2017年6月25日日曜日

発癌/老化キナーゼ 「PAK」 は免疫機能を抑えている!

天然PAK遮断剤であるプロポリスには、抗癌作用があると共に、免疫機能を高める作用もあることが、少なくとも30年ほど前から明らかになっている。 PAKが発癌作用をもつことから、プロポリスの抗癌作用のメカニズムは自ずから明らかであるが、(プロポリスが) 免疫を高めるメカニズムについては、未知のままであった。 そこで、 メルボルン大学病院に勤務する賀 紅 (Hong He) 博士 (私の昔の相棒で、北京大学医学部出身) が、最近、PAK と免疫機能との関係を 「APC欠損」 マウスを使用して、検討した結果、大変面白い結論が出たので、それを紹介しよう。

APCは抗癌遺伝子の一種で、この遺伝子が欠けると、小腸や結腸などにポリープ(良性腫瘍) が発生することが知られていた。 さて、「APC欠損」 マウスに発癌性のRASを導入すると、ポリープが悪性腫瘍 (癌) になることが、20年ほど前に我々の手で明らかにされた。 PAKはRASの下流にある発癌キナーゼで、RASの発癌に必須である。

さて、 「APC欠損」 マウスに 「PAK欠損」 マウスを掛け合わせて、APC とPAKを両方欠損させると、ポリープの数が半減することが、先ずわかった。 従って、ポリープ発生には、APC欠損およびPAKの機能が両方寄与していることが判明した。

次に、APCを欠損させると、マウスの脾臓が2-3割ほど増大することが判明した。脾臓は、B型 および T 型 (免疫) リンパ細胞を生産する重要な臓器である。 驚くなかれ、APC欠損マウスにPAK欠損マウスを掛け合わせると、脾臓がさらに2倍も肥大することがわかった (1)。 つまり、PAKには脾臓などの免疫機能を抑える働きも兼ね備えていることが初めて判明した。 従って、 プロポリスが免疫機能を高めるメカニズムは、恐らく、その 「PAK遮断作用」 によるものと結論してよかろう。
  
参考文献: 

1. Huynh N, Wang K, Yim M, Dumesny CJ, Sandrin MS, Baldwin GS, Nikfarjam M, He H. Depletion of  PAK 1 up-regulates the immune system of APC-deficient mice and inhibits intestinal tumorigenesis. BMC Cancer. 2017 Jun 19; 17(1):431.

 ブロリコの (自然) 免疫促進作用

さて、最近、ブロッコリー由来の特殊なエキス「ブロリコ」が免疫を高める健康補助食品として市場に登場したと、ある知人から聞いた。

良く調べてみると、ブロリコはカイコの免疫能を高めるという研究から誕生した。

実は、私の大学時代の後輩 (東大薬学部教授、関水和久) らが、カイコを使用して色々な (天然物の) 薬理作用を検定する方法を開発したが、その一環として、数年前に、ブロリコが免疫促進剤として開発 (特許登録) され、市場に登場したというわけである。

 カイコ には、(哺乳類と違って) 抗体に基づく「獲得免疫」はなく、感染防御を「自然免疫」に頼っている。 従って、ブロリコは、この自然免疫を高めているようである。 さて、PAK遮断剤は(哺乳類の) 免疫能を高めると上記したが、これは主に「獲得免疫」を対象にしている。

さて、ブロッコリーには「スルフォラファン」と呼ばれるPAK遮断剤 が含れていると前述したが、「ブロリコ」には一体スルフォラファンが含まれているのだろうか?  業者の"広告"によると、ブロリコの免疫促進作用は、プロポリス (ブラジル産グリーンプロポリス) の1000倍、スルフォラファンの100倍(?) と詠ってある 。 もし、これが PAK遮断作用によるものならば、癌にも有効なはずである。 そこで、機会があったら、「ブロリコ」 の抗癌作用やPAK遮断作用などを調べてみたい。 

 ただし、その分析結果が出るまでは、市販の 「ブロリコ」 製品が一体何か "科学的に全く不明" なので、試してみるのは、「自己責任」 でやってもらいたい。 

産学共同や軍学共同の在り方について

私が最も危惧している点は、市販/通販されている 「ブロリコ」 製品が果して、「特許」通りの方法でブロッコリーから正確に抽出されているかどうかである。食品衛生試験所は、「ブロリコ」 製品の化学分析をやっているのだろうか? 

「産学共同」 とか「軍学共同」 とか称する共同研究には、大きな 「抜け穴」 が潜んでいるように思われる。大学側が企業や軍隊 (自衛隊) の宣伝活動や軍事行動をコントロールする力や権限が (現状では) 全くないからだ。大学側は企業や軍隊から、研究助成金をタンマリもらい、研究結果を全部、企業や軍隊に委譲したまま、責任回避するのが現状の 「常道手段」のように感じられる。 従って、産学共同や軍学共同の在り方について、大学の研究者は真剣に考え直すことが必要ではなかろうか? 


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