2021年9月1日水曜日

エドモンド=ヒラリー著: 「山頂からの眺め」 (1999年)

我が輩の少年時代のヒーローの一人、ニュージーランドの登山家「エドモンド=ヒラリー郷」 (1919-2008) が、エベレスト初登頂の成功から半世紀ほど経った1999年に、一種の回顧録 「View from the Summit」を出版した。 勿論、山頂とは、世界最高峰エベレストの頂上 (海抜 8850 m) を指す。 もう20年近く昔に読んだ名著であるが、ケアーンズの図書館で最近、この本を懐かしく見つけたので、その序文をここで紹介したい。 なお、この(邦)訳本は、何故か未だ出版されていないので、詳細は英文原書 (約370ペー ジ) を参照されたし。
(序) これは、私のある種の回顧録、つまり我が79年間にわたる様々な活動を400 ページ弱に濃縮したものである。 私自身の見解は、我々の仲間のそれと、必ずしも一 致しないが、当時我が目でハッキリ観察したものである。
私は大いに幸運に恵まれ、一定の成功を修めたが、(我が妻子の事故死や登頂相棒"テンジン"の病死などの) 悲しみも仲間と共有してきた。45年以上前に、私がエベレスト山頂に到達して以来、メディアは私を英雄扱いしてきたが、私自身は、常に自分自身の能力に限界を感じつつ、我が業績は、他人との協力による想像力やエネルギーの賜物だったと感じている。
少年時代、私は一種の夢想家で、多くの冒険物語を読みふけり、独りで長い山歩きを楽しんだ。 当時、私の前途に、幾多の興奮すべき冒険が待ち受けているとは、 想像だにしなかったし、長年の間に多くの栄誉を受ける運命になることも予想していなかった。 私は幸運にも、各国の女王や王女、大統領や首相に面会する栄誉 を受けたが、恐らく最も貴重だったのは、様々な文化圏や民族の人々と緊密な友情を暖め合ったことであろう。
勿論、冒険は人生にとって貴重であり、私も一連の大冒険を乗り越えてきたが、より貴重な体験は、ヒマラヤの友人 たち (シェルパ族) のために、成し遂げた様々 な活動 (慈善事業) を遣り遂げることができたことだ。 これらの活動も、別の意味で、大きな挑戦だった: 山岳地帯に空港や学校、病院や診療所の建設、奥地にあ る仏教の寺の再建など。。。私は、これら一連の活動を、決して忘れないだろう。
(注): この原著が出版されてから数年後 (2003年) に、ヒラリー郷と共に、エベレスト初登頂に成功したシェルパのテンジン=ノーゲイの孫にあたる登山家夫婦 (豪 州シドニー在住) が、英文原書「TENZING AND THE SHERPAS OF EVEREST」を出版。 その邦訳「テンジン: エベレスト登頂とシェルパ英雄伝」を我々の手で、出版した経験がある。 地元のシェルパ民族側から見たエベレスト登山の意味や意義を理解する一助になるだろう。

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