ごく最近、英国の癌分子生物学者(Julian Downward)から悲報を受け取った。
彼の恩師、Mike Waterfield 博士が、つい最近、82歳で他界した。
Mike は、1980年代の初期から、癌分子生物学をリードした生化学者で、英国ロンドンにあるルードビッヒ癌研の所長を担当し、血清中の増殖因子(PDGF etc) が、いかに
RASを介して、PI-3 kinase などの発癌キナーゼを活性化するかを明らかにした。そのすぐ下流に位置するのが、我々が発見した “PAK” である。従って、彼自身の研究は、その後の我々の研究(=PAK 遮断剤の開発)にも、大きく貢献している。
少なくとも、我々の目から見れば、“ネアンデルタール人と人類との交配”よりも、ずっと、“生理医学”的に、重要な発見だった!
従って、最近のノーベル財団(審査員たち)の目は(頭蓋骨の)“節穴”に過ぎないと、言いたい!
Note:
Mikeらの研究に基づいて、2,3 の“PI-3K阻害剤”が開発されつつあるが、まだ臨床(抗癌)用には、市販されていない。その主な理由(障害) の一つは、このキナーゼは、本来、哺乳類の "循環系"(特に、心臓)の発育に必須であるからである。従って、妊婦や成長途上の幼児には、(その阻害剤は) 絶対に使用できない!
MikeらがPI-3Kを発見したのは1994年、シンガポールの英国人、Ed Manser が、(我々が1977年にアメーバで発見していた“ミオシンキナーゼ”によく似た) “PAK”を哺乳類で初めて発見した (丁度) 同年だった!
極めて幸いにも、PAKは、“循環系の発生にも必須ではない” ので、その遮断剤は、副作用がなく、“健康長寿薬”としてより安全, かつ有望である! つまり、我々は(30年近い“マラソンレース”の末)遂に “大家”(Mike) の上を行く存在となった!
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