そもそも、女性には性染色体 "X" が 2本ある (男性には、1本しかない) ために、男性よりも、平均 10% 程、「長命」である。 老人ホームを訪れると、7割が女性で、男性は3割に過ぎない (男性は、老人ホームに行き着く前に、御陀仏!)。 従って、女性研究者 (生物学者) の方が、男性生物学者よりも、寿命に関心をもっているようだ。一般に、男性は健康よりも栄誉を重んじる傾向がある (マケドニアのアレキサンダー大王は、地中海沿岸に大帝国を築いたが、30歳そこそこで他界した!)。
寿命の研究 (実験) 材料としては、今日、主に、線虫が使用されている。その主な理由は、多細胞動物中で、最も寿命が短い (気温20度で、寿命が2週間!) から、実験結果が「短時間」に得られると共に、ペトリ皿の上で、(大腸菌を餌に) 飼育できるから、安価である。 一般に女性研究者は、小規模な研究グループを主宰し、男性研究者のような大規模な研究グループを嫌う傾向がある。色々な理由があろうが、先ず研究費が膨大である必要がないからであろう (我が輩自身は、男性であるが、小規模な研究グループを好む)。
さて、実際に線虫を材料に寿命研究をリードしている女性は、主に米国カルフォルニア州のいわゆる「三銃士」、サンフランシスコ (UCSF)の Cynthia Kenyon、 スタンフォード大学の Anne Brunet、 サンディエゴの Marlene Hansen である。日本では、東京の老人病研究所の本多夫妻チームと, 埼玉の大東文化大の梁瀬すみの女史である。 後者 (梁瀬女史) は、我が輩自身による "線虫に関する寿命実験" の「昔の相棒」である。
そもそも、線虫を分子生物学用の実験動物として初めて、 1970年代初頭に紹介したのは、南アフリカ出身の分子生物学者シドニー=ブレナー(英国ケンブリッジ大学分子生物学研の所長) である。彼は、この功績で、2002年にノーベル賞を貰った。 実は、我が輩の旧友でもある。
2007-2013年にかけて、我が輩は、この"線虫"を使って、PAK1遺伝子の欠損株が野生株に比べて、6割も長生きすることを、突き止めた! つまり、PAK1 というキナーゼは、「老化酵素」であり、それを (カルピス etc で) 遮断すれば、健康長寿になることを証明したわけである。マウス (平均寿命 = 2年半!) でも、同様である事が、ごく最近、米国で証明された! Charles Darwin の「進化論」に従えば、人類でも同様であることが、容易に予測される!
21世紀に入って、線虫の研究は、「ノーベル賞への近道」, と俗に言われている! (既に、「線虫」関係の研究者が10名も、ノーベル賞を受賞している!)。
2、3年中には、"線虫" 実験 etc で "寿命を延ばす物質" (PAK1遮断剤 etc) を発見した研究者がノーベル賞をもらう可能性が出てきた。。。。
Foot Note: マイクロRNAの分野では、 実は、"干渉RNA" の発見で、2006年に2人にノーベル賞が出ている。今回の2人 (Ambros et al) は、その "大元の発見者" (1993年) だが、"2006年の受賞者に入らなかった" ので、取り損なった (!) と思われていた (言わば、「2番煎じ」受賞という "珍現象" = "修正版")!
REF:
Lee RC, Feinbaum RL, Ambros V (1993).
The C. elegans heterochronic gene lin-4 encodes small RNAs with antisense complementarity to lin-14. Cell. 175: 843-54.
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