2019年4月2日火曜日

回想録: 病原キナーゼ (PAK) の遮断をめざす研究
Long Walk Beating Our Pathogenic Kinase (PAK)

実は、昨日、私の高校 (日比谷 ) 時代の同級生 T 君からメールをもらって驚いた。彼は東大理学部 (動物学科) を卒業後、大学院で博士号を取得後、関西の国立 K 大学で長らく教授を勤め、10年ほど前、定年で退官後、古巣の東京に戻って、私立の T 大学で、教鞭をとり続けている。 その彼が昔話に、30年ほど昔 (元号が昭和から平成に変わる頃)、母校の「医学博士」を取得するために受けた面接試験について述懐してくれた。彼の専門は筋肉収縮に関するものだったが、この分野の世界的な先駆者 (江橋節郎教授) は、東大医学部薬理学教室を既に退官していたので、その後任者が面接に立ち会ってくれたそうである。

その話を聞いて、私も遅ればせながら、もし機会があれば、医学博士論文を京大 (あるいは, Harvard Medical School) に提出して、「医学博士」なる称号を取得しようかなとフト考えた。母校「東大」は「ブロリコ」事件で、イカサマ師を野放しにしたまま涼しい顔をしているので、その学術的権威が今や全く失墜、残念ながら、ご遠慮することにした。もっとも、(棺桶に片足を突っ込んだような) 老人が今さら医学博士号をもらっても、「冥途への土産物」以外に、余り実用的な価値はないが。むしろ、Harvard University Press (HUP) などから学術的な「回想録」として海外から出版した方が、読者層が厚いかもしれない。

以下は、原稿の序である。 本文は勿論、私がその昔、薬学博士論文を提出した際のごとく、英文で出版予定。

序: 

45年前 (1974年) 、米国のNIH (ED Korn 博士の下) でポスドクとして、(非筋)細胞運動をつかさどるミオシン (ATPase) とアクチンとの相互反応を、土壌アメーバを実験材料として、研究し始めた。その研究中、1977年に、このアメーバに、極めて珍しい「キナーゼ」 (蛋白燐酸化酵素) が存在することを突き止めた。

骨格筋では、カルシウム存在下、ミオシンのATPase 活性はアクチン=ファイバー (F-アクチン) によって、活性化され、ATP分解によって生じた化学エネルギーが機械エネルギーに変換され、列車がレール上を走るごとく、ミオシンがアクチン=ファイバー 上を滑べることによって筋収縮が起こる。しかしながら、平滑筋では、ミオシンの軽鎖が特定のキナーゼによって燐酸化されないと、F-アクチン によって活性化されない。驚くなかれ、アメーバでは、カルシウムの存在下でも、このミオシン=キナーゼ存在下でも、ミオシンATPase の活性化は起こらない。意外にも、アメーバには、ミオシンの重鎖を燐酸化する特殊なキナーゼが存在し、ミオシンのアクチンによる活性化に必須であることを、私は発見した。 その酵素がずっと後に哺乳類にも存在することが判明、発癌、 炎症、感染症、認知症、高血圧、糖尿病など様々な難病の原因になっていることから、「PAK 」(Pathogenic Kinase) と呼ばれるようになった。

以後、これらのPAK依存性難病の予防及び治療をめざして、PAK を選択的に遮断する天然及び人工 (化学合成) の薬剤の発掘や開発に、我々は長い年月を費やしてきた。2015年に、我々は "Click Chemistry" と呼ばれる化学反応を介して、鎮痛剤 「ケトロラック」をエステル化して、その細胞透過性を500倍以上高めることに成功。そのエステル (PAK遮断剤) を「15K」と名付け、市販をめざして、臨床テストを開始する計画である。15K は天然のPAK遮断剤であるプロポリスの千倍以上の抗癌作用をもち、(マウス実験で) ケモ耐性のすいぞう癌の増殖や転移を完全に抑えるばかりではなく、せんちゅうの健康寿命を有意に伸ばす。従って、副作用がない (しかも健康長寿にも役立つ) 抗癌剤であると、考えられる。

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