2020年5月29日金曜日

睡眠薬「サリドマイド」(R 体) は実はPAK遮断剤、
COVID-19/NF2 治療にも役立つはず!

その昔 (1950年代に)、 妊娠婦により「ツアリ」防止などの目的で一般的に使用された睡眠薬「サイドマイド」は、お腹の赤ちゃんの四肢の発育に副作用を及ぼし、いわゆる「サリドマイド奇形児」を多数誕生させて、大問題になり、とうとう発売中止になった。

参考書: 「神と悪魔の薬: サリドマイド」(本間徳子訳、日経BP出版、2001年) 

しかしながら、その後の詳しい研究の結果、この薬は、妊娠婦以外の患者には、全く副作用をもたらさないばかりではなく、癌を含めて様々な難病に対して、治療効果を示すことが判明した。 最も注目すべきは、伝染病の一つである「癩 (らい) 病 」(ハンセン氏病) の特効薬として、1964年頃から、WHOの許可を得て、使用されるようになった!  実は、この薬は(同類の) 結核菌やエイズ=ウイルス感染にも効くことが、1990年代にわかった!

しかしながら、その薬理作用のメカニズムが長らく不明のままだった。1996年になって、その手がかりがようやく見つかり始めた。ハーバード大学医学部のフォークマン博士の研究室で、サリドマイドが固形癌の成長に必須な「血管新生」を抑制することが判明した。血管新生は、もちろん妊婦のお腹にある赤ちゃんの正常な成長にも必要である。この血管新生は、その後、何と「PAK 依存性」であることが判明した。

従って、サイリドマイドが何らかのメカニズムで、PAKを遮断している可能性が大である。 さて、ある特定の抗癌遺伝子が欠損すると、腫瘍が発生する。NF2 遺伝子は、その一例であり、この遺伝子が欠損すると、PAK遮断蛋白である「メルリン」が生産されなくなり、脳腫瘍を発生させる。「PTEN 」と呼ばれる抗癌蛋白は、一種のフォスファターゼ (脱燐酸化酵素) で、PAKを特異的に脱燐酸化して、その発癌機能を抑える。

 2009年になって、中国天津大学の研究グループによって、サイリドマイドが PTEN 遺伝子を活性化することによって、PAKを遮断することを突き止められた (1)!  更に最近、PTEN がCOVID-19 による肺炎 (Fibrosis)を抑えることも実証されている (2, see Fig. 1)! 従って、"サリドマイドはPAK遮断剤の仲間"であり、当然のことながら、プロポリスやイベルメクチン同様、"COVID-19感染にも効く" はずである。目下、中国内で、サリドマイドによるCOVID-19患者の臨床テストが進められていると聞いている。

 誤解のないように、明記したいことがある。実は、サリドマイドは "ラセミ体"。S 体 (悪魔) のみがインテグリン遺伝子などの発現を抑えて、奇形を起こす。(R 体の) PAK遮断作用は奇形を起こさない "天使"。しかも、PAK 欠損のマウス株からはより健康な、しかも正常 (五体満足) な子供が生まれる。更に、付け加えれば、プロポリスやイベルメクチンの投与により奇形児が生まれたという事例は全くない!

10年ほど前に、サリドマイドのアミノ誘導体で、奇形を起こし難い Pomalidomide が米国のCelgene によって開発された。少なくともニワトリの受精卵で、奇形が発生しないことが実証されている。しかも、FK228 やイベルメクチンとちがって、BBB (血管脳関門) を通過するので、理論的には、NF2 などの脳腫瘍の治療にも有効であるはず。
インドでは、"Pomahope" という商標 (Abbot 社) で市販され、21錠 (2 mg x 21) 入りが8000 ルピー (約 11,000 円)。

英国で、ごく最近、NF2  (Schwannoma) 患者で、MM (Multiple Myeloma)  治療に "Pomahope" を使用したところ、Schwannoma も縮小していることが判明した! 

Regression of a Spinal Schwannoma After Pomalidomide


Abstract
A 77-year old female with a history of neurofibromatosis type 2 (NF2) was diagnosed with a spinal schwannoma that was managed conservatively over a decade. During this time, follow up imaging revealed this lesion had been growing and the patient had become symptomatic from it necessitating surgical decompression. However, the patient had been diagnosed with multiple myeloma and underwent treatment with Pomalidomide chemotherapy which delayed surgery for the spinal schwannoma. Further imaging of the spine revealed significant regression in the size of the spinal schwannoma. This phenomenon has not previously been reported and this report aims to explore the implications of Pomalidomide in patients with NF2 related spinal schwannomas.
参考文献:
1. Song Gao , Xue-jun Yang, Wen-gao Zhang, Yan-wei Ji, Qiang Pan
Mechanism of Thalidomide to Enhance Cytotoxicity of Temozolomide in U251-MG Glioma Cells in Vitro. Chin Med J (Engl). 2009; 122(11):1260-6.
2. Hiroshi Maruta , Hong He. PAK1-blockers: Potential Therapeutics Against COVID-19.  Med Drug Discov. 2020 Apr 19;100039.

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