2019年10月4日金曜日

ジャック=ミラー: 豪州の免疫学者 (T & B 細胞の発見) に
2019年「ラスカー賞」! ノーベル賞は再び「お預け」!

メルボルンは南半球における「医学研究のメッカ」であるが、特に免疫研究分野では、少なくとも1950-60年代に、「世界のメッカ」といわれていた。 その免疫学の中心は、メルボルン大学に隣接した医学研究所 「WEHI 」(Walter-Eliza Hall Institute) だった。1950年代には、所長をしていたMacFarlane Burnet (1960年ノーベル受賞者) がその中心的な人物だった。

今回 (先月)、88歳で「ラスカー」を受賞したJacques Miller は、実はフランス人で、1931年生まれである。幼年時代をフランス、スイス、中国 (上海) などで過ごした後、日本軍による本格的な満州侵略、真珠湾攻撃などに伴い、1941年末に急きょ豪州のシドニーに家族と共に疎開した。 彼がメルボルンのWEHI に勤務し始めたのは、英国留学後の1966年からである。 当時、所長をしていたGus Nossal 教授の下で、免疫学を研究し始めて間もなく、免疫を司どる2種類の細胞の存在に気付いた (1)。

その一つは、骨髄 (Bone marrow) 由来のB 細胞。 もう一つは、胸腺 (Thymus) 由来の T 細胞。 前者は、主に(感染防御に必須な) 抗体の生産に関与する。 後者は移植臓器の拒絶や癌に対する免疫排除などに関与する。 面白いことには、両者の免疫機能が病源キナーゼ「PAK 」によって、抑制されていることが、ごく最近明らかにされた。つまり、(プロポリスなどの) PAK遮断剤によって、両者の免疫機能が高められる。 

Jacques Miller らが、これら2種類の免疫細胞を発見した直後、私は大学院の博士コースで、免疫学を専攻し始めた。 私自身の博士研究テーマは、B 細胞由来の「マクロファージ」と呼ばれる貪食細胞が、抗体の存在なしに、細胞培養系で、いかにして「自他の認知」 (自種の細胞を食べずに、多種の細胞を選択的に貪食) するか、 その分子メカニズムを解明することだった。  

不幸にして、2019年のノーベル賞 (生理/医学) は「Hypoxia」(酸素不足) に関する研究者3名が受賞になった。従って、もしメルボルンの免疫学者ジャック=ミラーに今後将来、ノーベル受賞の機会が与えられるとすれば、「史上最長老」 (89歳以上) のノーベル受賞科学者になる。。。彼の「健康長寿」を心から祈りたい。

(20年以上昔の東大医学部内科からの研究論文によれば) 癌細胞などが "酸素不足" になると、(生き残るために) 細胞内の "PAK が異常に活性化される" そうである。固形腫瘍が血管新生を誘導する主な理由は、酸素不足を補うために、周辺に血管を発達させ、腫瘍細胞に酸素を十分に補給するためである。従って、PAK遮断剤によって、血管新生を抑えると、全ての固形腫瘍は "酸素不足" のため死滅する。

ノーベル受賞者で、史上たった独り「死後に受賞」した科学者がいた。2011年に、免疫療法に関して受賞したロックフェラー大学の Ralph Steinman である。 彼は自分の開発した免疫療法で、自身のスイゾウ癌の治療を数年続けていたが、不幸にして、(10月初旬の) 受賞発表一週間前 (9月30) に死亡した。 しかしながら、受賞が死亡直前に既に決定していたので、「例外的に」彼の "死後受賞" が (家族の出席によって) 12月に続行された。

 参考文献:

1. Mitchell GF, Miller JF. Immunological activity of thymus and thoracic-duct lymphocytes.
Proc Natl Acad Sci U S A. 1968; 59(1):296-303.

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