前述したが、血圧はPAKが活性化すると、上昇する。 従って、 市販の高血圧の
特効薬、例えば「バイアグラ」や「グアナベンツ」は (健康長寿に繋がる) "PAK遮断剤" でもある。
さて、1970年代中頃に、米国の製薬会社 (Bristol Myers Squibb、BMS) によって開発された「カ
プトプリル」と呼ばれる (高血圧の特効薬) は、1980年に市販されるようになっ
たが、この化合物は、実は "蛇毒の成分" で、血圧を下げる作用を持つペプチド (ACE阻
害剤) の誘導体である。 この発明の発端になる発見は、ジョン=ベインという英
国の循環器医者 (1982年に、「プロスタグランディン」の研究に関して、ノーベ
ル医学賞を授与) と、(1960年代に) はるばるブラジルから蛇毒持参で、やって来
た若い研究者によって、見つけられた面白い観察に基づく。 この蛇毒成分の中
に、血圧を下げるあるペプチドを発見したが、それがACE (Angiotensin Converting
Enzyme) の阻害剤だった。 そこで、BMSの有機化学者たちが、このペプチドに似
た化合物「カプトプリル」を高血圧の特効薬として開発した。
その後、この化合物には、他の様々な薬効が見つかったが、その一つが「美白作
用」である。2012年に台湾の研究チームが、この薬剤に「チロシナーゼ遺伝子の
発現」を抑える作用を発見した。 2015年に我々は、メラニン合成に必須なチロシ
ナーゼ遺伝子の発現にPAKが必須であることを発見した。つまり、この化合物がPAKを
遮断している可能性が極めて濃厚になった。
実際、2019年なって、中国南京のPAK研究グループによって、この化合物がPAKの上流にある「JAK」と呼ばれるチロシン
キナーゼを直接阻害することが証明された。 従って、この安価な (ジェネリック
) 市販薬 (12.5 mg 錠剤、100 錠が1600 円、つまり一錠 16円!) が、COVIDによる肺炎や様々な固形腫瘍の治療にも、役立つ可能性が極
めて高い。
REF:
Zhang Y, Zhang L, Fan X, et al (2019).
Captopril attenuates TAC-induced heart failure via inhibiting Wnt3a/β-catenin and Jak2/Stat3 pathways. Biomed Pharmacother. 113:108780.
面白いことには、ACE阻害ペプチドは、蛇毒ばかりではなく、山羊の乳の中にもあ
り、 IC50は、カプトプリルと同様、4 micro M だそうだ (2017年の鹿児島大の研究
)。 山羊は乳牛と違って、山岳地帯に住み、常に「山登り」をするので、血圧が低い
のかもしれない。。。
カプトプリルのACE阻害作用 (IC50 in vitro) は 6 nM と言われている。 あいにく、この分
子には "カルボン酸" があるので、"細胞透過性が乏しい"。 従って、クリック化学 (CC) で、
1,2,3, Triazolyl (エステルあるいはアミド) 化すると、千倍近く、その薬効を
飛躍させる可能性がある。。。実際、2004年の "特許" (イタリアのチーム) によれば、カルボン酸をアミド結合した
誘導体がより良いことが報告されている。 つまり、カルボン酸部分は、薬効には必須ではない!
REF:
HR Ibrahim, AS Ahmed, T Miyata (2017).
Novel angiotensin-converting enzyme inhibitory peptides from caseins and whey proteins of goat milk. J Adv Res. 8: 63-71.
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