2017年8月6日日曜日

「NF治療薬」 (PAK遮断剤) の開発研究に関する歩み

「NF」 という主に良性腫瘍を伴う稀少難病に関する研究歴史は意外に長く、1882年に独仏国境にあるストラスブルグ大学の病理学教授であったレックリングハウゼン氏による発見に始まる (NF1 を俗に 「レック」 と呼ぶのは、発見者名のほんの一部に由来する)。  しかしながら、癌 (悪性腫瘍) と異なり、患者数が非常に少ないため、それを研究する学者の数も極めて少なく、研究の進歩は極めて遅々なるものだった。 NFには遺伝学的に異なる2種類のタイプ (NF1 とNF2)が存在することが初めて判明したのは、一世紀以上過ぎた1987年頃のことである。 以来、NF1遺伝子と NF2遺伝子と呼ばれる抗腫瘍遺伝子が各々、発見された。 NF1 および NF2 の病因は、各々、NF1 遺伝子あるいはNF2 遺伝子の機能不全による。

それでは、これらの遺伝子の機能不全によって、一体何が分子レベルで起こるかが研究され始め、ようやく2003年になって、我々の手で初めて、「共通の標的」 が見つけられた。 その名が「PAK」 、主要な発癌/老化酵素(キナーゼ)である。 これらの抗腫瘍/長寿遺伝子の不全によって、PAKが異常に活性化するから、腫瘍が発生することが明らかになった。 NF2 遺伝子産物 (蛋白) は、「PAK阻害蛋白」 だった。 実は、この歴史的発見の蔭には、"NF2のために、視力を失つつあった息子を何とか救いたい" というシドニー在住の母親 (ローズマリー) からの熱い訴えがあった。8月に突然メールをもらってから4カ月以内に、長い懸案だった実験に答えが出た!  そこで、失われた 「PAK阻害蛋白」に代わるべき一連の 「PAK遮断剤」 (つまり 「NF治療薬」) の発掘や開発をめざす研究が、我々を中心に開始された。 しかしながら、不幸にして、大きな癌研究所では、"稀少難病" を扱う研究者は 「日陰者扱い」 にされがちだった。

にもかかわらず、2007年に、市販/通販品の中から、我々の手によって、 「NF治療薬」 として最初に発見されたのが、ニュージーランド産のプロポリス「BIO 30」 だった。 (豪州メルボルンの国際癌研究所を引退直後、私が一年ほど客員教授として滞在していた) ドイツのハンブルグ大学病院 (欧州最大のNF臨床研究のメッカ 「UKE」)で、マウスを使った動物実験で、BIO 30 がNF1 および NF2の腫瘍の増殖および転移を抑えることを見事に実証した。 以来、NF患者や(末期) スイゾウ癌患者を対象にしたBIO 30 による臨床テストを続け、成功例が数多く出た。 けだし、先進国ドイツでは、プロポリスも 「薬局方」 にちゃんと掲載されている医薬品である!

しかしながら、不幸にした、大病院の"石頭" NF 医師たちは、我々に耳をかそうとはしなかった。 そこで、我々は、2014年に私費でちっぽけな創薬研究所 「PAK研究センター」 を沖縄の琉球大学構内に立ち上げ翌2015年には、(鎮痛剤「ケトロラック」由来の) はるかに強力な合成 「PAK遮断剤」 (15K) を開発して、(大枚まで叩いて) 特許も取得した。製薬企業は 「特許なしの新薬」 には目もくれないからである。特許に基づく 「独占的な使用権 (ライセンス) 」 がなければ、市販をめざす臨床テストを始めようとしないからである。 臨床テストに成功すれば、FDAや厚生省から認可が下り、「15K」 市販にこぎ着けることができる。

「15K」は前述のごとく、プロポリス同様、せんちゅうの寿命を3割も延ばすほど、副作用の全くない 「健康長寿」 の薬でもある。大学などの「象牙の塔」での研究と違って、「患者の目線」で常に研究を進める我が研究チームの集中力は格別に高い。 前途はなお長いが、「15K」 をNF患者さん達に提供できる日が、必ず来ることを我々は信じて止まない。

 実は、ごく最近、大阪在住のあるNF患者の家族から、我々の 「NF治療薬」(PAK遮断剤) の開発研究を支援する暖かい寄付金を受け取った。 それに感謝する意味も含めて、「NFに関する研究小史」 をここに記した次第である。

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