ショウジョウバエ (Drosophila) を使用した老化研究に関する世界的パイオニアである米国のマイケル=ローズ教授 (カルフォルニア大学) が、2005年にオックスフォード大学出版から英文原書 "The Long Tomorrow" を出版したが、その邦訳「老化の進化論」が、数年後の2012年に、みすず書房から出版された。 実は、私の本来の研究テーマは、発癌キナーゼである「PAK 」を選択的に阻害あるいは遮断する一連の薬剤を開発することにあった。しかしながら、2007年頃に、せんちゅう (C. elegans) をPAK遮断剤 (例えば、プロポリスなど) で処理、あるいはPAK遺伝子を除くと、寿命が伸びること、 つまり(「PAKは寿命を縮める」酵素であること) を偶然に発見して以来、老化現象にもいささか興味をもち始めて、この訳本を入手した。
ローズ教授は英国で1955年に生まれ、1978年の博士論文で、「メトセラ」と呼ばれる長寿のショウジョウバエ変異体を見つけ、寿命と生殖能が反比例 (トレード オフ) することを発見した! しかしながら、 彼は古典的な生物学者で、いわゆる遺伝学者でも、分子生物学者でもなかったので、メトセラが何故に長寿なのか、その遺伝子的分析を以後殆んど行なっていない。
さて、ショウジョウバエの平均寿命は、環境温度にも反比例する。1976年頃の論文によると、摂氏20度前後では、寿命が100日であるが、摂氏30度になると、その 5分の1 (20日前後) になる。 もし、この現象 (傾向) が他の動物にも、そのまま当てはまるとすれば、「地球温暖化」によって、我々の寿命も急激に短くなることが予想される! 最近は、寿命の研究に、ショウジョウバエの代わりに、より平均寿命が短い (摂氏20度前後で、14日) せんちゅう (C. elegans) が、好んで使用される。 研究結果がより短時間で得られるからである。 「時は金なり」である! 我々は、2007年頃に、せんちゅうを35度前後で飼うと、寿命がたった1日 (24時間以内) になることを発見した。 ところが、プロポリスなどのPAK遮断剤で処理する (あるいはPAK遺伝子を欠損させる) と、35度でも、少なくとも9日前後生き延びることを発見した! つまり、PAK は、寿命ばかりではなく、せんちゅうの熱耐性をも損なっていることが明瞭になった。
それでは、PAK はいかにして、寿命や熱耐性を損なっているのだろうか? この問題に重要な鍵を握っているのが、HSP (熱ショック蛋白) と呼ばれる「ATP 依存
性シャペロン」である。詳しくは、水島 徹 著「HSP と分子シャペロン」(講談社ブルーバックス、2012年) に譲るが、HSP は生命に必須な細胞内の蛋白が高熱によってダメージ (損傷) を受けた場合に、ATP を介して、元通りに戻す働きを持つ。 そして、HSP 遺伝子の発現は、熱ショックによって、誘導されるが、その発現を抑制している蛋白の一つが 「PAK」であることが判明した。いいかえれば、プロポリスなどで、PAKを遮断すると、HSP が高率良く発現され、高熱による細胞損傷 (寿命の短縮) が予防されるわけである。
さて、寿命や熱耐性を損なっているのは、PAK ばかりではなく、その上流にあるPI-3 キナーゼ や、下流にある ILK、更に TOR (Target of Rapamycin) など、複数のキナーゼが今日知られている。 例えば、マウスを抗生物質「Rapamycin 」などで処理すると、TOR が阻害され、寿命が有意に長くなることが実証されている。ただし、Rapamycin は元来、臓器移植用に開発された薬剤で、 (PAK 遮断剤と違って)、免疫能を抑制する機能があるので、「無菌状態」で動物を長らく飼う必要があり、(自由な野外活動を欲する) 人類には不適である。。。逆に、PAK 遮断剤は、我々の免疫能をも高める作用があるから、より実用的であろう。
最後に触れたいのは、PAK と生殖能との関係である。 せんちゅうの場合は、PAK欠損により、寿命が6割も延びる代わりに、生殖能 (産卵能) が約7分の1 に減少する。 従って、長寿になると、いわゆる「少子化」が起こる。日本政府は未だに「少子化対策」を唱えて、(丸でアフリカ大陸のごとく) 女性に産むことを強いているが、私自身の考えでは、これは「時代錯誤」も甚だしい! 「子供は一家に一人」で十分である。世界的に「人口過剰」になっている21世紀にあっては、(何よりも) "人口を減らす"ことが急務である。何故かと言うと、人口過剰が炭酸ガスの過剰放出を産み、ひいては「地球の温暖化」(QOL の低下) を招いているからである。 長寿を楽しむべきインテリの女性たちには、子供を産むよりももっと重要な社会活動が沢山待ち受けているはず。 少なくとも、真に「男女同権」の世界 (社会) では、そうあるべきである。。。我が国の首相「スガーリン」はアフリカ諸国の首相 (酋長) 連中 の猿真似を、そろそろ止めるべきであろう。
この年末に、現職の国会議員 "羽田雄一郎氏" (立憲、 53) がCOVID で急死! 持病の糖尿病、高脂血、高血圧は、いずれも「PAK」 依存病! 片足を既にかん桶に突っ込んでいた矢先に、COVIDによって、そっと背中を押されて、昇天! こういう持病 (=老化現象) をもった人は、特に要注意! COVID などの肺炎、紫外線、オキシダント等のストレスは、高温 (発熱あるいは地球温暖化) と同様、老化 ("死期") を早める要因!
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