生物の中で最も下等なのは、ウイルスである。ウイルスは遺伝子(DNA あるいは RNA) 自身をもっているが、それを複製したり、転写するための酵素をもっていない。従って、より高等な生物、例えば、細菌 (バクテリア) や多細胞生物であるカビや我々人類に感染、寄生して、その宿主のリボゾームや酵素を使用して、増殖を続ける。
さて、バクテリアやカビも人類などの高等な生物に感染、寄生して、その子孫を残そうとするが、バクテリアとカビには、大きな違いがある。 バクテリアは「単細胞生物」であり、カビは細胞同志が結合して、胞子などを作る「多細胞生物」である。 それでは、バクテリアは一体どうして、多細胞生物になれないのだろうか? バクテリアには 「ミオシン」 という酵素 (ATPase) が欠けている。 従って、筋肉細胞のように、収縮したり移動したりするいわゆる 「細胞(アメーバ) 運動」ができない。 もう一つ、バクテリアに欠けている酵素がある。それが「PAK」と呼ばれる「燐酸化酵素 (キナーゼ) 」である。このキナーゼは「発癌性」をもち、かつ「老化現象を促す」働きももっている。
さて、 最近我々は大変面白い発見をした。 人類由来の「へそのう」の細胞 (平滑筋細胞, HUVECs) を使った細胞培養系の血管新生の実験中だった。 通常は、ニワトリの受精卵をつかって、多細胞系で、ある検体の血管新生(CAM) 阻害効果をみるが、HUVEVCs 細胞培養でも、(ある特殊な条件下では) 阻害効果を見ることができる:
HUVECs に 「VEGF」 と呼ばれる血管新生促進ホルモンを与えると、バラバラに存在していた細胞がアメーバ運動を起こし、細胞同志が接着し合って、チューブ状の血管壁組織を形成する。 この細胞培養系に、ナマコ由来のフロンドサイド A (FRA) を加えると、この細胞集合 (血管壁の形成) が阻害される。 しかも、細胞死を全く伴わない! つまり、細胞は生きているが、アメーバ運動や細胞接着を阻害することによって、"多細胞生物への進化" を阻害したわけである。
以前から、動物実験で、血管新生にはPAKが必須であることがわかっていたが、そのメカニズムがハッキリわかっていなかった。 驚くなかれ、「FRA」はPAKを直接、しかも特異的に阻害する。 PAKはアメーバ運動に必須なミオシンの収縮に必須なキナーゼである。 従って、「FRA」などのPAK遮断剤は、HUVECs のアメーバ運動を阻害することによって、血管新生を抑制することが解明された。 同時に、細菌が多細胞生物になれない 「謎」 も解けたわけである! 従って、進化に関する 「歴史的な発見」 とも言えるだろう。
もう一つ、付け加えれば、ウイルスや細菌による感染には我々"宿主のPAKが必須"である。従って、プロポリスや 「FRA」 などのPAK遮断剤で、これらの感染の予防や治療が可能である。 更に、固形腫瘍の増殖には "血管新生" が必須である。 従って、一連のPAK遮断剤で、固形腫瘍の増殖や "転移" (アメーバ運動) を抑制することができる。
以前に、一連のPAK遮断剤がメラノーマの増殖を抑えずに、メラニン合成を抑えることを報告した。 同様に、PAK遮断剤はHUVECs を死亡させずに、チューブ形成を抑える。 従って、検体が "細胞増殖や生存に影響を与えずに"、メラニン合成やチューブ形成を抑えれば、選択性の高い 「PAK遮断剤である」 証明になる。
面白いことには、VEGF と PAK との間には、「相互扶助」関係がある。VEGFは PAKを活性化し、PAKはVEGFの産生を更に高める。 従って、固形腫瘍が周りの血管を刺激すると、「雪だるま式」に血管新生が高まり、腫瘍の増殖を助ける結果になる。
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