2019年3月30日土曜日

天然PAK遮断剤: 海草由来のフコイダン (硫酸化多糖類) と花椒エキス

褐色の海藻類 (昆布、わかめ、もずくなど) のネバネバ成分は、「フコイダン」と呼ばれる硫酸化した多糖類である。 これは寒天やこんにゃくと違って、胃腸から吸収されて、然るべき薬効 (例えば、抗癌や抗炎症など) を発揮する。古い話だが、豪州のメルボルン五輪 (1956) やローマ五輪 (1960) の水泳長距離 (自由形) で連勝したマレー=ローズは "菜食主義者"で、主に海藻から、その絶大なるスタミナを得ていたと言われている。

前述した詐欺師により通販されている「ブロリコ」(ブロッコーリー由来の多糖類) は、主に日本、韓国、米国で目下通販されているようだが、米国では、いわゆる「東大の権威」が通用せず、フコイダン通販業者から、「ブロリコは擬い品」で寒天同様、腸管を素通りするから薬理作用なし、と言う苦情が殺到している。

それでは、「フコイダン」には一体どんな薬理作用があるのだろうか?  この多糖は、100年以上昔 (1913年)、ウプサラ大学所属のスウェーデン人科学者 H・Z・キリン (H. Z. Kylin) によって発見され、1996年の日本癌学会で制癌作用が報告されて以来、健康食品として、プロポリスについで、一躍注目を浴びるようになった。

2002年にはフランスの科学者による研究で、分子量8,000程度の低分子フコイダンがウサギの血管内膜平滑筋細胞の過形成を抑制することが明らかとなった。フコイダンに関する研究論文は主として培養細胞または実験動物を使った基礎研究で、人間に対する臨床的な研究はほとんど発表されていない。癌細胞に対する効果のほか、炎症反応、免疫反応、感染症 (マラリア、流感、エイズなど)、認知症、脂質代謝、VEGF/PAK依存の血管新生などに対する効果が研究されている。

これら一連の薬理作用は、PAK遮断剤であるプロポリスなどの薬理作用と極めて良く一致するので、私自身は「フコイダンもPAK遮断剤の一種である」 と殆んど確信している。案の定、フコイダンがVEGF に直接結合して、VEGF によるPAK 活性化と (その逆、悪循環) を抑えることが 2, 3年前に判明していた。

余談になるが、ナマコ由来の粘々成分でPAK阻害剤「フロンドサイド A」 (FRA) は硫酸化したオリゴ糖が付加したトリテルペン (サポニン) の一種である。 非常に細胞透過性の高い抗癌剤として、開発されつつある。FRA は水溶性なので、大部分はナマコの煮汁に出てくる。煮汁は通常、石鹸の材料に使用される。ナマコ石鹸に「美白効果」があるのは、FRAなどのPAK阻害剤 (サポニン) による。

もう一つ、水溶性の天然PAK阻害剤を紹介しよう。山椒やその仲間である赤い実のなる四川産の "花椒"  由来のエキスである。山椒はウナギの蒲焼にかけるが、 花椒は胡椒と共に「マーバ豆腐」に使用する香辛料である。 もう10年以上も昔、我々の癌研究室で、山椒や花椒のエタノールエキスあるいは温湯 (45度以上) エキスに、(マウス実験で) すいぞう癌や乳癌などの増殖を抑えるPAK遮断剤が含まれることが発見された (1)。丁度同じ頃、高知大学の研究室からも、山椒エキスに抗癌作用があることが報告された (2)。我々の研究では、山椒エキスよりも花椒エキスの方が数倍、抗癌作用が強いことがわかった。花椒エキスは安価で、然も明らかに毒性がないので、癌やNF患者などに「台所で簡単に調製できるPAK遮断剤」として、奨励し始めた。

その後、ある養蜂家と相談して、花椒エキスとハニーをブレンドして、幼児にも飲みやすくして、商標「花水」として、市販せんとする直前、通販の溶液プロポリス (特にNZ産のBio 30) により強いPAK遮断作用であることが判明して、「花水」はとうとう市販化には至らなかった!  そんなわけで、花椒エキスのPAK阻害成分の同定研究も未完のままである。少なくとも、胃腸から吸収されない (毒にも益にもならぬ) 悪名高き通販「ブロリコ」よりも、ずっと (健康増進に) 実効果がある! 実は、私自身は「CAPE アレルギー」  (100人に一人以下!) なので、CAPEを含む Bio 30 などのプロポリスは飲めない。そこで、今でも、花椒を (プロポリス代わりに) ラーメンなどのスープに加えて、(健康長寿のために) 摂取している。


参考文献:
1. Hirokawa Y1, Nheu T, Grimm K, Mautner V, Maeda S, Yoshida M, Komiyama K, Maruta H. Sichuan pepper extracts block the PAK1/cyclin D1 pathway and the growth of NF1-deficient cancer xenograft in mice. Cancer Biol Ther. 2006 ;5(3):305-9.


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