2025年7月26日土曜日

MIA-602, 成長ホルモン分泌ホルモン受容体 (GHRH-R) の 阻害剤 (ペプチド) は、強力なPAK1 遮断剤!
"MIA-602 の開発" は、「ノーベル医化学賞」もの!

実は、このペプチドの存在に気づいたのは、Methuselah Foundation (財団) と呼ばれる長寿薬を開発しつつある米国の財団の広告を読んだのが、その始まり。
Methuselah とは、旧約聖書に登場する (大洪水時に様々な動物を "箱船" で運んだ) "ノア" の祖父で、一千年近く生きたという伝説 (架空) の人物。 要するに、"長寿" の代名詞
驚くなかれ、マウスの "GHR" (成長ホルモン受容体) 遺伝子に、ある変異をかけて、機能不全にすると、成長が遅くなる代りに、通常のマウスの 2倍ほど (ca 5年) 長生きできるようになる。
この長生きマウス株 (GHR-KO 11C) に似たマウスを、"MIA-602" と呼ばれる「成長ホルモン分泌ホルモン受容体 (GHRH-R) 阻害剤 (ペプチド) 」を (野生のマウスに) 投与することにより、実現できるそうである。
さて、面白いのは、この薬剤に、COVID による肺炎を抑える作用がある事が、2023年頃に判明した!
G Granato, L Gesmundo, Pedrolli et al (2023).
Growth hormone-releasing hormone antagonist MIA-602 inhibits inflammation induced by SARS-CoV-2 spike protein and bacterial lipopolysaccharide synergism in macrophages and human peripheral blood mononuclear cells. Front Immunol. 14:1231363.
言い換えれば、この薬剤は "PAK1 遮断剤": である可能性が高い!
実際、2016年に (この受容体の下流にある) PAK1 を遮断することが、実証されていた。
Gan J, Ke X, Jiang J, et al (2016).
Growth hormone-releasing hormone receptor antagonists inhibit human gastric cancer through down-regulation of PAK1-STAT3/NF-kappaB signaling. Proc Natl Acad Sci U S A. 113(51): 14745-14750.
従って、このペプチドを常用すれば、常人の2倍、長生きできる可能性がある。

このペプチドは、元来抗癌剤として、2010年頃に (米国 "マイアミ" にある研究所で) 開発されたらしい。
S Bellyei, AV Schally, M Zarandi et al (2010).
GHRH antagonists reduce the invasive and metastatic potential of human cancer cell lines in vitro。Cancer Lett. 293: 31-40.
ただし、この薬剤は研究用で、臨床向けには、未だ市販されていないようである。。。

長生きマウス株 (GHR-KO 11C) の発見以前に、実はショウジョウバエ (Drosophila) で、長生き株 (Methuselah) が、1980年頃に、マイケル=ローズという博士過程の米国学生によって、分離された。この変異株は、野生株より3割ほど長生きすることがわかっていたが、その(遺伝学的) 原因が発見当時は、不明のままだった。それから、18年後に、CalTech のBenzer 教授のチームにより、この変異株には、G 蛋白によって活性化される細胞膜蛋白 (受容体, GPCR) の機能が不全である事が解明された (1)。
1。 YJ Lin, L Seroude, S Benzer (1998)。
Extended life-span and stress resistance in the Drosophila mutant methuselah。Science. 282(5390):943-6.
更に、10年後に、GPCR に結合して、その機能を阻害する事によって、蝿の寿命を延ばすペプチドを発見した (2)。
2。 Heo J, Ja WW, Benzer S, Goddard WA (2008).
The predicted binding site and dynamics of peptide inhibitors to the Methuselah GPCR from Drosophila melanogaster. Biochemistry. 47(48):12740-9.
このショウジョウ蝿の研究から、後に "長生きマウス" を誕生させる MIA-602 が開発された。 Benzer 教授 (1921-2007) は、これらのショウジョウバエ遺伝学研究で、(ノーベル賞は受賞できなかったが) 日本学術振興会から「生物学賞」を2000年に受賞した、と我が輩は記憶している。
我が輩の考えでは、MIA-602 の開発は、「ノーベル医化学賞」ものである!

我が輩は今後、できれば「Methuselah Foundation」 などと協力して、"PAK1 遮断剤" (= 長生き促進剤) の更なる開発を続けたいと、思っている: 「鬼に金棒」の原理!

0 件のコメント:

コメントを投稿