2019年2月5日火曜日

自分独自の「エベレスト」を目指せ!

ヘルシンキ五輪の翌年5月に、英国の山岳遠征隊が、更なる偉業を成し遂げた。 難攻不落の世界最高峰「エベレスト」(海抜8850 m) の頂上に、遠征隊に加わっていたニュージーランド出身の養蜂家エドモント=ヒラリーとその相棒 (シェルパ) 、ネパール出身のテンジン=ノーゲイが仲良く肩を並べて到達した!  そのニュースを知った当時、私は小学4年だったが、不幸にして、新学期の4月から、小児結核の集団感染で、休学し自宅療養中だった。 登山やスキーが好きな父が、エベレスト征服を報じる写真入りの毎日新聞の一面記事をもってきて、私を励ましてくれた。「いつか元気になって、また一緒に山に登ろう!」。

まもなく、結核の特効薬「パス」が米駐留軍のPXから手に入り、いわゆる「微熱」が下がり始め、御蔭で、夏休み明けには、5カ月ぶりに復学でき、留年を免れた! 休学中の特に「算数」の遅れを取り戻すために、父が学校から (6年生までの) 算数の教科書をわざわざ取り寄せ、自宅で (算数の) 特訓をしてくれた。御蔭で、復学した時には、既に6年生の算数の教科書を卒業、(少なくとも算数だけは) クラスのトップに達することができた!  しかしながら、復学しても、激しい運動は禁じられ、体育の時間は、卒業まで、いつも校庭の隅に座って「見学」を強いられた。従って、級友と一緒に野球や水泳を楽しむ機会がなかった。 だから、(学友とは違って) 野球ファンや水泳ファンなどには、とうとうなれなかった。。。

最寄りの中学に入学してから、担任の数学教師 (田中恒夫先生) が有名な卓球選手だったので、放課後に、教室にある机や椅子を全部、片側に寄せ、卓球台を運び入れて、数名で卓球の猛練習をしたものである。当時は学校内に体育館が未だなかった。 その後、父と一緒に近くの丹沢山塊や奥多摩で登山を楽しみ始めた。中学の体操の時間に、筋力と肺活量の不足をつくづく痛感した。2か年半に渡る体育の見学で、上体の筋力が衰え、鉄棒で懸垂を試みても、ただぶら下がっているだけだった。体育の教師に「丸で、肉屋の店先にぶら下がっている豚肉のようだ」と形容された。もっとも痩せ型だったので、実際には「カモ鹿の骨」と形容した方が真に迫っていただろう。100メートルを走るのに14秒以上かかった。肺結核でおかされた私の肺は、ランニングに必要な爆発的な肺活量をもはや支えてくれなかった!  「ザトペックへの道」はとても無理だった。

高校時代には、八ヶ岳や谷川岳などに挑戦し、少なくとも足腰には、ようやく自信が出来たので、(当時は学生の間には余り知られていない) 「競歩」という長距離競技を始めた。競歩選手の大部分は実業団に属していた。 例外は市川の教師 佐藤武男) と俳優の細川俊夫などだった。 大学生は皆無、高校生は私と浦和高校のある生徒のみだった。時速10 km をめざしながら、10 km 競歩や20 km 競歩に挑戦し始めた。  (学校を長らく休学した経験のある) 私は、ある意味で「天の邪鬼」になり、他人がしないことをやるのが趣味になった。つまり、人真似をしないで、独自性を発揮することに徹するのが、我が人生の最大の楽しみになった。言い換えれば、ヒラリー卿のごとく、自分独自の「エベレスト」を捜し当て、それに挑戦、(誰よりも先に) 初登頂をめざすことである! 

大学院生活を無事終え、渡米して間もなく、「PAK」いう珍しいキナーゼを初めて発見するという幸運に恵まれた。40年以上昔の話である。 その後、その「PAK」が癌を含めて多種多様の難病の主因であることが、次第に明らかにされた。そこで、これらの難病の治療をめざして、プロポリスを含めて「PAK遮断剤」の発掘と開発に、初めて乗り出した。 明らかに、頭脳に頼る「創薬レース」は、筋力に頼る「陸上競技」より、酸素の消費量がずっと少ない!  ただし、時間 (年月) がひどくかかるから、文字通り「持久力レース」である! 

日本国内では、PAKに携わる研究グループは今のところ、皆無である。 海外でも、利根川進氏 (MIT 教授、 1987年ノーベル医学賞) の設立したベンチャー会社「Afraxis」や大手製薬会社 (Pfizer、Novartis、Roche、Astrazeneca など) 数社のみに限られている。 その先陣争いの中で、臨床に役立ちそうな「細胞透過性が高く、かつ水溶性」のPAK遮断剤「15K」を開発したのは、今のところ、我々のチームのみである。

前述のごとく、正確に言えば、最近、もう一つのチームが、別ルートで同じ頂上をめざしていることが判明。米国ミネソタ大学薬学部の (ドイツ出身の有機化学者Gunda Georg 女史 が率いる) チームが、漢方薬「雷公藤」由来のTriptolide 誘導体 (ミネライド) を数年前に開発したが、それはPAK の直ぐ上流にあたる「RAC 」と呼ばれるG 蛋白を阻害する。 従って、薬効に多少の差はあれど、「15K 」も「ミネライド」も、最終的には同じ標的「PAK 」を狙っている。

「PAK 遮断剤の市販」という独自の「エベレスト」初登頂を巡って、この両チーム (遠征隊) が先陣争いを目下繰り広げている!  ヘルシンキ五輪の水泳 (1500m 自由形) に例えれば、米国を代表するコンノ選手と日本を代表する橋爪選手との「デッドヒート」である。我がヒーローの一人、ヒラリー卿は数年前に (米寿で) 既に他界したが、彼の「エベレスト」精神は、我々の魂の中に、生き生きと燃え続けている! 

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