米国のコダックやドイツのアグファーに対抗して、「富土フィルム」が写真フィルムを日本で製造し始めたのは、戦前の1934年、今から85年前である。カラー写真では、コダックが「赤」系統の発色に優れていたのに対して、富土は「青」系統の発色に優れているという評判だった。 富土フィルムは精密化学に強く、1980年代から1990年代にかけて、ボストンの癌研究所や我々の抗癌チームなどと共同で、ローダミン色素の水溶性誘導体である「MKT-077」をスイゾウ癌の治療薬として、開発研究を続けていた時期がある。 この色素は細胞内のアクチンや抗癌 (熱ショック) 蛋白であるHSP70 などに結合し、癌の増殖を特異的に抑制する作用がある。しかしながら、臨床テスト半ばで、市販から遠ざかった。 数年前、アフリカ大陸でエボーラ=ウイルスの感染が猛威を奮った頃、その治療薬として、富士フイルム傘下の「富山化学工業」が開発した錠剤「アビガン」(元来は、流感の薬) をいち早く「無償供与」して、メディアの話題になった。
最近は、化粧品や健康食品にまで進出している。 その一例が、赤い色の海洋生物、例えば北極エビ、微小のプランクトン(紅藻)、筋子、紅鮭などに含まれている真っ赤な色素 (アスタキサンチン) もカロチノイド類に属する。面白いことには、数年前に大東文化大学の梁瀬澄乃博士は、このアスタキサンチン(AX)が線虫の寿命を延ばすことを発見した。そのメカニズムは (PAK遮断剤と同様) 転写タンパク質「FOXO」を介していることも明らかになった。 従って、食品の着色に使用されているこの海洋カロチノイドもクロセティンと同様、PAK遮断色素である可能性が非常に高い。 富土フィルムでは、AXを含む化粧品を美白 (日焼け止め) ローションとして市販している。前述したが、メラニン合成にはPAK必須であり、それを遮断するAXは、美白にも、「アルツ」の予防にも、健康長寿にも役立つわけである。なお、大塚製薬などからは、AXの錠剤が「機能性食品」として、Amazon.co.jp などから通販されている。
頭は「アルツ」(認知症) になる前に使おう! この言葉は、我が父が生前に良く口走った「口癖」の一つである。米国のコダックは、デジタルカメラの登場によって、「倒産」寸前に追い込れたが、富土フィルムは、(アルツになる前に) 頭を切り換えて、飛躍発展した。石頭では、世界の激しい競争に生き残れない。頭を柔軟に活用しよう!
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