2019年3月19日火曜日

「インテリの落とし穴」(The Intelligence Trap) :
David Robson 著

ごく最近出版された本だが、蘊蓄 (うんちく) の深い作品である。 この書物の目的は、知能指数の高い人々が落ち入りやすい誤解/錯覚の原因を見つけ、より賢明な決断ができるコツを探ることである。 著者は、科学ジャーナリストで、雑誌「New Scientist」や「BBC Future」などの編集を担当している。 最初に、名探偵「シャーロック=ホームズ」を産んだ聡明な作家コナン=ドイルと魔術師ハリー=フディニとの面白い対決場面が登場する。 軍配は結局、(IQ がより低い) 魔術師に挙がった。 何故か? 

PCR (Polymerase Chain Reaction) の発明でノーベル賞をもらった異色な分子生物学者カリー =ムリスも登場する。IQが極めて高いはずのムリス博士は、エイズがウイルス病であることを未だに信じないどころか、宇宙人の地球到来を信じ込んでいる!  しかも、IQ テストを考案したルイス=テルマンは、「優生学」を信じる余り、遺伝子病の患者をできるだけ始末すべきと主張していた。 しかしながら、最近の研究によると、IQ (知能指数、主に記憶力) と人生における成功率との間には、余り密接な相関関係はなく、むしろ、他の能力、例えば、応用能力、 (発明/発見に繋がる) 創造力、社交能力なども、成功への重要な鍵になっていることが明らかになっている。

つまり、「生まれ (遺伝) より育ち (教育) 」という考え方が定着しつつある。言い換えれば、「プロポリスやマヌカハニーなどのPAK遮断剤で、人生の成功率を飛躍的に高め得る」という "新説" (我田引水) さえ可能になりつつある。。。

私自身は幼児の頃、自分の IQ を測ってもらった記憶さえないが、恐らく100 (平均) を少しは越えているだろうと想像する。従って、この本を読んで得るべきことは多し、と期待している。  余談だが、「Flynn 効果」によって、極東では1950年から1980年までの30年間に、平均 IQ 指数が30 以上も上がっているそうである! 従って、私の現在の「 IQ 」は 少なくとも130 を越えている可能性がある。

「ノーベル病」という不思議な病理現象がある。 ノーベル受賞者がしばしばかかる症状である。その最も有名な例が、化学者ライナス=ポーリングの場合である。彼は化学結合に関する研究で、ノーベル化学賞を得ると共に、平和運動でもノーベル賞を得た、その後、"ポーリング研究所" を設立して、ビタミン C の研究を始め、「流感や癌の予防や治療に効果あり」という( 如何がわしい) 説を発表して、長らく医学界を混乱させた。自分の専門外にも手を出し過ぎて、失速したり社会を混乱させる弊害や浪費をもたらす。 勿論、利根川進教授のごとく、受賞後、免疫学から精神医学に転向して、"PAK" 研究にも多少寄与した成功例はあるが。セント=ジョルジー教授もビタミンC から筋肉収縮(アクトミオシン) へ専門を変え、大成功したが、その後 (更に) 癌研究に転向して、多大な研究費を浪費した! 「 遺伝子暗号」の解明で1968年にノーベル賞をもらったNIH の生化学者マーシャル=ニーレンバーグも、受賞後、急に神経医学へ転向して話題を撒いたが、その後40年近く「鳴かず飛ばず」という印象だけが残っている。

「ノーベル病」にかからなかった典型的な例は、英国の生化学者フレッド=サンジャーである。インスリンのアミノ酸配列で1958年にノーベル化学賞をもらった後、DNAの塩基配列を決定する方法も開発して、2度目のノーベル化学賞を1980年にもらった。サンジャーは我々「生化学者の鏡」と言える! 「適度の飛躍」が成功の鍵である。

是非追加したいのは、米国による戦争末期の「原爆開発計画」 (マンハッタン=プロジェクト) についてである。私は、この本を未だ読み終わったわけではないが、索引を見る限り、この計画について一切触れられていない。しかしながら、この計画は、世界最高のIQ (原子力物理学者) を一同に集めた歴史的なプロジェクトだったが、それによって得たものは、戦争とは直接無関係な (広島と長崎の) 市民20数万人を無差別に虐殺したに過ぎなかった。 しかも、原爆の投下は、日本の無条件降伏には、全く不必要だった。 従って、この計画をフランクリン=ルーズベルト大統領に依頼したアインシュタインなどの物理学者たちは、酷い「誤算」をしたことになる。しかも、戦後米ソ中などの強大国によって、量産された核兵器は格納庫に保存されたまま (使用されずに) 日の目を見ていないなんという「無駄」をしたことか!

 実は、本の7割辺りに、「兎 対 亀」という章の中で、「マンハッタン=プロジェクト」(MP) について、ほんの少し触れてあった。 量子物理学者リチャード=フェインマンは1965年にノーベル物理学賞を朝永振一郎らと共にシェアしたが、彼の少年時代のIQ は125  (平均より多少上、亀の部類!) だったそうである。しかしながら、独学で数学をマスターして、MIT を卒業し、プリンストン大学で博士号を取得。その後 (戦時中)、MP チームに動員されたが、広島や長崎の悲劇を知って、MPに関与したことを大変後悔。 さて、彼の苦手は語学だったが、後にポルトガル語と日本語を独学でマスターした努力家である。MP 時代に、ある記録か文献を入手するために、時間外の事務所/図書室に侵入し、9桁のコンビネーション錠前付き金庫を見事に開け、必要な書類をコピーした後、返却し「文献XX を閲覧、RF」というメモを残して立ち去ったという伝説が残っている。丸で「快盗ルパン並の腕前」!  「亀でも努力すれば、兎を凌ぎ得る」というイソップ童話の好例。RFの「座右の銘」は、「失敗は成功の元」。失敗した場合に、謙虚に反省して、その原因を突き止め、次の成功に繋げる。RFは比較的短い生涯 (70年) で、3度も結婚を楽しむ!

 もう一言。 英国の「Brexit」(EU からの離脱) は明らかに大失敗だった。Brexit に投票した (インテリ) 有権者へ、是非この本を勧めたい!  もっとも、「馬の耳に念仏」という諺もあるが。

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