3年ほど昔 (コロナが世界的に蔓延して、海外渡航ができなくなった頃) 、豪州の北方(亜熱帯) にあるケアーンズに 2、3 カ月、「避寒」 のために逗留した。 逗留先は、若い旅行者 (いわゆる Backpackers) が安く宿泊できるユースホステル並みのホテルで、(男女別だが、年齢は問わず) 同室に2段ベッドが2 セット、合計4名が泊まれるようになっている。一泊、2千円位の宿賃で、共同のトイレ、シャワー室やキッチン等が別にある。最大の難点は、同室の誰かが、夜中に大きないびきをかき始めると、同室の他の住人(「耳のよい」我が輩など) が "騒音"で、寝られ無くなる!
そこで、或る日、別の部屋に移動した際、大変面白い老人に出会った。 フィリップという老人 (82歳位、当時、我が輩より3歳ほど年上) で、元々、オランダのアムステルダムから、若い頃、豪州の南西端、 パースにやって来て、ダイヤモンド炭鉱で長らく働いていたが、70歳位で、退職して、豪州中を旅行し回って、結局、このユースホステルに半ば永住している。 普通の貸し屋に住むと、一晩 7千円程、とられるので、家具無しで、ザックやボストンバッグで旅行しながら、10年ほど独り暮らしをしているらしい。
彼の趣味は、近くの "市立図書館" (右図=写真の真ん中にある赤れんが屋根の平屋) で、チェスを楽しむ事。彼のチェスの腕前は「プロ級」である。 それだけではない!若い頃に、北海道の札幌近くに滞在して、スキーを楽しみながら、将棋を日本人のスキー客から、教わったそうだ。 彼の将棋の腕前も我が輩以上だった。 彼は, いわゆる「さ迷えるオランダ人」(ワグナー作曲) だが、我が輩も「さ迷える日本人」を代表して, お互いに意気投合した。彼には、将棋の駒の "漢字" が読めるので、ボール紙で、将棋の駒を2セット作り、図書館にあるチェスの碁盤 (9x9) を使って、ゲームを楽しんだ。チェスと将棋の共通起源は 古代インドで、中東を経てヨーロッパに伝わったのがチェス、中国を経て、日本へ伝来したのが将棋である。 ルールは多少違うが、基本的原理はほぼ同じなので、両方を熟すことは可能! 実は、我が輩がチェスを習い始めたのは、1973年に初めて、米国シアトルに向けて、巨大な貨物船で太平洋を渡った折に、米国人のセイラーから、伝授されて以来である。
さて、フィリップからもう一つ学んだ貴重な「生活の知恵」がある。 実は、彼には、歯が一本も残っていない! 豪州では、歯科は健康保険が利かないから、ひどく歯の治療に金がかかる。 そこで、彼は、虫歯になったら、歯を抜いてもらうが、入れ歯を拒否し続けた結果、とうとう一本も歯がなくなってしまった!
そこで、「歯無しで食事をする術」を, 自ら考案した! ジューサーに食べたい具材を全部入れて、一分間、ジューサーを回転させた後、それを鍋で軽く煮炊きしてから、口の中にジュース (「流動食」) の如く流し込む! いわゆる「歯応え」は楽しめ無いが、(長生きに) 必要な栄養は十分にある、 という訳だ! 最近、我が輩も上下左右の"犬歯"などを抜けたままにしているので、そろそろ「フィリップ方式」に従って、ジューサーで料理を始めるため、ジューサー (一台 4500 円) を安価にスーパーで入手してきた。 実は, "入れ歯一本" よりずっと安い! 駄洒落ではないが、彼は「歯無し」で、普通に会話 (はなし) ができる!
来年の冬 (6-8月) に避寒のため、再びケアーンズに逗留する予定であるが、前回、ユースホステルで豪快ないびきをする客に悩まされたので、今回は個人用の「Bed and Breakfast」式個室に泊まる(一泊 8千円ほどの家賃!) 予定であるが、出来れば (未だ存命であれば) 、フィリップに再会して、将棋や (図書館に近い) "海岸公園" の散歩などを一緒に楽しむ機会があれば、素晴らしい!
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