2018年1月30日火曜日

セラミド結合蛋白 "CD300f" はPAK遮断蛋白らしい

もう10年以上も昔、PAKを欠損したマウスは、LPS (lipopolysaccharide) で刺激してもアレルギー性炎症が起こらないことが発見された。つまり、炎症には発癌と同様、PAKが必須であることが証明されたわけだ。 さて、最近になって、順天堂大学の北浦研究室と東大医科研の北村研究室とのアトピーに関する共同研究で、更に面白いことがわかった。  "CD300f"  と呼ばれる遺伝子は、セラミド結合蛋白 (レセプター) を発現するが、この遺伝子を欠損したマウスは逆に、正常なマウスでは炎症を起こさない微量なLPSによっても、アレルギー性炎症が起こる (1)。つまり、「アレルギー過敏症」実験動物になりうる。 

従って、私の水平思考が正しければ、(NF2 遺伝子同様) CD300f は抗癌遺伝子の一種で、PAKを遮断している可能性が強い。 振り返ってみると、セラミド群の中には (化学構造の違いにより) 、PAK遮断作用をもっている物と、PAK活性化作用をもっている物がある。前者は、CD300fを活性化するリガンド、 後者は、その拮抗体と考えれば、その「不思議」 (相反する作用の由縁) が 納得できる。

このアレルギー過敏症のマウスの耳などを使用すれば、プロポリスや15k などのPAK遮断剤の薬効を、ごく「短時間」 (数時間) で 簡単に (in vivo ) 検定しうる可能性が出てきた。 特に癌治療の臨床テストでは、結果が出るまで数カ月もかかるのが通例だが、「アレルギー過敏症」患者を対象にすれば、(ツベルクリン検査のごとく) PAK遮断剤の薬効検定結果が数日で出る可能性がある。 時間と費用の大幅な短縮/節約になる!



さて、セラミドの一種で、京大農学部の藤多哲朗教授、吉富製薬、三菱ウエルファームによって共同開発された「FTY720」と呼ばれる半合成新薬 (商標 は「フィンゴリモド」) は、自己免疫病の一種「多発性硬化症」などの治療薬であるが、 我々の知識によれば、PAK遮断剤の一種である ("CD300f" を活性化している可能性あり)。 冬虫夏草菌の一種 に含まれる成分ミリオシン(Myriocin、ISP-1)に免疫抑制効果が見出された以来、この化合物の構造に基づいて新たに半合成され、2010-2011年に三菱ウェルファーマ(現・田辺三菱製薬)やノヴァルチスから発売された。

 この経口薬を "抗腫瘍剤" として使用する難点は、副作用となる免疫抑制 (感染症に弱くなる) である。従って、免疫抑制剤「ラパマイシン」と同様、その誘導体として、逆に"免疫能を高める" PAK遮断剤の開発が早急に望まれる。

参考文献: 

Shiba E, Izawa K, Kaitani A, et al. Ceramide-CD300f Binding Inhibits Lipopolysaccharide (LPS)-induced Skin Inflammation.  J. Biol Chem. 2017 Feb 17; 292(7): 2924-2932.

2018年1月25日木曜日

「癌のシグナル療法」 @2018年国際癌学会
(7月23-25日) (北イタリアのボローニアにて)

イタリアのボローニアは (ベニスの南西、ミラノの南東、ローマの北に位置する) 欧州で最古の大学町である。ボローニア大学は1088年に創立された。 従って、今年は創立930周年を迎える。「無線電信」の発明で有名なマルコーニはボローニア大学卒で、1909年にノーベル物理学賞をもらっている。 さて、この伝統ある町で、今夏、国際癌学会が開催される予定で、最近、その開催委員会から、PAK遮断剤を中心とする「癌のシグナル療法」に関する特別ワークショップの座長を依頼された。 目下、世界中から、講演者や参加者を募集中である。 詳しくは下記のインターネット欄を参照 (Click) されたし: 
http://colossalfacet.com/cancer-conference/

既に、決まっている主な講演者を2、3 紹介したい。

Harald zur Hausen (名誉) 教授:  ドイツ癌センター、子宮癌の予防と治療に有効な HPV (ヒト パピローマ=ウイルス) のワクチンを開発した功績で、2008年にノーベル医学賞を受賞。最初のワクチンは 米国 "メルク社" が2006年に市販

Craig Jordan 教授:  米国MD アンダーソン癌センター、乳癌の特効薬として、タモキシフェン (エストロゲンの拮抗剤) を臨床に初めて応用したので、「タモキシフェンの父」と呼ばれている (前述)。 学会の最終日 7月25日が彼の誕生日

Thomas Adrian 教授: UAE 大学、スイゾウ癌治療の米国専門家10年ほど前、海鼠 (なまこ) から強力なPAK阻害剤「フロンドサイド A」を発見我々の「15K」がスイゾウ癌などに有効かどうか動物 (マウス) で試験中。 Jordan 教授の旧友。

 Angela Wandinger-Ness 教授:  New Mexico 大学、 鎮静剤「ケトロラック」がPAK遮断剤であることを2、3 年前に発見。 その歴史的な発見に基づいて、我々は「クリック化学」を駆使して、「ケトロラックの1,2,3-Triazolyl エステル化」に成功し、その細胞透過性、及びPAK遮断作用を500倍以上に増強させることができた。

来る5月24-25日に、「東京」で開催予定と宣伝されていた国際薬理学会が、実は「成田空港」の直ぐ外にあるホテル内で開かれることが判明し、全く興ざめして、とうとう「ワーク=ショップの座長」役をお断わりした。来年の3月初めに、パリで開催される国際薬学会でも、欧米の研究者を中心に「シグナル療法」に関するワークショップの座長を担当する予定であるが、(空港近くではなく) パリ市内の "ルーブル美術館" 近くで開催してもらいたいものである。講演に飽きたら、会場を抜け出してダビンチやレンブラント などの名画観賞ができるように。。。。






2018年1月21日日曜日

Bearberry (クマコケモモ) 由来の「アルブチン」は
健康長寿に良い!


http://www.marcheaozora.com/?pid=110357425

上記のインターネット欄によれば、クマコケモモはフィンランド原産の高山植物であるが、平地でも栽培可能で、スイスやフランスなどでは、ベランダで栽培している例が多い。 さて、この野生のいちごに私が特に注目した理由は、この実から抽出される「アルブチン」と呼ばれる配糖体が、せんちゅうの寿命を延ばすという研究が、最近、中国のグループによって発表されたからである (1)。アルブチンには、チロシナーゼを阻害して、メラニン色素の合成を抑える作用があることから、(資生堂などの) 美白用の化粧品に使用されているが (2)、それが健康長寿にも役立つとなると、「健康美」をひたすらに追求するご婦人方には、見逃せない発見である。 更に、私の水平思考に従えば、アルブチンはPAK遮断剤に違いない。 健康食品の中に、この植物の葉っぱを乾燥した「クマコケモモ茶」(生薬では、ウワウルシ茶) という商品もある。 利尿、(膀胱) 殺菌、抗癌作用などもあるといわれている。

参考文献:

1. Zhou L, Fu X, Jiang L, et al. Arbutin increases Caenorhabditis elegans longevity and stress resistance. PeerJ. 2017 Dec 20; 5: e4170.

2. Akiu S, Suzuki Y, Asahara T , Fujinuma Y, Fukuda M. Inhibitory effect of arbutin on melanogenesis--biochemical study using cultured B16 melanoma cells.
日本皮膚科学会雑誌 1991; 101(6): 609-13.