2019年3月5日火曜日

製薬会社「サノフィ」(本社: パリ) での今夏講演

演題:
15K, highly cell-permeable PAK1-blocker for therapy of cancers and other PAK1-dependent diseases.

Meine Damen und Herrn (Ladies and Gentlemen):

Es ist meine grosse Freude uber anti-PAK Drogen zu sprechen (It is my great pleasure to speak over anti-PAK drugs).

 序:
今から110年昔、(化学療法の父) パウル=エーリッヒ博士が、地元ドイツのフランクフルトで梅毒の特効薬「606」(サルバルサン) を開発し、諸君の大先輩にあたる「ヘキスト」の研究陣と共同で、梅毒患者の臨床テストに大成功 (梅毒の撲滅) を修めたのは、皆さんも良くご存知でしょう。

 さて、今回はその輝かしい歴史を繰り返す (再現す) べき絶好のチャンスが到来しつつあります。 今回の「魔法の弾丸」は、「15K」(あるいは Mozartin 1) と称するPAK遮断剤です。梅毒にも有効でですが、それ以外に、癌や認知症、高血圧、糖尿病 (タイプ2 )、 エイズやマラリアを含めた凡ゆる種類の感染や炎症など極めて広範囲の難病にも有効です。 薬剤耐性のスイゾウ癌に対して、有効であることが動物実験で最近、実証されましたので、できるだけ早期に臨床テストを開始したく、皆さんのご協力を仰ぎに参りました! 

さて、PAK とは、蛋白を燐酸化する酵素 (キナーゼ) の一種ですが、発癌性かつ我々の健康寿命を縮めるなど、病原性の極めて高い酵素です。従って、この酵素を阻害あるいは遮断する薬 (Anti-PAK Drogen) があれば、癌を治すばかりでなく、我々の健康長寿を促進することができます。我々による40年近い研究の結果、そのようなPAK遮断剤は、プロポリスを始め、天然に多種存在することが判明しましたが、残念ながら、水に不溶性であったり、細胞透過性が悪かったりして、末期癌の治療には、しばしば大量投与が必須です。

そこで、 それらの欠点を大幅に解消すべく、「クリック化学」と呼ばれる有機化学反応を駆使して、我々はCOOHを持つPAK遮断剤で、元来鎮痛剤として30年ほど昔から市販されていた「ケトロラック」と呼ばれる合成化合物をエステル化して、その抗癌作用を500倍以上高めることに成功しました。 それが今回の講演の主題「15K」 です。 反応はご覧の通り、2 段階ですが、収率は50% 以上です。 この反応の味噌は、エステル化に「アニソール」と呼ばれる水溶性の特殊なアルコールを使用することです、その結果、15K は細胞透過性が飛躍的に高いばかりではなく、比較的水溶性です。

特記すべきもう一つの特徴は、このPAK遮断剤は、いわゆる「一石二鳥」の薬です。つまり、PAK の上流 (RAC) とPAKの下流 (COX-2) を同時に阻害します。実は、原料のケトロラックは光学異性体のラセミ (S形とR形の混合物) です。従って、そのエステルである「15K」もラセミ体です。 R 形がRACの阻害剤、S形がCOX-2の阻害剤です。 従って、同じ薬で、発癌性のPAKの上流と下流を同時に遮断 (ダブル=パンチを食わす!) ので、この薬に対して耐性の癌や病原体のミュータントは、理論上もはや発生し得ないのです。

 注:  ヘキストは1999年にフランスの製薬会社と合併し、アヴェンチスという独仏合弁会社になった後、2004年にフランスの大手製薬会社「サノフィ」に買収され、現在は世界7位の「サノフィ」(本社はパリ) の傘下で「有機合成」部門を担当している。 

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