2018年2月8日木曜日

「PKC-ゼータ」は、PAKにより活性化される
「発癌性キナーゼ」!

40年ほど昔、我々がPAK ファミリーの一員(ミオシン=キナーゼ) を発見した頃に、神戸大医学部の西塚研究室の高井義美さんが、「PKC」と呼ばれるキナーゼ群を発見した (前述)。 その中にちょっと変った「PKC-ゼータ」と呼ばれるキナーゼが存在する。さて、 20年ほど昔、PAK  ファミリーの一員で、「PAK1」と呼ばれるキナーゼが、癌の増殖に必須であることが判明して以来、一連の「PAK1遮断剤」の開発が急速に進みつつある。 一方、2006年頃、イスラエルのヘブライ大学のショシャーナ=リビッド 博士の研究室で、ミオシンを燐酸化するもう一つのキナーゼを見つけた。それが、「PKC-ゼータ」だった。更に、このキナーゼを直接活性化するキナーゼも同時に同定された。それがなんと、発癌キナーゼ「PAK1」だった (1)。

 従って、PKC-ゼータも発癌キナーゼである可能性が強くなった。 ごく最近、 「PKC-ゼータ」を選択的に阻害する化合物が米国フロリダ州立大学で開発された。「Zeta-STAT」と呼ばれる硫酸基を3つも有する極めて酸性の化合物である。この化合物は予想通り、癌の増殖を抑える (2)。 しかしながら、極めて酸性なので、細胞透過性が極めて悪いことが予想される。 そこで、臨床への応用には、これらの硫酸基をよりアルカリ性のアミノ基に置換する必要があるだろう。

けだし、リビッド博士は、その昔 (ポスドク時代に) 、細胞性粘菌のミオシン=キナーゼ研究を、米国スタンフォード大学のジム=スピューディッチ教授 (私の旧友) の研究室でやっていた。そこで、彼女を久し振りに、今夏ボローニアで開催される癌学会に招待することに決めた。

 参考文献: 

1. Even-Faitelson L, Ravid S. PAK1 and aPKCzeta regulate myosin II-B phosphorylation: a novel signaling pathway regulating filament assembly. Mol Biol Cell. 2006 ;17(7): 2869-81.
2. Anisul Islam SM, Patel R, Acevedo-Duncan M. Protein Kinase C-ζ stimulates colorectal cancer cell carcinogenesis via PKC-ζ/Rac1/Pak1/β-Catenin signaling cascade. Biochim Biophys Acta. 2018 Feb 2.
 

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