長時間の歩行やランニングがいわゆる「メタボ」(肥満) 現象を予防し、最終的には「健康長寿」を促することは、今や我々のごく「常識」になっている。しかしながら、その分子メカニズムについては、諸説がある。さて、数年前に、(アルプスの山麓) スイスの首都ベルンにある大学の研究グループが、ある二十日ネズミの変異体を使って、そのメカニズムを解明する実験をやった (1)。
実は、このミュータントには、「PTEN 」と呼ばれる抗癌遺伝子産物 (フォスファターゼ=脱燐酸化酵素) が欠けているため、癌が肝臓などに発生する。この酵素は元来、「発癌キナーゼ」である「PAK」を阻害する働きをもっている。従って、 このミュータントのマウスには、PAK が異常に活性化され、癌が高頻度に発生する。 さて、 このミュータントをモーターで間断なく動く 「treadmill」 (踏み車) に 乗せて、毎日 60分間、週に5日、32週間 (約5か月弱) に渡って、長時間の運動をさせると、癌の発生率が、約30% も減少することが判明した。
その分子メカニズムを調べたところ、いわゆる抗癌キナーゼ経路 (LKB1-AMPK) が、この長時間の運動で、活性化されていることが判明した。 先ず「 LKB1」 という抗癌キナーゼには、PAK を燐酸化することによって、その発癌作用を抑制すると共に、抗癌キナーゼ「AMPK」を活性化する働きを持つ。
勿論、この種の軽い運動だけでは、発癌を完全に予防することはできないが、例えば、プロポリス、 海藻由来のフコイダン 、ハイビスカス茶などのPAK遮断剤 (食材) を併用すれば、発癌やその他のPAK 依存症 (例えば、「COVID-19」性肺炎、高血圧、糖尿病、肥満症、認知症 など) を100% 近く予防できるだろう。
従って、たとえ、壮絶な 「箱根駅伝レース」やボストン=マラソン等には直接参加できなくても、 日常の散歩 (競歩)、ジョギング、Cycling、登山 (山歩き) などで、十分に 「健康長寿への道」 を辿ることは可能である (「ベテラン」 経験者は語る)!
日本マラソン界の祖 (「箱根駅伝」の創設者) 、金栗四三 (1891-1983) の伝記によれば、生まれた当時は、とても ”ひ弱な” 少年だったが、10歳になって、(熊本と福岡の県境にある) 玉名北高等小学へ進学をきっかけに、自然とマラソン人生の基礎を築く「あること」が始まる。「あること」とは、自宅から学校までの山坂を越える往復 "約12キロ" の通学路を、近所の生徒たちと毎日走って行き戻りする「かけあし登校」(今でいえば、「ジョギング」)。この自宅から学校までの通学路は、現在「金栗 (イダテン) ロード」と呼ばれている (2)。
地球一周の 距離は 約4万km と言われている。従って、生涯 25万 km を走ることをめざした「イダテン」(金栗) さんは、(人工衛星ではなく、自分の足で) 地球を6回ほど回った計算になる。 実際に 25 万 km 走ったかどうかは定かではないが、可能性はある。(長距離走者なら) 毎日 10 km 以上 走ることは可能であり、週末には 20 km 走るというスケジュールを立てると、毎週 90 km (フル=マラソン 2回分) を走破できる、その 52倍が一年間の走破距離 =4700 km。 彼は、長寿で92歳 まで
生き抜いた。従って、その間に、少なくとも 50年強 (例えば、10歳から65歳まで) 、この (スパルタ) ランニング=スケジュールを続けたとしたら、"実現可能" という概算が出る! 因みに、ボストン=マラソンで有名な「瀬古利彦」 (早大卒) は1956年生まれだから、既に64歳だが、恐らく生涯を通じて、既に地球の回りを "6周" 以上、走破してきたと、私は確信している。。。
参考文献:
1. Anne-Christine Piguet, Uttara Saran, Cedric Simillion, Irene Keller, Luigi Terracciano, Helen L Reeves, Jean-François Dufour (2015). Regular exercise decreases liver tumors development in hepatocyte-specific PTEN-deficient mice independently of steatosis. Hepatol. 62: 1296-1303.
2. 長谷川孝道 『走れ二十五万キロ=マラソンの父: 金栗四三伝』(熊本日日新聞社, 2018)
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