2021年5月2日日曜日

HDAC阻害剤 「Panobinostat」: 多発性骨髄腫 (MM)
のみならず 「COVID」や "NF" にも効くはず!

ごく最近、群馬大学医学部の研究チームから大変興味深い研究報告が発表された。それによると、もう20年ほど昔に、スイスの製薬会社「Novartis」によって開発された HDAC阻害剤 「Panobinostat」(欧米や日本では2015年以来、MM などの治療薬として市販されている) が、COVID の感染に必須な宿主細胞のACE-2 (ウイルスのスパイク蛋白受容体) の発現を強力に (IC50 < 25 n M) 抑制するという:
Yoichiro Takahashi, Akira Hayakawa, Rie Sano, et al. Histone deacetylase (HDAC) inhibitors suppress ACE2 and ABO simultaneously, suggesting a preventive potential against COVID-19. Sci Rep. 2021;11: 3379.
HDAC とは、ヒストン脱アセチラーゼのことで、実は病原キナーゼ「PAK」の上流にあり、HDAC を阻害すると、PAK が抑制されることを、十数年前に、我々は別の (より強力な) HDAC阻害剤 「FK228」(商標 「Istodax」, IC50=1 nM) で証明している。 実は、「FK228」自身は、残念ながら、BBB (血管脳関門) を通過しないため、脳腫瘍の治療には役立たないので、この方面 (HDAC阻害剤) の研究から、 我々は、しばらく手を引いていた。
しかしながら、この「Panobinostat 」は、どうやらBBB を通過しそうなので、大いに注目する価値があろう。。。言い換えれば、「Panobinostat 」は多発性骨髄腫 (MM) や「COVID」感染のみならず、NF を含めて種々の脳腫瘍の治療にも、近い将来役立つはず! 我々が数年前に、鎮痛剤「ケトロラック」から開発した強力なPAK遮断剤「15K」 (未だ市販には至っていない) に匹敵する物であろう。。。 ただし、(MB と違い) 「Panobinostat 」は、水に不溶なのが欠点!
実際、2018年の米国における NF2 合同研究グループの報告によると、このHDAC阻害剤 (25 mg/kg) がマウス実験で、(脳内の) NF2 腫瘍の増殖を殆んど完全に抑制する:
Traditional and systems biology based drug discovery for the rare tumor syndrome neurofibromatosis type 2. PLoS One. 2018; 13(6): e0197350. By The Synodos for NF2 Consortium.

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