indolocarbazoles from the Marine-Derived Streptomyces sp. DT-A61. J Nat Prod. 2018 Apr 27;81(4):949-956.
Te Li, Ning Wang, Ting Zhang, Bin Zhang, Thavarool P Sajeevan, Valsamma Joseph, Lorene Armstrong, Shan He, Xiaojun Yan , C Benjamin Naman. A Systematic Review of Recently Reported Marine Derived Natural Product Kinase Inhibitors. Mar Drugs. 2019 Aug 23;17(9):493.
「長生き」とは "有難い" ものだ! もう20年近くも昔の話だが、私が未だ豪州メルボルンの国際癌研 (LICR)に勤務していた頃、グアム島の海洋研究所にいたドイツ人の Peter Schupp が、海洋生物 (海綿) から、 Staurosporine (ST) 誘導体の中に、Indolocarbazole 環 の3位のみが水酸化されている化合物 "ST-2001" を見つけた。この化合物は、STと同様、"非特異的な" キナーゼ阻害剤であるが、作用が ST よりも50倍 も強い (IC50= 1 nM)! その後、我々による (構造と機能の相関関係に関する) 研究から、更に Indolocarbazole 環の 9位に、Arg などの「塩基性」かつ "比較的長い" の側鎖を付加することができれば、PAK に極めて特異的 (かつ細胞透過性の高い) 阻害剤 (ST-3009)になることが判明した。その理由は、PAK のみが非活性の「Homo-dimer」を形成する特性があるからである。このDimer の「ATP 結合ポケット」は、Monomer の2倍近いから、より大きなATP 誘導体を選択的に取り込むことができるわけである。しかしながら、「頼みの海洋生物」が、ある日、忽然と、グアム島の沿岸から姿を消してしまった! 恐らく、「地球 (海水) の温暖化」のためであろう。。。 さて、"有機化学反応" で、3位を水酸化しようとすると、同時に9位にも水酸化が起こって、キナーゼ阻害活性が全くなくなる! 従って、生物界に存在する(Stereo-specific) 特種な 「Hydroxylase」 (Oxidase) によってのみ、3 位 のみを特異に水酸化しうることが判明した。
さて、「グアム島の悲劇」から 十数年経って、それよりもかなり北方にある上海近郊 の Ningbo 沿岸 (沖縄のほぼ対岸に当たる) で、ST 誘導体の3位を特異的に水酸化する酵素を持つ海洋放線菌が見付かったことは、極めて喜ばしい! ここで見つかった (3位に水酸基を有する) 誘導体「ST-2018」は、ヘキソースの側鎖が "ST-2001" とは異なるので、活性はやや低い (IC50=10 nM) が、その側鎖を化学的に置換して、ST-2001 に変換することは可能だろう。 従って、理論的には、近い将来、「ST-3009 」を合成することは、単なる夢でがない! 面白いことには、この海洋放線菌は、酒を作る「こうじカビ」のように、米を培地にして培養/発酵することができる (ただし、恐らく海水中で)。。
なお、ST の生合成は、3つのトリプトファンが縮合して、indolocarbazole 環が生成された後、冨山県立大学 (微生物工学) の尾中宏康ら (2002) の論文によれば、ヘキソース環が結合して成立するが、その過程で、トリプトファンの一つが水酸化されて、3位に水酸基が入る。従って、水酸化酵素は、実は「5-Tryptophan Hydroxylase」の一種であると考えられる。。。驚くなかれ、この酵素は、トリプトファンからセロトニンが生成される過程に関与する酵素なので、我々の脳内 (松果体など) にも存在するはず!
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