「健康長寿には、一般に少子化を伴わう」と前述した。しかしながら、ごく最近、その「例外」が現れた! スペインの研究グループによれば、せんちゅうの変異株で、SUL遺伝子を欠損した株は、野生株に比べて5割ほど長生きするが、産卵数に変化がなかった。 SUL は「ステロイドホルモンを硫酸化する酵素」で、ステロイドの効果を失わせる働きを持つ。
面白いことには、SUL は主に (皮膚や神経細胞など) 「感覚細胞」に発現し、生殖細胞には発現しないので、産卵には影響を与えない。 更に、硫酸化ステロイドの合成誘導体であるSTX64 やSTX213 (=SUL 阻害剤) により、せんちゅうの寿命を延ばし、更に認知症などの症状を軽減することも判明した:
Mercedes M Pérez-Jiménez , José M Monje-Moreno, Ana María Brokate. et al. Steroid hormones sulfatase inactivation extends lifespan and ameliorates age-related diseases. Nat Commun. 2021; 12: 49.
更に、STX64 (IC50=10 mg/kg) やSTX213 (IC50=1 mg/kg) 等には、マウス実験で、(乳癌などに対して) 抗癌作用があることが実証されているので、腫瘍が "ステロイドホルモン依存性" ならば、その治療にも役立つ。 なお、2000-2004年に最初のSUL 阻害剤 「STX64 及び STX213」を抗癌剤として開発したのは、英国 Oxford 大学の Barry Potter 教授である。 彼は、2015年に退官したが、「SUL 阻害剤が健康長寿にも役立つ」というニュースにきっと喜んでいるに違いない。。。彼のチームと共同で、「SULPAK」という会社を創業し、「健康長寿の薬」(SUL阻害剤 /PAK遮断剤) を市場に出すという案はどうだろうか?
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