我々の開発したPAK 遮断剤 "15K" に関する論文が発表されてから、数ケ月後に Puerto Rico 大学医学部の研究チーム (指導者はオランダ出身の Vlaar 博士) によって、同様なメカニズムで、類似した化学構造をした「MBQ-167」と称する PAK 遮断剤に関する論文が発表されていたが、我々はつい最近まで、それに気づかなかった (自らの研究に"集中/熱中し過ぎ"たか) 。 我々の2017年の論文には未だ細胞培養系によるデータしかなかったが (翌年に動物実験データも発表)、彼らの2017年の論文には、既に動物実験データが含れていた!
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28450422/
Tessa Humphries-Bickley, Linette Castillo-Pichardo, Eliud Hernandez-O'Farrill, et al.
Characterization of a Dual Rac/Cdc42 Inhibitor MBQ-167 in Metastatic Cancer. Mol Cancer Ther. 2017 May;16(5):805-818.
両化合物とも、PAK の直ぐ上流にある "RAC/DCD42" と呼ばれるG蛋白を直接阻害する。
彼らは2018年に自らの特許に基づいて、「MBQ ファーマ」なる製薬会社を創設して、(主に「薬剤耐性」の乳癌を対象とする) 臨床試験を開始せんとしている模様。。。https://mbqpharma.com/mbq-167/
ただし、MBQ-167 の IC50 は 100 nM 前後に対して、我々の 15K の IC50 は 5-24 nM なので、薬理作用としては、後者 (15K) のほうが少なくとも10倍ほど優れていると言えよう。動物実験でも、15K の IC50 は 0。1 mg/kg 以下であるが、前者 (MBQ-167 ) の IC50 は 1 mg/kg 前後である。
どちらの方が先に市販されるにしても、癌患者、NF患者、COVID-19 患者などには、すこぶる良報に違いない!
最後に指摘したい一点は、MBQ-167 と 15K との基本的な違いの一つは、1、2、3-triazolyl 環に結合するベンゼン環の側鎖の存否とその位置である。 15K にはortho の位置 に methoxy があるが、MBQ-167には 側鎖がない。 もし仮に、MBQ-167 に ortho-methoxy (or ortho-Cl) を付加して "MBQ-202" とすると、細胞透過が100-500倍にまで高まる可能性がある。。。(成功すれば) ノーベル賞にも繋がり得る「医科学的なギャンブル」の好きな諸君にお勧めの大挑戦!
最初に「MBQ-202」 の合成に成功し、飛躍的な細胞透過性 (IC50 < 1 nM) の実証に成功した者には、PAK研究財団から少なくとも「20万円」の賞金を与えたい。。。数年後に「MBQ-202」の市販が実現されれば、恐らく、ノーベル医学/化学賞を受賞するチャンスも到来するだろう。。
場合によっては、Puerto Rico 大学の客員教授として、当地に3か月ほど滞在し、「MBQ-202」プロジェクトの監督指導にあたることになるかもしれない。
号外: 最近のVlaar 博士 (有機化学者) からのe-mail 情報によれば、目下 "MBQ-202" などを含めて一連の誘導体の抗癌/抗PAK活性を測定中だそうである。 "Telepathy" (以心伝心) が見事に通じたようだ! 実は、Vlaar 博士は米国でポスドク時代、Click Chemistry の発明者 (2000年にノーベル化学受賞) の弟子だった。そこで、プエルトリコ出身の奥さんに巡り合い、プエルトリコ大学に転勤!
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