2018年12月11日火曜日

クチナシ果実の (黄色) PAK遮断剤「クロセチン」の
機能的「進化」!

豪州メルボルンの自宅から毎朝、市立の図書館へ通う途中、徒歩10分以内にある小学校 (Moonee Ponds Primary) のすぐ向い側にある 住宅の垣根にクチナシの花が今や満開。その甘い "ジャスミン" の香りを満喫しながら、私は図書館へと歩を進める。

さて、「理研ビタミン」などから市販されている天然の黄色色素は、クチナシ果実やサフランなどの主成分「クロセチン」である。 カロチン類の一種で、タクワンなど多種の食料品の着色に、大昔から使用されている (水溶性の) 食品着色料だから、勿論毒性は全くないが、意外にその優れた薬効 が知られていない。端的に言えば、「PAK遮断剤」の一つである。 従って、癌や認知症などの予防や治療、更に健康長寿に役立つはず。  ただし、その分子中に2つのCOOH 基が存在するので、細胞透過性が悪い (IC50 = 0.1-0.2 mM)。

そこで、 我々が鎮痛剤「Ketorolac 」のCOOH 基をClick Chemistry (CC) でエステル化して、その抗癌作用を飛躍的 (500倍以上) に増強したごとく、クロセチンの両翼のCOOH 基を (同様な "CC" 法で) エステル化することによって、その薬効を飛躍的に高めうる可能性がある。 もし、志ある若者 (有機化学者) がいたら、一度試してみる価値がある。。。 けだし、クロセチンの配糖体「クロシン」も (糖との) エステル体ではあるが、分子量が大き過ぎるので、恐らく血管脳関門を通過しないだろう。 

 不思議なことには、10年ほど前に発表された論文によると、動物 (マウス) 実験では、意外にも、ヒト由来のスイゾウ癌の増殖が比較的少量のクロセチン (4  mg/kg) で、80% ほど抑制される事が判明 (1)。プロポリス (Bio 30) の約10 倍ほど、薬効が強い。 これは一体なぜだろうか?   (もし、この報告が正ければ) 考え得る一つの可能性としては、体内でクロセチンが何らかの形で「エステル化」されてから、癌細胞に作用している。つまり、体内で何らかの化学的修飾 (「進化」) を遂げている可能性が大である。。。

更に、ごく最近発表された中国の研究グループからの報告によれば、クロセチン (10-30 mg/kg /day) で、認知症モデルのマウスの脳内炎症が抑えられると共に、失われた記憶が殆んど回復されることが判明した (2)。 従って、(体内でエステル化された?) クロセチンは、脳内で有効に作用していることがわかる。 従って、(未だ臨床例はないようだが) NF などの "脳腫瘍" や "認知症" の治療にも有効である可能性が大いにある。 

"理研ビタミン" から今月発表された「臨床テスト」結果によれば、クロセチン (7。5 mg/day) の2週間にわたる経口で、少なくとも "睡眠の質" を高める効果があることが証明された (3)。 

なお、クロセチンは元来、天然物であるが、15年ほど昔、その化学合成法が確立したので、今日では "合成クロセチン" の量産も進められているはず。 

海産物 (赤えび、筋子や紅鮭など) にも、クロセチンに似た「アスタキサンチン」(AX) と呼ばれる赤いカロチノイドが豊富に含まれている。 この海の幸には、COOH基の代わりに両翼に芳香 (シクロヘキサン) 環が付加しているため、細胞透過性は高いが、水に不溶という欠点がある。 同様にPAK遮断剤であり、せんちゅうの健康寿命を延ばすことが知られている。 従って、クロセチンにも健康長寿を増進する作用があるに違いない。 

なお、プロポリスやAX などの「水に不溶な」PAK遮断剤の経口投与には、環状オリゴ糖 ガンマーCD (シクロ-デキストリン) による包接という手段が、「シクロケム」KK を中心に (少なくとも動物実験レベルで) 最近成功を修めつつある (4)。 

参考文献: 
1. Dhar A1, Mehta S, Dhar G, Dhar K, Banerjee S, Van Veldhuizen P, Campbell DR, Banerjee SK. Crocetin inhibits pancreatic cancer cell proliferation and tumor progression in a xenograft mouse model. Mol Cancer Ther. 2009 ;8 (2): 315-23.

2. Zhang J#1, Wang Y#1, Dong X1, Liu J1. Crocetin attenuates inflammation and amyloid-β accumulation in APPsw transgenic mice. Immun Ageing. 2018 Oct 30;15:24.
3. Umigai N1, Takeda R2, Mori A3. Effect of crocetin on quality of sleep: A randomized, double-blind, placebo-controlled, crossover study. Complement Ther Med. 2018 Dec;41:47-51.
4. Kashima N1, Fujikura Y, Komura T, Fujiwara S, Sakamoto M, Terao K, Nishikawa Y.
Development of a method for oral administration of hydrophobic substances to Caenorhabditis elegans: pro-longevity effects of oral supplementation with lipid-soluble antioxidants. Biogerontology. 2012 ;13(3):337-44.

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