2017年9月6日水曜日

SFドラマの現実化: 京大で ダウン症治療薬 「アルジャーノン」 を開発!

ダウン症の子供は、約千人に一人の頻度で生まれる原因は21番目の染色体の過剰 (正常では2本であるが、ダウン症では3本) により、この染色体上のある特定の遺伝子 (例えば、「DYRK」 と呼ばれるチロシンキナーゼを発現する遺伝子) の過剰 (重複) 発現のために、脳機能の正常な発達が遅延することにより発病する。

京大の萩原研究室では、最近、このDYRKの阻害剤 (Algernon、アルジャーノン) を開発し、 マウス実験で、そのダウン症に対する治療効果を実証するのに成功したそうである。 詳しくは、米国科学アカデミー紀要に発表される予定の論文を参照されたし。


さて、この染色体には、DIRK以外に、ダウン症(DS) 細胞接着分子 (DSCAM=cell adhesion molecule) を発現する遺伝子も存在し、その過剰発現のために、PAKが異常に活性化されることがわかっている。 従って、アルジャーノン以外に、既に市販されているプロポリスやミノサイクリンなどのPAK遮断剤でも、ダウン症の軽減や治療が理論的には、可能なはずである。

さて、 DYRK ファミリー キナーゼの阻害剤がいくつか開発されているが、その内で、最も強い阻害作用を持つのは、「CX-4945」 と呼ばれる化合物で、従来 "CK2 (カゼイン キナーゼ 2) の阻害剤" として知られていた。 DYRK1a に対する IC50 は 7 nM (in vitro) 前後である。面白いことには、CK2はPAKの活性化にも必須であることが知られている。従って、CX-4945は、PAK遮断剤としても有用である。 更に、この化合物には、COOH 基がついている。従って、例によって、CCでエステル化すれば、細胞透過性が飛躍的に高まる可能性がある。 そうすれば、エステル体 (18CX) は (15K同様)、癌ばかりではなく、ダウン症や他の様々な脳疾患の治療にも有益である可能性が出てきた。

最近、韓国のグループによれば、DYRK1aを過剰発現したショウジョウバエにCX-4945  (100 nM,  75 mg/kg) を投与すると、AD (認知症) 状態が改善されるそうである。従って、少なくとも、この薬剤が血管脳関門を通過することがわかる。 進化論 (水平思考) に従えば、昆虫で証明されたものは、マウスや人類にも即、真であるはずであるが、現実には昆虫学者と獣医や内科医との間には、かなり温度差 (見解の相違) があって、延えんと労力と莫大な費用がかかる長いステップ(動物実験から臨床試験) を一々踏まなければ、FDAから新薬の使用許可が得られない。

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