2016年10月4日火曜日

オートファジー (細胞の自食) とは?

今年のノーベル医学賞に選ばれた大隅良典教授 (東工大) は、我々の大学時代の同
期生 (1967年卒) である。 彼は理学部卒、我々は薬学部卒である。  従って、目指す専門
分野はかなり違うが、共通点も少なからずある。 大隅さんの目標は 「生命の神秘を解き明かす」こと、我々の目標は「病気の根源を突き止めた上、それを抑制/是正し、かつ副作用のない薬を開発する」ことである。 我々の高校時代の先輩である利根川さん (1987年のノーベル医学受賞者)を含めて、多くの薬学者仲間が目下、癌などの難病や老化の根源である「PAK」と呼ばれるキナーゼを選択的に遮断する新薬を開発しつつある。 将来、これらのPAK遮断剤が市販されるようになれば、PAK研究者の中から、ノーベル受賞者が出るのはほぼ確実であろう。


今から20年以上前、大隅さんが東大教養学部で、まだ助教授をしていた頃、
酵母を栄養のない培地に移すと、細胞内の蛋白質が分解し始める現象を見つけた。その現象を「オートファジー」と名付けた。ところが、ある特定の蛋白質分解酵素が欠けているミュータントでは、この現象が起こらない。正常な酵母は、栄養のない培地でも生き残れるが、ミュータントは細胞死する (1)。


オートファジーPAK” の接点:

以来、哺乳動物細胞でも、特に癌細胞の増殖が抑制される条件下に「オートファジ
が頻繁に発生することが判明した。例えば、PAK遮断剤である「イベルメクチン」で乳癌細胞の増殖を抑制すると、「オートファジ」が発生することが、つい最近報告されている (2, 3)、

それでは、この特定の蛋白質分解酵素とPAKとの間には、一体どんな関係があるのだろうか? 


PAKは細胞が飢餓状態になると抑制される。従って、もし、PAKが通常、蛋白分解酵素を抑制しているとすれば、飢餓状態になると、蛋白分解酵素が活性化され、「オートファジー」が始まる。同様に、プロポリスなどのPAK遮断剤は、PAKを抑制することによって、細胞内の蛋白分解 (オートファジー) を誘導するだろう。


 
参考文献:

  1. Takeshige K1, Baba M, Tsuboi S, Noda T, Ohsumi Y. Autophagy in yeast demonstrated with proteinase-deficient mutants and conditions for its induction. J Cell Biol. 1992 ; 119(2): 301-11.

  1. Hashimoto H1, Messerli SM, Sudo T, Maruta H. Ivermectin inactivates the kinase PAK1 and blocks the PAK1-dependent growth of human ovarian cancer and NF2 tumor cell lines. Drug Discov Ther. 2009 ; 3(6): 243-6.

  1. Dou Q1, Chen HN2, Wang K3, Yuan K1, Lei Y4, Li K1, Lan J3, Chen Y1, Huang Z1, Xie N1, Zhang L1, Xiang R5, Nice EC6, Wei Y1, Huang C7  Ivermectin Induces Cytostatic Autophagy by Blocking the PAK1/Akt Axis in Breast Cancer. Cancer Res. 2016 ;76(15): 4457-69.

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